作品名 作者名 カップリング
「初老の頃の授かり物」 トマソン氏 -


「ああ、みんな、紹介しよう、彼女は−」
「いつも主人がお世話になってます。妻のミナコです。」
 保母の宮本レイコ先生をはじめ、佐々岡アヤ先生、それに園児の黒田マナカも、
目を点にして、流石に動揺を隠せずにいた。

 ここはひだまり幼稚園。
 園長の長渕ハジメ先生はこの日、愛妻弁当を持ってくるのを忘れ、奥さんのミナコに
届けてもらったところだった。弁当を受け取るついでに談笑しているところに3人が
やってきて、
「園長先生やりますね、愛人なんて」
「仕事場での逢い引きは感心しません」
等、無茶な会話を始めたため、あまりに若い妻を周囲に紹介したのが、冒頭の会話と
いうわけである。

 ハジメ先生はかくて、職員室で若い妻に見守られながら愛妻弁当を広げ、うなぎ、
朝鮮ニンジン、にんにくなどからなる弁当をまむしドリンクで平らげることになった。
 少し離れたところで、おかずの内容を確認した佐々岡先生と宮本先生によって
「なるほど、あの奥さんも色モノですね」
などと会話がなされていたのだが、幸い、妻の相手をしていたハジメ先生には聞こえ
なかったようだ。



「おいし?」
「もぐもぐ……うん、うまい」
 ハジメ先生は妻の手料理に舌鼓を打ちながらも、心中、少々寂しい思いをしていた。
(ミナコ……こう、精のつく料理ばかり作ってくれるというのは……もっと頑張って、
ってことか……やっぱり、私との夜の生活には満足してくれてないんだな……)
 長渕ハジメは既に61歳。還暦を越えて、若々しい伴侶を得ているだけでも、世の
中の基準では望外に幸せ者である。が、やはり若い妻にとっては、彼との性生活には
少々の不満を持つのも当たり前といえる。
(それでも、ミナコは浮気などせず、私に尽くしてくれる……)
 妻のミナコは子供が大好きなのだ。もちろん、彼女が自分の子供を欲しがっている
とは彼も気づいている。また、長い独身生活の末、若くて美人の奥さんとやっと結婚
できた彼自身もまた、子供が欲しい点では劣るものではなかった。
(私が、頑張らなければ……)



 ひだまり幼稚園の園長としての、子供達とのにぎやかなひとときも終わり、いつもの
夜がやってきた。
 風呂に入り、妻を相手に晩酌を済ませ、ベッドに入ったハジメ。
 妻が片付け物を終え、隣のベッドに入ったのを気配で確認すると、ハジメは頃合を
見計らって、足音を忍ばせて妻の布団を訪れる。
 気配を感じ、ミナコははっと目を開けた。
「……あなた……」
「ミナコ……いいかい」
「……はい……」
 ハジメ先生はミナコの布団にそっと身を滑り込ませ、隣に横たわる女の体に手を
伸ばした。幼稚園での先生業で疲れた体に鞭打って、妻の体に挑む。

 ミナコはミナコで、今日も夫のために努力を怠ってはいなかった。夕食に忍び込ま
せた強壮剤。勝手知ったる夫の好みである、ピンクのネグリジェと清楚なショーツ。
普段からの努力の甲斐あって、夫のハジメは年齢の割りにはきわめて頻繁に、愛の
営みを行ってくれる。
 だがなにしろ、夫は年齢が年齢だ。無理をして体を壊しては元も子もない。
「あなた……嬉しい……でも、疲れているなら、無理をなさらないで……」
「ミナコ……行くぞ……」
 ハジメとしても、妻の気遣いは嬉しいが、ここで引き下がるわけにはいかない。
 子孫を残そうとする、種としての、オスとしての本能。



 ハジメの手が優しくネグリジェを脱がす。若々しくも熟れた女体があらわになり、
ハジメの手のひらが、指が、唇が、舌が、そっと妻の全身を丁寧に、丹念に愛撫して
いった。ミナコの熟れた体はどこをとっても吸い付くような肌で、何をされても敏感な
反応を返してくる。
「あっ、あん……」
 ハジメの手のひらが豊かに実った乳房を揉みしだき、女の首筋を男の舌が這い回る。
「ミナコ……綺麗だ……」
「ああっ……あなた……はあ……素敵よ、あなた……」
 ハジメの肉体は、体力、精力は既に衰えている。若い頃のような、体力に任せて回数
で勝負するような真似はもう出来ない。
 愛する妻に可能な限りの満足を与えるために。少ないチャンスを生かし、子宝に恵ま
れるために。ハジメは、妻との性生活には常に一期一会の覚悟だった。

