作品名 作者名 カップリング
「スタア誕生 後編」 郭泰源氏 -

「ふう……」
柏木レイコは短くなったタバコを車の灰皿に押しつぶすと、小さく溜息をついた。
(最近仕事が忙しくなったのは……良いことなんだけどね)
レイ・プリンセス事務所の屋台骨を支える看板アイドル・小池マイは勿論、
最近では新人のトリプルブッキングにも徐々にではあるものの仕事が入り始め、
事務所としてはやらしい、もとい嬉しい悲鳴をあげているところだった。
特にトリプルブッキングについてレイコは当初さほど期待しておらず、
3人のうちひとりでも人気の出る子がいれば儲けもので、
もし売れたならその子だけ独り立ちさせれば良いと考えていた程度だったのだが。
蓋を開けてみれば3人それぞれ固定ファンをつかんでおり、
来月にはグラビアデビューを、と某漫画週刊誌からオファーがあったばかりだった。
(しかし首都高ってなんで時間ずらしてもこんなに混むのかしらね……)
愛車シトロエンのギアを忙しくチェンジさせ、少し苛立ちながらつぶやく。
「ダメダメ、今日はにこやかにしないと。スマイル、スマイル」
今日は午後から大切な――――とても大切な、新人の面接が入っていた。
(もっとも……新人になってくれるかどうかも、まだ未知数なんだけど)
そう思いながらレイコは携帯を開け、フォルダの中から画像を選択して表示した。
(ルックスは十分に合格ラインね。あとは表情や話し方、それに頭の中身か)
先日長年の友人である女性から、息子のことについて相談されたところだった。
それがその人からの話でなければ、単なる親バカの欲目と一蹴していたところだったのだが。
(お姉ちゃんの息子さんだもんね。これはひょっとしたらひょっとするかも)
十数年前、レイコがモデル事務所に所属していた頃から不思議とウマの合う人だった。
(あの頃の私、ものすごくイヤな子だったはずなのに……)
「芸能界でいつかはアイドルとしてデビューする、モデルはそのステップ」
そう公言してはばからなかったレイコは同じ事務所のモデルの中でも浮きがちで―――
孤立していたレイコに優しく接してくれたのが、吹石だった。
プライドの高かったレイコは、そんな彼女にもなかなか慣れなかったのだが。
吹石の陽気な人懐っこさに少しずつ心を開くようになり、
いつしか二つ年上の彼女を“お姉ちゃん”と呼んで慕うまでになった。
雑誌モデルの撮影の帰り、エキストラとして出演したドラマのリハの合間、
そして互いの部屋で――――ふたりは本当の姉妹のように仲良く語り合い、
いつかはふたりでコンビを組んでデビューしたいね、などと夢をふくらませた。
と言うか、後日事務所の社長に聞いたのだが、実際にそんな話もあったらしい。
しかし――短大を卒業した吹石はあっさりと結婚し、この世界から身を引いてしまったのだった。
タレントとしての才能は、むしろ彼女の方があったはずなのに。

「ゴメンね、レイちゃん。でもね、私はこの人と一緒になりたいの」
「お姉ちゃん、なに言ってるの!今最高に幸せそうだよ?おめでとう、おめでとう、お姉ちゃん……」
済まなそうに――それでも幸せそうに語る吹石に、
レイコはただ彼女の手を取って祝福の言葉を贈るしかなかった。
結婚式で見せた、吹石の笑顔――――
それは、ふたりの青春時代の終わり、その象徴のようにレイコには見えていた。

その後モデルからタレントになったものの結局芽が出なかったレイコは、
リポーター等の小さな仕事をこなしながら事務所の仕事を手伝って生計を立てていた。
しかし、彼女の才能はむしろ経営の方にあると当初から見抜いていた社長は、
経営ノウハウの全てをレイコに教え込み、それを彼女が全て吸収した頃を見計らって
経営権の全てを彼女に委ね、潔く引退したのだった。
引き継いだ事務所の名前を自分の名を取って“レイ・プリンセス事務所”と変え、
社長として多忙を極めるレイコだったが、不思議と『お姉ちゃん』こと吹石との縁は切れなかった。
年賀状だけの付き合いになり、やがて自然消滅してしまう昔のなじみも多かったが、
彼女とだけは年に一回“同窓会”と称して会うのがレイコの年中行事となっていた。
なにを話すでもなく、ただふたりで過ごすだけの時間。
それはしかし、レイコにとってかけがえのない時間だった。
ふたりでいると、時が止まったように――――不思議なくらい、あの頃のままでいられたから。
§


