作品名 作者名 カップリング
No Title 102氏 -

「うっ…」
突然、城島シンジは前のめりになり机へと突っ伏した。
「城島君!?」
その異変に気付いた隣席の今岡ナツミが驚愕の声をあげ、教鞭を執っていた小宮山先生も、授業を一時中断してシンジの様子を窺う。
「あらあら、今日は胸元を開き過ぎてたかしら。でも、この程度でそんなに反応するなんて、ホント、若いのねぇ…」
「下らない冗談を言ってる場合じゃありません!! …城島君、大丈夫? どうしたの!?」
「ぐ…うぅ…」
返事もままならず、低く呻くだけのシンジ。
「あらら…、大変。保健委員は彼を保健室へ連れて行きなさい。念のため、救急車を呼ぶ準備もしておいて」
「は、はい!」
小宮山先生の指示がとび、教室は急に慌しくなる。
そして十数分後、けたたましくサイレンを鳴り響かせる救急車によって、城島シンジの身柄は病院へと搬送されることとなった。



「ご心配をおかけしてしまって、本当に申し訳ありません…」
入院患者用のベットに横たわりながら、きまりの悪そうな表情で謝罪を続けるシンジを見て、小宮山先生は思わず苦笑した。
「いいのよ、もう。それにしても単なる盲腸で良かったわ。いきなり倒れるから何事かと思ったのよ」
「いや、もう、ホントすみません…。盲腸があんなに痛いだなんて予想していなくて…」
「まぁ、私もなったことがあるから分かるけどね。声が出なくなっても無理はないわ。
 で、初めて手術台に載せられた感想は?」
「…なんか、緊張しました」
「そうよねー。面識のない他人にいきなり下の毛を剃られるんだもの。童貞には刺激が強過ぎるプレイよね。でも、興奮もしたでしょ?」
「するわけない。てか、そういう意味じゃない」
「ふふ、それだけツッコミができるなら心配はなさそうね。私は学校に戻るわよ。入院手続きは済ませてきたから大丈夫。家族の方にも連絡をしておいたわ」
「すみません、何から何まで…」
「いいのよ、気にしないで。これも教師の職務のうちだから。じゃあ、早いこと治して学校に戻ってきなさいね」
そう言って、小宮山先生は病室を出て行った。
その後姿に、シンジは感謝の意を込めて頭を下げる。
が、数秒後、彼女はすぐに引き返してきた。
「いっけない、肝要なことを忘れてた!」
「え、どうしたんですか先生?」
「これよこれ! さしあたっての入院生活に必要なもの! ちゃんと渡しておかなくちゃ!」
言いざま、右腕に下げていた大きめのバッグをシンジの横に下ろし、手際よく中身を取り出していく。
シンジの表情が、みるみるひきつっていった。
「いや、あの…。これって…!?」
「時間がなかったから厳選できなかったけど、それは勘弁してね。でも、実用には十分に耐えると思うわ」
『ナース天国』、『女医の誘惑』、『病淫』、『コスプレ・ナース』、etc…。
シンジの前に並べられたのは、看護士や女医を題材としたエロ本の数々であった。
「……………おい」
「本当は、本物が相手をしてくれるのがベストなんだけどねぇ。現実はそう上手くいくものではないし…。ま、でも、本物と頻繁に接するんだもの。これを使えば興奮度は大幅上昇よね!」
「ありがた迷惑なんで、即刻持ち帰って下さい」
「えー、なんでー?」
信じられないといった表情の小宮山先生だったが、壁に掛かっている時計を見上げて浮き足立つ。
「ごめん城島! 私、急いで学校に戻らないといけないみたい。じゃあ、『頑張る』のよ!」
そう言い残して、彼女は慌しく病室から走り去ってしまった。
「あ! ちょ…! これ持って帰れぇぇぇ!!」
シンジの叫びが空しく響きわたった。



