作品名 作者名 カップリング
「兄と妹の輪廻」 トマソン氏 -


 ピンポーン。
 ある穏やかな土曜日の午後、城島家のドアのベルが鳴った。
「宅配便でーす。ハンコお願いします。」
「はーい。どうも」
 応対に出た城島カナミが包みを受け取り、認め印を差し出す。
 作業服に身を包んだ若者は伝票に押印してハンコを返し、去っていった。
「ありがとうございました〜」
「お世話さまでーす」

(お、来た来た♪)
 カナミはそれが通販で買った抱き枕であると知り、さっそくガサガサと包みを開けて
みた。
 出てきたのは犬のぬいぐるみ型の抱き枕。
「へえ、写真で見たより可愛い……かな? 早速これでお昼寝してみよう」
 カナミはそれを抱え、居間のソファへ移動した。
「おやすみなさ〜い……えへへ、フカフカぁ……」
 カナミは居間のソファに体を横たえ、幸せそうな表情で抱き枕に腕を回す。ほどなく
彼女の意識は安らぎの中に深く溶けていった。

「ただい……ぉ……」
 外出から帰宅した城島シンジが居間に入っていくと、ソファの上で妹のカナミが
眠っているのが目に入った。シンジはただいまと言いかけた言葉を飲み込み、歩調を
抜き足差し足に変更。優しい兄だ。
 だが、見慣れぬ物体が妹の背中に乗っている、というより、妹の体が得体の知れない
何かに後ろから抱きつかれていることに気づき、ぎょっとした。
 茶色っぽい、丸っこいあれは一体、何だろうか? 
(……おかしな奴だったら、台所に包丁が、部屋に金属バットがある……)
 物騒なことを考えながら、シンジはおそるおそるソファに近づき、その物体に触れて
みた。
(なんだ、抱き枕か……)
 シンジはそれがぬいぐるみ風の抱き枕であることを確かめ、大きく息をついた。
(しっかし、抱き枕に逆に抱かれるか?)
 抱き枕にあべこべに抱きつかれたポーズで眠っている妹に、シンジは脳内で突っ込ん
だが、白河夜船のカナミに通じるはずもない。





「く〜、す〜……」
 カナミは幸せそうな表情を浮かべて、ソファの上で安らかな寝息を立てていた。
(あ〜あ、パンツ丸見えで……)
 シンジは目の前に無防備に横たわった妹の体を眺めた。デニムのミニスカートを穿い
てソファにうつぶせに寝たカナミは、背中は抱き枕で隠れていたが、寝返りのはずみだ
ろうか、スカートの後ろの裾がまくれ上がり、膝上までの紺色のストッキングはおろか、
真っ白な太腿の裏側と、可愛いヒップを覆うショーツまでが丸見えになっていた。
 静脈さえ透けて見えるほど色の薄い、細めの太腿。サイズこそ控えめだが、むっちり
と盛り上がった、形のよい尻たぶ。その双丘を頼りなく覆う、純白の可愛いショーツ。
 シンジの視線はごく自然にその布切れに吸い寄せられた。
「ん〜……」
 そのとき、カナミがかすかに身じろぎし、シンジの鼓動が跳ね上がった。息をつめて
カナミの寝顔を見やったシンジだったが、カナミはそのまま目を開けることなく、再び
寝息を立て始めた。
「す〜、す〜……」
(……ふう……あ゛……)
 息を吐き出し、再び妹の下半身に目をやったシンジ。運命の悪戯か、それまでぴっち
りと閉じていたカナミの両脚は、今のかすかな身じろぎのせいか、わずかに左右に開い
ている。真っ白な内腿が、ショーツの幅が狭い部分までもがひそやかに覗いていた。
 シンジの視線が次第に熱を帯びてゆく。

 ゴクリ。
 シンジは生唾を飲み込んだ。胸の鼓動まで早くなってきたのがはっきり感じられる。
「カナミ、起きろよ……風邪ひくぞ……」
 シンジはささやくような声でカナミに語りかけてみたが、起こすつもりなど全くない
ことは言うまでもなかった。
「おい、カナミ……」
「す〜、す〜……」
 いくらか大きな声で呼びかけてみたが、カナミは何の反応も示さない。その間にも
シンジのギラついた視線は妹の下半身を這い回っていた。それがやがて、ショーツの
微妙な部分に息づく、なんとなく淫靡な膨らみに集中する。
 ついにたまらなくなったシンジは、目の前に横たわるカナミの太腿にそっと手を伸ば
していった。



