作品名 作者名 カップリング
「後の祭り」 アカボシ氏 シンジ×マナカ

「ただいまー。」
 夕方。シンジが玄関に入ると、そこにはカナミが待ち受けていた。
「おかえり。早かったね、お兄ちゃん。」
「ただいま、カナミ。」
「ほら、もう皆来てるから。上がって上がって。」
 はしゃぐカナミに袖を引かれ、シンジは居間へ向かった。
 シンジが大学生となり、一人暮らしを始めて最初の春休み。バイトもないので、久しぶりに自宅に
帰ってきた。親からの仕送りだけでは暮らしていけず、バイトに明け暮れる毎日を過ごして来たので、
今年はこれが初めての帰省である。ちなみに正月に帰ってこれなかったのは、クリスマスに
プレゼント代とデート代に金を使い切ったからである。 

「では、お兄ちゃんとアキちゃんの交際一周年記念を祝して、乾杯!!」
「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」
「あ、ついでにお兄ちゃんの進級祝いも兼ねて乾杯!」
「ついでかよ!」
 宴が始まると同時にシンジのツッコミが炸裂。
 居間のテーブルいっぱいに豪華な料理と、ジュースやシャンパンが並んでいる。もちろんカナミや
マナカ達の手料理だ。腕はあっても金がないシンジにとっては、久しぶりのまともな食事である。
 さりげなくすっぽんの生き血やら、マムシ酒などが混ざっているのには何やら思惑を感じるが。
「シンジさん。お久しぶりです。」
 ジュースをもったチカが、シンジに挨拶をする。アキと付き合うようになってしばらく経ってから、
シンジはチカに告白された。勿論断ったわけだが、チカは自分の気持ちに区切りをつけ、アキと
シンジの仲を応援してくれるようになった。 
「久しぶり。ちょっと見ない内に、大きくなったね。」
「分かります?やっと挟めるようになったんですよ。」
(おや?身長の話をしてたんだけどなぁ。)
 以前にもこんな事があった気がするが、深く考えないようにするシンジ。
「シンちゃん、元気にしてた〜?」
 皿一杯に料理をとったエーコがやってきた。チカは多少大人びたように感じるが、エーコはまだ
色気より食い気といった雰囲気だ。
「ん、まぁな。そっちも元気そうだな。」
「一人暮らし、羨ましいなぁ。もう毎日のように彼女を連れ込んでヤりま」
「当の本人がいる席でそういう発言をするな!」
 隣に居るアキを恐る恐る見るが、聞こえていないようだ。



「こんにちは、お兄さん。お邪魔してます。」
 後ろから声をかけられた。振り向いた先にいたのは、マナカだった。
「こんにちは、マナカちゃん。」
「今日のお料理は、私達が腕によりをかけて作りましたから、たくさん食べて下さいね。」
 にこっと笑うマナカ。
「マナカちゃん、大分表情が柔らかくなったね。好きな人でも出来た?」
「さあ?どうでしょう。」
「でも、前より綺麗になったと思うよ。」
「褒めたって何もでませんよ?」
 ふふっ、と目を細めて笑うマナカ。その表情に、ドキッとするシンジ。その時、カナミがマナカの
もっているグラスを指差して叫んだ。
「あー!マナカちゃん、それお料理に使ってたブランデーだよ!しかも薄めないで飲んでるし!」
「残り少ししかなかったんで、飲んじゃいました♡」
(酔ってただけかよ!)
 シンジが心の中でツッコミを入れた

 マナカと入れ違いに、今度はショーコがやってきた。
「進級おめでとうございます。」
「うん、ありがと。」
 カチン、とグラスを合わせる。
「アキとは上手くいってるみたいですね。正直、私やマナカは長続きしないと思ってましたけど。」
「え、何で?」
「              シンジとアキが結ばれてから、一ヶ月
      女の体を知ってしまったシンジは、事あるごとにアキの体を求めるようになった
                  SEXだけが目的のデート
                プレイは過激になっていく一方                                                       
           アキはそんなシンジに愛想を尽かし、別れる決意をした
                                        …とまあ、こんな感じに。」
「わざわざナレーションっぽく説明ありがとう。君ら、俺=エロって認識してるだろ。」
「ええ。(断言)だけど、そんなのは杞憂だったみたいですね。アキの事、よろしくお願いしますね。
泣かせたりしたら許しませんよ?」
「肝に銘じておくよ。」
「あ、でも鳴かせるんだったら別に構いませんよ?むしろどんどん鳴かして…」
「あ、カオルちゃん、元気してた?」
 シンジはショーコを無視してカオルに話しかけた。
「お兄さん、お久しぶり。前見た時より、随分男らしくなったんじゃないですか?」
「え、そうかな?」
「うん、私と同じぐらい男らしいですよ!あははは…は、は…」
 金城カオル、うっかり自分の心のキングストン弁を引き抜いて、自沈。
「傷つくなら、もうちょっと考えてからモノ言いなよ。」
「私の事はいいから、アキに構って上げたほうがいいですよ…?」
 ふらふらと幽鬼のような足取りで、カナミの所へ行くカオル。
「アキだって男っぽいのに」
 とか、
「私だってあれだけ胸があれば彼氏が」
 などと恨み節が聞こえてくるような気がするが、シンジは気付かないフリをした。



