作品名 作者名 カップリング
「マネージャーのお仕事」 郭泰源氏 カルナ×井戸田

「OK、じゃ飯にしよか」
「わ〜〜い、ゴハンだ!」
「お腹空きましたあ!」
「あんまり食べると、お腹出ちゃうから、ほどほどにしとかないとダメよ?」
「ぶ〜〜、カルナは太らない体質だからって偉そうに……」
「でもカルナちゃんの言うとおりだからさ、シホちゃん。控えめで頼むよ?
水着撮影でお腹が出るのは致命傷だからさ」
「カロリー控えめで満腹になるには……やはり、オトコを食わないと……」
「その“喰う”とは違うから」
舞台はとあるホテルのプールサイド。トリプルブッキングは、水着グラビアの撮影にのぞんでいた。
なんだかんだで少しは人気も伸ばし、最近では撮影の仕事も増え始めた彼女たちだが、
さすがに現役小学生であるユーリもいるためか水着の仕事はこれが結成以来初めてであり
(水着大会のゲスト審査員という仕事はあったが)、三人は気合いを入れて頑張っていた。
「わ〜〜、私ホテルの食事って初めて!豪華なんだね!」
「……だから、あんまり食べるとお腹が……」
「シホちゃんちって貧乏だったの?」
「そ、貧乏だったの。だから私はこの身体を切り売りしてなんとか学費を……ってコラ!」
「はいはい、三人とも明日の撮影に差し障りのないよう食べ過ぎないでね」
「井戸田クン、ええかな?」
「?なんですか、福本さん」
「ま、相談というかね。後でちょっと話がしたいねん」
「?いいですけど……なんなら今でも?」
「いや、出来たらゆっくり話をしたいというか……なんで食事が終わったら、
ボクの部屋に来てくれるかな?」
撮影もいったんは終了し、トリプルブッキングの三人が遅めの夕ご飯をとっているとき、
マネージャーのヒロキは今回の撮影の担当カメラマンである福本に話しかけられて首をひねった。
(……?今日は、特に失敗らしい失敗は無かったと思うけど?)
いつもならエロボケを連発するシホも初の水着グラビアのためか緊張して大人しくしていたし、
シホのボケに天然で乗っかってくるユーリにしてもいざ撮影となると
子役あがりらしく落ち着いた態度で、ヒロキの見る限り満点に近い出来だった。
このユニットにおけるまとめ役であり、ツッコミ役であるカルナはいつもどおり
普段のしかめっ面が信じられないほど完璧にアイドル顔を炸裂させ、これまた上出来だった。
(でももしかして……俺の見ていない裏で……)
シホが福本に余計なことを言った可能性も無いとは言えない。
少々げんなりとした気分で食事を終えると、ヒロキは福本の部屋へと向かった。
“コンコン”
「ああ、開いてるよ。入って、井戸田クン」
「はあ……お邪魔します」
部屋に入ると、福本はカメラや撮影機材の調整をしているところだった。
(さすがに……プロってところだな)
今日の福本は飄々とした関西弁でトリプル・ブッキングの三人から笑いをとりながら撮影し、
初の水着撮影でガチガチに緊張していた彼女たちにとってその存在は頼もしいものだった。
年齢は既に初老といった感じだが、仕事熱心な彼の姿にヒロキは素直に感心していた。
「悪いねえ、こんな時間に呼び出してもうて。お詫びやないけど、ビール、どお?」
「あ……そんな、俺は、全然」
「ええからええから。あの子らの前やと立場上飲めへんねやろ?」
「はい……そうなんです、けど」
「あははは、未成年の子らが相手やし、気ぃ使うわな、特にこんな仕事は。
飲酒が見つかったりしたら会社ごとの問題やしね。それとも井戸田クン、キミ飲めへんの?」
「いえ……じゃ、お言葉に甘えてありがたく……」
「ボクも一人で飲むんは味気ないなあって思うとったとこやねん。したら、乾杯といこか」
「あ、はあ。乾杯……」
ぐびり、と缶ビールをあおりながら、ヒロキはちょっと不思議に思っていた。
(?……なんなんだろう?まさか、俺に酒の相手をしろってだけの話じゃないだろうし。
ままま、まさか、福本さん?ホモっ気があって俺を誘ったとか?この業界多いって言うし?)
§


