作品名 作者名 カップリング
「捻挫に始まる夢」 トマソン氏 -


「いたたたたっ!」
 体育の、水泳の授業での準備体操中のこと。
 若田部アヤナは、プールサイドの段差に脚をとられ、足首を痛めてしまった。
 たまらず悲鳴を上げ、顔をしかめ、うずくまる。皆がアヤナの周りに集まった。
「わ、若田部さん大丈夫?」
「どーした?」
 騒ぎに気づいた先生が心配そうにアヤナを見やる。
「先生、今アヤナちゃんの足がコキっていいました! 足コキです!」
「そりゃいかんな、保健室に行かんと。 おーい保健委員ー」
「私です」
 皮肉にも、アヤナ自身が保健委員だった。
「なんと。んじゃ、男子の保健委員はー」
「あ それならマサ君だ」
……
「とゆーワケで、彼女を保健室まで連れてってやって」
「わかりました」
 てなわけで、男子グループの中で準備体操をしていた小久保マサヒコは、アヤナを
保健室まで連れて行くことになった。



 マサヒコは、はじめはアヤナをおぶって連れて行くつもりだったが、的山リンコが
「これだけ薄地だと、背中に胸の感触、直に伝わってくるね」
と余計な一言を言ったため、アヤナが断固拒否。女心は複雑だ。胸が大きければ
大きかったでコンプレックスになるらしく、おぶってもらうのはどうしても嫌だという。
 そこでほかの方法を試したのだが、二人三脚は二人の息が合わず、梅雨時とあって
滑りやすい床に脚をとられ、二人して転倒。
 腕で抱えて運んでいこうとすれば、マサヒコがアヤナを真後ろからM字開脚にして
抱き上げてしまったのがアヤナの逆鱗に触れ、アヤナは癇癪を起こしてしまった。
「もういい!! 自分の力で這っていくから、アンタは適当にサポートして!」
 かくして、廊下に体を這わせ、両手で這い進もうとするアヤナ。
 マサヒコはその両脚を持ち上げ、少しでも進行を助けようとした。



(……あ゛?)
 アヤナの両脚に左右の腕を回し、持ち上げたそのとき、マサヒコの眼前に広がった
のは、蠱惑的な眺めだった。
 豊かな肉付きのヒップ。緩やかにカーブして水着に覆われた尻たぶは、まるで桃の
ような形で、マサヒコの自制心をくすぐる。大きく開かれ、その間にマサヒコの体を
受け入れた、真っ白な太腿。そのわずか先、太腿の付け根は、ぎりぎりのところで
水着に覆われ、ちょうど水着の幅が一番狭いところが丸見えになっている。
 そこに息づくわずかな膨らみが、薄い布一枚を通して向こうにある媚肉を想像させ、
マサヒコの目を捕えて離さない。
(もし、この布切れをちょっとずらしたら……)
 思わずそんなことを妄想してしまうマサヒコ。下半身がピクンと震え、着用した海水
パンツの前が次第に膨らみはじめた。
 アヤナはそんなことには気づかず、必死に両腕で体を支え、保健室へ歩を進め……と
いうより、這い進んでいく。
「はぁ……はぁ……」
 荒い息をつき、腕を進めるたびに、豊かな尻たぶが左右にゆれ、太腿の筋肉がつら
そうにひくひくと蠢いた。
 マサヒコはアヤナにあわせてゆっくりと歩を進めたが、魅惑的な眺めから視線を外す
ことが出来なかった。彼の下半身の膨らみも次第に獰猛になり、いまや海水パンツの前
にテントを形成していた。
(やばい……これを若田部に見られたら……)
 それでもマサヒコは視線を外せなかった。



 ようやく保健室の前に到着した二人だが、マサヒコは両手がふさがっている。
 マサヒコが一旦アヤナを下ろしてから、ドアを開ければよいのだが、アヤナは健気に
片手で体を支え、残った片手を上げ、ドアを開けようとした。
が、女の子の力では片腕で上半身を支えるのは無理だった。
「あうっ……」
 結果、アヤナの上半身は床に崩れ落ち、マサヒコに支えられた下半身が高く持ち上げ
られた格好になる。蠱惑的な眺めに気をとられていたマサヒコは歩みを止めるのが一瞬
遅れ、マサヒコの下半身がアヤナのそれに接近した。マサヒコの股間の膨らみが、
アヤナの両脚の間、水着の幅が一番狭くなっているところを軽くつついた。
「ひゃうっ!?」
「うっ……」
 電流が走ったように、アヤナの体がピクンと反応した。たまらず両脚をもがいて
マサヒコの腕を逃れると、アヤナは体を回して床に座りこみ、体を縮めて両手で股間を
押さえた。
「ばっ……馬鹿っ! どこ触ってんのよ!」

