■ その3
 入学する前から新しい居場所に馴染めるか不安がっていた翠の学校生活も一月ほどがたった。
 思ったよりも馴染みやすい雰囲気のクラス。
  彼女の周りにも少しだが、たわいもない話しをし一緒に帰ることもある友達が出来ていた。
 学校での翠は、内気だけどやさしくちょっと成績は良い生徒。
 みんなと同じ制服を纏い、勉学や校内活動に励む。
 見た目は周りの子たちと変わらなかった。
 そう、見た目では。
(でも・・・。)
 翠は感じている。
 この制服の中身は、きっとクラスメートたちと同じではないことを。
 いつのことだったろうか。
 休み時間に便意を覚えてトイレに駆け込んだときのこと。
 慌てて個室に入ると、ストッキングとパンティを同時に引き摺り下ろす。
 そして便座へと腰掛けた直後。
 思いのほか固く大きい排泄物が直腸を圧迫しアヌスの扉を押し広げながら体外へと出ていく。
「あん・・・」
 つい自分の口から漏れた嬌声にはっとする翠。
 いつからか今まで普通の行為が、ときどき淫戯と感じることがある。
 親友であり恋人ともなった少女の手によって、
    排泄器官が自分へ卑悦を与える『性器』と作り変えられつつあることを、彼女が実感する瞬間。
 決してクラスメートに知られてはいけない秘密。
 変化する心と身体を隠しつつ、翠は新たな学校の日々を過ごしていった。

 それは、5月も下旬に入ろうかというある日。
 まだ昼を少し過ぎたばかりだというのに、
  翠の家の近所の駅前に制服を着たままの彼女の姿があった。
 しきりに時計を気にし、回りを窺っている。
(何日ぶりかな・・・。)
 翠の学校では、午後より職員会議ということで半日で授業が打ち切られた。
 遠くの学校へと通うようになり、恋人とのすれ違いの時間を過ごしていた彼女。
 偶然にも茜の学校も半日授業ということで、念願の『デート』することとなったのだった。
「翠!」
 電話ではなく直接耳にする愛しい声。
「茜ちゃん!」
 翠は大きく手を振る茜の元へと駆け寄った。
「・・・久しぶり。」
「うん・・・。」
 何故かふたりとも照れくさげに、互いの顔を上目遣いに見る。
「茜ちゃん、制服のままなんだ?」
「ん・・・、早く翠に会いたくて、学校からそのまま来ちゃった。」
「私も待ち遠しくて、家に帰らないでずっと待ってたの。」
 そこで言葉が途切れ、ただじっと見つめ合うだけのふたり。
 行き交う人々の何人かが、そんな彼女らを不思議そうに見ながら通り過ぎる。
「・・・そろそろ、どこか行こうか?」
「うん・・・。」
 そっと翠は茜の手を握る。
 伝わる恋人の温もりに少女の顔は赤みが差した。