思案顔のヒロキに気付いた福本は、ちょっと苦笑して話しかけてきた。
「そない警戒せんといて〜な、下心があるとかやないねんから」
「あ……はあ」
想像していたことが想像していたことだけに、
福本の言った“下心”という単語の生々しさにどきり、としてしまうヒロキ。
「なんぼ可愛い言うても、娘より年下の子らに酒の相手せぇなんて言わへんて。
カメラマンの中には仕事がハケたら酌婦の真似事までさせる酷い連中もおるみたいやけどね。
ボクがキミを呼んだんは、あくまで仕事の話やから」
「いえ、そんな!福本さんに限ってそんなこと、俺も思ってませんよ」
(そりゃそうだよな、“下心”っていや、そっちの意味だよな。俺も随分シホに毒されたもんだ……)
自分の想像、というか妄想に苦笑してしまうヒロキだが、
その笑顔を見て安心したのか福本は微笑みながら言葉を続けた。
「ははは、なら別にええねんけど。実はね、話いうんはカルナちゃんのことやねん」
「?カルナちゃんが?」
意外だった。三人の中では一番ミスも少なく、井戸田の信頼も厚いのがカルナである。
「彼女カメラを向けへんかったら大人しいっちゅうか、物静かな感じやのに、
シャッターを切るといきなり豹変するよね?」
「あ……はい。でも、表情作りに関しては完璧に近いんじゃないかと思ってるんですが……」
「ぱっと見はそう見えるかもしれんね。でも一日一緒に仕事させてもらっとってね、
正直一番つまらんかったんが、カルナちゃんやったんよ」
「え?」
「ああ、少し言い方がキツかったかな?せやけどなんて言うか……
表情から動作から、全部つくりものやねんね、彼女。レンズ越しにそれはすぐ伝わってくるし、
ボクの経験から言わせてもらうと、そういう偽物の表情ってのは見ている側も気付くもんなんや」
「……………そう、なんですか……」
「うん。シホちゃんは確かに撮影慣れしてへんから失敗も多いけど、
その代り無防備な一瞬をとらえると、とんでもなく可愛い表情が撮れたりするし、
ユーリちゃんは子役出身だけあってこっちの求める“隙”みたいなものを上手く出してくれる。
せやけどカルナちゃんはね、どう撮ってものっぺりした写真しか撮れへんねん」
「…………」
ベテランらしい鋭い指摘に、ヒロキは完全に沈黙してしまっていた。
(確かに……カルナちゃんって……)
実はヒロキも、薄々ではあるが気付いていた。
初めての撮影のときに彼を驚かせた、彼女の変貌ぶり。
普段の無表情ぶりがウソのように完璧なアイドル顔を演じて見せたそれは、しかし――
福本に言わせれば、「つくりもので、偽物で、わざとらしい」ものだったということだ。
(あれが……カルナちゃんの、一番良い表情だとは、本当は俺も思ってなかった。
心のどっかで……引っかかってたんだけど……)
「スマンね、井戸田クン。結局キツイこと言ってしもうて。やけどね、撮影はまだ明日もある。
せやからマネージャーである君にはきちんと伝えておきたかってん。
明日は、自然体のカルナちゃんの笑顔をボクは撮りたいと思ってる。
演技であれだけ可愛い表情をつくれる彼女やったら、
きっと最高の笑顔をカメラに向けてくれるって思いたいねん」
「はい……福本さん」
「よし、そしたら仕事の話はここらでしまいにして、飲もか」
「はい……」
福本なりの気遣いなのだろう、その後は撮影の話抜きで、
業界の噂やヒロキも知っている有名人のゴシップなどで盛り上がった。
しかし、なにより面白かったのは上司である柏木レイコの話だった。
「へえ……前にも少し聞いたことあったんですけど、ウチの社長昔マジでモデルだったんですか」
「うん、レイちゃんとはボクも古い付き合いでね。昔は彼女、そら〜〜ブイブイ言わせとったんやで」
福本の軽妙なトークに終始笑い転げるヒロキだが、やはりカルナのことはずっと気になっていた。
(カルナちゃん……なにか、心配ごとでもあるのかな……ご両親のこととか)
カルナの家が厳格なうえ、父親がいまだに娘の芸能活動について快く思っていないらしい、
ということはユーリとシホから聞いていた。
§


