〜和久と桜子の辰実争奪戦〜その3
「はぁ、よーやっと終ったで」
夜も10時を過ぎた頃。自営業である自宅の仕事の手伝いを終えた和久が辰実の家
の前に着く。
「んぉ?また鍵が開いとるやないか。まさか俺が出てってからずっと開きっぱなしな
んか?」
ドアを開けると目の前に妙に肌のツヤツヤした桜子が立っていた。
「あら和久、やっと帰って来たのね」
「なんや、帰るんか?」
「ええ、お邪魔しちゃ悪いしね」
そう言った桜子の顔はとても満足そうだった。ミュールを履くとすいっと和久の脇
を抜け外に出る。
「それじゃ和久あとよろしく〜」
「お、おう」
ひらひらと手を振ってさっさと行ってしまった桜子に面食らいながらも和久が家に
上がり部屋のドアを開ける。
「むわっ!なんやこの甘ったるい匂いは!?」
ドアを開けた瞬間香水とも芳香剤なんとも言えない独特の甘い香が鼻を刺激する。
「た、辰実!?」
甘い香に戸惑いながらも部屋に入るとベットの上に全裸で横たわっている辰実を見
付け慌ててかけよる。熱く火照り汗ばんだ肌が酷く艶かしい。
「辰実?おい辰実!?」
ゆさゆさと身体を揺すると辰実が薄っすらと目を開ける。
「ふや?かずひしゃ?」
完全にろれつが回っていない。テーブルの上を見ると空になった例のジュースの缶
が3本ほど転がっている。どうやら酔いが覚めないように桜子に飲まされていたよ
うだ。
「かずひしゃ〜」
「お、おいおい」
よろよろと起き上がるとぐにゃ〜っと和久に身体を預けて抱き付いてくる。
「まいったなぁ、ぐでんぐでんやないか」
「ふにゃ〜・・・」
ぽんぽんと頭を撫でながら部屋を観察する。何故かシーツが新品のものと取り替え
られていて部屋の隅にはタオルで包まれた謎の物体が置かれていた。
「・・・なんがあったんかあんま考えたないなぁ」
すりすりと頬を寄せてくる辰実を見ながら困り顔になる。
「とにかく裸のままっちゅーのは・・・・・・そうや」
ちょっとした悪戯を思い付くと辰実をベットに座らせて箪笥を開く。その中から辰
実が男の頃の学校指定のカッターシャツを取り出し辰実に着せてみる。
「ぐはっ・・・こ、これは・・・・・・」
「?」
あどけない表情でぶかぶかのシャツを着た辰実の姿に和久大ダメージ。
「あ、あかん・・・これはホンマあかん」
フェロモン全開の辰実を直視できずに和久が顔を反らす。それを見ていた辰実が心
配そうに和久の顔を覗き込む。
「ど〜したのら?かずひしゃ?」
「ぶはっ」
潤んだ目での上目使いとはだけたシャツの間から見える胸の谷間に和久完全敗北。
「た、辰実ぃ!」
「うひゃぁ」
血走った目で乱暴に辰実を押し倒す和久。完全にキレてしまったようだ。
「かずひしゃ、ちょっとまつら」
「な、なんや?」
荒い息をついているが辛うじて踏み止まる和久。意外に理性的である。そんないっ
ぱいいっぱいの和久をよそに辰実はもぞもぞと起き上がると和久の股間に顔を埋める。
「辰実お前・・・」
「きょうはわらしかずひしゃをきもちよくしてあげるら」
「ぬぉっ」
辰実は膨張しきった和久の男性自身を取り出すと躊躇いなく口に含む。温かくぬる
っとした咥内の感覚に和久がうめく。
「んっ、んっ・・・じゅぷっ・・・」
「う・・・あ・・・ぐっ」
舌が亀頭に絡み上下に動く口元から淫靡な音が漏れる。急速に襲ってくる射精感に
歯を食いしばって耐える。
「んんっ・・・じゅっ・・・クチュ」
「アカン辰実・・・こんなんすぐ出てしまう・・・」
クチュッ、クチュッと辰実の舌が鳴る。刷毛のように揺らめく舌腹がカリのくびれ
を這い回り、裏の縫い目を執拗になぶる。
「うぅっ!アカン出るっ!」
「んんっ!」
ぐぐっと和久自身がさらに膨張したかと思うとドクドクと大量の精子が辰実の喉を
打つ。辰実は苦しそうにむせたがこくこくと喉を鳴らして全て飲み込んでしまった。
「んはっ、けほけほっ。へんなあじ〜」
「辰実・・・」
「んきゃっ」
和久は辰実の事がどうしようもなく愛しくなりその身体をきつく抱きしめる。
「かずひしゃにぎゅ〜ってされるとすごくあんしんする」
辰実も和久の胴に腕を回すとしっかりと抱き付きすりすりと頬を寄せる。
「ホンマになんでお前は酒が入るとそないに可愛くなってまうんや」
辰実はこの身体になってからアルコールが入ると『女』の部分が強く出てくるよ
うだ。普段の『男』としての辰実は完全に引っ込んでしまっている。
「んしょ」
「んぉ?どうする気や辰実?」
しばらく抱き着いていた辰実はそのまま体重を預けるように和久とベットに倒れる。
和久の上に乗っかる形。和久が横になりながら辰実を見ていると辰実は起き上がり
