Thanksgiving day

 

 

 

「ルックの誕生日って、いつ?」

やや遠慮がちに発せられた質問。

「さあ……僕もよく知らなくてね」

そんな事を聞いてどうするの?と続けそうになって止まる。

見つめ返したその瞳が、

どこか淋しそうだったから。

 

 

 

 

誕生日なんて興味なかった。

望んで産んでもらったわけではないから。

そんな事を知らなくたって困らないし、

勝手に自分の身体は年を取っていくから。

季節が移り変わるのを見て、

その年が過ぎていくのを何となく感じてはいるけれど、

別に何かをしたいわけじゃない。

だから彼の顔を見た時に正直な所を言えば驚いた。

自分の事に執着しようとする人はいなかったから。

 

 

 

 

彼の返答が淋しいものだったから、

本人が知らないだけかもしれないと思って彼の師匠の所まで行ってみた。

彼と一番長く時間を共有している彼女ならば知っていると思ったからだったのに、

彼女もそれを知らなかった。

仕方がないから、

彼と因縁の関係を持つあの少年や関係しているだろう人にも聞いてみたけれど、

誰一人明確な返事を返してはくれなかった。

それが淋しかった。

自分の事ではなくても。

 

 

 

 

 

 

「別に僕は構わないから」

彼の顔を見れば、

彼がどれだけ自分の事を一生懸命考えてくれているかわかる。

あれから聞いて回ったのだろうけれど、

結局誰も答える事は出来なかったに違いない。

「でも……」

どこか疲れてはいるけれど、

淋しそうな声が返ってきて。

驚きと嬉しさが半分ずつ。

ここまでしてくれるのは君が初めてだよ。

「………新しく日にちを考えてもいい?」

「え?」

「自分で自分の誕生日を決めていいか聞いてるんだけど」

「うん」

「だったら……この日だね」

 

11月27日。

 

「その日でいいの?」

「いいよ」

そう答えた僕に彼は自分の事のように喜んでくれた。

 

 

 

 

きっと君はその日が本当は何の日か知らないだろうね。

新しく僕の誕生日になったその日は、

僕が君に初めて会った日なんだよ。

星の定めなんてなかったら、

僕らはその日を逃したら出会ってなかったかもしれない。

だから最初に僕の事を一番考えてくれた君に出会えたその日は、

きっと僕にとって存在価値のある日だろうから。

 

 

僕に出会ってくれた君への口に出さない最大限の感謝の記念日。

 

 

 

○あとがき

  何ですか、これは?1月前ですよね、MY設定のルックさんの誕生日……()ごめんよう、ルックさん。

 

  

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