(家庭環境が原因だとすると……結構厄介かもな)
有望なアイドルの卵が、家族の反対で芸能活動を諦めるのは珍しいことではない。
しかしトリプルブッキングはやっと活動が軌道に乗りはじめたばかりであり、
マネージャーであるヒロキとしてはカルナにどうしても頑張って欲しいところだった。
「付き合ってくれてありがとう。ほしたら、また明日ね、井戸田クン」
「いえ、こちらこそありがとうございました。福本さん」
気がつけば二時間近くも福本と飲んでいたヒロキはそう言って部屋を辞した。
(ふぅ……なんだかんだで良い感じに酔っぱらっちゃったな)
悩んでいた割には福本の勧めるまま結構な量を飲んでしまったヒロキは、
自分の部屋に戻って酔いを覚まそうと窓を開けようとしたのだが………。
「あれ?カルナちゃん……」
さきほどまでの話題の中心人物だったカルナが、ホテルの外にいるのを見つけて驚くヒロキ。
(?もう11時は……過ぎてるよな?)
今日はそれなりにハードスケジュールだったし、
今頃は三人ともクタクタに疲れてとっくに眠ってしまっているはずだと思っていた。
しかし――カルナは思い詰めたような表情でプールサイドに座り、ぼんやりとプールを見つめていた。
(?………ま、まさか、カルナちゃん!?)
最悪の自体を想像したヒロキは慌てて部屋を出た。

「かかかかか、カルナちゃん!」
「わっ!井戸田さん?」
突然現れたヒロキに驚くカルナだが、ヒロキは荒い息を吐いて彼女の両肩をつかんで揺さぶった。
「ダメじゃないか!!アイドルは確かに楽な仕事じゃないよ。でも、こんなのは絶対ダメだ!」
「???あの、井戸田さん?」
「君がどうしてもトリプルブッキングを脱退したいっていうなら、
俺としては残念だけどそれも君の人生だし、仕方が無いと思って諦める。
だから……だから、もっと自分を大切にしないと、ダメだよ!」
「????井戸田さん?私、この仕事をやめたいなんて思ってませんよ?」
「へ?」
「今日の撮影も、疲れたけど楽しかったし。ただ自分が上手く笑えないのが口惜しくて……」
「そ、そうだったの?俺、君がすごく深刻そうな顔してたからてっきり」
「あと実はシホのイビキとユーリの寝言がうるさくて眠れなかったから、
気分転換にちょっと外に出てみようかなって思っただけで」
「はあ……なら、良いんだけど……って、良くない!やっぱりダメだって。
女の子がこんな夜遅くに外に出ちゃ。ましてや君はアイドルなんだから」
「あ……はぁ」
ようやくマネージャーらしいことを言ったヒロキだが、
スタートがただの勘違いから始まった会話であるためかあまり説得力はない。
カルナもどことなく呆れたような表情だった。
「それはいいとして……あの、井戸田さん?座って、聞いてくれませんか?」
「な、なんだい、カルナちゃん?」
「今日の私……やっぱりダメだったでしょう?」
「!だ、ダメってことはないと思うけど」
「いいえ、分ってたんです。カメラマンの福本さん、
なんとか私を上手く笑わせようとして冗談とか言ってくれたのに、私全然笑えなかった。
シホもユーリも、すごく可愛く笑ってたのに……」
(気付いてたんだ……)
カルナの勘の良さに改めて驚くヒロキだが、彼女は口惜しそうな表情で続けた。
「私……自分を変えようと思って……変わらなくちゃと思って、この仕事を始めたのに、
全然変われてないんです。今でも人の顔を見るの苦手だし、人に見られるのも苦手だし。
こんなんじゃ、仕事もやっていけないし、シホやユーリや井戸田さんにも迷惑かけちゃう」
「カルナちゃん……」
カルナは、本当に口惜しそうにそう言うと俯いて黙り込んでしまった。
「で、でもさ、カルナちゃん?シホちゃんやユーリちゃんと一緒にいるときは普通じゃん。
だからさ、ゆっくり、ゆっくり撮影とかにも慣れていけば大丈夫じゃないかな?」
§


