「君って誰の為に戦ってる訳?」
彼はいきなり言い放った。
「え?」
「だから君が誰の為に戦ってるのか聞いてるんだよ」
語気を弱めず淡々と。
「……どうしてそんな事聞くの?ルック」
解らない、といった調子で少年は言った。
「だって君が戦う理由がないからさ」
続けて言う。
「取り敢えずリーダーになりました、って感じ」
「………」
少年は押し黙ってしまった。
ルックに言わせれば、『小さい脳みそで考えをひねりだして』いる彼が見た所、少年は以前の明るさを失っている様だった。
――――姉が、いなくなってから。
それが彼に小さないらだちを与えていた。
何故か良く解らないが彼は――ルックは確かにいらだっていた。
だから先刻は大人気無くもああ言った。
「何で僕じゃ駄目な訳?」
「えっ?何か言った?」
少年に届かない――届けない本音。
一人で……馬鹿みたいだと思う。
正直、彼はナナミに嫉妬していた。
「―――うん、わかった」
その声がルックを現実に引き戻した。
「僕は」
軽く瞬きをして続ける。
「僕は僕の為に戦ってるんだ」
自分に言い聞かせるように。
「仲間の為とか――ジョウイの為じゃない。僕が選んだ道を僕の足で歩いてる…僕の為に戦ってるんだ」
そう言いながら、笑った。
それは少年が見せた久方振りの笑顔だった。
「先生……どうですか」
悪戯っぽく言う少年に気付かれない位に笑って、先生は言った。
「―――ま、及第点だね」
本当は……
「ルックの為、とかが良かった?」
「………」
「あ、図星?」
「そんな訳ないだろッ!」
そんな少年の言動に、自分の影響が否めないルックだった。
少年の髪に光が踊る。