作品名 作者名 カップリング
「右手、左手、他人の手」 トマソン氏 マサヒコ×リンコ


「ホント、ドジだな〜」
「うるせ〜」
 東が丘中学のいつもの教室。体育の授業の後と思しき喧騒のなか、右手に包帯を
巻いた小久保マサヒコは、同級生たちにからかわれていた。

 そこへ、同じように体操着に身を包んだ天野ミサキと的山リンコが入ってきた。
ミサキが目ざとく、マサヒコの右手の異変に気づく。
「な……どっ、どうしたの? 小久保君? その手…」
「あ……いやさー、さっきの体育、マット運動やったんだけど、そこでちょっと
しくじって捻挫しちまった」
 マサヒコは情けなさそうに包帯が巻かれた自分の右手を見やる。
「かわいそー……」
 リンコは優しい同情を見せるが、同級生の男子たちは容赦などしない。
「いや全然。こいつが、調子に乗って出来もしないバク転しようとしたんだもん」
「うるせーうるせー!!」
 ひとしきり笑い声が響き渡るが、それが途切れたところで今度はミサキが慰めた。
「でもまぁ捻挫程度で済んで良かったじゃない。怪我した箇所が右手首だと、いろいろ
大変だろうけど」
「そーなんだよな、利き手が使えないとなるといろいろ不便で……」
 そこで今度はリンコがマサヒコを元気付けようと、人差し指を元気良く立ててみせ、
微笑みを浮かべて口を開いた。
「そんなに気を落とすことないよ、利き手じゃないほうの手でしごくと、他人にして
もらっている感覚になって、それはそれで気持ちいいらしいよ?」

……場が凍りついた。

「あれ、みんな信じてないの? 家庭教師の中村先生から聞いたんだから、間違いは
ないと……」
「ハイハイ、着替えましょうね」
 ミサキがリンコを引っ張り、強引に更衣室に連れていった。


 その晩。
……こすこすこす……
「……はあ、はあ、……うっ……」
 マサヒコはベッドに胡坐をかいて座り、日課の自家発電を、いつもと勝手が違う左手
でなんとかこなした。
(他人にしてもらっている気分、か……とてもそんな感じにはならないな……というか、
誰かにしてもらったことなんてないし……寂しいもんだな……)
 ティッシュを丸め片付けながらも、マサヒコの胸中に、なにかが足りないという思い、
非充足感がじわりと湧き出した。
(だからって、女の子に抜いてくれなんて言えないし……いや待てよ……もし言えると
すれば……)
 満たされぬ思いが、やがてどす黒い欲望に変貌し、それが次第に高まっていった。



 翌日の放課後、マサヒコは図書室へ向かった。今日の図書委員の当番がリンコである
ことは確認済みだ。
 そっと戸を開け、ざっと見渡し、図書室には他には誰もいないことを確認する。
 続いて、当番席にすわり、ぼーっと空中に視線をさまよわせているリンコを確かめる
と、視線をそちらにやりつつ、ドアを静かに閉めた。
 リンコも戸の音に気づき、視線が合う。
「おー、小久保君。珍しいね」
「お、的山が今日当番なのか……誰もいなくて、開店休業みたいだな」
「うん、読書週間が終わってから、人が全然来なくてヒマなの」
「はは、これなら邪魔も入らないな」
「……邪魔? 邪魔って、なんのこと?」
「ん、ちょっと頼みがあってさ……的山、こっちに来てくれ」
「えっ……」
 マサヒコはやさしくリンコの左腕を引いて立たせ、受付の奥に入り口がある図書準備
室にエスコートした。
 そこは、図書委員と担当の先生以外には無縁の場所。古すぎる本や、破れて修理待ち
の本、そして整理しきれない本の倉庫兼、図書委員の控え室であり休憩室となっている
小部屋である。
 マサヒコはこの部屋の存在をリンコから聞いて以来、サボり場所に使えないかと
こっそりたくらんでいたのだった。しかし、今は違う目的に使わせてもらう。
 リンコの腕を優しく引っ張り、散らかった小部屋に導くと、マサヒコも続いて入り、
後ろ手に戸を閉め、かちゃりと鍵をかけた。
「……小久保君? いったい、なあに?」
 密室に男子と二人きりになってしまったことに気づき、リンコは不思議そうな顔を
している。が、怖がってはいなかった。マサヒコのことはそれなりに信用していると
いうことか。
(俺はこれから、その信用をぶち壊してしまうかもしれない……)
 マサヒコはリンコを密室のほぼ中央にあるイスに座らせると、その前に立ち、
リンコの顔を正面から見つめた。



