作品名 作者名 カップリング
「アキの苦手克服」幕間劇 トマソン氏 -


 小笠原高校一年二組の昼休み。
 アキがトイレに行った隙に、城島カナミ、黒田マナカ、岩瀬ショーコの三人が密談し
ていた。
「最近、お兄ちゃんが毎日遅いんだよね。やっと帰ってきたと思ったら顔はつやつやだ
し、微妙に髪が濡れてたりするし、ここ数日、あれだけ好きなAVも見てないみたい」
「というと、お風呂屋さんに行ったのでは?」
「マナカちゃんもそう思う?」
「ええ、女性と一緒に入るお風呂ですね」
 相変わらず適当な推測だが、それを不思議とまともに聞こえさせるのはまあ才能と
いえば才能かも知れない。そういえばマナカは、海で波を背中で受ける人はバックから
攻めて欲しがってるとか、お箸で米粒を立てられると背が伸びるとか、結構いい加減な
風説を流している。
「お兄ちゃん、風俗通い!? そんな、お金がもったいないよ! 私がいるのに」
 それはそれで非常に問題のある感想だ。
「そういえば、このところアキさんもなんだか一日中ぽーっとしている感じなんですよ。
それに、どことなく色気が出てきた感じだし、夜にケータイに電話しても出ないし」
 そこへショーコが爆弾発言を投下した。
「そういえばこの前、ほら、あそこの校庭の木の下で二人で何か話してたわよ? 
もしかして二人で過ごしてるんじゃない? もう切っても切れない仲だったりして」
 ショーコは二人の逢瀬をちらりと見ていたらしい。
「え、えええっ! アキちゃんとお兄ちゃんが? じゃあ、お兄ちゃんの髪が濡れてる
のは、お風呂屋さんじゃなくて、アキちゃんと二人でしっぽり……」
「お兄さん、粘り気のある食べ物が好きって言ってましたから、きっとエッチも粘っこ
くてしつこいんでしょうね。ねちっこく攻められてたっぷり焦らされた挙句に、とう
とう陥落して愛欲に溺れるショートヘアの金髪美少女……あ、これネタに使えるかも」
 カナミとマナカのエロボケが暴走する。あっという間に話がつき、その日はアキを
マナカとショーコが、シンジをカナミが尾行するということで方針は決定した。




「じゃあ行こうか」
「はい……」
 シンジとアキは、駅前の噴水のそばで待ち合わせ、合流したところだった。アキを
尾行してきたマナカとショーコ、シンジを尾行してきたカナミも、ケータイを駆使して
物陰で合流した。こっそりと二人の様子を伺う。
(やっぱり……アキちゃん、お兄ちゃんと待ち合わせだったんだ……)
 カナミはショックが大きい。ぱっちりした目を見開き、体がぷるぷると震えている。
(どう見てもカップルですね……いつからツキ合ってるんでしょうか……)
 どうしてそこをカタカナにするんだ、マナカ。
(ほら、移動するわよ)
 ショーコはまだ冷静だ。さすがにエロ経験値が違う。
 シンジがあたりをつけていたホテルへ、寄り添って向かう二人。それを尾行して、
物陰から物陰へ移る三人。
 電柱の影からポストの後ろに移ったところで、思わぬ人物に見つかった。
「あれ、ショーコ? それにカナミにマナカも。何してるんだ?」
 そこに居たのは、封筒を手にしたジャンパー姿の金城カオル。
「あら金城。うん、ちょっとね。そちらこそ、その手紙は何?」
「わっ、いや何でもないよ、うん」
 カオルはそれを隠すが、既にマナカが宛名を読み取っていた。
「サンタさんへ……ですか。今日もピュアってますね」
「えっ、あっ、その」
「カオルちゃん、住所知ってるんだ?」
「……うん、調べた。ネットで」
 親指をピシ! と立てるカオル。
「それならカオルさん、クリスマスイブは裸で寝たらどうです?」
「え、どうして? パジャマ脱いだら寒いだろ」
「だって、サンタさんは男性なんですよ? プレゼントをくれるサンタさんにお礼です
よ。」
「え、ええっ? そんなこと、出来ないっ!」
といいつつ、なぜか、サンタにクリスマスプレゼントに指輪をはめてもらうシーンを
想像して、ぽっと赤くなるカオル。
「サンタが部屋に入ってきたときにカオルさんが裸で寝ていたら、プレゼントも超豪華
になるかも知れませんよ? その代わりにナニをハメられるかもしれませんが」
「そ、そう? サンタさん、本当に、指輪を私にはめてくれるかな……」
 恍惚とした表情で左手の薬指を見つめるカオル。それ以前に、サンタって独身なのか?
「指輪じゃなくって、ナニですよ、ナニ」
「え? ナニって何? ねえねえ」
(突っ込み役が居ないと本当に止まらないわねえ)
 ショーコが目を縦棒二本にしてあきれた時。
「……あーっ! いない!」
 カナミの声が響いた。カオルに気を取られた三人はようやく本来の目的を思い出し、
シンジとアキが歩き去った方向に目をやったが、既に二人の姿は曲がり角の向こうに
消えていた。