 柔らかく張った太腿の内側にかすかに指先を触れた瞬間、シンジは腕を引いた。
 指先に残る素肌の感触を反芻しながらも、息をつめて妹の反応をうかがったが、カナ
ミの寝息は全く変わりがない。シンジは再び腕を伸ばした。
 少女の太腿の内側の中ほどを、ゆっくりと輪を描いて男の指が這い回る。
(なんて……手触りだ……)
 しっとりとぬめって吸い付くような、それでいてすべすべの素肌の感触に、シンジは
陶然となった。
 丹念に撫で回しながら、彼の指先は妹の太腿を少しづつさかのぼってゆく。
 妹の息が乱れたら、または身動きしたらいつでも退却できるように、そちらにも注意
を振り向けていたシンジだったが、なんともいえぬ魅力的な手触りに、そんな意識も
次第に溶けてなくなり、欲望が彼を支配していった。
(た……たまんねえ……)
 シンジの指先はついにショーツに到達した。布一枚を通してかすかな盛り上がりを
優しくなぞると、指先に快い温もりが感じられる。
 くにゅっ。
 軽く押してやると、カナミの柔肉はシンジの指先にしたがってやすやすと凹み、指先
を包みこむかのように優しい弾力を返してきた。
 ゴクリ。
 シンジは再び生唾を飲み込んだ。
 目の前に全く無防備に横たわる少女の体。AVやエロ本では何度も女体を見ていたが、
所詮、それらは写真の中やテレビの向こうに存在するもので、手を伸ばそうにもどうに
もならぬものばかりだった。
 だが、実はずっと前から、目の前に飛び切りの実物があったのだ。ようやくにして
シンジはそのことに気づいた。
 ただ一つ問題なのは、それが実の妹であることだったが──。



「はぁ……はぁ……」
 しばらくカナミの下着に指を蠢かせたシンジは、いまや目を血走らせ、荒い息をつい
ていた。
(……見てえ……なにもかも……)
 可愛いショーツのクロッチの縁に指をかけ、そっと横にずらしてやる。
 カナミの女の部分を頼りなく覆っていた布切れは、あっさりとシンジの指先によって
脇にのけられ、ついにカナミの秘奥がシンジの目の前に広がった。
 ぷっくりと膨らみ、だがまだ固い蕾を思わせるごく薄い色の大陰唇。その上に茂った
陰毛は少し薄めだが、やはり寒い季節とあって手入れが後回しなのだろう、土手の周囲
まで、産毛のような可愛い縮れっ毛があちらこちらに息づいていた。プリンとした桃の
ような尻の二つの丘の間に切れ込んだ溝は、下がるにしたがって深さを増し、割れ目の
すぐ上に恥ずかしげに覗くおちょぼ口までなだらかなラインを描いていた。
 シンジはそこに嘗めるような視線を注ぎ続けた。喉がカラカラだったが、それを気に
かける余裕もない。もう一度カナミの寝息を確かめると、シンジはそっと指先を柔肉に
絡ませた。
(これが……女の体……)
 指先が優しく割れ目を押し開いた。恥ずかしく開いた大陰唇の間から覗くピンク色の
襞々にギラつく男の視線が注がれ、いまだ未成熟な果実を思わせる媚肉をシンジの指が
そっと揉みほぐす。
 シンジはカナミの中に中指をそっと侵入させてみた。
「おうっ……」
 指先を暖かく優しく締め付け、吸い付いてくる襞々の感触にシンジは陶然となった。
 ついで中指はそのままに、シンジの人指し指は割れ目を上にたどり、小さな豆を探り
出した。
(これが……クリトリス……)




 そっと撫でてみようとしたそのとき。
「何……してるの? お兄……ちゃん……」
 聞きなれた妹の声にシンジはたまらず固まった。ギリギリと油切れのロボットアーム
のような動きで顔を上げると、うつぶせで寝ていたはずのカナミが首をこちらに向け、
自分の下半身に指を食い込ませたシンジの顔を名状しがたい表情で見つめていた!
「あ……」
 シンジは何を言っていいのか分からなかった。寝ている妹のショーツをずらし、その
体を指先で犯していた今、何を言い訳しろというのだ。
「お兄……ちゃん……まさか……」
「カナミ……これは……その……えーと……」
 なむさん、明日はどっちだ。訴訟を起されて接近禁止判決を受けるのか、家庭崩壊か、
はたまた一家離散か。とりあえず慌てて腕を引いたシンジだが、頭の中では恐ろしい
結末がぐるぐると回っていた。

 カナミはのろのろと起き上がった。大きな黒目がちの瞳に涙をためて、今にも泣き
じゃくり始めそうな表情を浮かべながら、何を思ったか、カナミはゆっくりとストッキ
ングを下ろした。
「……か、カナミ?」
 ストッキングから脚を抜いたカナミは、ついでスカートのホックを外し、ファスナー
を下げる。手を離すと、するりとスカートが床に落ちた。
「お兄ちゃん……お兄ちゃんなら、いいよ……」
 カナミはシンジとは視線を合わせずに、最後の一枚に指をかけた。
「お、おいカナミ……待て……」
 さすがにためらいがあったのだろう、ショーツの縁に指をかけたまま、カナミはしば
し逡巡した。が、やがて可愛いショーツがするりと下に落ち、少女の下半身を覆うもの
は何もなくなった。
 カナミはソファに仰向けに横たわり、恥ずかしそうに股間を手で隠す。
「お兄ちゃん……やっと、私の体に興味を持ってくれた……」
 石になったままのシンジに潤んだ瞳を向け、カナミの独白が続く。
「一緒にお風呂に入ろうとしたり、電気アンマで起こしたり、コタツの中で足コキした
り、遅い朝はフェランチをリクエストしてみたり……それは……それはみんな、お兄
ちゃんに私が女だ、って意識させたかったから……」
 シンジは答えない。目の前にしおらしく横たわった少女は、本当にあのエロボケ全開
のカナミなのか? 恥じらいに顔を赤らめ、潤んだ視線を向け、はかなげに自分を誘惑
しているこの娘は?
「だから……ね? お兄ちゃんなら、いいの……来て、お兄ちゃん……」
 シンジが動こうとしないのを見て取ったカナミは、ためらった末、秘奥を隠していた
手をどけた。あまりの羞恥に顔を両手で隠して、だがそれでもシンジの焼け付くような
視線が自分の股間に注がれていることをはっきり知覚していた。
「ねえ……お兄ちゃん……」
 ぴっちりと閉じられていたスラリと伸びた脚が、おずおずと左右に開いてゆく。
「お、おいカナミ……」
 ようやく声が出るようになったシンジはようやくの思いで口を開いた。だが、一体何
を言えばいいのだ?
 寝ているカナミに出来心で悪戯をしかけたのはシンジだとは言え、兄と妹の性行為な
ど、許されることではない。今シンジがなすべきことは、兄である自分を誘惑してくる
カナミを諌め、注意してやることだ、頭ではそんなことは分かっている。
 だがそれまでの悪戯で、既にシンジの理性は半壊状態だった。そして、誘うような、
はかなげに潤んだ妹の瞳。目の前に無防備に広がる妹の体。
 やがて、欲望と理性の綱引きに勝負がついた。