「なあ、的山……昨日、利き手じゃないほうの手でしごくと、他人にしてもらっている
感覚になって、それはそれで気持ちいいって言ったよな」
「あ、小久保君の右手の怪我のこと……中村先生に、そう教えてもらったよ?」
「でも、夕べも、試してみたんだけど、どうも気持ち良くなくて……俺、他人にして
もらったことなんてないし……それで、お前に頼みたいんだ……一度だけ、その手で
俺のを抜いてくれないか?」
「抜く? 抜いてって……トゲでも刺さったの?」
 これはリンコが天然というより、マサヒコがあまりにも突然に無茶なことを言って
いると言うべきだろう。 というか、マサヒコ勇者すぎ。
「いや、そうじゃない……ココをお前の手でいじって、俺を気持ちよくさせて欲しい、
と言っているんだ……」
 マサヒコはポンとズボンの前を叩いてみせる。
「……?! あ、あの小久保君……私、そんな……」
 ようやくマサヒコの希望を理解し、流石にリンコも驚いたのか、はっと両手を口に
やり、動揺を隠せない。現実にいま、密室に二人きりであることに気が付き、その
つぶらな瞳に怯えが浮かんだ。
「無茶を頼んでるのは分かってる。でも、天野や若田部にはとても頼めないけど、お前
になら、頼めるかと思って……ほら、お前は親しみやすいし、優しいし……嫌なら、
嫌とはっきり言ってくれ、無理強いはしない……つもりだ」


 リンコは異様な雰囲気のなか、困惑を隠せずにいた。その心の中にさまざまな思いが
吹き荒れる。
(小久保君は好きだけど……そんなエッチなことは嫌……かな……)
 意識の表層ではそう思いながらも、同時に、目の前のこの男性に気持ちよくなって
もらいたい、という願望が心の底からにじみ出てきて、リンコを当惑させた。
(私も、男の子のアレは見てみたい……そういえば、中村先生、言ってたな……男の
体は、好きな人のことを考えると硬くなる、女の体は好きな人のことを考えると濡れて
しまうって……やっぱり見てみたい……。
 でも、男の子の言うことなんでも聞いてると、都合のいいオンナ扱いされちゃうとも
言ってたな……そんな扱いは嫌だし……それなら……それなら、小久保君にも、ひとつ
言うこと聞いてもらおうかな……)
「……そんなこと……その……嫌じゃないけど……」
「……けど?」
「ねえ、そんなこと、誰とでもしていいことじゃないでしょ?」
「そ……そうだな」
「じゃ、ちゃんと告白して。私のこと、好きって言って」
「え……告白?」
「……だって、女の子に恥ずかしいこと、させるんでしょ? 好きな人とだけしていい
こと、してほしいんでしょ? ……だったら、ちゃんと告白してからにして……」

 リンコも女の子だ。いやむしろ、天然ゆえに王子様願望も強いのかも知れない。
 マサヒコはマサヒコで、リンコの返答が、もっともな願い、いやむしろ極めて寛容な
返事であることをはっきり認識していた。こんな無茶を頼んだのだから、たとえ殴られ
ても文句は言えないところだ。
 というより、これがもしミサキやアヤナだったら間違いなく殴り倒されているだろう。




