夏の日

夏の日
弔いの人々
水面に波打つ過去が今を包む
瞳の中で
脚が灼かれ
疲れが溶けて
まがりくねった理解が滞る
重なりあった思い出は語られ
共有できない経験は死ぬまで黙示する

列は途絶えない
快速電車を乗り継ぐように
思い出をたどることもない
無所属の存在場所が
するべきことをむなしくさせる
死そのものが
生き物みたいに
あまりにも
気まぐれすぎる


1992.7.21



  夏の朝

夏の首を絞めて
ぐったりしたところを
崖下に蹴落とした

夏の朝
そんな夢を見た
すべての苦しさを
すべて夏のせいにした
夏に葬られる前に
夏を葬った


1994.8.16



   未成年

風の音がきみの鼓動が
このまま聞こえなくなるのなら
ぼくははてしなく悔やむだろう

きみを手に入れるためにきみのおじいさんを殺したことを
嵐など吹かぬ季節に学校を混乱させたことを

書庫の中できみが好きだと初めて告白したときも
夏休み最後の日に展望台の上できみのおじいさんを殺すしかないと結論たときも
うなずくだけでいいんだということすらためらったことですら
無意味になってしまうから
太陽の下で抱き合う勇気も泡と消えてしまうから

体をほてらす時間が二度と来ないなら
きみという闇に優しさはいらない
朝の来ない夜があるとしたら
きみの血を拭った感覚が鮮やかになりすぎる
造花にさわっているのにいやなにおいがしたら
ふれられぬほどの美しさに破壊され
脳だけが溶けてしまう

このくらやみの流れがきみに見えるなら
風の音で歌ってほしい
勇気のない旅人がどこで立ち止まっているのかを
ふれられぬ喜びがあることを知ったぼくと
だかれる悲しみを捨てようとしているきみが
なぜ出会ってしまったのか

ぼくの耳が聞こえなくなる前に


1995.7.18

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  残照

夏の陽が沈もうとしている
夏の日がまた一つ終わる

残照

波がそう響く


1994.8.1


  山本耀司に捧ぐ

おれがいないのは つかのま おまえといたということ
生きていたのはそのときだけさ
雲に隠れる月のように そぶりひとつみせなかったけど
もう またなくていい あきらめてくれ
誰かの悲しみにしか思わない
機械ほどの悲しみさえも いまのおれには残せない

「さよなら」と聞こえるか おれのつぶやきが
望みがあるのならどこにも行きはしない
二人の時 顔をそむけながら愛していた
色も香りもない花のような
つかむものがない 渦の中で
おれはおまえに掌を広げてみせた

もう またなくていい あきらめてくれ
誰かの悲しみにしか思わない
機械ほどの悲しみさえも いまのおれには残せない

わかってほしい
この存在に証明は残せない
おれはおまえを語れない

おれの顔 おれの心 マスクのようにかぶるおまえよ

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