「寒いなあ」
再びつぶやく。彼は崖のふちに立っていた。そこから見える景色はいつも美しいが、秋と言う季節のせいもあって、いっそう美しく見えた。ふと声が聞こえた。
「兼也!!!何処だ!!」
『兼也』と呼ばれた少年は反応はしたが、声には出さなかった。黙って崖の向こうを見ている。しばらくして、草木を掻き分ける音がしたと思うとまだわずかに幼さの残った少年が顔をだした。兼也よりも幼いだろう。
「いたぁ・・・。まじ探したんだからさあ。さっきの声に返事くらいしてくれたっていいんじゃないの??」
どうやら先ほどの声の正体は彼のようだ。
「誰がさぼっているのを自分から怒られに行くの??」


「いってえ・・・あの人ホント容赦ないよなぁ」
「兼也がさぼってたのがいけないんでしょ。」
「さぼってたんじゃないよ。精神統一さ。せいしんとういつ。」
「へえ??さっき自分でさぼってるって言ってなかったっけ??」
崖をはなれたところからすぐの道場でのやりとり。さきほどの少年2人。『兼也』と呼ばれた少年の名は桜滝 兼也(さくらたき かねや)。年齢は16。高校1年と言ったところか。もう一人の少年は柴酒 信華(しばさか しんか)。年は兼也の2つ下、14。中学3年である。ここは、明治時代の日本にあたる。彼らはもちろん平成の人間である。では何故彼らがここにいるのか。まずそこから話さなければならない。
        ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆
「広い・・・」
これは今から3ヶ月前にさかのぼる。彼らは平成の中国にいた。中国へは、仲の良い2組の家族での旅行だった。もちろん、桜滝家と柴酒家である。家が近いせいか、母親同士は小さいころからの友達であったせいか、兼也と信華は仲が良かった。
「なあ兼也。この崖から落ちたらどうなるかな」
恐る恐る果ての見えない崖の下を見て、信華が言った。
「それは…シャレにならない冗談だね。まぁ、まず生きて還って来れないだろうな。還ってきたら、よっぽど神様が俺らを高く評価してるか、俺らが化け物ってことだしね」
そう冷静に応えた。それをきいた信華は崖をのぞくのをやめ、崖を背にし兼也のてをギューっと握り締めてそこを去った。
 夜。花火大会があるのを町の人から聞いたと母‘sが帰ってくるなり買ってきた浴衣をきて飛び出していった。もちろん父もそのままついていってしまった。
「いい年こいて・・・」
「こんなとこに息子2人にするか??普通。」
取り残された2人はしばらく話したり、持ってきたゲームで遊んだりしていたが、1時間たったあたりでほとほと飽きてしまった。いきなり信華がガバッと飛び起きた。
「兼也!!」
「何??トイレ??」
そんなありきたりである返事をした兼也に大きく首を振って否定し、
「俺らも花火大会行こう!!」
そして二人はあの崖にやってきた。どうやらこの向こうでやるらしく、崖の向こうがにぎやかである。おそらく一番見渡しがいいのもここだと思われた。
ド・・・ン
花火が始まっている。二人は時間を忘れてはしゃいでいた。
 花火が終わるとだんだん祭りは静かになっていった。
「さて。俺らも帰るか。」
兼也が立った。続いて信華も立つ。すると信華が何かの声に気がついた。
「猫だ。」
猫のそばによる。猫はまるで自分の飼い主のように信華に顔をピッタリくっつけた。
「こいつ・・・持って帰っちゃだめかな」
「やめとけ。飼い主がいるかもしれないよ。」
兼也が信華をとめた。しぶしぶ置く信華を兼也は見ていた。しかしその瞬間。信華の体がゆれた。
「え??」
信華がわからないのもよそに信華の体は崖の端に倒れていった。
「信華!!!!」
兼也が走った。信華の手をつかんだ。しかし間に合ったが、昨日の雨でぬかっていた土で足を滑らせてしまった。手でつかもうとしたが神にみはなされたか、土で崖にとどまることはできなかった。
(っ・・・シャレん・・・・なんねえぞっ!!!!!!!!!!)
信華はすでに意識をなくしている。兼也もうすれゆく意識の中神に祈るしかなかった。

第一話 〜真実〜前編  

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