和久に跨る。
「かずひしゃはじっとしてるの」
「お、おい・・・」
すっと腰を上げると和久の男性自身を手に持つとゆっくりと自分の秘唇へと導いて
いく。
「んっ・・・んん」
「うぁ・・・た、辰実・・・」
辰実がゆっくりと腰を落す。全てが埋まるまで腰を落すと辰実の口から切ない吐息
が漏れる。そしてまたゆっくりと腰を上げて行く。
「んくっ・・・ふぅ・・・・・・んぁっ」
ずっ・・・ずっ・・・っと腰が上下に動く。じれったいくらいのスピード。これが
辰実にとって丁度良いペースなのかもしれない。和久もじょじょに、だが確実に高ま
っていく。和久はふと思いつき辰実が腰を落すタイミングでずんっと自分の腰を勢い
良く突き上げる。
「んぁっ!?か、かずひしゃ・・・うごいちゃ・・・ひぁっ・・・だめぇ・・・
」
かまわず腰をそのまま数度突き上げる。辰実は和久の胸に手をつき切なげに眉をひ
そめる。
「んっ、んっ、んっ、あっ、あっ、ふあぁっ!」
「ごっつええ眺めや」
腰を動かしながら辰実のシャツの前のボタンを外し胸をこねる。
「んくっ・・・あっ・・・うぅん」
辰実も和久の動きに合わせるように腰をくねらせる。身体を支えている腕ががくが
くと揺れる。和久は胸をこねている手に力を入れると乳首をきゅっと摘む。
「ひぅっ!・・・んっ、あっ・・・こわれ・・・ちゃうよぉ」
「俺も・・・そろそろや。一緒に・・・いくで」
「ひっ、あっ、んぁっ、あぁっ!」
和久は辰実の腰を掴むと一層激しく腰を突き上げる。辰実はついに腕の力が抜け身
体を和久に預ける。
「かずひしゃ・・・んんっ・・・なかに・・・ふあぁっ!」
「ううっ!」
和久がビクビクと揺れ熱い固まりが幾度となく放たれ辰実の膣内を満たす。
「あ・・・はぁっ・・・んっ・・・あついのいっぱいでてる・・・」
こぷっと収まり切らなかった精液が二人の結合部から溢れ出す。
「かずひしゃ・・・だいすき」
「ああ、俺もや」
二人は見詰め合いニッコリと微笑んだ。
―朝。
「ぅ・・・・・・ん」
窓から差し込んだ朝日が辰実の顔を照らす。辰実の意識がゆっくりと覚醒していく。
「うぁ・・・頭痛い・・・」
頭がずきずきと痛み視界がぼやける。身体を起そうとするが力が上手く入らない。
「いたたた・・・腰が痛い」
布団の中。辰実と和久は抱き合うように横になっていた。
「・・・・・・また・・・記憶がない」
和久の安らかな寝顔を見ながらため息を一つ。二人はあれから明け方近くまで頑張
っていた。桜子と和久の連戦。身体中が痛いのも無理はない。
「うぅ、あそこがヒリヒリする」
もぞもぞと布団の中で身体を動かす。
「はぁ・・・結局どうなったんだろうな」
辰実は諦めたのか和久の腕に頭を預けるともう一度眠りについた。
数日後、辰実の部屋。
「ほれ辰実、はよせんと置いてくで」
「待てって―おっとっと」
けんけんと片足で跳ねながら靴を履くと玄関から飛び出る。今日は辰実と和久
二人だけで遊びにいく、初デートの日。今までは何だかんだで何所に行くにも辰実、
和久、桜子、ノリのメンバーで集まっていたため和久は辰実から誘われたときは
『デートの誘いやな!?』と素直に喜んでいたがそんなつもりは全然無かった辰実
は例のごとく顔を真っ赤にして否定した。
そんなこんなで桜子とノリにばれないようにと和久が極秘で計画を練り上げ、街
へ出てゲーセン、古着屋、ゲーム屋めぐりなどなど非常に色気のないデートコース
が完成した。
「はよせんとバスが行ってまうやないか」
「思ってたより仕度が手間取ったんだよぅ」
「ええから走れ〜」
どたどたと走る二人を見つめる謎の影―。
「ちょ〜〜〜っとまった〜〜!」
「しもた、桜子に見つかってもた!」
「たっつみちゃぁ〜〜〜ん!」
「うわぁっ!やっぱり抱き付くのか〜!」
桜子が抱き付きその勢いで二人が倒れる。桜子はもつれ合ったまま和久の事を
ニヤっと笑いながら見る。
「おほほほほ、私を出し抜こうなんて100年早いわ」
「はぁ・・・絶対バレへんと思ったんやけどなぁ」
がっくりと肩を落す和久。
「おい〜っす・・・」
そしてげっそりとやつれたノリも後から出てくる。
「ノリ・・・?エライ痩せたな。何があったんや」
ノリの身体がびくっと跳ねその顔に恐怖が浮かぶ。
「そ、それだけは聞かんでくれ・・・」
「な、何があったんや・・・」
結局、4人は相変わらずだった。多分、これからもずっと・・・。
「桜子おも〜〜〜〜い!」
「あぁ〜〜ん!辰実ちゃぁ〜ん!」
「こら〜!桜子離れんかい!」
「・・・納得いかねぇ」
4人の夏休みはまだまだ続く。もうちょっとだけ、続く。
―辰実君の夏休み END―