作品名 |
作者名 |
カップリング |
「アイドルのうらほん」 |
72氏 |
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「―じゃあ次の質問だけど…
TBのみんなが『自分は売れっ子になったなあ』って感じるのはどんな時だと思う?」
その日、TBの三人はアイドル雑誌のインタビューを受けていた。
この手の仕事は結構こなしてきている三人。本日も順調に質問に答えていく。
―だが、残念ながらTBのインタビューは何故かまともに終わることが無い。
誰かしら(特にシホとユーリ)が余計な発言をかまし、場を濁してしまうからだ。
そして今回もそれは例外では無いようで―
「えと…私は『街を歩いていて声をかけられるようになった』…とかですかね」
「わたしは『友だちにサインを書いてってお願いされる』とかー、
最近だと…『ファンレターをたくさんもらえるようになった』とかかな?」
と、カルナとユーリはまともな回答で済ませる。
―はい、というわけで…本日の“爆弾”は飯田シホ。
「少しでも他の二人より目立ちたい!!」と考えた彼女が出した答えは―
「私は…うーん、やっぱ…
自分のそっくりさんのAVアイドルが出てきたときかな?」
「「「「……は??」」」」
シホの発言に、和やかだった場の空気が一瞬にして凍りつく。
「…え、知らないんですか?
女性タレントって人気が出ると、よくそっくりさんのAVが出るじゃないですか。
ほらあ…例えば小倉○子とか、安部なつ○とか…」
「「具体名は出さんでいい!!」」
「え、あ…もごっ…!!」
なおも止まらないシホにカルナとヒロキから速攻でツッコミが入り、その口を強引に塞いだ。
―その後は微妙な空気のままではあったが、
なんとかインタビューは終了したのだった。
―その日の夜。
とあるレンタルビデオ店のAVコーナーの一角に、
TBのマネージャーである井戸田ヒロキはいた。
彼がAVのタイトルを物色し始めてから、既に小一時間が過ぎようとしている。
「はあ…なんで俺はここに…?」
何度もため息をつきながら、ヒロキは数時間前の社長室での出来事を思い返していた。
「―んー…確かにシホの言い分にも一理あるわよね」
ヒロキから本日のインタビューの顛末を聞いたレイコは大きく頷いた。
「な、なに言ってんですか、社長!?」
社長の思いもよらぬ発言に、ヒロキは驚きの声を上げる。
「…別にそんなに変なことじゃないでしょ?
どんなに清純派アイドル気取ってても、それで欲情する男は少なからずいるんだしね。
実際この前のシホの誕生日にコンドーム送ってきたファンがいるじゃない」
「ま、まあそうですけど」
「そういえばマイのデビュー直後にもいたわね。
『毎晩マイちゃんでオナニーしてます(;´Д`)ハァハァ』ってファンレターに書いてた変態野郎が」
「はあ」
「やる気の無い返事ね…とにかく、TBがエロ方面に需要があっても別におかしくない、ってことよ」
「…はあ。でも本当にそんな…AVがあるんですかね?俺も聞いたことないし」
「だからさ…それをアンタに調べてもらうのよ」
「えっ!?」
社長のまたも予期せぬ発言。ヒロキは「何言ってんのこの人!?」と呆れ、驚くしかない。
だがレイコは目の前の彼に一切かまわずに話を続ける。
「今日にでもビデオ屋に行ってみてくれない?どうせ今夜は暇でしょ?
見つけたらそのビデオを借りてみて、中身がどうなってるかを私に報告しなさい」
「あ、あの…まさか…本当に俺がやるんですか?」
「当たり前じゃない。仮にもアンタはあの子たちのマネージャーなんだから。
それに、こういう事は男の子の方が詳しいでしょ?」
「いや、でも…」
「言っとくけど、これは業務命令だから」
「…はい」
業務命令とまで言われては、もう何も言えない。
社長の勢いにぐうの音も出ず、ヒロキは素直にそれに従うしかなかった。
「あ、レンタル代は経費で落としてあげるから、
ちゃんと領収書もらってきなさいよ」
「……はい」
―とまあ、こんな感じである。
確かに『芸能人のそっくりさんのAV』が「一種の人気のバロメータ」であるという
シホや社長の言い分はヒロキにも…微妙に分からんでもない。
「しっかし…本当に俺が借りるのかよ…」
『領収書を貰ってきなさい』と言われたときはどんな羞恥プレイかと思ったが、
よく考えれば会社の仕事という名目で借りる分、多少は気が楽になるというものだ。
そこは多少なりとも社長に感謝すべきかもしれない。
「だからって…なんで俺が…?」
まあ結局のところ、彼にとって理不尽なことに変わりないのだ。
それに肝心のビデオがそんな都合よく見つかってたまるかと。
これだけ探したのだ、どうせ見つかるわけが…
…見つかるわけが…
…見つかるわけが…?
「……見つけちゃったよ……」
“それ”を目にしたその次の瞬間、
ヒロキは自分の身体から力が抜けていくのを感じた。
―それからしばらくして、自分のアパートへと戻ってきたヒロキ。
借りてきたビデオのタイトル名を改めて確認し、彼はまたため息をついた。
「ま、この名前じゃ見つからなかったわけだ…」
『あの人気急上昇中アイドルグループに劇似!?T○誕生!!』
―いや2文字しかないのに片っぽを伏字にしたらもうわけ分かんねえよ。
…とまず軽いツッコミを入れながら、ヒロキはそれをビデオデッキへと放り込み
リモコンの再生ボタンを押した。
いかにも安っぽいオープニングタイトルに続き、
まずは棒読み演技での二人の女優の自己紹介が始まる。
この棒読みっぷりはAV特有というか、なんというか。
(演技がうまいと肝心の絡みの部分も演技じゃないのか?
