アリスの娘たち〜  サァラ(2)

「ボクは、お姉ちゃんが好きなんだ!!」
部屋に戻るなり、サァラは姉にそう叫んだ。
「……それで、どうしたいの?」
「どうって……。ボク、どうしていいのか、わからないんだ」
「私たち、姉妹にならない方が良かったのかしらね。」
「そんな、ボクはお姉ちゃんがいるから……」
「あなたが、本当は"アリスの娘"になりたくなかったのは、知っていたわ。
あなたが私のことを……その、単なる好きじゃないってことも。
私たち、生まれたときからずっと一緒にいるんですものね」
「じゃあ、どうして姉妹にならなかった方が良いなんていうの??
ボクはお姉ちゃんがいないと、ダメなんだよ」
サァラはもう自分の感情があふれ出るのを、止められなくなっていた。
しかし瞳にいっぱいの涙をためた妹の懇願であっても、サヤカは姉として
説き伏せなくてはならないことが、あると思っていた。

「サァラ、なぜこの船には、男と女がいるのだと思う? 
どうして、"アリスの娘"以外の誰もが、何度もパートナーを変えると思う?」
「そんなの……、わからないよ! ボクにはお姉ちゃんだけだよ。
他の誰もいらない。お姉ちゃんさえいれば、ボクは……」
「出かけてくるわ。」
「出かけるってどこへ? 戻ってくるよね?」
「さあね」
「それなら、ボクも連れてって!!」
「お留守番していなさい、サァラ」
「まってよ、置いていかないでよ!一人にしないで!」
泣いてすがろうとするサァラを振り切り、サヤカは部屋を出ていってしまった。
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「……というわけなんです」
サヤカは、娘たちの中で最年長のハルカに相談するために、部屋を訪ねていた。
「サァラちゃんがねぇ。確かに他の人への態度と比べると、あなたへのそれは
普通じゃないと思っていたけど……」
「サァラは姉としてじゃなくて、恋人として私を求めているみたいなんです。
自分ではその気持ちを抑えていたつもりなんでしょうけど、編集長にも言われ
ていましたから」
「ま、あの人はね」
「ハルカお姉さま、サァラさんはどうして、サヤカ姉さまが好きではいけないの?」
「ヒロミ、大人の話に割り込んではダメよ」
「ボク、もう子供じゃないもん」
「はいはい。それは憧れのアキラ君に"オトナ"にしてもらったらの話ね」
「ヒロミ……ちゃん、だっけ? あなたは好きな男の人がいるの?」
「え?ええ。好きって"大切"ってことでしょ?」
「じゃ、ハルカお姉さまは?」
「もちろん大好き!」
「ふふ、いい子ね、ヒロミちゃんは。サァラにもそんな風に育って欲しかった。
私はダメな姉だわ」
サヤカはヒロミの頭を優しく撫でたが、その瞳はヒロミではなく、まだ性転換
したばかり頃の、サァラの面影を映していた。
「あなたはあなたなりに、役割を果たしているわ。サァラは……、そうね、
まだ成長の途中なのよ。だから、あなたがしっかりと妹を導いてあげなきゃ」
「サァラは、自分でもどうしていいのかわからない、って言ってました。
でも、私にもどうしていいのかわからないんです」
「それで、ここへきたの?」
「ええ。本当は、サァラのことをお願いしたいと、思っていたのですが……」
「うーん、そうしてあげてもいいんだけど、ヒロミはまだ手がかかる時期だし、
伝助先生のお手伝いもあるから、2人も面倒見切れないしねぇ……。シルヴィ
も途中でレイカに預けちゃったから、このコは最後まで面倒見てあげたいと
思ってるのよ」
そういって、ハルカはヒロミの手をとってひき寄せた。
ヒロミはくすぐったそうにしながら、ハルカにじゃれつく。
「こんな風に、スキンシップでもしてみたら?サァラがまだ成長できてないと思う
のなら、もう一度最初から始めてみるのもいいんじゃないかしら?」
「最初から?」
「そう、最初から。あなただって、最初はサァラに教えてあげたんでしょ?
どうしてもらうと気持ちいいのか。どうしてもらうと、人を愛したくなるか」
「それは……」
ハルカの言わんとしていることを、理解したサヤカは顔を赤らめる。
「その様子じゃ、あなたサァラにあまりかまってあげなかったんじゃないの?
だからサァラは行き場を失って、気持ちを自分の中に押し込めちゃったんじゃ
ないかしら?」
「でも、私たちは女同士で……」
「そうね。でも、したいときはすればいいんじゃないかしら」
「お姉さま!ということは……その、ヒロミちゃんにも毎日?」
「やぁねぇ、子供相手にただれた日常送っている、みたいな言い方しないで。
こうしてじゃれあってるだけでも満足するもんでしょ? 
その……、そんなに過激なことをしなくてもね」
ハルカはちょっと頬を赤くしながら、じゃれついてくるヒロミの前髪をかき上げて、
額にちゅっと軽くキスをする。お返しにという風に今度はヒロミがハルカの頬に
キスをする。
(それって、十分過激な気もするんだけど……)
サヤカは同性同士の性愛には、あまり免疫が無かった。
「そうね、相手がサァラちゃんじゃ、キスだけってワケにも行かないだろうし、
いいモノ貸したげるわ。ヒロミはココに座っていなさいね」
そういって、ハルカは部屋の入り口近くのワードローブから箱を取り出して、
サヤカに手渡した。
「何ですか?これは」
「うーん。まぁ開けて御覧なさい」
サヤカがふたを開けて中を見ると、そこには見覚えのある形をした、細長い
"物体"が入っていた。
「ハ、ハルカ姉さま。こ…、ここ、これはいったい……」
「えーと、その。見ての通り。どう使うかはわかるわね?それで、ここのところが
スイッチになっていて、強さも調節できるの。ほら」
ハルカがその"物体"の底にあるスイッチを入れると、鈍い音を立てて振動しな
がら、くねくねと動き始めた。
「う、動くんですか??気、気持ち悪いです」
「形はね。でも確実にイカせられるわよ」
「悪魔だわ……。まだいたいけなヒロミちゃんにこんなモノを……」
「まだ処女のあのコにそんな事しないわよ! レイカが持っていたのを取り上げ
たの。どっから見つけてきたのか知らないけど、それで私を……。いえ、そんな
ことはどうでもいいわ。電源はここにバッテリーを入れるようになってるの。
動かなくなったらチャージしてね」
サヤカはレイカとハルカが、どこでなにをしていたかを想像すると頭が痛くなった。
「…その、娘同士でって、結構あるんですか?レイカお姉さまとは……」
「ん?どうかしらね。私はレイカとしか……、彼女は中身は男のままね。
レイラとは、どんなことしていたのかは知らないけど」
「知らなかった……。お姉さま方がそんなことしてたなんて……」
「ああもう、今は自分たちのことを心配しなさい。サァラちゃんも、もしかしたら、
まだ恋愛感情は男のままで、そういう風にあなたを見てるのかもしれないわ。
だから、女としての悦びってのを教えてあげたら?」
にっこり笑ったハルカの顔は、サヤカには悪魔の微笑みのように思えた。

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