 シンジはぎこちなく歩を進め、わずかに開いたカナミの両脚をさらに押し広げ、その
間にどっしりと腰を下ろした。
「カナミ……」
 先ほどバックから悪戯したばかりの、まだ固い蕾を思わせる女性器。今度はそれを
正面からかぶりつきで見つめ、シンジの興奮はさらに高まってゆく。
「ああ……恥ずかしい、そんなに見ないで……」
「そうは行かない……見て、触って、俺のものにするんだ……」
「ああ……嬉しい、触って……いじって……」
 シンジの耳にはカナミの声はどこか遠いところで響いているようだった。頭がオーバ
ーヒートしているのをはっきり認識しながらも、シンジが再び手を伸ばす。
 指先が優しく少女の体を愛しはじめた。
「あっ……あっ……」
 ひそやかに息づく割れ目をそっとなぞり、媚肉を押し開き、再び指を侵入させて探り
をいれ、内部をそっとかき回す。
「あーっ……」
 眠っていたさっきとは違い、妹の体は何をしても敏感な反応を返してくる。顔を両手
で覆い、目を固く閉じてなすすべもなく愛撫を受け止めるカナミに、シンジの体が優し
くのしかかった。
「カナミ……」
 呼びかけられ、目を開けたカナミ。至近距離に兄の顔が近づいている。
「……お兄ちゃん……んっ……」
 ごく自然に、二人の唇が重なった。
「……カナミ」
 一旦離れた二人、しばらく見つめあうと、もう一度、シンジはカナミにそっと唇を
合わせ、今度は舌を侵入させていった。
「んーっ……」
 カナミもまた舌をそっと突き出し、シンジの行為に応える。ぴちゃぴちゃと、舌が
絡み合う音が響いた。
 そうしている間にも、シンジの指先は手探りでカナミの体の芯を刺戟していた。カナ
ミの細い体は時折ピクンと震え、流れる性感を物語る。
 既に秘肉からは蜜があふれ、食い込んだ指先をしっとりと濡らしていた。





 やがてシンジの指が、小さな桜ん坊をつまみ出した。
 「むーっ! あっ、いやっ……」
 カナミの体が跳ね上がる。下半身から全身に流れる強烈な刺戟に、カナミはやっとの
ことで口腔に侵入していたシンジの舌から逃れ、身をよじって淫靡な指から逃れようと
したが、大股開きで両脚の間に男の体を受け入れ、のしかかられていては、それは全く
無力な抵抗であった。
「あああうっ……」
 カナミは上気した顔をそむけ、荒い息をつきつつ、固く目を閉じて必死で性感に耐え
ている。それならと、シンジの唇と舌がカナミの首筋を這い回った。
 残った腕がカナミの乳房に伸び、まだ固い、ほのかな隆起をシャツの上から強引に
揉みしだいた。
「んっ……あ、い、痛ぁいっ!」
 カナミが苦しげな声を上げた。秘奥に蠢いていた指につい力が入って、深めに侵入し
てしまったらしい。夢中になって妹の体を貪っていたシンジがはっと顔を上げると、
涙をたたえたカナミの瞳が責めるような目で彼を見ていた。
「ごめん、カナミ……お前にも、気持ちよくなってもらわないとな……」
 シンジは思うがままに処女の体を攻めていた手を休め、のしかかっていた体を一旦
浮かせて、ちょうどカナミの股間の辺りに顔が来る位置まで移動した。
「あ……いや、恥ずかしい……」
 至近距離から秘奥を見つめられ、カナミはあまりの羞恥に脚を閉じ合わせようとした
が、シンジの腕が膝をしっかり押さえ、それを許さない。
 シンジの眼前に、妹の女体の全てが広がった。
 それまでたっぷり愛撫を受け止めたカナミの花びらは、今や愛液をたたえててらてら
と光り、恥ずかしく開いていた。ソファーカバーにまで、熱いしたたりが垂れている。
「やぁ……そんなに見ないでぇ……」
 カナミの弱々しい抗議も空しく、シンジはそこに思い切って顔を埋めた。
「あ、あああっ……」
 微妙な凹みからとめどなく滲み出てくる液体をすすり、ゆっくりと味わう。ついで
舌を伸ばし、優しくクリトリスを舐ってやった。
「あっ、あああっ! だ、駄目ぇっ!」
 カナミの小さな体がまたも跳ね上がった。必死に両脚を閉じ合わせようと太腿に力を
入れたが、シンジに膝をがっちり押さえられていては、股間に埋められた頭を太腿で
暖かく包むのが精一杯だった。ひくひくと少女の太腿の付け根がつらそうに蠢く。
 シンジはカナミの激しい反応を楽しみつつ、しばらく舌で攻め続けた。あれこれと
動きを試しているうち、突起に舌先を当てて左右に小さく震わせてやるのが効果的だと
知り、集中的にその手で攻撃を加える。
「あっ、はあっ、ああああーっ……」
 不意に甘い声が高まり、シンジの頭を挟んだ太股が硬直する。やがて、少女の体は
がくりと脱力した。




