作品名 作者名 カップリング
「影四つ 第四話 First Kiss」 そら氏 -

「そっかぁ・・・カナミもなんだ・・・」
ある日、矢野アキは自宅のベッドに腰掛けながら友人のカナミからのメールに目を通していた。
いつものふざけたエロメールではなく・・・いやある意味ふざけたメールなのかもしれない。世間的には。
それは前回の事をあらわしたメールだった。カナミの実の兄、シンジと関係を持ったこと。
アキはふぅと息をついて体をベッドに倒した。既にマナカもシンジと関係をを持った事は知っている。
話を聞いたとき、胸が痛んだ。理由は分からない。ただ、何だか胸が締め付けられる感じを覚えた。
しかし、アキにはその正体が何かは分からなかった。昔にしろ今にしろアキは何気に異性に人気がある。
顔だって可愛らしいし、スタイルもいい。なによりそのさっぱりした社交的な性格が受けているのだろう。
だが、アキはただの一度も恋愛を経験したことがなかった。別に興味がないわけじゃない。アキだって
年頃の女の子だ。興味がないわけじゃなかった。ただ、アキを恋に陥れる相手がいなかっただけ。
しかし・・・そんなアキにもついにそのような相手が現れる。カナミの兄のシンジ。あくまで「そのような」だ。
アキ自身は好きと気づいてないかもしれない。しかし、本能は確実にシンジを求めていた。
シンジがマナカにキスしようとしたのを止めた本能。マナカ、カナミがシンジと関係を持ったと聞いた時の
アキの胸を締め付けた気持ち。それは「嫉妬」だった。誰だって好きな人が他の異性と仲良くしてるのは
見たくないだろう。増してや、それが肉体的関係になれば特にだ。
その嫉妬の気持ちこそがアキがシンジに抱いてる気持ちを決定づける物だった。

「そりゃ嫉妬ね。ふふふ、そうかそうか〜。アキもついに・・・・うふふ〜。」
あくる日、アキは珍しく友人の岩瀬ショーコと帰り道寄り道をしていた。
「嫉妬・・・なのかなぁ?ただ、見たくなかったのよ。」
アキがハンバーガーをパクつきながら言う。ショーコは何だか嬉しそうに話を聞いている。
「でもさ、お兄さんとマナカはキスしてたんでしょ?何でその時だけ止めたの?」
アキ自身それが疑問であった。実際、あの時(1話目)シンジとマナカはアキが止める前にもキスをしていた。
もちろんあの時だって多少は胸が痛んだが、あの止めた時ほどじゃなかった。何か・・・きっと何かがあったのだ。
「まぁ、あんた自身がそれが分かれば自分の気持ちを分かるんじゃない?私はあんたはカナミのお兄さんが
好きなんだと思うけどね。」
ショーコがズズズとジュースを吸いながら言う。シンジが好き。自覚はしてないが・・・きっとそうなんだろう。
「何で止めたかかぁ・・・う〜ん・・・何か体が動いたんだよなぁ・・・」
「ふふ、もしかして疼いたとか?私もして欲しい!みたいな感じにさ。大丈夫よ、アキ。焦らしもなかなか・・・」
「私はそんな話はしていない。」
とハァハァ言い出したショーコにアキは鋭く突っ込みを入れた。アキはやれやれとため息をつきながら
ジュースをすする。そんなアキにショーコは髪をかき上げながら言った。
「ま!あんたら恋愛赤点生徒じゃない私は分かっちゃったけどね〜。」
「なにぃ!?だったら教えてくれても・・・」
しかしショーコはフフンと笑いながら
「ダメよ。これはアキが気づかないと。でもそうね・・・ヒントならあげるわ。アキが止めたキスと止めなかったキス。
アキが本能的に見たくなかったのは・・・誰からキスすることだったでしょう?」
と言った。アキは首を傾げる。正直意味が分からない。同じキスに変わりないんじゃ?
「ああもう・・・あんた本当鈍いわね・・・もう一個ヒントよ。例えば・・・これ。」
ショーコはアキの肩を掴む。アキは不思議そうに目を丸くしている。
「んで、次はアキ。あんたが私の肩を掴んで?」
アキは言われたようにショーコの肩ををつかんだ。そして、気づいた。
「あ・・・そうか・・・そうなんだ。」
アキの決して良くない・・・と言うか悪い方の頭が閃いた。それはもうサガシリーズの電球のように。
「そういうこと!さ、分かったら行動しなさいな。このままじゃマナカとカナミに追いつけないわよ?」
ショーコは笑いながら言った。アキもニッコリ笑うと
「うん。ありがとう、ショーコ。」