 駅近くのデパートにあるトイレの個室。
 ついさっきまで手入れされたそこは、微かに特有の匂いを残すだけで不快なもの感じられなかった。
「「んん・・・。」」
 茜たちの耳には、互いの小さな悦声と外の売り場のわずかなざわめきが聞こえていた。
「ごめん、翠・・・、我慢できなかったの。」
 離されたふたりの唇の端から透明なものが流れ落ちる。
「いいの、私も同じだから・・・。」
 翠は微笑みながら言った。
 デパートのなかでウインドショッピングを楽しんでいた彼女たち。
 ちょうど清掃員が立ち去りばかりで無人であろうこのトイレに茜が気付くと彼女は何も言わず中へと翠を引き込む。
 翠は少し驚いたようだったが、されるがままに個室の一つへと一緒に入っていく。
「茜ちゃん、今日も私が『して』もいい?」
 ここのところ、いつも茜は翠に自分への奉仕を命じていた。
 しかし、今日のように自ら申し出たのは初めて。
「いいの?」
「うん・・・。」
 翠が頷くのを見て、茜はパンティを脱ぎスカートを捲り上げると便座に腰を下ろした。
 おずおず股を広げる親友の前に跪く翠。
 そして、目の前にあるものへと顔を近づける。
「あん。」
 外側の恥肉をほぐすように翠は舌でやさしく撫でていく。
 やがて刺激に悦ぶ恋人の蜜にまみえれた彼女の舌は、ラビアを押し割りゆっくりと奥へと推し進めた。
「ああぁ・・・。」
 ヴァギナに翠を感じ、熱い吐息を漏らす茜。
「翠、上手になったね・・・。」
「茜ちゃんにそう言ってもらえると、うれしい・・・。」
 恋人を上目遣いに見る翠の頬が赤く染まっているのは、褒められたからだけではないだろう。
 その証に、彼女のストッキングは湿っていくのが見るからに分かる。
 が、今日の翠は奉仕者。
 再び顔を茜の股間に埋めると、そのラビアに吸い付き嘗め上げる。
「んっ・・・。」
 ラビアから上がってくる卑喜に叫びをあげそうになるのを、茜は指を噛み耐えた。
 が、胸が更なる刺激を欲している。
 彼女は、もどかしげにブラウスの胸のボタンを三つほど外すと、そこから手を服の中へと差し入れた。
 自分の乳房をわし掴みにし手荒く揉み始める。
 布の擦れる音と激しい息遣い、そして弾くようなペチャペチャという水音。
 おおよそ、デパートのトイレに似つかわしくないような音たち。
 それらの音に、彼女らの後に入ってきた女たちは気付いたであろうか。
 何度か隣の個室に人の気配を感じても、翠も茜も淫らな遊びを止めることはなかった。

 ・・・その個室から水が流れる音がして、さらに5分程たった頃。
 洗面台には二人の少女の姿があった。
 乱れた制服を整え、汚れたところをふき取って、何事も無いような様子で鏡の前に立つ茜。
 その表情は満ち足りたようにも見える。
「翠?」
 彼女は隣に立つ親友を見やった。
 茜とは違い、個室に入ったときと変わらないはずの翠。
 しかし、制服のなかの彼女は変わり果てていた。
 その変化が僅かに感じられるのは、太ももの辺りが変色したストッキングと僅かに乱れる息遣い。
「茜ちゃん、私、私・・・。」
 切なげに訴える恋人に茜は妖艶な笑みを投げかける。
「もう一度、トイレに戻る?」
 翠がコクンと頷く。
 茜は相手の肩を抱くようにして、元の小さい部屋へと戻っていった。
 
 
・・・・・・・・・・

 そのころ。
 翠の家に一人の来客があった。
「あの、わたくし、翠さんの学校の者ですが・・・。」
 母である藍子が応対に出ると、玄関に立つ女性は自らを名乗った。
 その姿を見て、思わず息をのむ藍子。
(なんて綺麗なのかしら・・・。)
 灰色のごく普通のスーツ姿からでも判る均等の取れたプロポーション。
 そして、全てを超越した感じも受ける面立ち。
 もし、この場に茜がいたら一人の女性の名を叫んでいただろう。
 彼女は、娘の学校の関係者を名乗るその女性を見つめたまま、立ち尽くしていた。
「あの?」
 女性の困ったような声に藍子は我に返る。
「す・・・、すみません。」
 彼女は赤面しながら女性を家のなかへと案内した。
 3時間ほどして。
 誰にも見送られずに一人、玄関を出るその女性。
「これで・・・、またひとつ進みましたね。」
 ちらりと振り返るその姿は、門をくぐった途端にかき消える。
 家の中には、裸のままソファに横たわる藍子の姿。
 首に細く赤い首輪を締めた彼女は、手にした自ら愛蜜に濡れる張子の異性器を一心にしゃぶっていた。


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