「それは……ユーリのこともシホのことも私、好きだからですよ。
ちょっと疲れるけど、ふたりともすごく良い娘ですし」
「うん……ねえ、カルナちゃん?」
「?なんですか?」
「あのさ、もしかして俺のこと苦手?なら担当変えてもらうとかした方が……」
「!!そ、そんなことないです!井戸田さんのことは……」
前々から気になっていたことを、一気に話すことにした。
以前から気付いていたのだ。カルナと自分の間に微妙な距離間があることに。
「いや……だってあんまり目とか合わせてくれないし。なんだか君、
俺のことどうも避けてるような気がしてさ。もし俺が原因なら、遠慮なく」
「ち、違うんです!あの……全然、井戸田さんは、大丈夫です。というか……あの……」
「ま、大丈夫なら良いんだよ。あはは、俺、てっきり君に嫌われてるかと」
「………好きです、井戸田さん」
「ははは……って、はひ?」
「井戸田さんのこと、私……ずっと好きでした。あったかくて、優しくて、お兄さんみたいで。
だから……前から、私……」
「あ、あの、カルナちゃん?」
「どうしようかって、思ってました。マネージャーの人を好きになっちゃいけないって、
それくらい私も分ってるんですけど……でも、井戸田さんには一緒にいて欲しいです。
これからも……ずっと」
(カルナちゃん………でも、それは)
多分それは、恋心というより仕事をしているうちに芽生えた連帯感に近いもので、
常に側にいる自分に対する擬似的な恋愛感情だろう、とヒロキは思った。
「ははは、ありがとう、カルナちゃん。でもそれ、他のふたりに言うのは……」
「はい、言いません。でも………ふたりだけのときは、あの、こ、恋人になってくれませんか?」
「!!え!」
カルナが、やっと正面からヒロキを見つめてきた。完全に、恋する少女の目だった。
(ええと……その、それは……ヤバいよな?)
マネージャーとタレントの禁断の恋は、案外この業界でも少なくない。
と言うか、厳しく禁止してしまえばしまうほど燃え上がってしまうのが、恋愛というものである。
(でもな………)
ヒロキは、恥ずかしげに頬を染めているカルナを見つめ返した。
名門・聖光女学院に籍を置くだけあって受け答えもしっかりしていて、
頭の回転の早さや勘の鋭さも持ち合わせた彼女は、トリプルブッキングにおいても
自然と冷静な長女役といった感じのポジションにいて、
ついついヒロキも頼るようになってしまっていた。しかし、いつからか、
自分とどうも目を合わせないようにしている彼女を感じるようになった。
だからこそ、関係の改善をただ図ろうとしただけだったのだが――
ヒロキは遅ればせながら、どうやら地雷を自ら踏んづけてしまったことに、気付いた。
「あの……カルナちゃん、嬉しいけど、でもそれってさ、この世界だと」
「分ってます。でも、好きになっちゃったんです」
はっきりと、カルナは言い切った。それまでのどこか言いよどむような感じが、ウソのように。
(カルナちゃん……)
元々スカウトでこの世界に入ったくらい、顔立ちの整った美少女である。
今日の初めてとなる水着撮影では、意外なくらいのスタイルの良さにも驚かされた。
こんな可憐な少女に告白されて、嬉しくないはずはなかったのだが――
(イカンイカン……いくら可愛くても、相手は高校生だぞ?
おまけに、これから俺たちが大切に売り出していかなくちゃいけない、アイドルなんだし)
それでも、自分の倫理と職業意識をフル回転させてヒロキは思いとどまった。
「あの、カルナちゃん?」
「………なんですか?」
「まだ……君の言葉に応えることは、できないよ。だって君はまだ高校生だし、
それに君はアイドルなんだよ?だからね、あと何年かして、君がきちんとした大人になったら」
「………井戸田さんがいてくれたら」
「え?」
§