「やれやれ。今日はカナミもいないし、昼飯は自作すっかなぁ・・・」
日曜日。カナミはマナカと遊びに行くと言って出て行ってしまった。カナミはお昼作っとこうか?とシンジに
言ってはいたが、いつもカナミに頼る訳にはいかないとシンジはカナミの提案を断ったのである。
シンジが台所で何を作ろうか思案に暮れていたときだった。ピンポ〜ンとチャイムが鳴った。
「あん?宅急便か?はい、城島ですけど?」
「あ、こんにちは、矢野です。」
インターホン越しに聞こえてきたのはアキの声だった。シンジは少し不思議に思いながらも玄関をあける。
「あ、お兄さん。こんにちは。」
玄関を開けるとそこに居たのはやはり矢野アキだった。セーターにミニスカート。首にはマフラーを巻いて
多きめのコートを羽織っている。冬のなので厚着気味だが、それでもアキの豊満な胸が分かる。
「アキちゃん。どうしたの?てっきりカナミ達と一緒だと思ってたけど。ああ、外は寒いし上がってよ。」
シンジはアキを家の中に招き入れた。とりあえずリビングに通してシンジはソファに腰を下ろした。
「お邪魔します。ええっと・・・今日は少しお兄さんに用があって・・・」
アキは通されたリビングでマフラーとコートを脱ぎながらいう。コートを脱ぐときに否応なしに突き出された
胸がシンジをドキドキさせる。服を着ててもカナミやマナカとか比べ物にならないのが分かる。
「あの・・・お邪魔でしたか?」
アキがオズオズとシンジに聞いてくる。
「ああ、いや。大丈夫だよ。特にやることなくって暇だったし。」
シンジはハハと笑いながら答える。アキはそれを聞くと安堵の息を漏らし、次の瞬間には神妙な顔になった。
「それでですね・・・その・・・お話、聞いてもらえますか?」
「え、ああ。うん。聞くよ。」
シンジは何となく予感していた。いや、これは予感なんかじゃないかもしれない。分かっている。あの事だ。
無関係そうではあるが、アキだって当事者だ。
「あのですね。私、ずっと考えていたんです。何であの時・・・マナカとお兄さんのキスを止めたのかって。」
シンジは思い出す。確かにあの時、マナカとのキスをアキに止められた。
「ずっと不思議だったんです。あの時より前からお兄さんとマナカは・・・その・・・キスしてたのに。」
そうなのだ。アキが止めた時より前に、すでにマナカとシンジはキスをしているのである。
「うん・・・恥ずかしい話だけど、俺とマナカちゃんはキスしてたね・・・」
今思い出しても赤くなる。マナカからキスされた事。しっとりとした唇の感覚は今でも離れない。
「でも、私分かったんです・・・私が無意識に見たく無かったモノが何なのか・・・」
シンジはゴクリと息を呑む。
「私・・・お兄さんからキスするのが見たくなかったんです・・・自分からキスするって事は・・・その人が好き・・・
想っているって事・・・私はきっと、それが見たくなかったんです。」
シンジの頭にガツーンと衝撃がくる。些細といえば些細な理由だろう。でも・・・この少女はそれを良しと
しなかった。



「あはは。我ながらバカな理由ですよね。私、嫉妬してたんです。お兄さんからマナカにキスする事に。
それは、お兄さんがマナカが好きって事・・・・認める事になっちゃうから・・・」
アキが言葉を続ける。シンジはただただアキの言葉を聞いていた。
「私・・・好きみたいです・・・お兄さんの事。嫉妬するって事はその人が好きって事だから・・・」
そしてアキの口から出た告白。シンジはその言葉を聞くと、無意識に体が動いた。
「!?お兄・・・さん・・・?」
シンジはアキの肩をガシッと掴んでいる。アキは少しビックリした表情を浮かべている。
「だったら・・・これが俺のファーストキスになるのかな・・・」
「え・・・んんっ・・・・」
シンジはそのままアキの唇に自分の唇を押し付けた。アキの体がビクッとしたのが分かる。しかし、それは
拒絶ではなくただの驚きによるものだ。アキはそのままシンジに体を預けた。
長い時間が過ぎる。長い長い・・・本当に長い触れるだけにキス。
「ん・・・お兄さん・・・・」
どれだけキスしてただろうか、シンジが唇を離すと言った。
「軽蔑されるべき事なんだろうけどさ・・・知っての通り俺はマナカちゃんとも・・・カナミとも関係を持った。
たださ・・・その実一度も俺からキスはしなかったんだ・・・だから・・・今のが俺のファーストキス。」
少し頬を染めながらシンジは優しく言った。ただの詭弁かもしれない。だが、アキにはそれでも嬉しかった。
アキにとって重要なのはその人の意思で、その人の考えで関係を持つこと。シンジの言ってることが本当
とは限らない。でも、アキにとってシンジから・・・自発的にキスをしたのはアキが初めて・・・その言葉が
嬉しかった。
「だったら・・・私もです・・・」
アキは少しだけ顔を上げるとシンジの唇に自分の唇をくっつけた。そのまま腕をシンジの首に回す。
シンジもアキの肩を抱きしめる。伝わってくる互いの体温が心地よい。
「ん・・・っふ・・・」
息が漏れる声がする。しばらくするとアキは唇を離す。
「えへへ・・・私も・・・お兄さんがファーストキスの相手です。」
アキはそう言って自分で照れながらも笑った。そんなアキが愛しくてシンジはアキを抱きしめる。
「ひゃ・・・ん・・・温かい・・・男の人ってこんな温かいんですね。」
ビックリしながらもシンジを受け入れるアキ。シンジの胸の中で心地よさそうにしている。
「アキちゃん・・・キスしていいかな?その・・・もっと深い方・・・」
シンジがアキに言う。というのも、さっきの2回はただ触れるだけのキスだったのだ。