「お兄ちゃん!」
病室の扉が勢いよく開かれかと思うと、シンジの実妹たる城島カナミが息せき切って飛び込んできた。
その友人の黒田マナカも後ろから続く。
「ああ、カナミか。マナカちゃんも…」
「カナミか・・・じゃないわよ! もう、本当に心配したんだからね!」
「悪い。…小宮山先生から聞いたのか?」
「うん。色々と説明してもらった。だから、入院生活に要りそうなものを、マナカちゃんにも手伝ってもらって家から取ってきたのよ」
カナミはそう言って、背負っていた巨大なリュックを地面へと降ろした。
かなりの重量だったようだ。
先生のみならず妹にも多大な迷惑を掛けてしまったことに、シンジは少なからず心を痛める。
「…重かったろ? 迷惑かけてしまって、本当にごめんな」
うつむき加減に謝罪の言葉を口にしたシンジだが、カナミは温かい笑顔をかえしてきた。
「もー、水臭いこと言わないでよ。私たち兄妹じゃない! ね?」
「カナミ…」
シンジは、家族の愛情って本当に良いなと感激し、目頭が熱くなるのを抑えきれない。
(いい妹を持ったな……)
その心を読んだかの如く、マナカが呟いた。
「こんないい娘が妹だなんて、貴方は三国一の果報者ですよ、お兄さん。だからといって、親近相姦願望を持ってはなりません。いや、気持ちは分かるのですが」
「持たねーよ!」
「もう、マナカちゃんったらぁ!」
冷静にツッコミをいれるシンジに、屈託なく笑うカナミ。
いつもの3人だった。
「…とりあえず、3日分の着替えを持ってきたから。あとは細々とした日用品ね」
持ってきた荷物の内訳をカナミが説明し始める。
「ありがとう、助かるよ」
「ご飯はこっちで出るんだよね?」
「ああ」
「なら、心配しなくていいかな。あ、そうそう! それと、入院中は退屈だろうから…はい!」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
満面の笑みを浮かべながらカナミが取り出したもの…それは…。
「ちょ…、おま…これ……!?」
「うん! エロ本!!」



「…よ、よく見たら荷物の半分以上はエロ本じゃねーか!!」
「大変だったんだよー、これだけ持って来るの」
シンジの顔から一気に血の気が引いていく。
「しかも、これ、オレの部屋に置いておいたやつだ…」
「お兄ちゃんのコレクションの中から、看護士・女医ものだけをチョイスしてきたんだよ!」
「なぜにそのような真似を!?」
「やだなー。だって入院だよ? 本物のナースや女医と触れ合えるんだよ? だったらオカズはこれしかないじゃない!!」
「お…お前というやつは…」
妹の思考回路が、小宮山先生のそれに近いという事実に頭を抱えるシンジ。
「僭越ながら、お兄さん…」
その苦悩を知ってか知らずか、マナカが彼のほうへ歩み出た。
「私の作品に幾つか病院ものがありましたので、それも置いていきます。今後の参考にしたいので、読了後の感想を聞かせてくださいね」
「マ、マナカちゃんまで…」
「じゃあ、今日のところはこれで帰るね。行こう、マナカちゃん」
「はい。それでは、お大事に…」
病室から退出しようとする二人を、シンジが慌てて呼び止める。
「待て! これは持って帰れ!!」
「えー? ホントは嬉しいくせにー!」
「ある意味、これもツンデレですかね」
「違う! 本当に迷惑なんだ!」
「もう、お兄ちゃんったら。照れなくていいんだよ。お兄ちゃんのことはお見通し!」
「カナミィィィィ!」
必死の哀願にも取り合わずヘラヘラ笑っていたカナミだったが、急にふと真剣な顔付きになってシンジを見据えた。
「…お兄ちゃん」
「な、なんだよ…?」
その真っ直ぐな視線に気圧されるシンジ。
「充実した入院生活に、オーメ財団の協力があったことをお忘れなきよう…」
そう言うと、カナミはペロっと舌を出した。
「お兄ちゃん、お大事にね。初夜だからってハリキリ過ぎちゃ駄目だよ? それじゃ、また明日!」
病室の扉がパタンと閉じられる。
「……………」
シンジはしばらく動けなかった。