「私、大丈夫だって思えるんです。多分、好きな人に応援されてたら……
撮影とかでも、もっと上手く笑えるんじゃないかって……だから、私」
カルナは途中で言葉を切ると、ゆっくりとヒロキの隣に移動した。
月明かりが彼女の白い肌に映え、眩しいほど鋭い光沢を放っていた。
「私……誰よりも、井戸田さんに応援して欲しいです。
井戸田さんに……好きに、なって欲しいです」
そう言うと、カルナが目を閉じて濡れた唇を突きだした。
「か、カルナちゃん……」
(だだだだ、ダメだって、カルナちゃんはウチの大事なタレントで、
おまけに16歳で、淫行で、条例違反で、石原都知事で……)
混乱して訳の分らないことを考えるヒロキだが、
そんなことを考えている時点で理性が臨界点にきているのは明らかである。
“すッ”
「あ………」
無意識のうちに、カルナの背中に手を回していた。
カルナもヒロキの腕をつかんで、耐えられなくなったような吐息を漏らす。
耳元をくすぐる、息の熱さ―――その瞬間、完全にヒロキの理性は、吹き飛んだ。
“ちゅ……”
(あッ……!井戸田さん……)
(うわ、やわっこい……カルナちゃんの唇)
正面衝突のキスだったが、唇がふれ合う感触は鮮烈なものだった。
「んッ………」
目を閉じたまま、小さく呟くカルナ。ヒロキの腕を、痛いくらい力をこめてつかんでいた。
(ファースト………なのかな、カルナちゃん?ま、俺もご無沙汰なんだけど)
学生時代はそれなりに女性と付き合った経験はあるものの、
社会人になって彼女と別れてからはここ一年ほどそうした機会とから遠ざかっていたヒロキ。
ガチガチになってしまっているカルナの緊張をほぐそうと、軽く彼女の唇を吸った。
“つぅ……”
「!」
驚いて、目を見開いてしまうカルナ。ヒロキは唇を軽く話すと、言った。
「カルナちゃん?練習しようか?」
「?……なんのですか?」
「俺の顔を見る、練習。さっきさ、見られるのが苦手って言ってたじゃん。
だから、俺がじっと見つめているからさ、それ我慢できたら大丈夫だろ?」
「で、でも……」
「いいから。ホラ、いくよ?」
「…………」
「…………」
「………すいません、やっぱり、あの、恥ずかしいです」
しばしじっと見つめ合うふたりだが、やはり先に顔をそらしてしまったのはカルナの方だった。
「う〜〜ん、そんな恥ずかしいの?キスまでした俺なら大丈夫かと思ったんだけど」
「あの……井戸田さん?お願いがあるんですけど……」
「?なに?」
「井戸田さんの部屋で……ふたりっきりなら、出来るような気がします。
ここだと、もしかしたら人が来るかと思って恥ずかしくて……」
「?!でで、でも……」
「お願い、します」
そう言って、きゅっ、とヒロキのTシャツの袖をつまむカルナ。そんな彼女の愛らしい仕草に、
「あ、ああ。君がそんな、言うなら……良いけど」
あっさりと迷いを吹き飛ばしてヒロキは彼女の言いなりになってしまうのだった。
「あ、ありがとうございます」
まだ恥ずかしそうにだが、やっと笑みを浮かべてカルナはヒロキの隣にきた。
「あの、それと………手を、つないでもらっても良いですか?」
「あ……ああ」
「良かった……えへ、私、ずっと憧れてたんです。好きな人と、手をつないで歩くの」
§


(くぅ〜〜〜、可愛いじゃないか、カルナちゃん)
身悶えするような気持ちになりながら、ヒロキはカルナの手を握った。
「……手、ちっちゃいんだね、カルナちゃん」
「……井戸田さんの手が、大きいんですよ」
なんとなく噛み合うような噛み合わないようなことを言いながら、
ふたりはヒロキの部屋へと歩いていった。