「あ、その・・・いいですよ。ファーストキスで・・・その・・・ディープは嫌ですけど・・・2回目ならいいです。」
アハハと髪をかきながら言う。シンジはアキの言葉を聞くとアキに顔を近づけていった。
アキもそのまま目をつぶりシンジの唇を待った。
「ン・・・ふ・・ちゅ・・・はぁ・・・」
シンジの舌がアキの口の中に入ってくる。アキも初めての経験に戸惑いながらも赴くままにシンジと舌を
絡ませる。徐々に息が荒くなり、顔が紅潮していくのが分かる。
「はん・・・ん・・・じゅ・・・ちゅる・・・」
二人の交換し合った唾液が滴り落ちる。しかし、二人はそれを気にする事もなくキスを続けた。
シンジはそのままアキの胸を包み込んだ。しかし、アキはそれにビックリしてかバッと体を引かせた。
「ひゃっ!!あ・・・ごめんなさい・・・その・・・」
「あ、俺の方こそごめん・・・その、つい・・・」
微妙に気まずい雰囲気が流れてしまう。それを断ち切ったのはアキだった。
「あの・・・その・・・お兄さんは好きです・・・ちょっとビックリしただけで・・・」
アキが手で何か意思表示しながら言う。
「うん、俺こそ何か調子乗ってた。ごめん・・・」
「いえその・・・お兄さんとするのは・・・嫌じゃないですよ?その・・・え、エッチ・・・」
最後の方はボソボソと小さい声になってしまう。男っぽいと言われ・・・と言うか実際それっぽい所が
あってもアキも女の子だった。シンジも思わずしおらしいアキに見惚れてしまう。
「お兄さんはしたいですか・・・・・エッチ。」
「・・・そりゃまぁ・・・男だし・・って。何か言い訳がましいかな。」
ハハとシンジは頭をかく。アキは顔を俯かせながら言う。
「だったら・・・いいですよ。お兄さんの事好きだから・・・私も全然知識とかないですけど・・・その、色々
頑張りますから・・・・」
アキが手をモジモジさせている。シンジはそれを見て本当に可愛らしい子だななんて思ってしまう。
「だから・・・一個だけお願いがあります・・・お兄さんから・・・言ってください。その・・・したいって。」
まだまだ顔を伏せているアキ。きっと彼女には「その人から」と言うのが大きい意味を持つのだろう。
シンジはアキの肩を掴むと顔を上げさせて言った。
「俺は・・・アキちゃんとエッチしたい。」
「ふぇ・・・は、はい・・・が、頑張ります。」
アキの体の筋肉が固まっていくのが分かる。どう見てもガチガチだ。シンジがゆっくりアキの体を撫で回して
リラックスさせようとしていた時だった。その敵は急にやってきた。
ぐ〜〜〜〜〜 ぎゅるるるるるる〜〜〜〜
「あ・・・・」
そう、アキがやってきたのはお昼。そしてシンジは昼食を作ろうとしていた。つまり・・・
「ぷ・・・はは・・・あはははははは!!お兄さん、お腹凄い音ですよ!?」
そう、シンジの腹の虫が盛大な音を立てて鳴ったのである。ここでちょっとばかしキザな男なら
「いいんだよ。なぜなら俺はこれから君を食べるんだから。」
なんてあま〜〜〜〜い言葉を言うのだろが、シンジはそうもいかない。もう、ムードはぶち壊しだった。
「お兄さん、お昼御飯作りましょうか?」
アキが笑いながら言っている。どうやら相当ツボだったようだ。シンジもやる気がなくなったのか
「・・・そうだね。アキちゃんも食べるかい?一緒にお昼作ろうか。」
と言ってソファーから腰を上げた。アキもそれに連れ添って台所へ向かう。
どうって事はない。これからでいいんだ・・・そう、これからで・・・


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