AVぷーさんお尻ぺんぺん
ぬるりと抜き取られたペニスに、精子が糸を引いていた。泡だって亀頭にこびりつくほど滑ったそれは、激しい突き上げを物語っているようだ。ギルベルトもまたはくはくと忙しなく口を開け、息を吸おうと必死で。カリに掻き出され入り口に留まっていた精子の一塊が、ぐぽりと溢れ出る。
ギルベルトの体はまだ震え、うつ伏せのまま不規則にシーツを掻く。カリカリと、出鱈目に。
イヴァンはその様子を、背後から見ていた。
いまだ胸は大きく膨らみ、息が足りていないよう。けれど苦しいだけではなくて、はくはくと動く口からは快楽をやり過ごすような息遣いも感じられて。白い肌は、何処もかしこもほんのりと朱に色付いている。投げ出された枕に額を押し付けて、さわりと前髪を散らすギルベルトが正常に戻るには、もう少し時間がかかりそうだった。
「いい子」
それでも秘めやかに声をかけ、さわりと頭を撫でれば閉じた目を彩る睫が震える。くぅと小さな声を漏らし、それが満足げな子猫のようで。
いい子、いい子
何度も、撫でたら撫でただけ、くぅくぅと嬉しげに喉を鳴らす子猫のよう。
「可愛いね、ギル君」
言えば、少しだけ不服げに鼻を鳴られるけれど。そんなものは抵抗といえる抵抗でもない。シーツを掻く指が、肩の横に置かれたイヴァンの手に爪を立てたとしても、可愛いじゃれあいとしか思わない。
「痛いよ」
だから声に笑みを乗せたまま、腹を打ち付けられほんのり色付いた尻に手を上げても、それはイヴァンにとってじゃれあいの一環だった。
咎めるように、形のいい剥き出しの尻に、パチンと音が鳴るくらい。
「ひんっ?!」
そんな声を上げられるとは、思ってもいなかったこと。叩かれた途端、ギルベルトが体を小さく小さくして、ぎゅうとシーツを掴むなんて予想外。
「ギル君?」
少しだけ驚いて、声をかけてもすぐには言葉が出ないのだろう。ふるふると肩を揺らし、ぎゅうと目を閉じて。何かに堪えているかのよう、それがまたとても悩ましげな様相で。
「…感じちゃったの?」
「だっ!!」
また声に笑みを乗せ、聞けばばちりと開いた目が、きっと睨みつけてきた。ギルベルトにしては珍しく、不機嫌を顔に乗せ。
「お前、ずっと!!ッ!!」
かさかさに枯れた声が少しだけ痛ましい。そんな喉で声を張り上げるほど、伝えたかった言葉が突然遮断された。ギルベルトが急に口を閉じたから。閉じて瞬時に、視線を外したから。
駄目だよギル君
喉の奥がクツクツと鳴る。イヴァンはそれを、自覚していた。
駄目だよギル君、とても可愛いから
少しずつ、体をずらしてイヴァンから遠ざかろうとする肩を、強く掴む。ひっと上がった小さな悲鳴など聞こえない。
「ねえ、どうしたの?」
イヴァンは自分が、滴り落ちそうなほど甘ったるい声を出している自覚もあった。猫撫で声。毛を逆立てるような声。
肩を掴んで上半身を引き寄せて、抵抗を見せた両腕を片手でベッドに押し付けて。俯いたままのギルベルトのうなじに歯を立てる。途端、喉を反らせ顔を上げたギルベルトはただ、困惑げに眉を寄せていた。
「ゃ、だっ」
収まりかけていた体の震えが、まだ途切れていない。それどころか、またぶり返したようにすら思える。
やだ、やだ
ふるりと首を振り、困ったように。小さく何度も繰り返すギルベルトが持つそれは、嫌悪でも怒りでもない。困惑と、羞恥。
「…何か思い出しちゃったの?」
もう大体予想はついていたけれど、あえて聞けばまた首を振られて。
クツクツと喉が鳴る、イヴァンの喉が鳴る。
「ゃ…あッ!!」
ぱしん
もう一度、すぐに三度目。多少の痺れだけで、痛すぎないように。叩くとそのたびギルベルトの背がしなり、吐息が漏れた。
まるでセックスをしているよう。
「思い出しちゃうの?僕のが、中にいる感触」
手元において、セックスをするようになってから。ずっと中出しをしているせいで、ギルベルトの体内にはまだイヴァンの精子がたっぷりと残っている。もうすぐ掻き出されるはずだったそれ。さっきまで数度に分けて吐き出したその行為を、ギルベルトはきっと思い出している。
尻を高く上げさせられて、イヴァンの腹がぱしんと当る感触。鳴らされ快楽を拾うように躾けられたアナルが、くぽりと口を開けた。
「ぅあ、だっ!っん!!なん、おくきちゃッ…!」
ぱしんと叩かれるだけで、精子が逆流する事はないだろう。それなのにギルベルトは苦しげに、けれどどこか恍惚とした表情で。奥にくると告げるならそれは、腸壁が勝手に蠢いているからだろう。
セックスの、疑似体験をしているよう。ぱしんと叩かれるたびに、ペニスが打ち込まれたかのように。
戸惑った顔のまま、それでも口を閉じる事が出来ないで、嬌声を上げる蕩けたギルベルトの顔。尻を叩くだけで行為を思い出し、反応してしまう体。
「いやらしい子だね」
イヴァンの喉は、クツクツと鳴り続けていた。そして一際綺麗にぱんっと鳴った時、ギルベルトはまたぎゅうと自分を抱え込むように、小さく小さく体を丸めた。くうぅと喉を鳴らし、歯を食いしばるように。
いやらしい子
腰がぶるぶると震えていた。赤くなってしまった尻に、何かを搾り取るようにぎゅっと力が入る。
一番奥まで、ペニスを突き入れられ、精子を吐き出され。そんな錯覚ですら、ギルベルトのアナルは涎を流し、達したのだろう。
…え?え?
ギルベルト自身、イッた事が信じられないのか、驚き目を見開いている。手の拘束を解いてもまだ、張り付いたようにシーツに手をつき続けるくらいには、大きな驚愕。頬にキスをして、やんわり頭を撫で、可愛いと耳元で囁いて漸く、恐る恐る顔を向けてきたギルベルトはもう、羞恥からか顔が真っ赤だ。
真っ赤な顔のまま、全身の力を抜いて、ぱたりとベッドに倒れこんだ彼に、イヴァンは堪らず声を上げて笑っていた。
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