「じゃ、もう一回だよ?」
「は、はい!」
緊張した面持ちで見つめ合うふたり。
「……………」
「……………」
静寂が、部屋を包む。コツコツ、と時計の秒針が時を刻む音だけが、響く。
「………やっぱり、ダメです………」
しかしやはり先に降参したのはカルナの方だった。
「う〜〜ん、なんだかさっきより早いくらいだったよ?」
「だって……さっきより井戸田さんのことが、好きになっちゃったんですもん」
(ぐううう………可愛すぎる)
カルナの発言にいちいち参ってしまうヒロキだが、心の中ではちょっとした悪戯心が芽生えていた。
「これじゃ練習にならないな……よし、じゃ、罰ゲーム」
「え?!!?きゃッ!」
“ちゅ”
カルナを抱き寄せると、ヒロキは彼女の頬にキスをした。
「へへ……きちんと俺を見てくれないと、もっとキスしちゃうよ?」
「あん……ダメです、井戸田さん、恥ずかしい」
「じゃ、俺を見てよ」
「だって……」
「それじゃ、もう一回」
“ちゅッ……ちゅう”
(きゃ……あ……)
唇を合わせたあと、ゆっくりと舌先でカルナの唇を舐めた。
ぶるぶると、彼女の肩が震える。互いの鼻先を、擦り合わせるようなキス。
“つるッ……”
「!ん………んむぅ……」
ヒロキの舌先が、カルナの口内に入ってきた。舌先を絡めあう。溜まった唾液が、混じり合う。
歯の裏をくすぐられるように、口襞を撫でられるように、彼の舌が泳ぐ。
(あ……やん……力が、抜けちゃう……)
「ダメだよ……カルナちゃん、目をつむっちゃ」
「いや……恥ずかしい、です」
「でもちゃんと見てくれないんなら、もっとしちゃうよ?」
「え?……あ!や!」
ヒロキの指先が、カルナのキャミのストラップに伸びてきた。
彼女の弱々しい制止を抑え、ゆっくりと、それを脱がしていく。シンプルな、ライトブルーのブラ。
(カルナちゃん……可愛いよ)
見た目はスレンダーなのだが、意外に胸はあるカルナ。
ヒロキは、ホックに指を入れるのももどかしく、ブラを外した。
“ぷるッ”
「キレイだよ、カルナちゃんのおっぱい……」
「や……見ないで下さい」
涙目になって懇願するカルナだが、ヒロキはにっこりと微笑んだ。
「やっとキチンと俺を見てくれたね、カルナちゃん?」
「あ……あの、それは……」
“ちゅうッ”
「あッ!ダメ……そんなの」
ヒロキが、カルナの乳房にむしゃぶりついた。カルナは、恥ずかしさとくすぐったさで、身を捩る。
§