 マサヒコはマサヒコで、男性自身の先端に加えられた軽い接触に、体をビクッと震わ
せたところだった。今、俺のアレの先端が、若田部のアソコをつっついた……。
「う゛……いや、その……悪い、若田部……」

 ここで初めてマサヒコの姿を見たアヤナは息を呑んだ。マサヒコの海水パンツの前は
くっきりと膨らみを見せている。そして、今までマサヒコの両腕は自分の両脚を支えて
いたはずだ。 
 では、今、自分の体に触れたのは……



「小久保君……今まで、両腕で脚を支えていてくれたわよね……」
「あ、ああ……」
「じゃ、今、わたしに触れたのは……」
 アヤナの視線がマサヒコの水着の前の膨らみに突き刺さる。
「いや、あの、その……」
「……馬鹿っ、馬鹿馬鹿馬鹿っ! 責任とってくれるんでしょーね!」
(男の……男の人のあれが、私のあそこを、つついた……) 
アヤナは廊下に座り込んだままパニックに陥った。
 そのつぶらな瞳にじわっと涙が浮かび、頬にあふれ出す。アヤナは学校の廊下に
いることも忘れ、泣きじゃくった。
「ひどい……ぐすっ、ひどいよ、小久保……君……ひくっ……わあああん……」
 マサヒコとて若い男、女の涙にはかなわない。とりあえず謝ってしまう。
「若田部……その、悪い……」
 それを聞いて、アヤナのパニックも多少は和らいだが、涙は止まらない。
「でも、まずは保健室に入って、治療しなきゃ……」

「どうしたの?」 
 二人に気づいた保健の先生が保健室の中からドアを開け、声をかけてきた。
「ちょっと悪い、我慢してくれ」
 マサヒコはまだすすり泣いているアヤナに声をかけ、右腕でアヤナの肩の下を、
左腕で両膝の下を支え、姫抱えにして運び、保健室のベッドに下ろした。
(というか、はじめからこうやって運べばよかったな)
 先に気づけよマサヒコ。


 アヤナをベッドに下ろしたマサヒコは保健の先生に事情を説明した。
「実は、これこれしかじかで……」
「ふーん……じゃ、ちょっと我慢してね」
 保健の先生はそっとアヤナの足首に触れ、骨には異常がないこと、だが少々腫れて、
ほてっていることを確かめた。
「まあ、捻挫だわね……湿布を貼って、安静にしていれば2、3日で直るわ。あとは
任せて、あなたは授業に戻りなさい」
 先生は湿布を取り出し、マサヒコを授業に帰した。
「でも、若田部さん、どうして泣いているの? そんなに痛い?」
「……なんでもないです」
「でも、そんなに頬にあとが残るほど……」
「なんでもないんです!」
 アヤナがたまらず声を荒げた。いくら先生でも、立ち入っていいことと悪いことが
ある。この件は立ち入ってほしくない。
 それはそうだろう、事故とはいえ、同級生の男の子に、男のシンボルで女体の芯を
つつかれて、ショックで泣いている、とは言えない。
「そう……じゃ、とにかく安静にしているのよ。幸いあなたの家は近いはずだし、
歩けるように添え木をしておくから……」
 手際よく、湿布を貼り、添え木を包帯で固定する。
「歩けるようになったら、教室に帰っていいわ。でも無理しないでね」
 手当てを終えた保健の先生は、別用があるらしく、保健室を出ていった。



 保健室のベッドに一人残されたアヤナは、さっきのマサヒコとの接触を反芻していた。
(小久保君ったら、よくもあんなもので私に触れてくれたわね……
 でも……全身を走ったあの感覚は……いったい……)
 アヤナはスクール水着のまま、上半身にはパーカーを纏い、保健室のベッドに
横たわり、腰から下には毛布をかけている。
 毛布の中で、そっと自分の指を股間に持っていき、水着越しにさっき刺激を受けた
箇所に軽く触れてみた。
「あっ……」
 アヤナの体に電流が走り、たまらず甘い声が漏れた。
(なっ、なによ、これ……)
 今度はもう少し強めに、同じところを押してみる。
「うっ……」
 またしても電流が流れ、ピクンと体が跳ねてしまう。
 今度はそっと上下になぞってみた。
「ああっ……」
 アヤナの声が次第次第に高まり、甘さを増していった。
 さらに指に強弱をつけてみる。あるときは触れるか触れないか位に軽く、あるときは
男の荒々しい指を想像して強く。そしてついには、さっき自分のそこに触れた、
マサヒコの男根を脳裏に想像しつつ、自らの体に刺激を与えていった。