「……カナミ?」
「はぁ、はぁ……ああ……」
 カナミの全身はすっかり桜色に上気していた。荒い息をつきながら、体からは完全に
力が抜け、割られた脚を閉じることも出来ずにいるようだ。
「お兄ちゃん……はぁ……私、イッちゃったのかな……はぁ……目の前が真っ暗に
なって、はぁ、無重力で浮いているような感じ……」
「カナミ……」
 (俺の拙い愛撫で、カナミがイってくれた……)
 シンジは、男性としての自信が潮のように盛り上がるのを感じ、無残なポーズのまま
脱力して横たわるカナミの秘裂に目をやった。さっきまで固く閉じた蕾のようだった
そこは、いまや初めての男への期待に震える、濡れて恥ずかしく開きかけた大輪の花
だった。
 シンジの中に、強烈な欲望がこみ上げてくる。
 犯したい! 何もかも、俺のものにしたい!
「カナミ……いくぞ」
 シンジはズボンとトランクスを脱ぎ捨てた。股間の一物はもういつでも準備OKと
ばかりに、はちきれそうに怒張していた。
「あ……」
 カナミは屹立して血管を浮かび上がらせた男根を目にして、息を呑んだ。
(これが……私の中に、入ってくるんだ……とうとう、お兄ちゃんと……)
 もちろん、初めての挿入に不安を感じないわけではない。だが、ついに兄とひとつに
なれる、その喜びのほうがずっと大きい──カナミは自分にそう言い聞かせた。
 兄もまた荒い息をつきつつ、そっと腰を妹の体にあてがう。
「あ……お兄ちゃん待って、これ、つけて……」
 カナミがアルミのパックを差し出した。
「いやだ……」
 シンジは一旦はそれを受け取ったが、包みを破りもせずにテープルの上に放り投げて
しまった。
「お兄……ちゃん?」
「いやだ……こんなに可愛いのに、ゴム越しに破るなんて、勿体ないよ……」
「で、でも赤ちゃん出来ちゃう……私達、兄妹なんだから、それだけは駄目だよ……」
 シンジの体がぐいとカナミの体に覆いかぶさった。はっと身を固くするカナミだった
が、既に両脚を割られ、組み敷かれていてはもう手遅れだった。
「だ、駄目ぇ、お兄ちゃん! 赤ちゃん出来ちゃう……」
「カナミ……もう、我慢できない……」
 熱く燃える肉棒が、カナミの中に侵入していった。たっぷり濡れていたとはいえ、
男を知らぬ処女の体にははっきりと抵抗感があったが、シンジは容赦なくそれを一気に
突き破った。
「あーっ! 痛いっ! ううっ……」
 下腹部に鈍い痛みが走った。奇妙な硬さを持った熱い肉棒が、強引に侵入してくる!
やがて奥まで貫かれたと悟り、カナミの体からがくっと力が抜けた。
「お、おおうっ……カナミ……」
 カナミの体の中は熱く、狭かった。襞々の一枚一枚が、シンジの男性自身を離すまい
とするかのように絡み付き、締め付けてくる。
「い、痛ぁい……ああっ、ひいっ……赤ちゃんが……出来ちゃう……ううっ……」
 悲鳴ともあえぎ声ともつかぬ声を漏らし続けるカナミの反応を楽しみつつ、シンジは
そっと腰を動かし始める。
「い、痛ぁい……動かさないでぇ……」
息も絶え絶えになったカナミの哀願も空しく、シンジの動きは止まらなかった。





『カナミの体内でシンジの男性自身が暴威を振るっている。
 実の兄に犯されている──それも生で──
 処女を失ったショックで半ば虚脱状態になりながら、カナミはそのことだけははっき
りと認識していた。背徳感に苛まされながらも、カナミは熱い肉棒に体の芯を突きたて
られ、絶頂へと追い上げられていった──』

