作品名 作者名 カップリング
No Title 72氏 -

城島カナミ、オレの2歳年下の妹。
成績も優秀、炊事洗濯何でもござれ。
兄であるオレが言うのもなんだが、結構可愛い方だと思う。
なのに、まだカナミには彼氏がいない。
それどころか浮いた話も全く聞かない。
まあ、思春期真っ盛り(というより発情期)、
無類のシモネタ好きなので、
そのことを知っていれば近寄りがたいというのもあるが・・・。
それでも全くないというのはどうだろう。
カナミに聞くと、
「お兄ちゃんの世話を焼いてたら、男の人と付き合ってる
暇なんてないって」
と、笑われた。
そこまで頼りないですか、お前の兄貴は。

そんなある土曜日の夜。
夕飯を食べている最中のこと。
「ねえお兄ちゃん、私明日朝から出かけるから。」
「ん、わかった。何か用事か?」
何気ない会話。
が。
「え、デート。」


・・・デート?


今まで妹との会話の辞書には載っていなかった言葉。


【デート】[date]
(名)スル
(1)日付。
(2)男女が前もって時間や場所を打ち合わせて、会うこと。
「昨日彼女と―した」「―を申し込む」


・・・よし、登録完了。
・・・で、なんだっけ。
「だからデ・エ・トだってば」

ぶはっ。

味噌汁が口から霧のように吹き出した。

・・・デートか。
カナミもついに男と付き合うようになるのか。
喜ばしいことではないか。

・・・だが、この心のどこかからあふれ出すこの感覚は何なんだ?
嫉妬か?オレが嫉妬しているのか?
いやいやいやいやいや。
オレには近親相姦やシスコンの気はないぞ?
まあ、最近オレに対するカナミの色ボケネタが少なくなって、
良かったと思う反面、ほんの少し寂しさもあった。
だからって。

・・・寝よう。
明日目が覚めればこのモヤモヤした感覚もなくなっているはずだ。
そうだ、そうに違いない。
・・・よし、寝るぞ。

そして次の日の朝。
「お兄ちゃん、また夜更かししたの?」
シンジの目の下のクマを見てカナミがたずねる。
「え・・・ああ・・・まあな」
結局昨日一晩ほとんど寝付けなかったシンジ。
(お前のせいだ)
心の中で思うが、口には出せるわけがない。

「じゃあお兄ちゃん、行ってくるね。」
カナミはそう言ってデートへと繰り出していった。

「ふぅ」
カナミを送り出した後、シンジは思わずため息をついた。
いつもより家が広く、寂しい気がする。
「なんだかなあ」
昨日から続く、心の中のモヤモヤした感覚はまだ晴れない。
この心のモヤモヤを晴らすにはどうするか。
寝不足の頭でシンジは考える。
考えて、考えて考えて・・・結論を出す。
「・・・よし」
そして早速行動に移る。

休日のせいか、街には人があふれていた。
心なしか、カップルも多い。
(なんかうらやましいな、ほんと)
そんなことを思いながら、
街中をぶらぶらと散歩するアキの目に、明らかに怪しげな人物が入る。
サングラスにニット帽、黒めのコート。
誰かを尾行するかのように、身を隠すように歩いている。
怪しすぎる。
だがその姿は、とある知り合いによく似ている。
意を決し、アキはその男に話しかける。
「・・・あの、何やってんすか?」
「あ、アキちゃあqwせdrftgyふじこlp;」
「いいから落ち着いてください、シンジさん」


「・・・それでカナミを追跡中、ってわけですか」
「ああ、カナミの保護者として心配でね・・・。
まあ兄妹じゃなかったらストーカーだけど」
兄妹だとしても、ストーカーだと思いますよお兄さん。
思わずツッコみたくなるが、ぐっとこらえる。
なんてったって、目の前の男の顔は真剣そのものだからだ。
街の中心地にある、噴水の前にたたずむカナミ。
誰か(デート相手に決まってるのだが)を待っているのか、
しきりにあたりを見渡す。
そして、近くの建物の影に隠れ、それを見張るシンジとアキ。
近くを通る人が、怪しげな目で二人を見ているのだが。