 マサヒコはゆっくり目をつぶり、大きく息をついた。
 大体、どうして的山にこんな正気とも思えないことを頼めたのか。そうだ、結局の
ところ、俺はこの娘が好きだから……。もし的山のことが嫌いだったら、そもそも
考えつきもしなかったはずだ……。
 マサヒコは目を開けると、膝を折り、座ったリンコと目の高さをあわせ、その瞳を
正面から見つめた。
 リンコは期待に目を潤ませ、マサヒコの言葉を待っている。
「的山……俺、お前のことが好きだ。俺の彼女に、なってくれ……」
 リンコはぽっと顔を赤らめ、だが表情を明るくして、その言葉を受け止めた。
「小久保君……言ってくれた……嬉しい……私も、小久保君のこと、好きだよ……」
 リンコはメガネを外すと、体を前に出し、マサヒコの首に腕を回す。そのまま見つめ
あうと、リンコは目を閉じ、そっと唇を突き出した。
 マサヒコの顔のほんの数センチ前に、くちづけを求めるリンコの顔があった。
 こんな接近遭遇は、リンコがコンタクトをなくした上に足を捻挫して、おんぶに
抱っこで家まで送り届けたとき以来だ。マサヒコは、メガネを外したリンコがいかに
可愛い顔立ちか、改めて思い知った。心臓は破裂しそうに高鳴っている。
 腕をリンコの体に回して力強く抱きしめると、リンコの体がマサヒコの体に押し付け
られる。突き出されたピンク色の唇に吸い込まれるかのように、そっとマサヒコは唇を
合わせていった。
「…んんっ……」
 甘美なひとときが過ぎていった。

 しばしのくちづけの後、顔を離した二人は再び見つめ合った。
「小久保君……じゃあ、私も初めてだからうまくいくかどうか分からないけど、抜いて
あげる……出して……」
「的山……ありがとう……」
「リンコって呼んで!」
「リ……リンコ」
「そう……さあ……」
 名前で呼ばれたリンコの微笑みが、マサヒコの最後のためらいを溶かしてしまった。
 マサヒコはズボンのベルトをはずし、ファスナーを下ろして、続いてズボンを
ゆっくりと下ろした。トランクスは恥ずかしいのでそのままにし、切れ目からそっと
分身を取り出すと、さっきの抱擁とキスで既に半立ちのそれがリンコの前に現れた。
「わあ……男の子って、こんなのが生えてるんだ……見るのは、昔、パパと一緒に
お風呂に入っていたとき以来……」
 リンコは、物心ついてからは初めて見る男性器に、恥ずかしがりながらも興味津々の
様子だ。

「さわってみるから、どうしたら気持ちいいか、教えてね?」
 リンコは顔を赤らめながらも、おずおずと両手を伸ばし、そっと手のひらでマサヒコ
の男根を包み込む。
「うっ……」
 それだけで、マサヒコの興奮は高まり、分身が見る見るうちに天を向いて屹立する。
中身の膨張に皮は取り残され、未使用のピンク色の亀頭が段差まであらわになった。
 自分でするのはなく、女の子に刺激してもらうという行為がどういうものか、
マサヒコは思い知った。自分の意図せぬ刺激が触覚に加えられるだけではない。羞恥に
顔を赤らめた美少女が、自分の男根に手を伸ばし、奉仕している図は、視覚にも強烈な
刺激を与え、いやが上に衝動を高めてゆく。
 初経験のマサヒコにはあまりにも強烈な刺激だった。


「わあ、なんだか硬くなってきて、血管が浮き出てる……こうかな……」
 リンコは両手でそれを優しく包み込んだまま、たどたどしく手を上下し、摩擦を
加える。それだけで、マサヒコの興奮はますます高まった。さらに貪欲に快楽を求め、
リンコに注文を出す。
「おうっ……リンコ、気持ちいいよ……もう少し強くこすって……」
「うん……こう?」
「ううっ……指で、先端の割れ目のところをそっとなぞってみてくれないか……」
「……こう?……あ、なんだか変な匂いがしてきた……」
 リンコが言われるままに右手の指で先端の割れ目の部分を優しくなぞると、マサヒコ
の体に、電流が走ったかのように快感が駆け抜けた。
「おおっ……はぁっ、素敵だ、リンコ……右手はそのまま、先端をなぞり続けて……
左手は包むように覆って、上下させて、摩擦を加え続けて……」
「……こう? あ、なんか、先端から透明なものが出てきた……」
「はぁ、ああ、いいよ、リンコ……こするのを、カリの……そう、その段差の下側に
集中させてみて……」
「こう? うわ、なんだかすごい……脈打ってる……」
「お、ああぅ……そのまま……もう、出、出る……飛び散らないように、手で受け
止めて……」
 一瞬ののち、マサヒコの体がピンと硬直し、男の精がピュッピュッピュッと、
リンコの手に弾けた。言われるままにリンコが手で受け止めてくれたので、机や本に
飛び散らずに済んだ。そうでなかったら、掃除が大変だったろう。
「わぁ、熱くてどろっとしたものがたくさん出たよ……これが、『せいし』なの?」
「はぁ、はぁ、そうだよ……リンコ、気持ち良かったよ……はぁ……ありがとう……」