「……ふう」
 中村リョーコは自室で、読んでいた本をパタンと閉じた。しゃれたカバーの掛かった
文庫本だが、中身は兄妹相姦もののエロ小説だ。
(……アタシも兄弟が欲しかったなあ……そして禁断のインセスト[近親相姦]!)
 リョーコは体の芯がうずき始めたのをはっきり感じながら、しばらく妄想を楽しむ。
(……うん、悪くないわね。……あ、そうだ)
 ポン。
 彼女はひとつ手を叩くとクローゼットを開き、聖光女学院の制服を取り出した。
(今日はこれで行こうかね)
 本当の兄を今から作るのは無理だが、気分を楽しむことは出来る。
 リョーコはちらりと時計に目をやった。もうすぐ彼女の奴隷兼セフレ兼元恋人の、
豊田セージが訪ねてくる時間だ。彼女は鏡台に向かった。





「こんばんは……え? リョーコ……か?」
 リョーコのマンションの玄関に立った豊田セージは、迎えに出たリョーコの姿を見て
目を丸くした。
 聖光女学院の制服を着ているのはまあいい。時々楽しんでいるコスチュームだから。
 だが、これは本当にあの中村リョーコなのか?
 リョーコはメガネを外して、自慢の漆黒のロングヘアを三つ編みにし、裏表など何も
ないようなはにかんだ笑顔を浮かべている。普段の彼女を知らなければ、本当に純朴な
田舎娘とでも思いたくなるような表情だ。
 リョーコはセージを迎え、にっこりと微笑んだ。
「お帰りなさい、お兄ちゃん」
 その瞬間、セージは悟った。彼女が望んでいるのは、早い話が兄と妹プレイだ。どう
せ、近親相姦ものの映画でも見たのだろう。

(……ま、それもいいか)
 セージは覚悟を決めた。どのみち逃げようとしても捕まるだけだし、むしろいつもの
ような主導権をとられっぱなしのプレイよりも楽しめそうだ。
(それにしても……)
女は化け物だ。セージはこの頃、心底そう思うようになった。この女の本性がこんな
しおらしいものではないことは重々承知しているのだが、はにかみをたたえた微笑を
浮かべながら、お茶を運んできた女子高生姿のリョーコたるや……。
(……可愛い)
 それがセージの偽らざる感想だった。
(……純真な女子高生の役をしてくれるなら、俺としても願ったりだ)
 ならば、セージもリョーコの演技に応えねばなるまい。
(へえ、セージも役回りが分かったみたいね……楽しみだわあ)
 リョーコもまた既に心を決めていた。今夜は、しおらしい女子学生になりきるのだ。


※筆者注: これからの二人の行為はすべてイメージプレイで、リョーコとセージの
本性とは無関係です。ええもう、全く無関係です、はい。たぶん。



 セージが座った食卓に、お盆を手にしたリョーコがしずしずと歩いてきた。
「お茶が入ったよ、お兄ちゃん」
 ことりとティーカップが食卓に置かれた。が、セージの視線はそこにはない。
「リョーコ」
「…? 何? お兄ちゃん」
「えいっ」
「きゃっ? ちょ、ちょっとお兄ちゃん?!」
 机の上に置かれた折角のティーカップもそのままに、セージはリョーコの体を強引に
姫抱えに抱き上げ、寝室へと運んでいった。
「お、おにい……ちゃん? 何、するの?」
 かすかな怯えをたたえた瞳が、セージの顔を見上げる。
「お前が……欲しくなった」
「えっ……ちょっと、それって……」
 セージが軽々とリョーコの体をベッドに横たえる。細い両腕を首の両側に押さえつけ
て固定すると、セージは女の体にのしかかっていった。
「お、お兄ちゃん?  いったいどうしちゃ、んーっ……」
 セージはリョーコに抗議の暇も与えず、その可憐な唇を塞いでやった。普段から化粧
は薄めのリョーコだが、今日は役回りを考えてか、また一段とナチュラルだ。
(口紅まで色の薄いものを選んでやがる……)
 セージはリョーコの徹底した役作りに感心していた。のみならず、普段とは違った
新鮮な反応を返すリョーコに、興奮の度合いが高まっていることも否定できない。
「んむうっ……だ、だめお兄ちゃん……私たち、兄妹なんだよ?!」
 首を左右にもがきやっとのことでセージの唇を逃れたリョーコは、必死の形相で男の
肩を押しやりなんとか逃れようとしたが、男の体を女の細腕で押したところで、どうに
もなるものではなかった。
「構うもんか……リョーコ……俺のものになれ……」
 耳元でささやいてやると、セージは制服の上から強引に胸の隆起を揉みしだいた。
 制服の上からでさえ見事な盛り上がりははっきり見て取れるが、ブラジャー、ワイ
シャツ、それにブレザーと三枚を通してでは、弾力を楽しむには至らない。身をよじり
弱々しい抵抗を示すリョーコの反応を楽しむのが精一杯だ。
(だが、そのもどかしさがまたいい……)
「だ、駄目ぇ……お兄ちゃん……どうしちゃったの、だめぇ、制服、シワになっちゃう
……あ、いやっ! 脱がさないでぇ……」
 制服のボタンに指をかけたセージに、リョーコが涙声で哀願する。
「……よし分かった……脱がずに着たままでしよう……」
「ええっ、そ、そんな……ああ……」
 セージはゆっくりと、だが容赦なくリョーコのブレザーとワイシャツのボタンを外し、
二枚まとめて前を思い切り開いてやった。一気に素肌の面積が広がり、可愛いブルーの
ブラジャーが露出した。
「ああっ! だめ、お兄ちゃん! 兄妹でなんて、駄目だったらっ!」
 必死に両腕で胸をガードして身をもがき、抵抗するリョーコだったが、セージは何の
ためらいもなく、リョーコの腕を力任せにどかせ、手を伸ばしてブラジャーの上から
隆起を鷲掴みにした。
「あっ、いやぁ……お兄ちゃぁん……あう……」
 セージの掌がやわやわとした乳房を楽しみ始める。