「いよーう! 災難だったな、シンジ!」
扉を開けて入ってきたのは、シンジの級友たる新井カズヤだった。
「ああ、カズヤか…」
シンジは虚ろな表情でそちらへと振り返る。
「おいおいおいおいおーい、どうしたんだよ。えらくブルーじゃねえか、ん? 
まぁ、アソコの毛が惜しいというのは分かるがな。…でも、パイパンだっていいものだぞ?」
「………」
返事の代わりに、シンジは大きな嘆息をついた。
「なんだよぅ、その態度はー? せっかく親友が見舞いに来てやったというに!」
「…そうだよな、スマン。いや、ちょっと凹むことがあってな…」
「確かに剃られるのはツライが、プレイだと思えばいいんだよ。得したじゃねえか。前向きにいこうぜ!」
「そこから離れろよ…。なぁ、あれから教室はどんなだった?」
「んー? ちょっとざわついたけど、今岡が仕切って自習ってことになったぜ」
「そうか。しっかりしてるもんな、今岡…」
「そういえば、あいつも見舞いに来たがってたな。極限流の稽古があるから無理だったけど」
「極限流?」
「そ、極限流空手」
「え!? あいつ空手を習ってたのか!? …どうりで…」
「知らなかったのか? わりと有名なんだがな。嗚呼…、そのうちオレに覇王翔●拳を撃つんだろうなぁ…(ハアハア)」
「なんの話だよ…」
「あ、そうそう。お前の鞄を持ってきたぜ。教室に放置プレイってのもアレだからな」
言われてみれば、カズヤは鞄を二つ下げている。
うち一つはシンジのものだった。気を利かせて持ってきてくれたのだろう。
シンジへ手渡されたそれは、ズシリとした重量感があった。
「悪いなカズヤ。でも、なんか妙に重たいぞコレ」
「まぁ、机の中にあったお前の私物や、その他のものも入れてあるからな」
「私物…? こんなにあった…か……な………」
鞄の中身を見て絶句するシンジ。
逆に、それを見たカズヤはニヤリと笑う。
「ちょ…おま…これ…!?」
「なかなかの戦力だろ?」
鞄の中にあったもの…それは大量のエロ本だった。
もちろん、全て看護士・女医を題材にしたものである。
「じゃあな、シンジ! いい夜を!!」
爽やかにそう言い残し、カズヤは去って行ったという…。



死人のような顔でベッドにうずくまる城島シンジ。
そんな彼の周囲に積み上げられた大量のエロ本。
カーシャが見たならば、「これでバリケードを作るのよ!」と言うに違いない。
それ程の量のエロ本が僅かな時間で集結した。
ドバ司令の「イデの采配がなければこうはならんよ」という呟きが聞こえてきそうである。
どれ程の時間が経過したろうか。
まるで置物のように微動だにしなかったシンジが、いきなり立ち上がって咆哮した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
魂の限りに、シンジが叫ぶ。
「なぜだ! なぜ集まる! なぜ持ち込む! なぜそっとしておけない!!
 病院の禁欲的な環境が、エロを抑える鍵だったかもしれないんだ!!
 エロの力が開放したらどうなるのか、誰もわかっちゃいないんだぞ!!
 貴様たちが、貴様たちが責任を取ってくれるのか!!??
 貴様たちがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
病院に響き渡る、腸を引き裂くかのようなシンジの絶叫。
「じょ、城島さん! どうかしたんですか!?」
慌てて、若い女性看護士がシンジの病室へと駆け込んで来た。
「!!!!????」
その目に留まる、大量のエロ本(看護士・女医もの)。
耳をつんざく看護士の悲鳴。






その時イデが発動した。


                 完

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