 マサヒコは荒い息をつきつつ、己の分身をティッシュで拭うと、ズボンにしまって、
身づくろいをした。
 リンコは今自分の手に出されたものに興味しんしんの様子だ。手のひらを鼻に近づけ、
どろりと垂れる白い液体の匂いを、くんくんと嗅いでみる。
「わぁ、くさーい……これが、イカくさいって言われる匂いなんだね……」
 そして、チロリと舌を出し、おっかなびっくりなめて見る。
「に、にがーい……」
「お、おいリンコ、そんなことまでしてくれなくても……」
「うん、もうしない。苦いんだもん」
 天然の好奇心を持つ女の子は、時として小悪魔となるようだ。ようやく息が整った
マサヒコは、目の前の女の子が自分の欲望の汁をなめてくれたのを見て、この娘を征服
したかのような錯覚に陥った。心の底から、愛しさがこみ上げてくる。
 リンコはティッシュで手を丁寧に拭うと、空気を入れ替えるべく、窓を開けた。

「リンコ……無茶を頼んで、悪かった……気持ち良かったよ……」
「ううん、いいの……私も、恥ずかしかったけど、面白かったし……なんだか、少し
大人になったような気がするし……それに、私のこと、好きっていってくれたんだもの
……また、しようね? だけど……この次は、私も気持ち良くさせてね?」
 最後の一言が、マサヒコの煩悩を直撃した。



 マサヒコが思わずリンコに再度腕を伸ばそうとしたその時、図書室のほうから足音が
して、声が聞こえてきた。
「すみませーん、当番の人、いませんか……」
 この声は……まさか……。
「いけない、受付に行かなきゃ……小久保君、しばらくここに隠れていてね」

 リンコは準備室の中が外から見えないようにきわどく戸を開け、受付の席に急いだ。
 当番を呼んで声をかけた女の子は……ご存知、天野ミサキ。
「おー、ミサキちゃん、ごめんごめん、あんまりヒマだから準備室でサボってたの」
「今日リンちゃんが当番なんだ。もう仕事には慣れた?」
「うん。でも人が全然来なくてヒマだよ〜」
「活字離れって、思いのほか深刻ね」
 がらんとした図書室を見回しつつ、返却の本「アイをさけぶわけない」を差し出す。
 その本の貸出票に、リンコが返却チェックのハンコを押した。

 返却を済ませたミサキがしばしの世間話の末、図書室を立ち去ると、リンコはそっと
準備室の戸を開け、中を覗き込んだ。
「小久保君、大丈夫? ミサキちゃん、もう行っちゃったよ」
「ふう……まさか天野がこのタイミングで来るとは……」
 中で息を殺していたマサヒコが、汗を拭きつつ出てきた。
「さて、俺も行こうかな……リンコも、手を良く洗っておいてな」