 ミナコの体に存分に愛撫を加えていくうち、いつものことながら、若々しく張りの
ある肌理の細かい肌に、ハジメは陶然となった。年相応の老いが現れた指が、乳首を
優しく弄び、つつき、舐る。シワが目立つ顔が、すべすべした女の肌を滑り、女の反応
を引き出していく。
「ミナコ……」
 そっとミナコの秘所に舌がすべり込む。そこはもう、若い女の愛液で溢れんばかりに
しとどに濡れそぼり、独特の味がする液体がハジメの舌に絡みついた。
 そっと熟れて成熟した秘貝を舌で押し開く。
「あああっ、あん……あなた……もう、もう、来てぇ……」


 ハジメは自分の男性器を見やる。ここに至っても、ハジメはまだ半勃ち程度で、挿入
できる状態には至っていない。ハジメは寂しさにとらわれた。
(あと20年、いやせめて10年も若かったら……)
 それと見て取ったミナコが、優しくささやく。
「あなた……私に任せて……ここに寝て……」
 言われるままに仰向けになったハジメのそれに、ミナコはそっと口を近づけた。
 優しく舌を滑らせ、先端の割れ目をなぞり、裏筋、玉袋を漏れなく舌で刺激し、
あるいは全体を口に収め、渾身の力で吸う。ミナコはそれを怒張させるべく、手管の
限りを尽くした。
「お、おうっ……ミナコ……」
 最後の力を振り絞るように苦しげに、だが確実にだんだんと角度があがっていく。

 ミナコのフェラチオの力を借りて、ついに準備完了したハジメのそれ。
「私が、上になるね……」
 ミナコは夫を気遣って、自分が夫の上にまたがると、そっと位置を合わせ、腰を下げ
ていった。熟れた女の体内に、年老いた男の肉棒がずぶずぶと侵入していく。
「あああっ!」
「おおうっ……」
 騎乗位で結合した二人は、しばし陶然となった。ミナコはさらに快楽を求め、そっと
腰を振り始める。腰を沈めると、ハジメの肉棒がミナコの奥まで届き、子宮にズキンと
衝撃が来る。わずかに浮かすと、ミナコの体内に息づく襞の全てが、男の精の全てを
絞りつくそうと、ハジメの肉棒に吸い付き、絡みつく。
 体内から全身に流れる快感に身を任せ、ミナコは腰を振り続ける。
「ああっ、あなた、あなたぁっ……あ、あーっ!」
「お、おおうっ……ミナコッ……」
 間もなく二人は達し、熟れた女の体内に、大量とはいえないまでも白濁した液体が
吐き出された。
 無数の精子たちが、けなげにも子宮に向かって、決死の遡行を開始した。




 ハジメは荒い息をつき、ベッドに横たわったままだ。ミナコもまた、がっくりと
ハジメの上に体を倒し、全身の肌を合わせて余韻に浸る。
 ハジメは両腕をミナコの体に回し、互いの体が押し付けられるように抱きしめる。
しっとりとした肌を全身で感じ、若々しい女体を抱ける幸せを改めて思った。
「ミナコ……こんな年寄りと結婚して、後悔してないかい?」
「ううん、あなた……私、幸せよ……」
「……ありがとう……私も幸せ者だ……」
 今日もまた、疲れた老骨に鞭打ったハジメであった。

(いつまで、こうして体を重ねていけるだろう……もし、子供が出来なかったら、
ミナコは晩年を一人ぼっちで過ごすのだろうか……)
 そう思うと、ハジメは激しい夫婦の営みの余韻のなかにありながら、気分が沈むのを
覚えた。
(……そんなことは、させない……)
 思い直し、決意を新たにするハジメであった。



 今日は日曜日。ハジメは自宅の居間でくつろいで、昨日の朝のことを思い起こして
いた。
(昨日は、また園児達にからかわれてしまったな……)

 ハジメ先生は園長として、毎朝門に立って、登園してくる園児達を迎えるのを日課と
しているのだが、昨日の朝は、挨拶を交わした園児達が、少々覇気のない園長先生の
様子を心配してか、話しかけてきた。
「先生、なんだか元気ないですねー」
「ああ、ちょっと体の調子がね。 トシだからな〜」
「ふーん、かわいそ〜」 
 そういう園児達の視線は、なぜかハジメ先生の股間に集中。
 ハジメ先生はその憐れみの視線にたまらず、
「ココばかり凝視しないで!」
と股間を押さえてしまったのだ。
(それにしても、うちの園児達は、そういう方向に興味がありすぎなんだが……)