と思われてしまうので、演技はわざとらしいほど棒読みにしているらしいとか何とか)
…まあ、流石にユーリ役は見つからなかったというか、
出したらどう見てもアウトなので居ないようだが。
『飯田リホでーす』
『ハルナです』
『『ふたり合わせて…『トリプルペッティング』でーっす!』』
―ひねりが無いというか、なんというか…
そもそもシホ役とカルナ役の二人しかいないのに、トリプルって何だそれは。
…と二度目のツッコミを入れながら、先へと進める。
「それにしても…明らかにアイツらより年とってるよな」
カルナ役もシホ役にしても、本来の彼女たちより2歳は年上に見える雰囲気だ。
(あくまで外見上そう見えるだけで、本当は二人とも18歳以上だというのは百も承知だが)
まあその辺は仕方のないことかもしれないが。
「さて…肝心の内容は、どんなもんかな…」
―まずはコンサート後という設定なのか、
派手な衣装を着た二人が更衣室と思われる部屋へ入ってきた。
『疲れたねー』『そうだね』と早送りしたくなる程の棒読みセリフの後、早速レズの絡みへと突入。
ディープキスを交わし、互いの衣装を脱がしあって裸になる二人。
どうやら“ハルナ”が攻め役、“リホ”が受け役という設定のようだ。
ハルナの唇と舌がリホの可憐な乳房を愛撫し、
下半身へと伸びた指先がリホの蜜壷を責め上げていく。
『ふふ…リホ、もうアソコがぐしょぐしょだよ…』
『ああっ…いやっ…やめて…ハルナぁ…』
―アイツら絶対こんなこと言わねえ。
特にカルナ。画面に映る“ハルナ”は
営業スマイル全開のカルナに影響を受けているのだろうが、
楽屋裏の素の彼女があんなハキハキした表情を見せるわけがない。
「やっぱり芸能人の裏の顔ってのは、近くにいないと分からないのかなあ」
…と、マネージャーの視点から彼は思った。
「―あ…いつの間にか見入っちゃってんな、コレ」
既に30分近くが過ぎ去っていることに気付き、ヒロキは静かにそう呟いた。
場面は切り替わり、今度は複数の男優を絡めた乱交が始まろうとしている。
裸になった“リホ”と“ハルナ”がベッドの上へと倒れこむと、
続いて欲望をたぎらせた男達が、どこからともなく二人の前へと現れる。
『―いいわよ…来て』
“ハルナ”のその合図と共に、男達は一斉に二人の肢体へと群がる。
淫乱なる饗宴の始まりだ。
「…でも、ちょっと似てるかな、アイツらに…」
はじめは少し違和感があったものの
大人びている事に目をつぶれば結構似ているように見えるのだから、不思議なものだ。
ここでヒロキはふと思った。
―あの二人も、数年後にはこんな感じになるんだろうか?―と。
シホもカルナも(そしてユーリも)心と身体はまだまだ成長過程にある。
シホなどは、胸が大きくならないことを何度もネタにしているくらいだ。
しかし、この時期の女の子ってのは“化ける”。
これは決して大げさな表現ではない。
まるで花のつぼみが開くかの様に、蛹から蝶へと羽化するかのように―“化ける”のだ。
高校生のカルナはそうだが、中学生のシホの方も次第に、そして確実に大人びてきている。
(もっとも下ネタ関連は逆に性徴、もとい成長しすぎだが)
最近では、初めは「馬子にも衣装」だと思っていた三人の水着撮影やコスプレにも、
時たま色気を感じるようになってきた―
「…って俺、何考えてんだ!!」
と、ここでヒロキははっと我に返る。
―まさか、俺が彼女たちをそんな劣情の目で見ているというのか?
―これでは俺は…ロリコンではないかっ!!
―それにマネージャーがタレントをそういう目で見るなんて…もう最低だ。
しかしそれを頭の中から打ち払おうとしても、目の前の画面に写る女優があの二人に重なって
彼女たちが男に汚されていく姿が脳裏に浮かんでしまう。
―男の肉棒に嬉しそうにしゃぶり付くシホとカルナを。
豊かな乳房を揉みしだかれ、汗を散らして淫らに腰を振り、嬌声を上げる彼女たちの姿を―
どうしても想像してしまうのだ。
「いやっ!違う…俺は変態じゃ…」
『―本当にそうかしら?
もうココはこんなに大きくなってるじゃない…』
「うわわっ…いやそんなことは…ってあれ!?」
ビデオの女優のセリフと今の心境がシンクロし、ヒロキは更に動揺してしまう。
実際、下半身が言うことを効かなくなり始めているのだからどうしようもない。
「ああっ…違う…違うんだあ…」
嘆きながらも何とか己を静める方法を考えるヒロキ。もはや彼に猶予などない。
―そうだ、思い出した!!俺は…俺は巨乳のお姉さんが好きなのだ!!
―俺は“年上”好きの“巨乳”好き。決してロリコンじゃないっ!!
―ああ、でもアイツらも2、3年後にはあんな感じに胸が成長…
「…ってバカー!!俺のバカーッ!!」
暴走しかける理性を必死で抑えながら、
井戸田ヒロキは一晩中葛藤し続けたのであった。
―そして翌朝、レイ・プリンセスの社長室にて―
「―というわけでして…今のところ発売してるのはこれ一本だけみたいですね」
「そう、お疲れさん。ところで…
…昨日はスッキリできたかしら?」
「はい、そりゃあもうおかげさまで…
…はうッ!!??」
(おしまい)