Romantic Blue[1]
夕樹小羽






彼女ができたのはつい2週間前のこと。

紅葉が綺麗な頃で、落葉が辺り一面を紅く染めていた。








何度彼女に思いを告げたか知れない。

初めて彼女に思いを告げた時

ひどく困ったような顔をしてうつむくから

何か悪いことをしたような気分になってしまって

「冗談だよ。」なんて言ったのが間違いだったのかもしれない。

彼女はほっとしたように笑って言葉を返してくれたけど

彼女の中に俺が軽い男であると言うイメージを植え付けてしまったのは疑いようのな いことだった。

その後幾度となく好きだと言ってみたけれど

なるべく普段と変わらないように意識していたのが裏目に出たみたいで

冗談だとしか受け取らなかったようだ。








「なぁ。葛葉。」


「なぁに?」


呼びかけるといつも嬉しそうに返事をするから

もしかしたら彼女も俺のことを好いていてくれるのかと思って


「俺、お前のこと好きだぜ。」


そう言うと彼女は一瞬動きを止めて

何か考え込んでいるような顔をすると


「…ありがと。」


これだけならいいのに、彼女は続けて


「でも冗談なんか言ってないで、さっさと本命見つければ?」


なんて痛いことを言ってくれる。

その時の顔に嫌がっているような様子はないから

俺のことを嫌っていることはないと思うけれど

こんな時、彼女の素直さが残酷に突き刺さる。

そんなところを好きになったのに

今はそれが一番の障害となっているなんて。








彼女はクラスの中でも目立つ方ではなくて

同じクラスになって3ヶ月も経つというのに話したこともなかった。

それでも特に不都合が生じるわけでもなかったし

気にもとめなかった。

もしあの時、俺が気まぐれをおこしていなければ

きっといつまでも話す機会などなかっただろう。








週末の部活の帰り

午前中降っていた雨は

午後になると嘘のように止んで晴れだしたから

傘が必要だった訳じゃないが

傘を忘れてきたことに気付いて

いつもならそのまま帰ってしまうところだけれど

何故かその日だけは忘れ物を取りに教室へと向かった。



太陽は沈みかけて

窓から見える辺りの景色も、

教室の中も、紅く染まっていた。



廊下には、ぽつぽつと置き忘れられた傘が残っている。

もちろんその中には俺の傘も混ざっていて

自分の傘を手にとって帰ろうとしたとき

いつもなら閉まっているはずの美術室の扉から

オレンジ色の光が漏れているのに気付いた。

誰かいるのだろうかと

ふと覗いたそこで、一人静かに涙を流す彼女を見た。

普段、悩みなんてなさそうに明るく振るまっているのに。

電気もつけず、西日に照らされて頬をぬらす彼女は

ひどく儚げに見えた。

少しでも触れたら崩れてしまいそうなほど。





心臓が、高鳴るのを感じた。





俺はその場に立ち尽くしたまま動けなかった。

描きかけの絵に筆をはしらせながら

時々涙を拭う仕草を見ると心が痛くて

彼女に声を掛けることも

彼女から目をそらすことも、出来なかった。








翌週、彼女のことが気になって見ていたけれど

そんな素振りは全然見せなくて

あれは何かの間違いだったのかもしれないと思った事も何度かある。

それでも時折見せる悲しげな表情が

楽しそうにしていても

ほんの一瞬、彼女の顔に映り込む影が

それを間違いだとは思わせてはくれなかった。



彼女のそういう表情に気付く度に

心臓の鼓動が早くなるのを感じた。





その後、何度も話しかけようとはしたけど

話しかけるきっかけすらなかなかつかめなくて。

あの日の話題は避けた方がいいだろうと思うと

何を話していいのかがわからなくて

結局、俺は声を掛けることもできなくて

彼女を目で追うことしかできなかった。

授業中、眠たそうな目をこすりながらも必死にノートを取る姿とか

結局眠ってしまって先生に怒られているところとか

友達と冗談を言い合って笑う顔とか

とにかく、彼女が気になってしょうがなかった。








それでも時間は容赦なく流れて

彼女とは遂に一言も話さぬまま夏休みに突入してしまった。

彼女の姿を見れなくなるのは残念だったが

やはり休暇というのは嬉しいモノで

課題もろくに終わっていないと言うのに

友人からの連絡があればそっちを優先させていた。

それでもお盆に入ると友人達の多くが帰省してしまって

両親の実家が近くにある俺は暇になった。








課題も残っていたし、

休み明け直前に急いでやるのは以前一度やってから懲りていたし

家にいても何となく勉強する気分になれないから


「何で高校生にもなって読書感想文なんてかったるいモノやらなきゃなんねんだ?」


なんて文句を言いながらも

とりあえず、図書館に向かった。





久しぶりに来た図書館は昔の面影がないほどに改装されていて

入り口の場所も変わっていた。

白基調に塗り替えられた壁は日差しが反射して眩しかった。

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