“ちゅっ、じゅうッ……ぷちゅ”
ヒロキは、夢中になってカルナの乳房を舐め、吸い、口に含んだ。
口から溢れた涎がカルナの白い乳房に垂れ、淡く光る。
くりくりと、ヒロキの指先で嬲られて小さな乳首がむくり、と勃つ。
「あッ!あん!ふぅ……あぅッ……」
(ああ……恥ずかしいのに……あン……でも……)
ざらざらとしたヒロキの舌が、這い回る感触。背筋がぞくぞくとして、全身が強ばる。
“すッ……”
「あ!ダメ……そこは……」
ヒロキの手が、ショーツの中に伸びてきた。
慌てて両脚を閉じようとするカルナだが、ヒロキは強引に手を割り入れた。
「あれ?もうあったかいじゃん、カルナちゃん?」
「や!言わないで下さい、恥ずかしい……」
「ホラ……ちょっと擦っただけなのに、もう湿ってる……ねえ、気持ち悪い?カルナちゃん」
「気持ち悪くは……ないですけど……」
「なら、ちょっと我慢して……もっと良くして、あげるから……」
「あ!……でも、やっぱり……恥ずかしいです」
「大丈夫……ホラ、濡れてきた……」
撫でるように、優しく、摘むように愛撫を続けるヒロキ。指先に、カルナの体温を感じた。
手のひらに絡みつく、繊細な恥毛。ねっとりと包みこまれる、肉襞の感触。
「あ……や……ダメ……私……私……」
「良いんだよ?もっと……もっと感じて……カルナちゃんの、可愛い顔、俺に見せて」
“くちゅ、ちゅくッ”
やがてカルナのそこは豊潤なほどに愛液を漏らし初め、
彼女は身体を左右に揺すりながらヒロキの愛撫に応えていた。
「や、あ……あああ!ダメ……井戸田さん、私、だ、あ……ああッ!」
―――カルナは、達した。
一瞬、カルナの身体が跳ね、彼女の中がきゅうッ、と自分の指先を挟み込むのが分った。
「カルナちゃん……どう?」
「や……ダメです、私、真っ白になっちゃって……」
「ねえ……俺も……いい?」
「!あ、は、はい……」
カルナのショーツを脱がすと、ヒロキも衣服を脱いで自分の猛りきったモノを取り出した。
「!すごい……は、入るんですか?そんなの……」
「大丈夫……力を抜いて……」
小さな膣口から溢れる愛液をペニスの先端に塗りつけるようにしたあと――
ゆっくりと、ヒロキはカルナの狭いそこへ自分の分身を割り入らせた。
“くちゅ……ぷず……”
「あッ!いッ!……つッ!」
まだ先端が入っただけにもかかわらず、激痛に涙をためて身体を硬くするカルナ。
「ゴメン、カルナちゃん……えっと……」
「……良いんです……井戸田さんなら……いいんです……」
「あの……でも、やっぱ初めてだと、痛いんだよね?」
「い、痛いですけど……あの、井戸田さん?」
「な、なに?」
「井戸田さんって……今まで、処女の子としたこと、あります?」
「!!?な、なんでいきなりそんなこと?」
「………あるんですか?」
「い、いや……無いよ。君が……その、初めてだよ。だからなんていうか、勝手が違うと言うか、
その……どうしたら良いかちょっと迷ってるっていうか……」
「やっぱり……えへ、じゃあ、私の最初の人は井戸田さんで、
井戸田さんも処女の子とするのは私が初めてってことですよね?嬉しい……」
(……カルナちゃん)
涙を滲ませながら、カルナは微笑んでいた。
自分がヒロキにとって、特別な存在になれた。ただそれだけが、嬉しいと言ってくれていた。
§


思わず自分も目頭が熱くなるのを感じながら―――
ヒロキは、カルナにまだ一番大切なことを言っていないことに気付いた。
「ゴメンね……カルナちゃん」
「謝らなくて、良いんです。気にしないで下さい、井戸田さん……」
「違うんだ。まだ……君言ってなかった」
「?」
「君が、好きだよ、カルナちゃん……タレントだとか、そういうのを抜きにして」
「!!井戸田さん……」
「君といると、安心できて、なんだかホッとするんだ。
君は自分のことを、つまらない人間だとか言ったりするけど、絶対にそんなことないよ。
君がたまに見せる、ホントの笑顔は最高の笑顔だよ。だから……それを、いつも見せて欲しいな」
「……井戸田さん………私も、大好きです」
「…………」
「…………」
ふたりは、無言のまま見つめ合うと―――
“ちゅッ”
小さな、キスを交わした。そして、にっこりと微笑み合う。
(いくよ……カルナちゃん……)
(はい……井戸田さん……)
もう、言葉は要らなかった。ヒロキは徐々に徐々に、ペニスをカルナの中へと沈ませてゆく。
“めり……ずッ、つぶぶぅ……”
「あ……ああああッ!うあッ!」
なにかが、ペニスの先端に触って、弾けたような感触。
カルナの切ない叫び声を耳元で聞きながら、ヒロキはぐりぐりとペニスを侵入させる。
熱い肉が、とろけるようにペニスを呑み込んだ。
「はぁ……うッ……ああ……」
カルナの口からは、まだ痛みに耐えるような声が漏れている。
反射的にのけ反ってしまう彼女の両脚をしっかりと抱え込んで固定すると、
ヒロキはゆっくりと腰を浮かし、カルナに打ちつけた。
「ああッ!!」
ペニスが打ちこまれた瞬間、激しくカルナの身体が震える。玉のような汗が吹き出し、流れる。
“ずるぅ……ぐぶッ……”
ゆっくりゆっくり、ヒロキが動きを反復させる。カルナの中心に、杭を打ちこむ。
粘膜とペニスが擦れて混じって溶け合う粘着音が、ふたりの耳に響き合う。
「あ……ああッ……うう……」
「ま……まだ、痛い?カルナちゃん」
「は、はい……ふぅ……でも、さっきよりは……だから、大丈夫です」
確かに先ほどよりは表情も幾分か和らいだが、それでもまだ痛みはあるようだ。
そんな彼女を気遣いながらも、もはや止まらなくなったヒロキはためらいながら
なるべく彼女に体重と負担をかけないよう、短く小さな動きでペニスを突き立てた。
“ずッ……ず……ぐ、ぬぷ……”
ヒロキの動きに合わせ、カルナの中からは鮮血と一緒に粘液が溢れてくる。
掻き出されるように、漏れてくるそれのおかげでヒロキは動きを早める。
「あ……井戸田さん……好き……」
痛みに耐えながら、カルナが呻くようにヒロキの名前を呼んだ。
ぬるぬるとした肉襞がペニスに絡みつく。狭い入り口が、両側から挟み込む。
腰を動かすたびに、包むようにかかる柔らかな圧力。
自分の動きに合わせ、儚げに揺れるカルナの白い裸体。
(夢……じゃない……)
夢中になって突きながら、ヒロキはそう思った。
カルナの体温と、ペニスから伝わる感触だけがそれが現実であることを教えてくれる。
カルナの柔らかな胸に顔を埋め、それを吸いながら――ヒロキは、最後のときがくるのを、感じた。
「か……か、カルナちゃん……あ……ああっ!!」
最後の理性を振り絞り、カルナの中からペニスを引き抜く。
“びゅ……ぴゅッ、ぷぶびゅッ”
§


