作品名 | 作者名 | カップリング |
No Title | 72氏 | マナカ×シンジ |
城島シンジ、18歳。彼は今、追い詰められていた。 目の前に迫るは、妹の同級生・・・黒田マナカ。 酒に酔った、虚ろな眼でシンジに近づく。 (ヤバイよな、この状況・・・。) クリスマスの夜。 酒に酔った男女二人。 そしてここは男の部屋。 条件は完璧にそろっている。 「シンジさん・・・。」 いつもの呼び方である「お兄さん」ではない。やはりかなり酔っているようだ。 火照った体、とろんとした眼。いつもとは違う。 色っぽい。 なぜこんなことになってしまったのか。 シンジは、自分のとった過ちを思い返してみた。 今年は城島家でカナミとカナミの友達でクリスマスパーティを開くことになった。 「で、お兄ちゃんはどうするの?」 「え、オレ?」 別にクリスマスに予定はない。 全く予定がないというのもむなしくなるが。 「じゃあ、オレも参加させてもらうか。」 「いいけど、お兄ちゃん・・。」 「何だ?」 「クリスマスの夜だからって、発情しないでね」 「しねーよ」 「5Pも期待・・」 「しまいには殴るぞ、わが妹よ」 そんなわけでクリスマス当日。 「メリークリスマス!!」 集まったのはアキちゃん、マナカちゃん、 そして最近知り合ったカオルちゃん。 ショーコちゃんは彼氏とデートだそうだ。 「いいわね、ショーコは彼氏もちで。」 「それにひきかえ、私達は女だけで集まって、パーティですか。 何やってるんでしょうね、私達・・・。」 アキのぼやきに続き、マナカの冷徹な一言。なんだか場の空気が重くなる。 ・・・って言うかオレの存在は無視? シャンパンはクリスマスなら誰でも飲めるとは誰が言い出したのやら。 その功罪をもろに受けた者が約一名。 黒田マナカ。 「大丈夫、マナカちゃん?だいぶ酔っ払ってるみたいだけど」 心配して声をかけるシンジ。 「なぁーにぃいってるんでふかぁ!よっぱらってなんかいまふぇんよォ!」 「でも・・。」 「きょうはたのしいクリ○リス イクですようーっ!!」 「寝ろよ」 思わずツッコミを入れるシンジ。しかしこれだけでは終わらない。 というか止まらない。 「幼稚園の頃は、ここまで成長しないとは思わなかったんですよぉ・・・。」 「アキいいぃ、胸がデカイからっていい気になってんじゃねえぞゴラァ!!」 ・・・泣いたり笑ったり怒ったり忙しそうだ。 このままではマズいと感じたシンジ、マナカの酔いを醒まさせることにする。 「マナカちゃん、とりあえず外に出ようか。」 手伝ってほしいが、三人ともマナカほどではないが、十分に酔ってしまっている。 仕方ないので、シンジは一人でマナカを連れ出す。 これが一つ目の過ちなわけだが。 (さて、どこに行くか・・。) 外でも良いが、暴れられて近所迷惑になっても困る。 (二階なら窓を開ければ風も入るよな・・。) というわけで二つ目の過ち。マナカの肩をかついで二階へと向かう。 (勝手にカナミの部屋に入るのはマズいよな・・。 いいかオレの部屋で) 三つ目の過ちにも気づかず、マナカを部屋に入れるシンジであった。 窓を全開にすると、冬の冷ややかな風が部屋に入ってきた。 火照った体を醒ますにはちょうど良い。 「・・・ぁれ、ここは?」 「あ、マナカちゃん、酔いはさめた?」 マナカを気遣うシンジ。 「・・すみません、迷惑かけたみたいで」 「いいよ別に、慣れたもんだし。」 思春期全開の妹とその愉快な仲間たち、彼女らとの付き合いも長い。 すっかり耐性がついてしまったようだ。 「お兄さんって、やさしいですよね。」 ふいにマナカがつぶやく。 「やさしいって、オレが?」 「ええ、いつも私たちのこと気遣ってくれるし、 スキーや海水浴にも付き合ってもらってるし、 私たちのボケにもちゃんとツッコんでくださるし」 「・・・最後の一文が非常に疑問なのだが。」 「冗談ですよぉ」 普段はなかなか見せない笑顔を見せるマナカ。 とりとめのない話をしつつ、 時間にして30分ほどたっただろうか。 「そろそろ下へ戻ろうか、マナカちゃん」 立ち上ろうとするシンジ。 しかし。 グイッと上着のすそをつかまれる。 不意打ちに、思わずつんのめるシンジ。 「・・・マナカちゃん?」 見ると、うつむきながらマナカがすそをつかんでいた。 立ち上がるマナカ。 (なんだか・・ヤバイ?) カナミとの日々の生活で鍛え上げられたシックスセンスが、 現在の状況に危険信号を告げる。 しかし、時既に遅し。 ・・・ガチャ。 部屋の鍵が閉められる。 そして、ゆっくりとシンジへと迫るマナカ。 いつの間にか部屋の奥に追い詰められるシンジ。 こうして、冒頭の場面へといたるわけだ。 「私、小さい頃から決めてたことがあったんです」 「な、何かなそれは?」 「ひとつは小説家になること、もうひとつは」 「もうひとつは?」 「16まで純潔を捨てないこと」 (そういえば、そんなこと言ってたような・・・。) 幼稚園の頃、マナカとカナミは同じクラスだった。 そんなわけで城島家にもよく遊びに来ていたのだ。 過去の記憶がよみがえる。 「・・というわけで、私は16まで純潔を捨てるつもりはありません」 「・・・へー。」 城島家でのおままごとの時のこと。 