 可愛いカップの上からしばらく柔肉を揉んでやったセージは、背中のホックを外す
手間も省いて、一気にカップを上にずらしてしまった。巨乳というほどのサイズでは
ないが、形のよい隆起がぷるんと弾け出た。
「おう……リョーコ……素敵なオッパイだな……」
 セージの左右の掌が、露出したリョーコの両の乳房をぐいとつかむ。
「ああ……お兄ちゃん、お願い、乱暴しないで……優しくしてぇ……」
 リョーコも覚悟を決めたのだろうか。いつの間にか抗議の内容が、行為を否定する
ものから、内容についての不満に変わってきていた。
 柔らかい隆起を揉んでいたセージは、ついで先端に息づく乳首を指先でつまみ、優し
く可愛がってやった。小さな突起を舐っては軽くはじき、転がす微妙な動きに、リョー
コは恥ずかしげに身をよじる。
「あっ……あっ……だめぇ、お兄ちゃん……あっ……」
「……リョーコ、下も見せてみろ……」
 セージの手が、タータンチェックのミニスカートの裾をつまんだ。組み敷かれて暴れ、
身をよじり続けたそれまでの動きで、それはもうすっかり乱れ、太股の付け根ぎりぎり
までがあらわになっていた。
「あっ、だ、駄目……あう……」
 散々身をもがいたリョーコはもう息が上がっている。弱々しい抵抗をものともせず、
セージはスカートを思い切りめくりあげた。
 広がった眺めに、さすがのセージもぎょっとした。
「おいおい、何だこのパンツは……お前、実は期待してたんじゃないか?」
 リョーコの股間を覆う白い布切れには、その微妙なところに穴が開いていた。漆黒
の縮れた繊毛がその穴から数本、飛び出している。純白の布地に黒々とした線が幾筋
か走っているのが、妙にエロチックだった。
「こんなエッチな下着を着けやがって……」
「いやぁ……見ないで……お兄ちゃぁん……」
 リョーコは顔を真っ赤にしてあまりの羞恥に耐えた。穴からわずかに覗く内側に男の
熱い視線が注がれていることを、彼女ははっきり感じていた。
 リョーコのか細い抵抗もかなわず、セージが強引にリョーコの両脚を割り、その間に
腰を落ち着けた。白磁の太股が大きく左右に開かれ、パンティの穴までもがそれに
引っ張られて恥ずかしく幅を広げ、媚肉が覗く。
 セージの右手が女の股間に伸びた。指先が、そっと頼りない布地の穴に忍びこむ。
「あ、あああっ! いやぁっ!」
 しっとりと湿った花びらに指先を食い込ませたセージが、卑下た嬌声をあげた。
「なんだ、濡れてるじゃないか……もう感じてたのか?」
 顔をそむけ、屈辱に耐えるリョーコだったが、やがて微妙な動きを開始したセージの
指先に、体が震えるのをどうすることも出来なかった。
「あっ、あっ……いやあっ……あう……」
 にゅるり。
 大陰唇をくつろげた男の指が、いとも簡単にリョーコの中に侵入し、中をかき混ぜ始
めた。
 淫靡なくぼみから女の蜜がとめどなく溢れ、過激なパンティを思うさま汚していく。
 二人きりの密室には、いまや淫靡な音までが響いていた。





「あっ、あっ……嘘つきぃ……あっ……脱がさないって言ったのに……」
 桜色に上気した顔をセージに向け、精一杯咎めるような視線を投げるリョーコだった
が、セージは構わず指先で小さな豆を探り出し、リョーコの体がピクンと跳ね上がった。
「ああっ!」
「嘘じゃないさ……一枚も脱がしてない」
 確かに、厳密には一枚もリョーコの体から離れてはいなかったが……ブレザーとワイ
シャツは前を全開にされて腕と肩にまとわりついているだけだ。ブラジャーは思い切り
上にずらされて、首の下あたりにひっかかっている。下半身はといえば、上品なタータ
ンチェックのスカートは無残に捲り上げられ、臍のあたりをようやく隠しているのみ。
 かろうじて、股間を覆う最後の一枚はそのままではあったが……それの肝心なところ
には奇妙な穴が開き、その穴から既に男の指が侵入してきているのだ。
 衣服がそんな状態のうえ、割られた両脚の間に男の体を受け入れ、組み敷かれている
とあっては、リョーコの体はもはや全くの無防備といって良かった。
「あああっ……」
 小さな突起を優しく撫でる男の指に女の体がピクピクと震え、濡れた唇から甘い声が
漏れる。
「こりゃ、本当に一枚も脱がずに出来るな」
 セージもまた、速やかに興奮が高まりつつあった。あのお嬢様学校として知られる
聖光女学院の制服に身を包んだ女に、犯してといわんばかりの無残なポーズをとらせ、
その上にのしかかっているのだ! その眺めは抗いがたい誘惑となってセージの煩悩を
直撃した。本当の女子高生を犯しているような錯覚に陥りそうだった。
 セージはズボンのファスナーを下ろし、もうすっかり怒張し屹立している男根を
もどかしげに引き出した。
 手早く極薄スキンを装着する。この辺は大人のたしなみというものだ。