シンジの本気(マジ)なその顔を見て、
(やっぱり兄妹だなあ)
とアキは思う。なんつーか、こういう発想力と無駄な行動力が、であるが。
「・・・で、どうするんです?相手の男が出てきたら」
「どうするって・・・。」
「殴るんすか?『オレのカナミに手を出すなー!』って」
アキは冗談交じりに言ったつもりだが、シンジは
「・・・それもアリだな・・・」とつぶやく。
本気かい。
「・・・まあ別に何もしやしないさ。
・・・ところでアキちゃんもオレに付き合うの?」
「ええ、どうせ暇でしたし」
カナミのデート相手が見てみたいというのもあるが、
それ以上に、これからのシンジの行動のほうが気になる。
カナミのことでこんなにも取り乱すシンジは珍しいし。
何よりも、何しでかすかわからんし。

・・・そんなわけでシンジとアキによる、カナミのデート追跡作戦が始まった。

それから約10分後。
「あ、お兄さん。来ましたよ」
「あれがカナミのデートの相手か・・・
ってアイツ・・・」
カナミの前に待ち合わせ相手が現れる。
直後、シンジ唖然。
デートの相手の正体は、
シンジの親(?)友。
新井カズヤではないか。

「・・・なななな、なんでアイツが!Why?なぜ!?」
思わずアキに疑問をぶつけるシンジ。
「さ、さあ・・・」
もちろんアキに分かるはずがない。
行く場所はもう決まっていたらしく、
すぐに繁華街に向かって歩き出す二人。
そしてシンジとアキは早速追跡に入る。

小物や服のショップを回りながらデートを楽しむ二人。
それを影から見守るシンジとアキ。
他の客や店員に怪しまれても気にしない気にしない。(少なくともシンジは)
何か話しているようだが、今シンジとアキがいる場所からでは声がよく聞き取れない。
ただひとつ、確実にわかることはカナミが楽しそうだということ。
それを遠くから見守るシンジの心の奥底から、今度はムカムカしたものがこみ上げてくるわけで。
いつの間にか手をつなごうとしてるし。
ああっ!もう離れろ!!
カナミに触るんじゃねえ!!
と怨念めいた念波を送るシンジ。
念波が届いたのか、二人は手を離す。ほっとするシンジ。
そしてその様子を
(ほんと面白いなー、シンジさん)
と観察するアキ。

デートはまだまだ続く。

「・・・あのー、少し休憩しません?」
「・・・いや、でもカナミが行っちゃうし。」
デート追跡開始から既に三時間余りが過ぎている。
好奇心からついてきたとはいえ、さすがにアキも疲れてきた。
シンジに休憩を持ちかけても、カナミの様子が気になるのか
どうもつれない返事だ。
(・・・なんだか私たちの方が振り回されてる気がする)
そんなことを思いつつ、尾行を続ける。

繁華街を少し離れるカナミとカズヤ。
「・・・あいつらどこに行く気だ?」
次なるカナミらのデートの行き先。
((ま、まさか))
その方向は、大人のご休憩先。
ラブホテル街。

このままではカズヤの毒牙にカナミがぁ!!
思わずあの変態(かなり失礼)にカナミが嬲られる様子を想像してしまうシンジ。
天と地が許してもお兄様が許しませんよぉ!!
焦るシンジ。必死でなだめるアキ。


と。


突如後ろを振り向き、にらむカナミ。
そして、シンジとアキが隠れている場所に向かってくる。
遂に気づかれたか!!
まあここまで気づかれなかったのが奇跡なのだが。
そんなことを言ってる間にも、カナミは近づいてくる。
やばい、こっちに来る!
「ごめん、アキちゃん」
「え」

カナミに気づかれぬよう、シンジがとった苦策。
そうだ、カップルのふりをしてごまかそう。

シンジはアキを思い切り抱きしめる。
カナミに顔を見られぬよう、二人の顔が隠れるように。
シンジの突然の行動に驚いたのはアキ(当たり前だが)
離れたくともシンジがしっかり抱きしめるものだから離れられない。
(く・・苦しい・・シンジさん・・・でも)
予想していた以上にがっしりとした体つきのシンジ。
もちろん、今まで男性にこんなことしてもらったことはない。
心臓の鼓動が明らかに速くなっているのがアキ自身にもわかる。
(・・・なんだろう、この気持ち)
好きでもない男性に同じことをされたら嫌な気分になるのだろうが、
不思議とシンジにはそんな感情は抱かない。
こうしてシンジの腕の中にいると、安心感に包まれるというか・・・
(もう少しこのままでも・・・いいかな)
アキは抵抗をやめ、シンジに全てを委ねることにした。


一方のシンジはシンジで頭の中が修羅場であった。
考える時間がなかったにしろ、あまりに短絡的な行動。
なんで思わず抱きしめちゃったのかと。
走って逃げればよかったんちゃうかと。

・・・つーか、アキちゃんの胸って意外に大きかったんだねと。
オレの身体にアキちゃんの胸が思いっきり押し付けられていますよと。
ついでにオレの息子も元気に・・・って違う違う違うぅっ!!!!!