 そこへ、エプロン姿のミナコが、ハジメがくつろぐソファにやってきた。
「あなた……お話ししたいことが……」
「……?」
 ちょうど前日、園児達に憐れみの視線で見られたことを思い出していたとあって、
ハジメはネガティブな思考に囚われた。
(まさか夜の生活に我慢できなくなって、別れましょう、とか……いや、まさか……)
 努めて平静な声を出し、妻に問い返す。
「どうしたんだ、ミナコ?」

「……赤ちゃんが、出来たの……」
 ミナコは腹をいとおしげに撫で、顔を真っ赤にして、そう告げた。



 ハジメは、数秒の間、固まった。ついで、夢かとばかり驚き、言葉に出来ないほどの
嬉しさがこみ上げてくる。
「……ほ、ほほ、本当か……」
「うん……昨日、病院に行って来て……」
「……ひゃっほー!!!」
 ハジメはミナコを抱きしめ、ダンスのようにくるくると回転して、喜びを爆発させた。
 ミナコは振り回され、軽い悲鳴を上げる。
「きゃあっ! ちょ、ちょっと、あなた……」
 ハジメは回転を止めた。ミナコの体に回した腕に、力を込める。
「ミナコ……私たちの、子供が……ミナコ……大事にしてくれよ……」
「うん……きっと、元気な赤ちゃんを生むわね……」
 まじめに誠実に生きてきて、人生の秋を迎えた男性にやってきた、突然のプレゼント。
 ハジメは柄にもなく、こみ上げる涙をおさえ切れなかった。



 翌日出勤したハジメ先生は幼稚園の職員室で妻の懐妊のことを話し、保母の宮本
レイコ先生と佐々岡アヤ先生に祝福を受けた。
「わあ、おめでとうございます!」
「へえ、驚きました。まだ種があったなんて……」
 そこまで言いかけたところで佐々岡先生は、宮本先生に逆水平チョップで突っ込みを
食らい、校庭に引きずり出されていった。
 この二人のボケツッコミは、ひだまり幼稚園ではいつものことだ。佐々岡先生のイン
ポテンツネタには、ハジメ先生は毎回毎回落ち込まされてきたのだが、今日は特別だ。
 こんなことで、嬉しさが消えてなくなりはしない。

 ハジメ先生は、窓から園庭の陽だまりに視線をさまよわせ、湯のみからお茶を含んで、
生まれてくる子供に思いを馳せた。
 間もなく、ことを聞きつけた園児達が、ハジメ先生に押し寄せて取り囲んだ。
「ねー、宮本せんせいに聞いたよ! 園長せんせいのところ、赤ちゃんが生まれるの?」
「ああ、そうなんだ」
 ハジメ先生は満面の笑みだ。
「わーい、おめでとー!」「よかったねー」
 園児達は口々に祝福の言葉をかけてくれる。数人の園児が、ハジメ先生の体によじ
登り、おおはしゃぎだ。少し離れたところで、宮本先生が微笑みを浮かべ、はしゃぐ
園児たちを見守っている。
「はっはっは、ありがとうありがとう……」
(私の子供も、こんな風に明るくまっすぐに育ってくれるといいな……)



 はしゃぐ子供達に目を細めていたハジメ先生に、ひまわり組のなかでも一番元気な
女の子、城島カナミが質問を浴びせた。
「ねー園長せんせい。中だしってやっぱりキモチいいの?」
 ぶばっ。たまらず、口にわずかに残っていたお茶を吹くハジメ先生。
「か、かか、カナミちゃん……」
「だって、子供が出来たってことは……」
「は〜いみんな、お外で遊ぶ時間よ〜」
 宮本先生が両手をパンパンと叩き、すかさず子供達を外へ連れ出す。子供達の手を
引き、戸口を出て行く宮本先生が振り向き、ハジメ先生と視線が絡み合った。
(ありがとう宮本先生)
(どういたしまして)
 以心伝心、目で会話。これまたいつも通りの、ひだまり幼稚園の風景。

 いつもと違うのは、間もなく新しい命が家族に加わること。
(私の、私の子が……これからは、子供が物心つくまで、頑張れってことだな……)
 さらなる十字架を背負ったにもかかわらず、ハジメ先生の心は晴れやかだった。

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