Awkward

 

 

 

憎たらしいほどに不器用だから、

不安に感じていても、

泣き叫びたいほど悲しくても何も言えない。

助けを求められるのは彼しかいないのに。

 

 

 

「どした?」

「………別に」

あなたはいつも周りに気を配っているから、

ほんの僅かな変化にも敏感で。

「んー……」

まるで納得したような返事をして。

それが私の淋しさを煽っている事をあなたは知らない。

 

 

 

「俺何か飲むけど、お前コーヒー?紅茶?」

「……ダージリン」

「ん」

そう言ってソファーから立ち上がって、

私の視界の中から消えてしまう。

行き先がわかっていてもこういう時は淋しい。

読んでいる振りをしている雑誌から目を上げて、

彼がいる台所の方を見る。

その背中を見つめれば淋しさは増して、

かと言って……

 

自分の中の彼の占める割合に驚いた。

 

彼が振り返る気配がして、

慌てて雑誌のページを繰る。

足音がすぐ側で止まり、

邪魔にならない程度にマグカップが差し出されて。

「ほら」

「…………ありがと」

 

 

ふんわりと、

しっかりした中にも品のある香りがカップから立ち上る。

紅茶は淹れた人間を映し出すというけれど、

それは本当かもしれない。

 

 

 

私はずっと独りだと思ってた。

甘えられないって、

甘えちゃいけないんだって。

親はいなかったし、

唯一側にいてくれた姉さんも滅多に会えなかったから。

だから淋しくても甘え方を知らないの。

どうやって甘えたらいいの?

この紅茶のように優しいあなたに包まれていたいのに。

それでも私は何も言えないのに。

 

「どした?」

 

優しい笑顔をこちらに向けて。

その優しい声に、

その優しい笑顔に、

どれだけ私が泣きそうになっているのかもあなたは知らない。

 

「………何でもないわ」

 

我ながら突っ張って可愛げがないわ。

それでもどうしたらいいかわからないの。

ううん、

多分それ以上に甘えた事がないから、

自分が甘えて拒絶されるのがとても恐いの。

 

「志保」

まるで全てを理解してくれているような瞳。

 

「………ほら」

カップを取り上げられたかと思うと、

彼の腕の中に抱き込まれた。

 

「……しんい…ち……」

 

 

あなたは何も言わなくてもわかってくれて。

そのさりげない優しさにどれだけ救われているかわからない。

ねえあなただけよ?

こういう私をわかってくれるのも、

私が甘えたいと願うのも、

私が素直に泣く事ができるのも。

 

ねえお願い。

もっと素直になれるように努力するから、

だからこのままでいさせて。

不器用な私の、

唯一の人のままでいて。

 

 

 

口には出せない私の最大の甘えをどうか聞き入れて。

 

 

 

○あとがき

  わけわかりません。何なんでしょう。謎MAXです。初新×志保……哀ちゃんはすきなのに、なかなか難しいですね。

  とてつもなく遅くなっちゃったけれど、返品可ですのでどうぞお納め下さい。                                          

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