だからこそ『小久保』と姓を変えた吹石から、
「息子が芸能事務所にスカウトされたみたいなんだけど、相談に乗ってくれない?」
と聞かれたときに、興味を持ったのだ。
事務所の名前と名刺にあるスカウトの名を聞けばレイコとて同業者、
その人物がスカウトとして目利きであり、身元も確かな人物であることはすぐに分った。
冗談交じりに「息子さんの写メを送ってくれ」とお願いしたところ、
その場で撮ったらしい、ちょっと困惑した表情の少年の画像が送られてきた。
「マサヒコ君、か………」
確かその子が小さい頃に、何回か会ったことはある。
うっすらとだが、母親似で整った顔立ちの利発そうな男の子という記憶がレイコにもあった。
断るにしてもスカウトに会うにしても、一回自分に会わせてからにして欲しいと頼んだ。
業界のツテを使って、悪いようにはしないから、と。
だが実際は、この子が有望そうならばレイ・プリンセスで面倒を見たいと思っていたのだ。
「今日の、10時」
ハンドルが、少し汗で濡れていた。自分が珍しく緊張していることに気づいた。
そして、それ以上に期待している自分に気づいて、レイコは軽く苦笑していた。

“コンコン”
「社長、小久保さんがお見えになりました」
「入ってもらって」
「失礼します………」
(ああ…………)
三瀬と一緒に入ってきたマサヒコを一目見て、レイコは心の中で吐息を漏らした。
(やっぱりお姉ちゃんに似てる……)
サラサラで鮮やかなほどの黒髪。すっと通った鼻梁。
幼さと、鋭さと、優しさと、冷たさを併せ持った吊り目気味の目。薄く整った唇―――
若い頃の吹石そっくりの少年が、そこには立っていた。
「座って、小久保君」
「あ……はぁ、失礼します」
緊張したような表情のまま、遠慮がちにマサヒコがソファに腰掛ける。
少し低めだが透明感のある、通る声だった。
「早速なんだけどフライヤーズについて話すわね。男性アイドルが多く所属している事務所で、
業界ではジャニーズに次ぐ大手よ。それは、知っているかしら?」
「いえ、初めて聞きます。そうなんですか、へえ……」
「ただ、評判そのものはあまり芳しいものじゃないわね。
裏では暴力団と繋がっているっていう黒い噂も絶えないし、
プロモーターに無理な圧力をかけたり、随分強引な営業もやってる。
タレントの育成方法にしても、人気が出なければ即切り捨てな無茶なところが多いって話ね」
嘘ではないが、100%の真実でもない。
多かれ少なかれ、どこの事務所でもそんなことはこの業界では常識の話だった。
「……怖いですね」
マサヒコは素直な感想を口にするしかなかった。
「君が大手タレント事務所のスカウトに目をとめられたってことは、
それだけ魅力があるってこと。そのことは、間違いない。私も実際君に会ってそう思う」
「………そんな、俺は普通の中学生で」
「いいえ。私もこういう世界で生きてきてね、多かれ少なかれ会った瞬間に分るのよ。
その子が最低限モノになるかどうかくらいは。だからね、君には言っておきたいの。
大手の事務所だから良いとは限らない。確かに営業力という意味では大手に敵わないけれど、
ウチみたいな小さな事務所はタレントを大事に育てる……それも、事実なのよね」
呆然と自分の熱弁を聞いているマサヒコの顔を見ながら、レイコは既に決意を固めていた。
(逃がさない……この子は、ウチでもらう)
会ったときから、感じていた。“お姉ちゃん”こと吹石の息子だから、という欲目もあるだろう。
しかし、それ以上に――レイコの勘が、マサヒコの才能を見抜いていた。
なにより、マサヒコには異性を惹きつけるフェロモンのようなものが出ていて、
しかも彼自身がそれに全く無自覚であるところがレイコは気に入っていた。
§