「リョーコ……」 
 ぐっしょりと濡れ、恥ずかしく開いた肉体の門にセージはそっと肉棒をあてがう。
 それを感じたリョーコは半狂乱になって身をもがき始めた。
「お、お兄ちゃぁん! それだけは、それだけは駄目ぇ! 私たち、兄妹なんだよ?!」
「……構うもんか……」
 セージの言葉は断固とした決意に満ちていた。
「ああ……」
 やはり犯されるのだと知り、絶望に囚われたかのようにがくりと力が抜けたリョーコ
の体に、いきり立って血管を浮き出させたペニスがずぶずぶと侵入していく。
「ひぃーっ!」
「おおうっ……いい子だ、リョーコ……力を抜いて……」
 セージはたおやかな背中に腕を回し、力任せに女の体を起こして対面座位の体勢を
取った。するとリョーコの体重によってさらに結合が深まり、セージの肉体の先端に
コツンと何かが当たる感触が伝わってくるのだった。
「あうっ……お兄ちゃぁん……」
 リョーコもまた、男の体に腕を回す。涙で頬を濡らした彼女はもう息も絶え絶えで、
セージの体にしがみつくのが精一杯の様子だったが、その肉体は暴れはじめた男根を
しっかりと咥え込んでいた。

 リョーコの体を抱き締め、腰を使い始めたセージは、自らの男根を受け入れた、熱く
溶けた秘壷に陶然となった。
 初々しい反応を演じることは出来ても、体を演技で変えることは出来ない。
 今、彼のペニスを暖かく包みこむ女体は、青い果実を思わせる女子高生のそれでは
ない。程よく熟れた、数年の付き合いを経てすっかり馴染んだリョーコのそれだった。
サイズも相性もぴったりなら、お互いの弱いところ強いところも知り尽くした、パート
ナーである女の体である。
 だからこそ、今まで二人の関係が続いてきたのだ。
「おおうっ……リョーコ……最高だ……」
「おにいちゃ、あああ、あん……」
 リョーコの襞々の全てが、セージの精を最後の一滴まで絞りつくそうと絡みつき、
締め上げてくる。セージもまた、夢中になって目の前の女体を貪り、腰を振った。
 仮に今この瞬間に、教職をクビになるか、行為をやめるか選べと言われたら、彼は
ためらいなくクビを選ぶことだろう。
(駄目だ……たとえ奴隷扱いされようと、俺はこの体を手放せない……どんなにひどい
扱いを受けようと、俺は結局、リョーコを一生追い続けるのかも知れないな……)
 意識のほとんどを快楽にゆだねながら、そんな思いがセージの脳内によぎった。




『「あっ、あっ、あああーっ! お兄……おにい、ちゃぁん!」
 リョーコもまた絶頂へと追いたてられていたが、理性などかなぐり捨てながらも、
いまだに妹になりきった演技を続けていた。
いや、彼女自身が、兄に犯される妹という状況に酔っているのかも知れなかった。
「お兄ちゃん、お兄ちゃぁん……」
 うわごとのように繰り返しつつ、リョーコはセージの熱い肉棒が体の芯を突き上げて
来るのを受け止め続ける。
 着衣のままの二人の荒い呼吸に加え、ベッドがきしむ音、男女の腰がぶつかりあう音
が寝室に響いた──』


 ここはひだまり幼稚園。ある日の読書の時間、園児たちが思い思いに絵本や童話を
読んでいるひまわり組の教室の片隅で、およそ幼稚園児らしからぬ幼稚園児である黒田
マナカは、椅子に座って官能小説を読んでいた。
(うーん……兄妹プレイですか。まだまだ勉強することはたくさんありそうですね)
 彼女は、イメージプレイの何たるかを理解するには、まだ幼すぎた。
(それにしても……兄さんとなんて……)

 マナカが本を閉じてため息をついたところへ、ひまわり組の担当、宮本レイコ先生が
入ってきた。
 ぱんぱんと手をたたいて、園児たちを見回す。
「はーいみんな、読書の時間は終わり。お昼寝の時間よ〜」
「はぁ〜い」
みるみるうちに教室に可愛い布団が並ぶ。それまではしゃいでいた園児達も、間もな
くおとなしく布団にもぐりこみ、やがてあちこちからかすかな寝息が立ち始めた。
(ふふ、子供達の寝顔って、本当に可愛いわね……)
 宮本先生はそちらこちらで子供達の布団を直してやりながら、子供達の中を抜き足
差し足で見て回った。
 そこへ、それまでおとなしく寝ていたマナカがむくりと上体を起こす。
「あら、どうしたのマナカちゃん? 眠れないの?」
「……ちょっと怖い夢を見てしまって……」
 マナカの小さな額には、冷たい汗が浮かんでいた。