 一方、図書室を一旦出たミサキは、リンコに言い忘れたことがあったことを思い出し
取って返した。まださっき図書室を出てから、ほんの十秒ほどだ。あっという間に再度
到着し、戸を開ける。
「ねえリンちゃん、言い忘れてたんだけど、明日にでも……」
 はっと振り向いたマサヒコとミサキの視線が空中でぶつかった。
「あれ? 小久保君? さっきはどこにいたの?」
「あ、天野……いや、俺も今来たところで……」
「さっきはいなかったし、その後、私が出てから、小久保君がここに入ったら、私が
気づかないはずはないよ?」 
 図書室の入口は廊下の突き当たりにある。マサヒコは言葉に詰まった。
「……? フンフン……なにか、妙な匂いがしない?」
 あきっぱなしの準備室の戸口が悪かったか、ミサキが危険な匂いに気づいた。
 マサヒコ大ピンチ!
 が、ここがごまかしどころ、マサヒコも鼻をくんくんさせて見せ、
「ん? 古い本のすえた匂いじゃないか?」
と話しをそらす。準備室の古い本の山を思い出したマサヒコの脳内で、電球がピカッと
点灯した。
 (……そういえば、準備室には校庭から入れる裏口があったはずだ……普段は鍵が
かかってるが……)
「そうかしら……なんだか、嗅いだことのない匂いだけど……それで、小久保君、どこ
から入ったの?」
「この奥の準備室に、校庭から入れる裏口があるんだ……帰ろうと思って校舎を出た
ところで、用を思い出して、そっちから的山にいれてもらったんだ」
「ふーん……」
 ミサキはまだ釈然としない様子だが、とりあえずリンコに向き直る。



「それでねリンちゃん、言い忘れたんだけど……貸してあるあの本を、明日、学校で
でも返して欲しくって。ちょっと調べたいことが出来たの」
「あー、うん分かった、持って来るね」
 リンコは何を思ったか、後ろを向くとスカートの前をめくりあげ、その中から、
小さな何かを取りだした。
 細長い脱脂綿の塊のようだが、一方に糸がついており、その糸には小さなメモ帳が
結び付けてある。メモ帳のページを開いたリンコは、そこにさらさらと書きつけた。
『ミサキちゃんに本を返す』

 あまりのメモ帳の保管場所に、さすがのミサキも毒気を抜かれた。
「リンちゃん……メモ帳、そこに持ってるの……?」
「うん。せっかくアイ先生にもらったのに、一度なくしてしまって。忘れ物しないため
のメモ帳をなくすなんてって、中村先生にも大笑いされちゃったし。もう絶対になくさ
ないって決心したの」
「そ、そう……大事にしてね……」
 少々、気が抜けたような気分で、ミサキは再び図書室を後にした。
(中村先生に言って、リンちゃんにメモ帳の入れ場所、変えてもらわなきゃ……人前で
女の子があんなところからモノを出しちゃ、いけないもんね……)
 マサヒコがどこから図書室に入ったかの疑問は、リンコのメモ帳自爆テロのおかげで
棚上げになったようだ。




 常識外れのメモ帳の隠し場所に気が抜けた思いなのは、マサヒコも同じだったが、
とりあえずミサキの追求をかわせたのはリンコのおかげだ。
「リンコ、うまいとこ、天野をごまかせたよ、ありがとう」
 そのリンコはメモ帳を元の場所にしまう前に、何事かをメモ帳に書きつけると、
悪戯っぽい微笑みを浮かべ、マサヒコに向かってページを示した。

『小久保君と一緒にキモチよくなる』

 メモを読み取ったマサヒコの心臓はたまらず高鳴った。ゴクリと生唾を飲み込む。
「小久保君も、忘れないでね?」
「……ああ、この次はきっとだ。……でも、メモ帳は、どこか別のところにしまった
ほうがいいんじゃないか?」
「ここじゃ、駄目?」
 リンコは今度はマサヒコのほうを向いたまま、なんとひょいとスカートを持ち上げて
見せた。ほっそりした白い太腿が、純白の可愛らしいパンティの下端がチラリとのぞき、
マサヒコの鼓動がまたも跳ね上がる。
「お、おい、リンコ……」
「うふふ、ドッキリした? 今度は、きっと私も気持ちよくさせてね。
あ、もう図書室を閉めなきゃいけない時間だ……小久保君、もう閉室。また来てね」
 リンコはマサヒコを図書室から追い出した。これから片づけがあるのだろう。


 マサヒコは閉じられた図書室の戸の前に立ち尽くし、決心した。 
 この次は、あの天然娘を、徹底的に気持ちよくさせてやる。男のプライドにかけて。

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