(癒し系のブームは終わったって思うけど……でも、
マサヒコ君みたいな美形でありながらほんわかした子の需要はまだあるはず……)
頭の中では冷静に計算していた。マサヒコは、絶対にモノになると。
まだ男性タレントを採用したことはなかったが、彼なら即戦力で使えるはずだと。
「あの……でも俺はマジで芸能界とか良く分かんないし、興味もないんですよ。
今は受験生だし、勉強の方で頑張りたいっていうか」
「うん、もちろん今は学業最優先で行くべきよね。だから高校に入ってからでも良いのよ。
一応聞いておくけど、マサヒコ君は高校に入ってから部活とか特にやりたいことがあるの?」
「………それは、まだ無いっすけど」
「ならね、自分の視野を広めるっていうか、自分の知らない世界に飛び込んでみるとか、
そういうのって無いかな?さっきも言ったけど、君には可能性があるんだから」
「……………」
「若さっていうのは、いろんな失敗をすることだって思うのね、私は。
それはウチのタレントたちにも言っていることだし。だからね、興味はないかもしれないけど、
とりあえずやってみる、それでつまらなかったらやっぱり止める。それでも良いと私は思う。
ウチの事務所の方針は学業と両立だし、部活みたいな感覚でしてもらって良いから」
「あの……でも、母さんがなんて言うか」
「大丈夫。この前冗談交じりでそんな話をしてたんだけど、全然オッケーだって言ってたから」
(!!!……って母上?ああああ、あの人はああああああ!!!)
マサヒコは、今やっと自分がハメられたことに気付いた。
「で、でも俺やっぱ向かないと思うんですよ、音痴だし、演技とか全然分らないし」
「別に歌なんて上手くなくたっていいのよ。ふふ、そうね、ちょっと待っててくれる?マサヒコ君?」
「はあ………」
少し悪戯っぽい笑顔を浮かべるとレイコはソファから立ち上がって社長室を出て行った。
しばし彼女のマシンガン・トークに押されっぱなしだったマサヒコは、ようやく息をついた。
(ふぅ……しかしまぁ……)
自分の母親と懇意の女性、と聞いていた時点で多少警戒心は持っていたものの、
レイコの押しの強さは予想以上だった。
(マズイ………このままだと……マジで)
いくら流され上手のマサヒコと言えど、このままレイコの話を聞いていけば
この事務所に所属することになるのは目に見えていた。
(さすがに……ハッキリ断らないとな、でもなんだかあの人、手強そうっつーか……)
しかしつくづく、なぜ自分の周囲にはこうも一癖ある女性ばかり集まってしまうのか―――
宿命的とも言える自らの女性運の悪さに、マサヒコは溜息をつくのだった。
「あの、社長、でも……」
「いいから。あなたにはこれから銀行に行った後で小田と合流してもらうから。
確か井戸田はトリプルブッキングと営業で5時まで帰らないのよね?」
「はあ、そうですけど……本当に良いんですか?確か今日は大切な取引先だから、
社長と私のふたりで行くって……小田さんだと、その……」
「ああ、大丈夫。あの男なら、黙って相手を睨むだけで十分だから。
今から携帯で細かい打ち合わせをしておいて。じゃ、すぐによ?お願いね?」
ドアの向こうからは三瀬と呼ばれていた社員に指示を出す、レイコの声が聞こえてきた。
話の内容からすると相手は少々戸惑い気味のようだが、
レイコはお構いなしに話を進め、すぐに社長室に戻ってきた。
「ごめんなさい、お待たせしたわね、マサヒコ君?」
「あ、いえ。そんな……あの、で、柏木さん、俺……」
「さっき音痴だって言ってたわよね?大丈夫、歌なんてすぐに上手くなる秘訣があるから……」
なぜかそう言って――ひどく獰猛な微笑みを浮かべると、レイコがマサヒコの隣に腰を下ろした。
「!?%&、3あ、か、柏木さん?」
ぴったりと身を寄せるようにレイコが座ってきたため慌てるマサヒコだが、
レイコは笑顔のまま彼の手を取った。
「うふ………ねえ、マサヒコ君?」
「は、ひゃい?」
鼻腔をくすぐる大人の女の香りと、柔らかく冷たいレイコの手のひらの感触。
事態に混乱したマサヒコは、声を裏返らせて答える。
§