(あら、結構子供らしいところもあるのねぇ)
 妙に大人びた普段の姿からは想像できない、おびえた様子のマナカに、彼女にとっつ
きにくさを感じていた宮本先生は少し反省した。
(そりゃそうよね、幼稚園児なんだから……突き放さずに話を聞いてあげなきゃ)
「そう……どんな夢だったの?」
「兄にいきなり押し倒され、衣服を剥ぎ取られて純潔を穢される夢です」
「…………」
 たらーり。笑顔を凍りつかせたまま、宮本先生のこめかみに一筋、汗が浮かんだ。
「私には確かに兄はいますが、貞操帯をつけている以上、そんな心配はないはずなのに」
「……あ、い、いやあのね……」
「原因はわかっているんです。さっき兄妹ものの官能小説を読んだのが悪いんです」
「あ、あのねマナカちゃん……」
「そうか、考えてみれば、背徳感のないものなら問題ないわけですし」
「えええ、えーと……」
「そうだ、昨日読んだ夫婦調教モノなら安全ですね。おやすみなさい」
 自己解決にたどりついたマナカ、宮本先生の返事も待たず、再び布団にすっぽりと
潜ってしまった。
 さすが超幼稚園級幼稚園児、黒田マナカ。夫婦物の官能小説のことを思い出しなが
ら眠ろうというのだろうか?
(私……この子の卒園まで、神経がもつかしら……)
 宮本レイコの中でそんな不安が鎌口をもたげたが、悩んでも仕方がないことだ。
 彼女はぶんぶんと頭を振り、再び子供たちの布団を直して回り始めた。




 見回りを再開した宮本先生、今度は城島カナミの布団の前でぎょっとして足を止めた。
 もともと寝相が悪いカナミだが、いまやその小さな体は布団と直角の向きにうつぶせ
に横たわっている。のみならず、まるでモミジのような小さな手が隣で寝ているヨシオ
君の布団に伸び、ヨシオ君の股間のあたりにニョッキリと立った何かを握っている!
(か、カナミちゃん……まさか……あっ、良かった、これはタカシ君の……)
 ヨシオ君の股間に立っているものがさらに隣の布団に寝ていたタカシ君の足先である
と気がつき、宮本先生は心底ほっとした。
 しかし、隣の布団に寝る男児の股間に手を伸ばすというのは……。
(……これは偶然……なのかしら?)
 まだ幼い子供とは言え、カナミの日頃の行いからして、偶然とは言い切れない。かと
いって意図的とは断言できないし、たとえそうだったところで、どうやって注意すれば
いいのだ?
(いくらなんでもこの寝相じゃ、お昼寝の時間だからって安心できない……あ、そうだ)
 宮本先生の頭の中で豆電球がピカリと光った。


 翌日の昼寝の時間。
 布団に入ろうとしたカナミに、宮本先生が可愛いクマのぬいぐるみを渡した。カナミ
のあどけない顔が笑顔ではちきれそうになる。
「わあ〜、かわいーい! せんせー、これは?」
「カナミちゃんは、寝相を少し直したほうがいいと思うの。だから、今日はこれを抱い
て寝てみましょうね」
「ふーん……こうやってねるの? わあ、きもちいい……」
 ぬいぐるみに腕を回し、カナミは目を閉じる。あっという間に、彼女の意識は遠く
なっていった。




 ドタッ。
「……ん……あれ?」
 カナミは目を開けた。ソファに寝転んで雑誌を読んでいたはずなのに、いつの間にか
彼女の全身は床に落ちていた。胸と床の間にはクッションが挟まっている。
 どうやら、眠ってしまい、クッションに抱きついた末、下に落ちた時のショックで
目を覚ましたらしい。
(やだ、居眠りしちゃったんだ……なんで、あんな昔のことを夢に見たのかな?)
 ひだまり幼稚園に通っていたころ、あまりの寝相の悪さを心配した宮本先生が、ぬい
ぐるみを貸してくれたことがあるのは事実である。
 もっとも、試してみたところ、眠っているうちに抱きついたぬいぐるみごと隣の
ヨシオ君の布団に移動したうえ、ぬいぐるみに前から、ヨシオ君に後ろから挟まれて
寝ていた、という結果に終わったのだが。


 残念ながら、彼女の寝相は今でも良くはない。
(そうだ……あの時は駄目だったけど、今なら、抱き枕を使えばきっと……)
 幼い頃からひそかに悩みの種だった寝相の悪さを何とかできるかも知れない。カナミ
は楽しい希望に取り付かれた。
(善は急げ。そうだ、確かこの前見た通販のカタログにあったよね……あ、あった)
 カナミはカタログを探し出し、ページを繰った。
「あ、これなんか良いかも……えーと、電話で注文するんだ……」
 ぴっぽっぱ。
「あ、もしもし注文をお願いします。商品番号は……」
 カナミは犬のぬいぐるみタイプの抱き枕を選び、注文を済ませた。

「えへへ、楽しみ〜、早く来ないかな〜♪」
 カナミは期待に胸を膨らませ(あくまで精神的に、だが)荷物の到着を待ちわびた。

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