オレとマナカちゃんで夫婦役。 確かカナミはオレとの不倫関係のもつれから家に押しかけてくる愛人役だったっけ。 その時は俺も子供で意味もわからなかった。 (というかあの年で詳しく知っているほうが異常なのだが) 「・・・ねえ、あなた(夫婦役なので)」 「なに?」 「・・・私が16になったら・・・ 純潔はあなたに捧げます」 「?? ああ、いいけど。」 まさかオレがOKの返事をするとは思わなかったのか、 それまで笑顔を見せていたマナカちゃんは一瞬驚いた表情になった。 そしてしばらくオレから顔をそむけてしまった。 顔も少し赤かった気もする。 「あの頃から決めてたんです。」 (あー・・・。何言ってんだオレ) その時は意味もわからず言った返事だった。 (ああ、そうか。 マナカちゃんが転校してきてはじめて家に来たとき、 顔を赤くしたのって・・・。) いまさらながら、あのときの真相に気づいたシンジ。 (マナカちゃん、あの時のことずっと覚えてたんだ) 「今日で私も16歳です。それに」 「それに?」 「官能小説を書くには実体験も必要ですよね」 もう、オレにどうしろと。心の中では泣きそうなシンジ。 酒の勢いとはいえ、オレを思ってくれる子が目の前にいる。 まあ、このまま流されるってのも・・・いいのかなあ。 だが。 下の部屋には妹と知り合いがいる。 こんな状況でオレと・・・? ふと、なぜかカナミの顔が浮かぶ。 なぜか後ろに闘気をまとったカナミの姿が。 心の奥底からこみ上げる強烈な不安感。 このままではマズい、非常にマズい。 「や、やっぱり酔ってるんだよ、マナk」 「酔ってません」 シンジの言葉を唐突にさえぎるマナカ。 さっきより声に怒りが混じっている。 「お願いです、私を・・・」 言うが早いか、マナカはシンジに抱きつく。 「!?」 突然のことに、一瞬思考停止のシンジ。 (や、やば・・) 抱きついてきたマナカの体に、 (あ、柔らけ・・・あと、いいにおい・・って違うっ!!) 一人ノリツッコミ後、シンジは思わずマナカをはねのけた。 「ご、ごめん・・・。」 仰向けに倒れたマナカに声をかける。 「・・・・・・」 マナカは黙ったまま立ち上がる。 (こ、これでひとまず・・・) これでマナカも落ち着いただろう。 シンジが安堵した次の瞬間である。 ・・・ゴトッ・・・。 (・・・ゴトッ???) 突然室内に響いた謎の音。 その音の正体はマナカの足元にあった。 (・・・鉄パンツ?) その名は貞操帯。 マナカの目の色が変わる。 「もう少し強引に行かせてもらいます」 再びシンジに迫るマナカ。 避けようとしたシンジの両腕をつかむ。 (な、何だこの力・・・。) さっきより明らかにマナカの力が上がっている。 (まさか、貞操帯をはずしたから?) 以前カナミに、体育の時間にマナカが貞操帯を外した途端、 すごい力を発揮したと聞いたことがある。 その時は冗談半分で聞いていたが、まさか実体験する日が来るとは。 (ってバトル漫画じゃあるまいし) そう、これはギャグ漫画。 冗談だと思いたいが、現実はそうはいかない。 一進一退の攻防が続くが、少しずつマナカが優勢になっていく。 シンジの目と鼻の先にはマナカの顔が。 「・・・もう覚悟決めてください。」 ここまで全て計画されていたのか?それとも酔った勢いなのか? 考えている暇はない。 しかしもうどうしようもない。 マナカの柔らかそうな唇が、シンジに迫る・・・。 ・・・・・とここでシンジの記憶は一端途切れる。 シンジが目を覚ますと、心配そうに覗き込むカナミの顔が。 周りには同じく心配そうに、三人が。 シンジはベッドの上に寝かされていた。 「お兄ちゃん、大丈夫?」 「・・・んあ?オレ・・・」 カナミから何があったのか事の経緯を聞く。 あのときマナカの顔を避けようと首を後ろにそらした。 そのとき、後ろの机の角に頭をぶつけて気絶したらしい。 その時下で頭をぶつけた音とマナカの悲鳴を聞きつけ、 カナミらが二階へ駆けつけた・・・という次第。 あまりにもベタベタのオチだ。 そんなことを思いつつ、シンジはマナカの顔を見る。 もう酔いは完全に醒めているようだ。 「す、すみません・・・。」 マナカが謝る。 「い、いいよ、別に」 二階でのさっきの出来事はうまくマナカがごまかしたらしく、 シンジがカナミに小一時間問い詰められる・・・というようなことはなかった。 ということで、翌朝。 パーティの後、夜も遅いので城島家に泊まったメンバー。 朝食を食べ、各自の家に帰宅となった。 「あ、マナカちゃん」 帰る間際、マナカに話しかけるシンジ。 「昨日のことだけど」 「あ、昨日はすみませんでした。 お酒の勢いでつい・・・」 ああ、やっぱりお酒の勢いだったのか。 だよなー、やっぱり。 ほっと胸をなでおろす。 が。 「・・・でも次は本気でいきますから」 ・・・次? ・・・次っていつ? あと、オレのことが本当に好きで・・・。それとも・・・。 結局マナカの本心がわからない。 去っていくマナカを見送りながら考え込むシンジ。 まだまだ彼の心労は絶えないようだ。 END
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