「マサヒコ君って、童貞かな?」
「!“#T@−はああああああ???」
「驚かないで。大事なコトなの。ウチにとって君は大切な存在になるんだから、
キチンと情報を管理しておかないと………」
「ああ、あのですね、だから俺は」
「うふふ、でもその様子だとまだ童貞みたいね。うん、合格よ」
「ご、合格って……」
「まだ女の子の手がついてないってことは、身辺整理をする必要が無いってことだし。
あともしかしたらキスもまだなの?マサヒコ君?」
「そ、それは……」
「ふふ、完璧に真っさらな新品なのね?ますます良いわ。
じゃ、話を戻すけど、今日は早速歌唱力アップのレッスンをしておきましょうか?」
「い、いやでも、その」
“ちゅッ”
(☆◇★□▲!!!!!)
言葉を続けようとするも、いきなりレイコに唇を塞がれて驚愕するマサヒコ。
“ちゅッ………ちゅるッ”
あまりの早技にマサヒコが無抵抗なのを良いことに、レイコは好きなように彼の唇を貪った。
(薄くて……でも、すべすべして気持良い唇……この子はやっぱり掘り出し物ね……)
丹念に唇を味わいながら、レイコは自分のシャツのボタンを早くも三つ目まで外していた。
“くちゅッ、ちゅぅッ”
そして舌先を小さくすぼめると、マサヒコの口内へと強引にこじ入れた。
“くちゅ……ぐちゅ、ちゅうる”
「んッ……んっんっ、んぐぅ〜〜〜ぐッ、ぷ、ぷはああ!!!なッ、なにするんスかああ!」
しばし呆然と為すがままだったマサヒコもさすがに正気に戻り、慌てて唇を離した。
マサヒコの方を見つめて未練がましそうな表情をするレイコだが、
そのまま口の中に残ったマサヒコの唾液をくちゅくちゅと味わうように転がした。
そして―――こくり、と咀嚼するようにそれを呑み込むと、にやり、と笑って言った。
「初めてにしては上手じゃない……ふふ、やっぱり君は見込みがあるわ」
「じ、じょうずって……ちょ、ちょっと、何の真似を……」
「歌が上手くなるにはね、ブレス……息の使い方が重要なの。
それにキスを練習すれば舌の使い方も上手くなるし」
「だ、だからって!」
「あら〜〜〜?興奮してるの、マサヒコ君?うふ、大丈夫よ。さっき人払いをしたから、
もっと気持ちを高ぶらせなさい……大きな声を出す、それも、歌の練習のうちだし。
じゃあ今度は、もっと良い声を出してもらうから………」
「はぁおッ!?」
くにくに、とジーンズ越しにマサヒコの股間をまさぐるレイコ。
動転した彼が目を白黒させているのにも構わず、
白くしなやかな指先で何度もそこを絶妙なタッチで擦っていく。
「うふ……マサヒコ君も、なんだかんだ言っておちんちん、固くなってるじゃない……」
「そそそそ、それは、だって柏木さんが」
「良いのよ……男の子なら普通のことよね。んふ、じゃ……」
ぎゅぅぅうううう、と少し強めにレイコがそこを握ると、
彼女のその動きに反発するようにマサヒコのペニスはむくっ、と勃起してしまっていた。
「ち……ちょ、ちょっと」
レイコの妙技に抵抗も忘れ、ほぁ〜〜〜〜っとした表情を浮かべてしまうマサヒコ。
「こんな……30過ぎのオバサンじゃ、嫌?マサヒコ君」
そう言いながらもレイコは素早くマサヒコのジーンズのジッパーを下ろした。
トランクスの中から元気よく屹立したペニスが、ぺろん、と顔を出す。
「い。嫌とかじゃなくて……って、だから」
「こんなにおちんちん固くして、おっきくして、嫌なわけないわよね?」
「あ、あのやっぱり俺」
「うふ……でもマサヒコ君、まだぜんぶムケてないんだ?」
「う………」
§