そして近づくカナミとカズヤ。
抱きしめあってる二人をまじまじと観察中。
((・・・早く行ってくれ・・・))
二人の(特にシンジの)切なる願い。
その願いが天に届いたのか、カナミらの足音がだんだんと遠ざかる。
どうやら何とかごまかせたようだ。
((・・・ふう))
二人が安心したのもつかの間。


カシャッ。


・・・シャッター音?
フラッシュの光と共に響いた音の方に
二人が恐る恐る顔を向けてみると・・・。

そこには満面の笑顔でマナカさんがカメラを持って立っていた。
ついでに去っていったハズのカナミとカズヤまで。
二人ともやけにニヤニヤと。
「お兄ちゃん、そんなにアキちゃんと抱きしめあっちゃって・・・
や〜らしいの。」
「うらやましいぜ、この野郎」
「「こここ、これは・・・何?」」
未だに抱きしめあったまま思考停止の二人。

・・・つまりは、こういうことだ。
マナカちゃんの小説の新作のネタ。
それが「片思いの女をストーカーする男」だそうな。
そのネタ作りがうまくいかず、カナミに相談したのがオレの運のつき。
カナミがデートをでっち上げて、それをオレに追跡させる・・・。
どうやら、デートをオレが尾行するってことはお見通しだったらしい。
そして尾行するオレをさらにマナカちゃんが尾行・観察していたというわけだ。
さすがにアキちゃんとオレが一緒に追跡するって言うのは予想の範囲外だったらしいが。
「これはこれで面白いネタが増えたので」
とマナカちゃんは満足そうだが。

そして、夕方。
家へと連れ立って帰るカナミとシンジ。
(アキちゃんには悪いことしたなあ・・・後で謝ったとはいえ)
頭をぽりぽりとかきつつ、シンジは今日とってしまった行動を反省する。
その一方で。
「・・・なあ、カナミ」
「なに?」
「よくオレがお前のデートを尾行するって分かったな」
「当ったり前じゃん。何年妹やってると思ってんの?
・・・それに今回尾行してこなかったら、別の方法で誘惑するつもりだったし」
さいですか。

「で、実際どうなんだ?」
「え?なにが?」
それはシンジがさっきからずっと気になっていること。
「彼氏だよ、本当にいないのか?」
「いないっての。前も話したけど、お兄ちゃんのお世話の方が大変だもん。
・・・それに」
それに?
改めてシンジの方を向いて、照れるようにカナミが言う。
「私はずっとお兄ちゃん一筋だから」

「・・・へ?」
思いもかけぬ発言に、
突如顔が熱くなるのを感じるシンジ。
「あ、まさかお兄ちゃんも照れてる?」
「う、うるせーやい」
照れてなんかいないさ。
そうさ、きっと夕日のせいさ。


・・・まあ今はそんなことを言っていても、
いつかカナミにも彼氏ができて、やがては結婚して、
オレの前から去っていくのだろう。
いつの話になるかは分からないが。
カナミの発言に少し照れながらも、
いつかは訪れるであろうその時のことを考えると、妙に心の奥が切なくなるシンジであった。


END

もうひとつの話。


・・・まだ胸がドキドキする。
突然抱きしめられた、あの時のことを考えると。
今度シンジさんに会ったら、まともに話ができないと思う。
一体この気持ちはなんだろう。

「どうしたんですか、アキさん」
アキの顔を覗き込むマナカ。
「わ!べ、別に何も・・・」
「本当ですかぁ?」
何かに感づいたのか、にやけた顔でアキを見る。
「・・・狙うなら早めの方がいいですよ。
結構下級生にも人気があるみたいだし」
「べ、べつに私はシンジさんを」
「あれぇ〜?私いつシンジさんのことって言いましたっけぇ?」
先ほどよりさらにいやらしい顔になるマナカ。
そして顔を真っ赤にしながら、必死で弁解するアキ。


そして、意外に純情な一人の女子高生の心に
火をつけてしまったことに気づかぬシンジであった。


END

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