「ねえねえねえ」
と三人を見回すカオルは放っておいて、尾行中の三人はあわてて曲がり角を曲がった。
とりあえずカオルもあとを追う。
 だがその先には、二人の姿はもう無かった。
 周りを見回すと、右手の角にちょっとしゃれたレストラン。左手の角には産婦人科。
そしてレストランの向こうに聳え立つ、派手にライトアップされたラブホテル。
「……どこだと思う?」
「ここかしら?」
 レストランの看板を眺めるショーコ。ちょっと高級すぎて、彼らが中に入って偵察す
るのは無理そうだ。
(素敵な雰囲気ねえ。頼んだら彼に出す料理だけ、精力剤を入れてもらえるかしら? 
それならデートに使うんだけど。そのままラブホへGo出来るし)
 本来の目的を忘れ、私的事項に悩むショーコ。
「でもお兄さんは、料理よりもアキさんを食べたいんじゃないでしょうか。もし、もう
食べたとすれば、こっちかも」
 マナカが産婦人科の看板を眺める。
「ということは……まさか、アキちゃんのおなかの中にお兄ちゃんの子が!? ゴムし
なかったのかな? アキちゃんには、ちゃんとつけ方教えといたのに!?」
 またしても、問題ありまくりの感想ではある。
「それとも、ちょうど食べようとして、あそこでしょうか」
 マナカがラブホテルを見上げる。以前、休日にばったり会ったアキと二人で試しに
入ってみたところだ。その一室にちょうど明かりが灯るのが目に入った。
「ホテルって書いてあるけど、家があるのにどうしてお金払ってホテルに行くの?」 
 さすが金城カオル、どこまでもピュアだ。
「ですからナニをするためですよ、ナニ」
「だから、ナニって何? ねえねえねえねえ」
 突っ込み不在のなか、止まらないボケが続く。それもようやく終わりをつげ、尾行
対象を見失った三人もようやくあきらめ、カオルも含めて冷たい風に吹かれつつ、とぼ
とぼと帰途についた。そのころ、アキとシンジはラブホテルの中、たったいま明かりが
灯った一室にいたのだが。

 家にたどり着いたカナミは、一人侘しく、レトルトカレーで食事を取った。
(お兄ちゃん……一人で食事なんて寂しいよう……)
 可愛らしくもいじらしい、いい妹だ。これで無駄にエロくなければだが。
(……でも、相手がアキちゃんなら、お兄ちゃんが幸せならいいか……あ、でも、お兄
ちゃんに揉まれてアキちゃんのおっぱいが大きくなったら、許せないかも)
 だからもうちょっとましな感想はないのか。
(なら、私もお兄ちゃんに揉んでもらおうかな……『アキちゃんのは揉めて私のは揉め
ないの?』って、泣きながら迫ったらどうだろう?)
 カナミの暴走は近そうだ。


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