シンジがアキに話しかけようとして振り向くと、眼前に料理を突き出された。
「これ、食べて…」
 恥ずかしそうに目を逸らすアキ。その料理は、テーブルに並ぶ他の料理に比べて、少々
見栄えが悪かった。おそらくは、アキが作ったものであろう。シンジは、それを口に入れた。
「どう?」
 不安そうな顔で訊いてくるアキにシンジは笑顔で答えた。
「うん、旨いよ。かなり上達したんじゃない?カナミ達、真面目に教えてくれたみたいだな。」
「まぁね。」
 へへ、と頬を指先で掻く。その時、カナミがどこからかマイクを取り出し、高らかに宣言した。
「乾杯の次は、今日の主役、城島シンジと矢野アキの『2人の馴れ初め』をお話したいと思います。」
 「イェーイ!」「ヒューヒュー」「ワァァァ」←歓声テープ
(結婚式じゃないんだから…)
 カナミがマイクで続ける。周りも大人しくカナミの言葉を待つ。
「あれはまだ、別冊で連載だった頃。私の見た目がお嬢様っぽくて、頭にはアホ毛(アンテナ?)が
ついていた頃でした。」
(何を言ってるんだコイツは?)
「そして、2人は第4話、まさにこの部屋で出会ったのです!」
(そうだったっけ?)
「記念すべき2人の初会話は、『どうぞ』『あ、どーも』でした!」
(運命の欠片も感じられねぇな、オイ…)
「そして、2人が交際を始めるきっかけとなったのは、卒業式を間近に控えた春休みのことでした。」
「カナミちゃん?学園生活一年間の説明、丸々すっ飛ばしてるんですが…」
「フラグは幾つか立ってましたが、大した出来事はありませんでした。」
 マナカのツッコミに、カナミはどうでも良さげに答えた。フラグってなんだよ。


「一人暮らしを始めるための引越しの日。アキちゃんはお兄ちゃんの手伝いをする約束をしてました。
その時既に、アキちゃんはその大きな胸に決意を…いや、その胸に大きな決意を抱いていたのです。」
 いい間違いがあからさまにわざと臭い。
「お兄ちゃんが最後の荷物を業者のトラックに積んだ時、アキちゃんが叫びました。」
 カナミが目を閉じて、深く息を吸った。
「好きです、お兄さん!いつの頃からか分からないけど、お兄さんのこと好きでした!このまま
お兄さんに会えなくなるなんて嫌です!!私と…私と付き合って下さい!!!」
 カナミの台詞は、一言一句違わずアキの告白と同じものだった。が、それだけではない。
シンジと離れ離れになりたくないというアキの悲痛な叫びと、不安で張り裂けそうな胸の痛みまで
完全に再現しており、聞く者の心を打った。 カナミ、なんて恐ろしい子…!
「お兄ちゃんの答えはこうでした。
『アキちゃん…俺も、アキちゃんの事好きだ。実は、今日俺の方から告白するつもりだったんだ。
引越しが終わるときに。』と。
 アキちゃんは思いつめる余り、一つドジを踏みました。お兄ちゃんの引越し先に荷物を入れる所まで
手伝う約束だったのに、荷物をこの家から出した時点で告白してしまったのです。
 おかげで、残り半分の手伝いの間、業者の皆さんに終始からかわれっぱなしでした。」
 アキの顔が真っ赤になる。
「いや、その…シンジさんがトラックに乗って行っちゃうのかと思うと、焦っちゃってさ。
その、ドナドナみたいな感じ?」
 しどろもどろに言い訳をするアキ。別にシンジは売られて行く訳ではないのだが。カナミが微笑み
ながら話を続ける。
「でも、ゲンさんもケンヂさんも月形さんも優しく微笑んでいました。」
「業者ってアゴなし運送だったの!?」
 告白の事で頭が一杯で、気付かなかったのはアキだけだったりする。
「そして、彼らは私達にこう言って去っていったのです。
『次回も読まないと怒るよ、フフフ…。』と…!」
「意味がわからん!」
「とまぁ、こんな感じで2人は付き合うことになったのでした。」