男としては指摘されると怒るよりも情けなくなってしまうところをつかれ、黙り込むマサヒコ。
「だいじょうぶよ……君くらいの頃は、火星人で当たり前なんだから。
これからいっぱい私としていけば、キチンとムケるから。ちょっと待ってね、マサヒコ君。ホラ……」
“ぷち……ぷるっ”
レイコがシャツのボタンを外し、ブラを外す。
真っ白で、たわわに実った重そうな乳房がマサヒコの目に飛び込んできた。
“ごくっ”
思わず唾を飲み込んだ。乳首や乳曇こそやや薄茶がかってはいるものの、
三十歳を超えたとは思えない、見事な張りの乳房だった。
「うふ……ほら、私のおっぱい見て、またおっきくなってきた、マサヒコ君のおちんちん。じゃ……」
“くりゅっ”
「あ……うぁ……」
レイコの舌先の、ざらり、とした感触がペニスの先端から伝わってきた。
惚けたような声をあげ、思わずマサヒコは天を仰いだ。
“ちゅっ……ちゅむっ”
ほっそりとした指でペニスの根元をきゅっ、きゅっ、と軽く絞るように挟み込みながら、
レイコはマサヒコのペニスに啄むようなキスを続けていく。
“くちゅ……くに、くり”
そしてキスを繰り返しながら、爪先で傷つけないようにゆっくりとマサヒコの包皮を剥いていく。
「あ……う……あ………」
わずかな痛みと、くすぐったいような、痺れるような快感。
レイコの舌先に弄ばれながら、徐々に徐々にマサヒコの亀頭が顔を現し始めた。
「あ……は、ムイちゃった……マサヒコ君の、おちんちん」
「はぁ……か、柏木……さん」
「レイコで……良いわ」
「レイコさん……俺、俺……こんなの……」
「良いから。全部……私に、任せて」
“ぢゅぷっ”
レイコは顔を出したばかりの、ピンクの亀頭を口に含んだ。
「あ………あああ……う」
ぬるぬるとして、どろどろとして、ねっとりとして―――柔らかで、弾けるようで、溶けるようで―――
ペニスの先から全身へ、ぶわりと広がる快感に、身を仰け反らせるマサヒコ。
“ず……ぢゅぼっ、ちゅうっ、ちゅっ”
マサヒコのペニスの熱さを感じながら、
レイコは自分自身も身体の芯から熱くなっていることに、ひどく戸惑っていた。
(あ………んふくぅ……凄い……こんなに、私まで興奮するなんて)
タレント時代も、事務所の社長となった今でも、
芸能界という過酷な世界で立ち回るために、仕事を取るために。
相手に求められれば、レイコは持って生まれた自分の美貌と肉体を利用することも厭わなかった。
ただ、そんな相手と肌を合わせるたび、身体を重ねるたび―――
彼女は、酷く自分が磨り減っていくような気持ちになり、
その気持ちを忘れるためにセックスに対してどんどん無感動になっていった。
元々自分はセックスに対して淡泊だったのだし、それで仕方ないとも思っていた。
だが―――レイコは今、親友である人の子供のペニスをくわえながら、
久しぶりに自分のそこが熱く潤ってきていることに気付いて、驚いていたのだった。
“すっ”
マサヒコのペニスを舐め続けながら、左手をショーツの中へと伸ばした。
“ぐぢゅ……”
(あ………)
やはりそこはしっとりと潤い、指先からの感触で分るほど、下着もべっとりと濡れてしまっていた。
(………どうして?お姉ちゃんの、息子さんだから?大事な、私の……
一番、大切な人の子供だから?だから濡れているの?なぜ……)
分らなかった。混乱しながらも気持ちを高ぶらせたレイコは、
マサヒコのペニスを口に含んだまま、指先で自らのそこを弄り続けた。
“ぷ……ぷちゅ、ぴちゅ、ぐっ……ぐ、にっちゅ”
§


