作品名 作者名 カップリング
「シンジのバレンタインデー」 72氏 -

1.カナミのバレンタイン

さて、今日は2月14日バレンタイン。
朝食を食べ終わり俺が学校に出掛ける準備をしていると
カナミが何かを持って俺の部屋にやってきた。
「なんだ…カナミ?」
「今日はバレンタインだよね。」
「ああ、そう言えば…」
「だから…お兄ちゃんにバレンタインチョコあげるね。はい」
「おお、ありがとう…ってうおぉぉっ!!??」

妹が俺の前に差し出したその黒い物体。それはどう見ても―

「どう?名づけて…『使い込まれたイチモツ』!」

―どう見てもチ○コです。本当にありがとうございました。

「ど、どうって…コイツは…」
妹の手の上で黒光りする、そそり立つ立派な肉棒(まあ正確にはチョコ棒?だけど)。
思わず言葉に詰まる俺。
ご丁寧にも血管まで浮き出ており、無駄にリアルに作られている。
…カナミは一体これを俺にどうしろと言うのか。当の本人は俺の目の前でニコニコ笑ってるし。
「…しかし、これどうやって作った?」
「えっと、まずはバイブから型を取ってね…チョコを固めて…
その後でちょこっと整形して」
「…いや、やっぱいい。もう聞きたくない」



「じゃあ、早速食べてみて♪」
「食べろって…こ、こんなもん食えるか!」
いくらなんでも…こんなモノを口にほおりこむのは…ちょっと…どうなのさ。
「えー、だってこんなに美味しそうなのに…」
いや、確かに一部の女性にとっては大好物だろうけど…
…小宮山先生とか小宮山先生とか、あと小宮山先生とか。

「しかたないなあ…こうやって食べるんだよ、もう」
そう言ってチ○コチョコにしゃぶりつくカナミ。
舌を伸ばし、カリの部分から舐め上げていく。

"ちゅぱ…ちゅぷ…ちるう…ちろ…"

先から竿の部分をじっとりとこねくり回し、美味しそうにしゃぶりつく。
部屋中にカナミの口の中で溶け出したチョコの甘い香りが広がる。

…しかし処女の癖に…いやらしい舐めかたをするな…。
舌の動きが上手すぎる。手練かコイツは。
思わず見ているこっちの下半身まで熱く…いやいやいや、何考えてんだ俺。
「ぬちゅ…くふ…おいしい…」
俺に見られてカナミも恥ずかしいのか、次第にその顔が火照ってくる。
そして息も荒く…
「ちゅぷ…はあ…ふう…あれへ…なんふぁ…」


……荒く……?


…何かがおかしい。恥ずかしいから顔が真っ赤…にしては、明らかに様子が変だ。


「お…おい…カナミ?」
「なんふぁ…ひへほいた…ひやふがひいて…ひたみはい…
(訳:何か…入れといた…媚薬が効いて…きたみたい…)」

…ああ、媚薬ね…どおりで顔が赤くなるわけだ…

…なるほどね…

「…って媚薬をチョコの中に入れんなあ!!

…いや待て、そんなモンを俺に食わせる気だったのか」
「あふぁあ…もうだめぇ…」

"ぱたり…"

―その直後、床へと崩れ落ちるカナミ。
「おい、カナミ?カナミーッ!?」
「あは…大丈夫…でも…ちょっと学校には行けないや…」
うつろな目で俺に訴えるカナミ。どうやらまともに立ち上がることもできないようだ。
「あはは…くやしい…でも…全然身体が動かないよお…お兄ちゃん…」

…こりゃあ本当に駄目だな…カナミ。
全く、あきれて物が言えない。

仕方なく俺はそのままカナミをベッドに寝かせ、一人で学校へ向かうことになった。
カナミの世話でだいぶ遅れてしまったが、走っていけば遅刻はしないで済みそうだ。

…しっかし、あんな物を俺に渡してどうするつもりだったのだろうか?
男のイチモツだぞ…それを男に渡してどうすんだ。
しかも、俺の息子よりもサイズがかなりでかかったし。
大方俺のエロ本やAVを勝手に持ち出して研究したんだろうが…


…新手の嫌がらせか?