「続いて、プレゼント授与です!」
「「え?」」
 驚くシンジとアキに、皆が次々とプレゼントを渡す。
「低温蝋燭(赤)、荒縄、首輪、カテーテル、ペアのマグカップ、ペアのエプロン…」
 シンジが中身を読み上げていく。マグカップとエプロンはチカと金城だろう。
「もうそろそろマンネリ化してきたんじゃないかと思ってさ、やっぱ巨乳は縛らなきゃ!」
 と、カナミ。
「蝋燭は赤じゃなきゃ見栄えが悪いよね!」
 と、エーコ。
「夜の散歩もいいものよ?」 
 と、ショーコ。
「尿道オナニーはクセになるらしいですよ?」
 と、マナカ。
「ありがとう、金城とチカちゃん。他の奴らはお約束をありがとう。」
 アキが感謝の言葉を述べる。ボケ担当の人達にも一応礼は言う。



 料理もなくなり、時計の針が九時を回った頃、祝賀会はお開きになった。皆お泊りの準備は
してきたが、何せ人数が多いので居間を片付けて雑魚寝することになった。
 ただし、アキとシンジはシンジの部屋で寝る事が決まっていた。拒否権なし。渋々二階へ上がった
2人は、シンジの部屋に入り目を疑った。
 そこはカナミのエログッズ倉庫と化していたからだ。部屋の真ん中にはウォーターベッドが一つ。
「「ここで寝ろと?」」
 2人の呟きは誰に聞かれるでもなく、夜の静寂に吸い込まれた。

 一方、居間では。カオルだけが眠りに付き、他の皆は起きていた。
「カナミ、準備はOK?」
「1カメ、2カメ、3カメともちゃーんと隠してきたよ。明日の朝、回収しにいくのが楽しみだね。」
 ぐっと、親指を立てるカナミ。
「ほほほ本当に2人はこれから愛し合うんですか!?」
 チカがマナカに詰め寄る。
「ええ、間違いありません。2人が最後にデートしたのは2週間前、溜まりに溜まってる筈です!
さらにお兄さんのことですから、さっきのプレゼントを使いたがると思います!」
「私愛用の強精剤&媚薬も料理に入れといたからね。」
 ショーコが自慢げに言う。
「どうやって2人の料理に?」
「ん、ほぼ全部の料理に入れといた。」
「なんてアバウトな。」
「どんなプレイするのかな?やっぱり蝋燭で、『アカく染まる』かな?」
「首輪で『調教』かもよ?」
「ここは縄を使って『おっぱい縛り』で!」
「いや、今からそのお題クリアするのは無理でしょう…」
 そんなこんなで夜は更けていった。

 翌朝。
「片付けは私たちがやっておくから、二人はもう帰ってもいいよ。」
「そうか、悪いな。皆ありがとう、楽しかったよ。」
「ありがとね、皆。私たちのためにわざわざ…。このお礼は必ずするから。」
 そこで何故か、シンジが笑った。が、カナミは気にしない。
「いいのいいの。友達じゃない!(そこら辺はギブアンドテイクだから)」
 腹黒い笑みを隠し、2人を玄関まで見送るカナミ。思い出したように口を開く。
「で、2週間後空いてる?」
「え、なんで?」
「2週間後は、アキちゃん処女喪失一周年記念日!」
「何故知ってる!?」
「ちなみに2ヶ月後はアナル喪失記念日。さらに次は」
「「やめれーっ!」」
 2人の怒声がカナミの言葉を遮った。



2人が帰ったあと、全員が居間に集合した。
「さぁ、お楽しみのビデオ鑑賞タイム!映像スタート!」
 カナミが再生ボタンを押すと、真っ暗な部屋の様子が映し出された。
「え、何々?何のビデオ?」
 未だに状況が掴めないカオル。
「お兄さんとアキさんの交尾のビデオ。」
「マナカ、その表現生々しすぎ。」
「あ、電気ついたよ。2人が入ってきた。」

