real cage

 

 

 

嫌な過去は封印して、

幸せな今だけ見つめていよう。

そうしなければ、

自分は先には進めないし、

大事なものも見失ってしまうから。

 

 

 

 

 

遠くで鳥の鳴く声が聞こえる。

昨夜は遅くまで起きていたのに、

思ったよりもずっと早く起きてしまって。

隣で眠っているルックは疲れているのか、

いつもならばほんの僅かベットが揺れただけでも起きるのに今も眠っている。

 

 

これが現実。

 

 

そう自分に言い聞かせながら彼の寝顔を見つめていたけれど、

沈んでしまった自分の気持ちは浮上する気配を見せない。

諦めて一つ大きく溜息をついて、

静かに部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

ふと目を覚ました。

確かに夜中には自分の腕の中にいたはずのユギの姿が消えてしまっている。

彼がいた場所のぬくもりは、

朝の冷え込みでとうの昔になくなってしまったらしい。

起き上がって改めて感じられた寒気に身震いをして、

近くにあった毛布を手に取ると彼を探しに出た。

 

 

 

 

 

忘れたわけではない。

ただ自分の中の占める場所が変わっただけ。

消えるはずがない。

あれだけ大事に思っていた「あの人」の記憶が、

自分の中から消えるはずがない。

最初自分の全てを支配していた「あの人」は、

日が経つにつれて記憶の奥に押しやられ始めた。

それは自分が立ち直りつつあるということ。

それはいい事なのかもしれない。

 

無理やり閉じ込めた感情は、

本人の意思とは無関係に爆発する。

まるで発作のように「あの人」への気持ちが湧き上がり、

その度に自分の意識は果てしなく沈んでいく。

思い出されるのは幸せな過去ばかりで、

自分を取り巻くのは悲しい事実だけ。

 

そんな時は、

今一緒にいてくれるルックの側にはいたくない。

彼は自分の事をわかってくれているけれど、

全ての事情を知っていてくれているけれど、

それでも他の誰かに包まれて沈んでいる自分を見せたくない。

だから彼のいない場所へ移動する。

「今の自分」に立ち戻れるまで。

 

 

 

 

 

 

「ユギ」

背後から彼の声。

そのまま毛布に包まれて抱きこまれる。

「…………風邪引くよ」

薄着のままでどれくらいいたのだろう。

毛布で包まれてもまだ温かみを感じない。

「入ろう」

黙ったままでいたらそのまま抱き上げられた。

 

 

 

 

 

こんな時に何を言ってあげたらいいのかわからない。

今どれだけ彼と一緒にいようと、

彼の全てを癒してあげる事が出来ないのは知っている。

こんな時に一緒にいる事しか出来ない事も。

どれくらいここにいたのかわからないほど、

僅かに触れた彼の手は心から冷え切ってしまっていて、

その身体は毛布越しに冷たさを伝えてくるほどで。

とにかく部屋につれて帰らなくては、と思った。

 

 

 

 

 

「今の自分」ではないのだからルックの側にいてはいけないと思うのに、

心はルックを必要としていて。

いや本当は「あの人」を必要としているのだろう。

それでも手の届く所にはもういない。

だったらルックは代わり?

違う。

ルックがすきなのは本当。

ただこうして「あの人」へのまるで発作のような感情に襲われている間は、

自分はあの人のものなのだろうと思う。

それをわかっていてルックが甘やかしてくれるから、

そして自分が甘えてしまうから、

だから……

 

 

 

 

 

「今の彼」の瞳に自分が映っていない事を知っている。

彼は確かに自分をすいてくれているのはわかる。

でも今現在の彼は彼の言う「あの人」のもの。

まるで自分は代わりのよう。

彼にとってそうではない事は十分承知しているけれど、

全てを理解しながら彼の側にいる自分は何故だか酷く滑稽だ。

その結論に行き着くたびに思う。

何故彼の言う「あの人」、

そして自分の指すあいつは彼を置いて死んでしまったのかと。

もしそんな事がなかったのならば、

彼は今頃苦しむ事はなかったし、

そして自分も……

 

 

 

 

 

結論は同じ事。

それでも思う。

自分は彼の事がすきなのだと。

代わりだろうが何だろうが彼の事がすきなのだと。

でも言わない。

言ってしまったら「あの人」を裏切ってしまうから。

そして自分が彼に甘えている事が更に罪な事となってしまうから。

 

 

 

 

 

「ルック……」

甘えるように見上げてくる瞳が不安定に揺れていて。

それを包み込めるのがあいつではなく自分だという事に不謹慎な優越感を感じる。

彼にとって代わりだろうが何だろうが自分は彼の事がすきなのだ。

でも言わない。

言ってしまったらあいつを裏切ってしまうから。

そして自分が彼を独占している事が更に罪な事となってしまうから。

 

 

 

さあ悲しい過去は封印して、

幸せな今だけ見つめましょう。

大事なものを見失わないうちに、

「今の自分」をきちんと確立させて。

 

 

 

 

○あとがき

 何が書きたかったんでしょう。夜中だからハイテンションの模様です。つじつま合ってない!すごい!(をい)

 まあつまり複雑だという事ですね。一言で纏めすぎました。                                                      

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