2.マナカのバレンタイン

―お昼休み。
繰り返すようだが、今日は2月14日バレンタイン。
うちのクラスでも誰がチョコを貰っただの、貰えなかっただのと話題には事欠かないようで。
…カズヤはカズヤで、さっきから今岡にチョコをねだっては返り討ちに遭っている。

そんなお昼休みに思わぬ来客が。
「―おーい、城島。一年の黒田ってのが呼んでるぞ。」

…え、もしかして…マナカちゃん?

いそいそと廊下に出ると、そこにはマナカちゃんが待っていた。
「あ、マナカちゃん。どうかしたの?」
「あの…お兄さん。カナミちゃんは大丈夫なんですか?」
かなり心配そうな顔のマナカちゃん。
一応、朝カナミのクラスには休む連絡をしておいたのだが。
…ま、そりゃそうだよな。昨日までなんともなかったのに、急に倒れたと聞けば…。
「ああ…まあ大丈夫だろ。心配してくれてありがとう、マナカちゃん」
「いえ…あ、そうだ…お兄さんにお渡ししたいものが」
そう言ってマナカちゃんは手に持ったカバンから箱を取り出した。
「…これ…どうぞ」
きれいにラッピングされた小箱。これはまさか…
「さあ、どうぞ開けてみてください」
「あ、いいの?じゃあ…」

まさかマナカちゃんからバレンタインチョコが貰えるとは…

"ガサゴソ…"

…ってあれ?

…中から出てきたのは、数冊の官能小説。…と、ちっぽけなチョコ。

「私が今までに書いた官能小説なんですけど…
身近な男の人の感想もちゃんと聞いてみたいと思いまして。
チョコはおまけです。せっかくのバレンタインなので」
「そう…ありがとう…」
「あ、食べすぎには注意してくださいね。チョコの中に…」
「…まさか媚薬でも入ってんの?」

「…よく分かりましたね。正確には精力剤ですが。
チョコを味わいつつ、ムラムラした気分で官能小説を楽しめるという画期的な…」

―はあ…カナミといい、マナカちゃんといい…

―このチョコを食べるのはやめておこう…


3.いたいけなバレンタイン

しつこいようだが、本日は2月14日バレンタイン。

…ちなみにカズヤはズボンのチャックを開け、
「俺のココにお前の熱いチョコを突っ込んでくれ!」と今岡に迫り、
望みどおり己の股間に、バレンタインチョコレートと鉄拳をぶち込まれていた。
当然ながらチョコは粉々に。だがカズヤは恍惚の表情を浮かべ悶絶していた。
…誰に渡すチョコだったのかは知らないが、貰うはずだった男は災難だな…。

―放課後。今度は小宮山先生からの呼び出しだ。
遅れたら何をされるか分からない。俺は急いで化学準備室に向かった。
…とは言うものの、呼び出しの時刻には若干遅れてしまった。

化学準備室では、小宮山先生は俺を待ちかねていた様子だった。
「…遅いわよ、城島君。」
「す、すみません」
「…まあ仕方ないわね。
じゃあ早速だけど…これ受け取って欲しいのよ」
「はあ…って…これ」
小宮山先生から渡されたのは―本日幾度となく見た―チョコレート。

…え、まさか小宮山先生が…?

「…残念だけど、それは私からのプレゼントじゃないわ。
…ちょっと事情があってね、代わりに渡して欲しいって頼まれたのよ」
「事情…ですか?」
「ええ、ちょっとね…」
ちらりと化学室を見る小宮山先生。
どうやらチョコを渡したかった子は化学室にいるらしい。

「あの、いるんだったら直接渡せば…」
「…ちょっと今はお取り込み中でね…無理なのよ」
「…そうですか」

…取り込み中じゃしょうがないか。
扉の向こうからは、さっきから怪しげな声が聞こえてるけど。
…ここは大人しく帰った方がいいかもしれない。

「―ありがたく貰っときなさいよ。作った子の愛情がたっぷり詰まってんだから」
「はあ…じゃあ俺はこれで…」
倒れたカナミの様子も心配になってきたので、
俺はチョコを受け取るとすぐに化学準備室を後にした。