真っ白な精が、そこから迸って何度も何度もカルナの身体を汚した。
ヒロキも、カルナも、ただ呆然と……射精の瞬間を、見つめていた。
それが、なにかの儀式であるかのように――――

「ゴメンね……カルナちゃん。でも、本当に、俺なんかが初めてで良かったの?」
「良いんです……それに、気付いてませんでした?」
「?な、なにが?」
「うふ……私、ずっと井戸田さんを、見てたんですよ?」
「?いや、だって俺が君を見るといっつも目をそらすから……」
「ふふ、だから……井戸田さんが見ていないときは、いっつも見てたんです。気付かれないように」
「……それは、ズルイよ、カルナちゃん……」
「えへ、ゴメンなさい。じゃ、明日も撮影があるんで、これで……」
「う、うん……その、これは、ナイショだよ?」
「ふふ、分ってます……でも、二人っきりのときは……良いですね?」
「うん……」

「おはようございます、福本さん!」
元気よく、福本に挨拶するカルナ。昨日までの表情が嘘のように、晴れやかな笑顔だった。
「ああ、おはよう、カルナちゃん」
「昨日はすいませんでした!今日は私、頑張りますから!」
「ほぉぉ〜〜〜、ええ笑顔やん、カルナちゃん!じゃ、今日は頑張ろうか!」
「はい!」
「ふ〜〜〜ん、しかし、上手いこと元気づけたねえ、井戸田クン?」
「ははは、まあ……」
(本当のことバレたら……俺、クビだよなあ……)
「ま、レイちゃんには黙っとくさかい。やけど避妊には気をつけや?
この世界、案外できちゃったって多いから」
「え?えええええ?ふ、福本さん?」
驚くヒロキだが、福本は悪戯っぽい表情のまま、彼の腕を小突いた。
「ま、これからもよろしく頼むで、敏腕マネージャー。
女の子は恋しとるときの表情が一番やさかいね。今日はええ写真がとれそうや」
「福本さ〜〜ん、早くしましょうよ〜〜〜!!」
「ああ、ちょい待ってえな、シホちゃん。全く、年寄りはいたわらんとアカンで」
シホの声を聞き、何事も無かったかのようにいそいそと立ち去る福本。
井戸田は、ただ彼の背中を見つめて苦笑するしか無かった―――

END

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