『『ここで寝ろと?』』
 アキとシンジのセリフ。皆が静かにテレビ画面を見つめる。これから起こるであろう
できごとに、胸が高鳴る。が、その期待はすぐに裏切られた。
 シンジは真っ直ぐにカメラの方へ向かってくると、カメラを指差し、
『カナミ!貴様、見ているな!』
 と言った。なんでディオ様なんだ。
「そんなバカな!?カムフラージュ率95%なのに!」
 カナミが叫んだ。なんでメタルギア3なんだ。
「…有る事を前提に探せば、そりゃ見つかるわね。それにお兄さんのことだから、どのアングルが
ベストポジションなのか知ってると思うわ。」
 ショーコの冷静なツッコミが入る。シンジがカメラに喋り続ける。
『お泊りでお祝いをやるとカナミから聞いた時点で俺達は、これには裏があると踏んでいたんだ。
 料理に媚薬でも盛って、俺らの濡れ場を撮る気なんだろうな、と。』
『で、今日私も料理の準備していたら、妖しげな小瓶見つけたんで中身10倍ぐらいに希釈しといた。』
『さらに、俺らはアキの料理をメインに食ってたから、殆ど媚薬は摂取していない。』
「そうだ、アキさん、料理つくる時妙にスキが無くて、いれられなかったんでした。」
「じゃあ、あのエログッズも全く意味ないじゃん…。」
『ああ、これ?これ、全部俺の部屋にある。つーか、飽きる程使った。』
「「「「「飽きる程!?」」」」」
 カオル以外の声がハモった。ビデオの中のシンジがアキに後頭部をはたかれた。
「てか今さ、ビデオの中と会話が成立してなかった?」
 カオルのツッコミはスルーされた。
『で、お前らのことだから、俺らが2週間振りに会ったってことも知ってるんだろ?溜まってるから、
きっとやっちゃうって思ってたんだろ?残念だったな。明日、デートでさ。今日一日我慢すれば、
明日は出玉大放出なんだよ!!それにエロを入れたらレス数がやばい!』
 アキがシンジの頭頂部にカカト落としを入れた。
『身も蓋もないこと言ってないで、もう寝るよ。ああ、それとカナミ。最後に一つだけ…
このお礼は必ずするから。下克上ってやつ?』
 ぞっとする笑みを浮かべ、どこからか取り出した、カナミのものではない巨大で極太で凶悪な形を
したバイブを、ぺろりと舐めた。



「っ!?」
 びくっ、とカナミが恐怖で引きつる。さっき玄関でアキに言われた言葉だ。だからシンジは笑って
いたのだ。アキが電気を消すと画面は真っ暗になり、後は2人の静かな寝息が聞こえてくるだけだった。
 震えているカナミに変わり、マナカがビデオを止めた。
「わ、わわ、私帰りますね?」
「チカ、置いてかないでっ!」
「よく分かんなかったけど、もう帰るね。」
「カナミ、ご愁傷様…」
 一同がそそくさと身支度を整え、帰路につく。部屋に残ったのは、マナカとカナミだけだった。
「私も、帰りますね…」
ようやく硬直の解けたカナミが、震える声でマナカにすがった。
「ど、どどどどうしようマナカちゃん!!膜破られちゃうよ、私!てか、あんなの入れたら壊れるって、
裂けちゃうって、冗談抜きで!!」
「まぁ…自業自得?言いだしっぺですし。今から慣らしておいたらどうでしょう?」
 目をそらすマナカ。多少罪悪感は感じているらしい。
「酷いよマナカちゃん!マナカちゃんとショーコちゃんも共犯でしょ!?一蓮托生っていうじゃない!」
 マナカの腰にしがみつくカナミ。マナカはそのまま引きずって玄関に向かう。
「ショーコさんはとっくに破れてますし、私は貞操帯がありますから…」
 カナミの腕から力が抜け、崩れ落ちる。マナカはそのスキに逃げるように城島家を後にした。
「あとで小説のネタに聞かせて下さいねー…」
 マナカ、親友の貞操の危機ですらネタにしようとするしたたか者。マナカ、恐ろしい子…!
「薄情者ーーーーーーっ!!」
 陽が草木の露にきらめき、小鳥が囀るうららかな春の朝、場違いな叫びがこだました。

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