―下校の時間。
心なしか、カップルで帰る生徒を多く見かける。
恋が実った成功者。チョコを貰えなかったと嘆く男子。
股間にチョコを突っ込まれた変態。今日は悲喜交々、いろんな人がいる。

しかし…今日は朝からいろいろあって疲れた…
…こういう疲れたときにこそ、甘いものだよな。
早速だが、さっき小宮山先生から受け取ったチョコの袋を開ける。
中からカカオの香りが漂ってくる。えーっと、中身は…トリュフか。
手作りだけあってか、ちょっと形が変だけど。
そのうちの一つを手に取り、口へと放り込む。


"ぱくり。"


…美味しい。

ほのかな甘みのチョコが、さらりと舌の上で溶けていく。
ちょっと不恰好だけど…本当に美味しいや、これ。

…これが「愛情が詰まってる」ってことなのかな。


そう言えば…今日初めてまともなチョコ貰ったな…
妹はチ○コチョコだし、マナカちゃんからは官能小説だし。

えっと…チョコをくれた子の名前…なんて言ってたっけ…
…やばい、聞いてないや。
明日小宮山先生に聞きに行こう。

…また今度ちゃんとお礼しなきゃな…

そんな事を考えながら、俺はカナミの待つ家路へと急いだ。


4.小宮山のバレンタイン

―城島君にチョコを渡して約一時間後。

…ようやく化学室からツヤツヤした顔のマリア先生が出てきた。
どうやらコトは済んだようだ。
「ソレデハ、ご馳走様デシタ。みほサンにヨロシク言っておいてクダサイ」
そう言うとマリア先生はそのまま満足げな表情で出て行った。

化学室に入ると、ミホが放心状態で天井を見上げたまま倒れていた。
その顔からは完全に生気が抜けている。

…やれやれ。今日もマリア先生に徹底的にヤられたみたいね…

「大丈夫?ミホ…あなたもつくづく災難ね。」
「あの…センパイには…チョコ…?」
「安心しなさい。ちゃんと渡しといてあげたわよ」
「ありがとうございます…小宮山先生」
心配事がなくなってほっとしたのか、疲れきったミホは
私に肩を預けてそのまま眠り始めてしまった。
「くぅ…すう…」
「こら、起きなさい…ミホ…あら、完全に寝ちゃったわ」

流石にこのまま置いていくわけにもいかない。
仕方ない。準備室のソファーまで運んであげるか。

しかし…この娘も大変だ。
なんと言っても、マリア先生に目を付けられてしまったのだから。

今日だってそうだ。
「今日こそ城島先輩にこのチョコと一緒に思いを伝えます!!」
とミホは意気揚々だったのに…
この日のために、昨日は徹夜でチョコを作ったとも言っていた。

そこに突然やってきましたマリア先生。
小脇にはチョコクリームの特大チューブを抱えて。
やけにそのテンションも高い。
そして何を言うかと思えば…
「みほサン!!今日はバレンタインデーデス!!
フロリダでは、愛し合う二人がハダカになってチョコを塗りたくり
それを舐めあうという風習がありマス!!」

…いや、そんな風習はないだろ。絶対。

「サア、今日はトコトン愛し合いまショウ!!」
「ええ、ああ…いやぁぁぁぁ…」

…私が止める間もなく、ミホの身体は化学室へと引きずり込まれてしまった。

そのすぐ後に城島君が来たのは、実にタイミングが悪かったとしかいいようがない。
もう少し早く来れば良かったのに…あの遅漏め。
…まあ一応ミホの手作りチョコは渡せたのだから、彼女の恋も一歩前に進めたのかしら。



…あ、そう言えば…城島君にミホの名前を教えとくの忘れてた。

…ま、いっか。

(おしまい)

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