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ムカツク。ほんとにムカツク。 でも絶対にここじゃ泣かない。 キレもしない。 そんなの私じゃないから。 いつものように笑顔でいる。 三上がどれだけ私につらく当たったとしても絶対に泣かないし、笑顔で受け止めてみせると思ってた。 誰かの前で泣くのは、私の中で1番嫌いなことだから。 負の感情を表に出すことくらい嫌いなことだから。 「ふーん。じゃあもういいや」 「は?」 「なんでもない。私先に帰るね、バイバイ」 「おい、ちょっ・・・」 でももうだめだった。 三上にだけわかるくらいの声の大きさで無理矢理話を切って、そこをあとにする。 いつもの帰り道だと誰かに会うかもしれないと思った。 だから女子寮とは反対方向にある公園に私は向かった。 ベンチに座るのもいやで、人のいなくなった公園で立ち尽くして。 どうして三上は私につらく当たるんだろう。 そんなに嫌いなんだろうか。 私が。 もう、泣いてもいいかな・・・。 「おい、 待てよ!」 「っ・・・なに」 後ろからかけられた声にびくりと肩が揺れた。 こんなタイミングで話し掛けないでよ。 私に1人で泣かせてほしいんだから。 「悪かった。さっきはマジで言い過ぎた」 「・・・なにが」 「ほんとに言い過ぎた。悪ィ」 ほんとにタイミングも悪いし・・・。 もう、だめ。 「ほんとに、ムカついてるんだけど」 「あー、っと、すまん」 どんどん涙がこぼれてくる。 止めようと思ってももう勝手に溢れてくる。 このタイミングで謝られたらもう泣くしかないじゃん! おまけに。 私の頭に乗せて、撫でてくるその手。 以外に大きいその手がまた泣きそうにさせる。 いつもの私でいることできないのがとてもくやしくて。 こんなに取り乱してる私を見られたくないのに。 誰かの前で泣きたくないの、わかってよ。 弱いところ見られたくないの、わかってよ。 「ほんと悪かったから。泣かせちまって悪いと思ってる」 なんなの。 つらく当たったり、気を使ったり。 三上が何をしたいのか全然わからない。 「泣かせといて何言ってんの」 恨めしそうな声で呟いてやったら、三上は黙り込んだ。 そうしたら。 「っ、みか・・・」 「・・・・・・に、泣いて欲しかったから」 「は?」 突然、後ろからぎゅっと抱きしめてきて、そう耳元で呟いた。 何言ってるのこの人は。 「・・・・・・矛盾してるんですけど」 「わかってんだよ辻褄合ってねえことくらい。オマエ、いつも何言われても弱音吐かねえだろ。大したことないって 笑って。それが嫌だったんだよ。何1人で気張ってんだよ」 「・・・・・・マネージャーが泣き言言ってたら選手に対して失礼でしょ」 私がみんなの感情を荒立てたくない。 だからいつも笑顔で。 それなのに。 「せめて俺の前でくらい泣き言言っとけよ」 三上の一言にまた瞳が熱くなる。 「ずっと気張ってるオマエ見てるのつらいから。せめて俺の前でそんな作り笑顔すんじゃねーよ。わかんだよそれくらい。 やり方悪かったけど、無理矢理笑って欲しくねぇんだ」 掠れた三上の声が、呟きが私の耳に届いて。 涙が次から次へと溢れて。 「・・・・・・三上のほうがつらそう」 「だから言ってんだろうが。泣きたいときには泣いとけ。怒ってるときにはちゃんと顔に出せ。そっちのほうが俺には つらいんだから」 「・・・・・・」 「の、・・・の思ってること、俺にちゃんと吐き出せ。受け止めてやるから」 感情を出さない君はとてもつらそうで。 |
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