 いつしかアヤナは、自ら思い切り両脚を広げていた。水着越しに右手の中指で秘奥に
刺激を与え、どこが感じるのか、自分の体を探索してゆく。左手はパーカーの中に忍び
込ませ、豊かな乳房を揉みしだき、乳首をつつき、転がした。
 アヤナは全身に流れる快感に身を任せ、たおやかな体をよじった。
「あんっ……ふうっ……ああっ……」
 プールに入る前に保健室に来たのだから、アヤナのスクール水着は乾いていたのだが、
その微妙なところだけが、次第にぬめりをおび、紺色が濃くなってゆく。
(こんなところに誰かが入ってきたら……)
 アヤナは荒い息をつきつつ、自分が保健室にいることを思い出すが、体は快感を求め
続けており、その指は止まらなかった。スクール水着の股間を覆う、最も幅が狭い部分
は、いまや左右の端までが、しっとりと濡れていた。その濡れた部分は、それが覆う
媚肉にぴっちりと張りついて食い込み、上下に走る溝をくっきりと形作っていた。
「あっ……あんっ……はう……ん、あああーっ……」
 アヤナは声が漏れるのを押さえられなかった。ついにアヤナはひときわ甘い声をあげ、
体を硬直させた。
 ピンと伸びた体が脱力し、荒い息をついて余韻に浸る。
 アヤナの人生初のオナニーだった。


 アヤナが余韻にひたりつつ、ようやく息も整ってきたそのとき。
「失礼しまーす……あれ、先生はいないのか……」
 ドアをあけて、制服に着替えたマサヒコが入ってきた。まっすぐにアヤナが横たわる
ベッドに脚を運び、アヤナの顔を覗き込む。
「若田部、もう水泳もホームルームも終わったんで様子を見に来た。具合はどうだ……
って、どうしてそんなに顔が赤いんだ? 風邪ひいたか?」
「こ、くぼ、くん……」
 アヤナは脱力した体を無防備に横たえ、顔を上気させて、トロンとした瞳を
マサヒコに向けた。美しい栗色の髪が乱れ、どきりとするほど色っぽい。
「体温測ってみるか? えーと、体温計は……」
 戸棚に向かおうとしたマサヒコだったが、アヤナが毛布の中から手を伸ばし、
マサヒコの腕を引いてそれを止めた。
「……? どうしたんだ、若田部……」
「風邪じゃ、ないわ……捻挫は、湿布と添え木で手当てしてもらったから、歩けると
思うけど……でも、不安だから、家まで送って……」
 アヤナの上気した顔、潤んだ瞳がなんとも色香を感じさせる。マサヒコに、この魅力
に抗う力があるはずもなかった。
「あ、ああ……」
「嬉しい……それじゃ、着替えてくるね……」
 アヤナはそっと体を起こした。毛布から床に下ろした足首に、幾重にも巻かれた包帯
が痛々しい。
(馬鹿にしおらしいな……怪我のせいで、不安にとらわれてるのかな? それなら、
不安を取り除いてやらなきゃ……)
 やはりマサヒコは基本的に優しい。その優しさがどんな結果をもたらすか、今はまだ
知る由もなかった。

 足首の痛みに耐えて、なんとか制服に着替えて更衣室から出てきたアヤナを、
マサヒコは若田部邸まで送った。脚を引きずり、ともすればふらつく彼女を気遣って
ゆっくり進んだので、普段よりだいぶ時間がかかったが、それでもせいぜい10分ほどの
道のりだ。
 玄関のドアを開けたアヤナはマサヒコに向き直った。
「今日は、両親も兄さんもいないの……お茶淹れるから、上がって」
「いや、でもそんな……」
「……いいから上がっていって」
 何かを訴えるようなアヤナの瞳。その魔力に抗えず、マサヒコは若田部邸の玄関の
中に歩を進めた。
「そうか? それじゃ、お邪魔します……」
 同時に土間から上がった二人だが、段差を上がったところで、アヤナは足首に痛みが
走り、その体がふらついた。
「あっ……」
 すかさずマサヒコが腕を伸ばし、倒れそうになったアヤナを抱きとめた。
「大丈夫か?」
 はっとアヤナがマサヒコのほうを向くと、その顔のほんの10センチほど先に、
マサヒコの顔があった。
 アヤナの吐息がマサヒコの顔にかかり、その瞳は潤んで、何かを求めるように
マサヒコを見つめている。アヤナの体を支えたマサヒコの腕に、たおやかな女の体の
量感が伝わり、シャンプーの匂いがマサヒコの鼻腔をくすぐった。
 アヤナは顔を紅潮させ、そっとマサヒコにささやいた。
「責任、取ってもらうわよ……」
 マサヒコはアヤナの深い瞳に吸い込まれそうな感覚に陥っていた。
「……うん……」
「嬉しい……」
 その答えを聞いてマサヒコに向けられたアヤナの笑顔は、中学生とは思えぬほど、
妖艶といっていいほどに艶やかだった。
(責任って、どう取らされるんだろう……?)
 マサヒコは一抹の不安を覚えたが、目の前の女性に目が眩んで、そんな思考はあっと
いう間に溶けていった。二人きりの宴が今、幕を開いてゆく。

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