京真月人1


朝起きたら、女の子になってました。
「って言えるはずない!!!」
思わずベットの上で叫んでいるのは京真月人(きょうませんと)ぴちぴち(?)の17歳の男子高校生だった。
昨日までは。
今は少し内ハネの癖のある黒髪、雪のように白い肌、大きい瞳、桜色の小さな唇、どれをとってもかなりの美少女である。
「月人君。朝から騒いでいたら近所迷惑でしょう?」
と横で微笑んでいるのは月人の母、弥生である。
外見年齢17〜22歳程でよく月人と並ぶと姉と間違えられるが月人の実の母親である。
「朝っぱらからうっせーな・・・。」
とのコメントは父、通(とおり)。
弥生と並ぶと月人から見てもい美男美女な図にはなるが、ヤ●ザのような非道な性格である。
ちなみに父親も実の父である。
「何で母さんと父さんはそんなにマイペースなんだよ・・・。息子が娘になっちゃったんだぞー?」
朝から泣きたい気分ではあったのだが、そんな近所迷惑なことをしては父親の鉄拳が降ってくるかもしれないので泣き叫ぶことはしない。
しかしどうやって現実を受け入れれば良いのか分からない。
「まぁ・・・よくあることだし・・・ねぇ?」
「だな。」
「・・・よくあることって何?」
性転換をしてしまって動揺を隠し切れない自分に対して、両親は普通ー。
何事も無かったかのような態度である。父親に至っては暢気に煙草を吹かしている。
「実はね・・・せんちゃんにはずっと黙っていたんだけど・・・。私の家、京真家ではたま〜に性転換しちゃう人がいるのよ〜。通さんは婿だから私の家ね。」
あ、その醤油とって〜。というかのようにサラリと物凄いことを言われた気がする。
一瞬母親を疑ったが、それ以外に女になってしまった理由はない。
おまけに父親が婿だというのも初めて知った。
「何故俺が?どうして?何か悪いことした?天罰?」
「ん〜・・・詳しく説明すると・・・」


京真家という家は昔は此処らへんの地方の大名に仕えていた一族らしく、昔から女性が巫女として大名に仕えていたらしい。
ところが一時期女性が生まれなかったらしく、一族は衰えていった・・・のだが、
当時の京真家の党首の男性が神に仕える巫女だったらもしかしたら・・・と、違う一族の巫女を党首の正妻として向かえたそうな。
2人は子供を授かったのだがそれがまたもや男で、巫女は責任を感じて懸命に神に祈ったそうな。
するとまだ幼い子供の体に異変が起こり、先日まで男の子だった子供は何故か女の子になってしまったそうな。
最初は誰もが疑ったのだが、京真家としての力量は党首である父親に勝るほどであったそうな。
それ以来、男ばかりが生まれる京真家の中では稀に男の子が女の子になってしまう・・・らしい。


「そんな漫画みたいな話が信用できないよー・・・」
「そうよね。私も最初は信じなかったもの〜・・・」
男の子がある日突然、女の子になっちゃいました―☆なんてことを信じられるはずがない。
夢なら覚めてくれ、と頬をひっぱってみても痛みしか残らない。
「・・・・・今の話では男が女に〜でしょう?」
ドアの方から声がした。其処には月人の双子の姉、櫂(かい)がいた。
しかし月人と同様、様子がおかしい。
母親似のどちらかというと可愛らしい月人とは逆に父親似のどちらかというと綺麗、美人という言葉が当てはまる櫂は何処かがおかしかった。
「今までに女から男へ〜っていうパタ―ンはあったの?」
「もしかしてお姉ちゃんも?」
「大当たり。私の場合、元々女だったから男になっちゃったんだけど。」
昨日まで存在した女性特有の豊かな乳房は平らな筋肉だけがついた胸に、ソプラノの甲高い声は低いバスの声に。
母親と対して変わらなかった背丈は父親ほどに。
「お姉ちゃん、ずいぶんとカッコ良くなったね。」
「月人はずいぶんと可愛くなったわね。襲って良い?」
京真櫂は女から男へ、京真月人は男から女へ。
これからどうなることやら・・・。


本日は夏休み中でもなく、冬休み中でもなく、休日でもなく、普通の平日。
月人と櫂が高校生ならば学校に行かなければならない。
「学校にどうやって説明をするの?」
性別が逆になってしまった2人が友人達に『今日から女に(男に)なったんだよー』と言える筈も無い。
言えたとしても恐らく簡単には信じてもらえないだろう。
「まぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんとかなりますよ。」
沈黙がやけに長かったが、母親は他人事のように結論を出す。(他人事だが)
「とりあえずご飯だから着替えたらすぐに来てね。」
さっさと居間へと戻ってしまう様子を見ると、子供のことよりも朝ご飯の方が大事らしい。
後に続くように父親もさっさと部屋を出て行く。
取り残された月人と櫂はその場に立ち尽くしたままである。
「・・・・・ねぇ。制服ってどうするの?」
「制服?」
「月人が今の女のまま学ラン着ても絶対に違和感があるし、私もこの状態で制服を着るのは辛いものがあるよ。」
今の状態のまま月人が制服の学ランを着れば以前よりも小さくなっている月人にとって制服はサイズが合わないであろう。
反対に背が高くなって完璧に男になった櫂が女子の制服を着ても変な人に見られるだけであろう。
「お、おれに・・・スカートを穿けと・・・?」
女子の制服といえば、スカート。
女子の制服のスカートは水色を基調としたチェックのスカートである。
男の目から見れば可愛らしいスカートに柔らかい曲線を描く脚、と見る分には良い。
全然構わない。
しかし、穿くとなれば話は別である。
「嫌だ。無理。死ぬ。」
怯えるような目で櫂を睨みながらも必死な様子は可愛くてしょうがないのだが。
「諦めなさい。私が着させてあげるv」
何故か持っている制服のスカートを片手にジリジリと追い詰めるかのように櫂は月人に近寄っていく。
その表情はとても楽しそうである。
「えっ・・・えっ・・・ええええええっっっ!!!!!!!!」
家中に月人の悲鳴が響き渡った。




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