「んっ……んっ、んむ」
「あ……ああ……あ、あ」
マサヒコの眼下には、目を閉じてペニスを貪るレイコのとろん、とした表情。
そして彼女が頭を揺らしてペニスを口でしごくたび、
しっとりと汗ばんだ白く大きな乳房がぷるぷると震える。
いつの間にかレイコは下着を膝まで下ろし、
指先をその中に突っ込んでくちゅくちゅ、と湿った音を響かせていた。
(う……うわ……ダメだ……もう、が、我慢できね……エロすぎる)
普段クラスの男子に“仙人”と称されるほどそちら方面に疎いマサヒコだが、
ここまで淫靡なシチュエーションの中では最早歯止めがきかなくなっていた。
“じゅっ、じゅぷ……ぐにゅう”
「あ……ああ、ダメだ……れ、レイコさん、俺……」
“びゅ!!びゅうう、ビュッ、びゅ!”
童貞の悲しさ、レイコに予告する余裕すらなく射精してしまったマサヒコ。
“ぶじゅ、るぅううう”
一瞬驚いて目を大きく見開いたレイコだが、すぐに表情は淫蕩な微笑みへと変わった。
ペニスから溢れ出る精液を、喉の奥で受け止めてずるずると吸い出す。
「んっ、うんっ……ん、ふふふ……やだぁ〜〜〜、マサヒコ君たら」
「あ……あの、レイコさん、すいません、俺……が、我慢できなくて……」
「射精したばっかりだってのに、まだ全然おっきくてかたい……そんなに溜まってたの?」
「あ……それは、その、いや、環境が、その……」
「?」
まさか日々女子大生家庭教師や同級生に囲まれて溜まっているとは言えず、マサヒコは言葉に詰まった。
「うふ……それは、いっか?じゃ、その溜まってるのを、私がいっぱい出してあげるからね?」
「あの、もう、俺……」
「いいから……次は私も気持ち良くさせて……」
ソファの上にマサヒコを押し倒し、レイコはペニスを握って自分の裂け目へとあてがった。
“ず……ずるぅ”
「あ……入ってきた、マサヒコ君の……あ、いい……」
自分の中に侵入してきたマサヒコの肉棒の熱さと固さに、思わず声をあげるレイコ。
「だ、ダメですよ……そ、そんな、に、妊娠したら」
「あら〜〜心配してくれるの?エライエライ、やっぱり男はフェラニストじゃないと。
モデルにしてもタレントにしても、思いやりは大切なことよ。やっぱり君には才能が……」
「じ、冗談言ってる場合じゃなくてえ!!!」
「大丈夫。私ね、赤ちゃんができない薬を飲んでるから。だから生で思いっきり……」
“ぐり……ぶにゅ、ずちゅ”
騎乗位の状態で、自分の思うまま腰を振りまくりながら―――
レイコは、ようやく自分の気持ちに気付いていた。
(分った……私は………私は、お姉ちゃんが羨ましかったんだ……)
親友であり、姉と慕っていた吹石。だが彼女は、自分の幸せのためにこの世界から去っていった。
そのときの感情を、レイコは思い出していた。寂しかった。
それ以上に―――裏切られた、と思ったのだ。一番大切な、彼女に。
祝福の言葉を口にしながら、本当はそう思っていた。
“じゅ、ぢゅごっ、ずるっ……ぐちゅっ”
「あ……あ、ああ……れ、レイコさん……」
恍惚の表情のまま激しく腰を振るレイコに、マサヒコは切なげな声で応えていた。
そんな彼の表情を満足げに眺めて――唇を、重ねた。
(初めは……この子に女の味を覚えさせて、事務所に入らせるつもりだった。
でも、もう逃さない。この子は、私のものにする……ずっと、ずっと)
暗く黒い歓びに心が満たされていく自分に、気付いていた。
「あ!ああ!!レイコさ……ん!!」
マサヒコが、甲高い声をあげる。レイコの膣内に、熱くどろりとした液体が溢れるのが分った。
(逃がさないわ。あなたは……私のもの)
小さく呟いた、レイコのその声は、マサヒコの耳に入ることは無かった―――

END

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