作品名 作者名 カップリング
「新井カズヤ―その男の生き様(取材編)」 72氏 -

「あー、今日もあちいな…」
「そりゃそうだろ、夏だもの」
「んなこた分かってるけどさ…。お?あれ何だ?」
シンジとカズヤが学校帰りに町をぶらぶらと歩いていると、テレビ局の中継車が止まっていた。
その近くでは、女性のアナウンサーが女子高生を呼びとめ、マイクを向けてインタビューをしている。
「なんの取材だろな?」
「さあ?」
そう話す二人に気づいたのか、しばらくして女子高生との取材を終えたアナウンサーが近づいてきた。
「あのー、○○テレビなんですが、少しお時間いただけますか?」
「え、あ、はい。」
「高校生を中心にアンケートを取っているんですが…
現代の若者の乱れた性についてどう思われますか?」
「へ…」
(ああ、前カナミが受けたのって…これか)
カナミから、以前このあたりで似たような取材を受けたことを聞いていたシンジ。
その取材にカナミは『普段どおり』に答えたらしく、
後日テレビで放映されたものを見たが、その時のカナミのインタビューはやはりカットされていた。

「ああ、そうですね…」
少し考えた後、シンジが質問に答えようとすると、
「シンジ、待ちな。」
カズヤがそれを遮った。
「な…なんだよ」
「シンジ…ここは俺に任せてくれ」
「…へ?」
「頼む。一生のお願いだ。」
こんなことで一生のお願いを使うのもどうかと思ったが、シンジにとって別に問題はない。
カズヤが代わりに答えてくれるのならと、シンジはカズヤにその役を譲ることにした。
カズヤは軽く咳払いをしたあと、語り始めた。


「…やはり最近の若者の性の乱れ、そして性犯罪は重大な問題であると思います。
精神的にも肉体的にも成熟しきっていない私たちが安易に行為に及んでしまうのは、
控えるべきではないでしょうか…」
(へえ…結構まじめに語るんだな…口調まで変わってるし)
今まで見たことがない、まじめな様子のカズヤを見て、シンジは思わず感心するが…
「私はここ最近、若者が安易に性行為に至ってしまう原因を考えていました…
そして私はあるひとつの結論に達しました。
溜まりきった性欲を普段充分に発散できないから、そういった行為に及んでしまう…
…すなわち、学校で男子が性欲を適度に発散できないからではないでしょうか?」
…一瞬だけだった。

「例えばスカートめくりのように、健全な男子は学校でほのかにエロスを感じ、性欲を発散していたのです!
しかし、最近はそういったエロスが意図的に抑えられている傾向にあるのです。
例をあげるならば…そう!あれは冬の寒い時期のことです!
私は寒い時期であっても、嫌がらずに、辛さなど全く感じずに学校に通っていました。
それはなぜか?そう、学校に行けば女子高生の生足がタダで見られたからです!!」
既にアナウンサーは若干ひき始めている。だがもうコイツは止まらないだろう。
「しかし、ある時を境にそれは悲しみに代わりました。
女子の一部がスカートの下にジャージをはいてくるようになったのです。
もはや見ることができない素足。そして萎える私。
嗚呼、私にはそれが許せません!!」
(アホや、コイツ)という目が周囲から注がれる。シンジはもはや何かを悟った目でカズヤを見ていた。
「そう、ほのかなエロス、チラリズムこそが日本を救うのです!!」
…って何だその結論は。
まるでどこかの独裁者や教祖の演説である。言ってる内容はアホそのものだが。

「…ここに具体例があります。」
そう言ってカズヤは懐から二枚の写真を取り出した。
「あの…これって?」
「そう…これこそが日本の絶滅危惧種、レッドデータブック。ブルマーです!!
あ、写っている彼女は私のクラスメートで今岡ナツミと言います。
…別に盗撮したわけではありませんよ?
私は後学の研究のために、この写真をとある筋から入手したのです。」
(とある筋って…あの人かな)
シンジにもだいたい察しはつく。おそらくはあのメガネからだなと。
「見てください。片方はシャツをブルマー内に入れています。
むっちりとした太もも!きゅっと締まったヒップ!!
これはこれでいい!!たまりません!!これで私は10回はヌキました!!
そして、さらにこちらをご覧いただきたい。」
そう言ってもう一枚の写真を見せるカズヤ。
「こちらは少々大きめのシャツを着ています。
シャツはブルマーの外に出してあります。…最高です。
これなら適度にシャツに隠れたブルマーがチラリと…そう、まるでパンツのようにチラリと…!
これこそチラリズムの極意!!頂点!!究極形!!ブルマーこそ日本を救う最強の兵器!!
…つまり私が言いたいのは、今後十ヵ年計画で再びブルマーを採用する学校を増やせと…
…あれ?聞いてます?…え…後ろ…?」

この闘気は…まさか。
…やばい、調子に乗りすぎた。
カズヤがその事に気づいた時には、もう全てが遅過ぎた。

カズヤは恐る恐る後ろを振り向く。
そこにはカズヤにとっての最強の天敵。
鬼のような顔をした今岡ナツミが立っていた。
「何か悪寒を感じたと思ったら…やっぱりキサマかぁっっ!!!!」
「いや、これは…あの…うげえっ!!!!」

ドゴォッ!!!

まずは今岡の渾身の右ストレートがカズヤの顔に炸裂。
そのまま流れるように乱舞技へ。
「なんでアンタがこの写真持ってるのよ!!!小宮山先生に撮らされたコレを!!」
「いや、これは…ぐほぉ…後学の…ために…げはぁっ!!」
「アンタの性欲のためでしょうがー!!!」
すさまじい打撃技の後、倒れたカズヤにマウントポジションを取り、
今岡は一切の躊躇なくとどめをさしていく…。
目の前で起こる惨劇に、ただただ呆然とするシンジ&アナウンサー&テレビ局のスタッフ。
数分後、我に返ったシンジが止めに入った時、カズヤは見るも無残な姿と化していた…。
しかしその死に顔はどこか安らかで、幸せそうだったという…



後日談。
今岡によるカズヤへの制裁が収められたその恐怖のシーンは
流石にカットされ、放送されることはなかった。
今岡も生き恥をさらさずにすんでほっとしていたようだ。
カズヤも一週間後には完全回復し、今日も元気に今岡に殴られている。(当然ながら写真は没収となったが)

その後、どうしてなのか分からないがその今岡の映像が流出して
ある有名な格闘団体の目に留まり、
今岡に年末の格闘技イベントへの参加のオファーがあった…
というのはまた別の話である。

(おしまい)

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