作品名 作者名 カップリング
「少年と少女の初夜」 トマソン氏 ミサキ×マサヒコ


「……お母さん、いっちゃったね……」
「ああ……」
「とりあえず、ご飯にしようか?」
「ああ……そうだな」

 小久保マサヒコと天野ミサキは、小久保邸に二人、残されたところだった。
 ことの発端は、天野ミサキの両親が結婚記念日に旅行に行く、ということだった。
その間、女の子一人では無用心だから、ミサキを小久保家で預かる。当初はそれだけの
話だった。
 ところが、ミサキが大荷物を抱えて小久保邸にやってきたその日の夕方、青森に
暮らす小久保家の父の母、つまりマサヒコから見れば父方の祖母が、ぎっくり腰で
倒れたという知らせが入り、マサママは家から、マサパパは会社から直接向かい、
駅で落ち合ってそちらに行くことになった。
 かくして、小久保邸に残されたのはマサヒコとミサキの二人というわけである。

 夕食はマサママが作ってくれたものがある。「適当に温めて食べて」と言い残して
出立したマサママは、今頃は駅でマサパパと落ち合った頃だろうか?
 電子レンジを容赦なく働かせ、夕食を食卓に並べて箸を取った二人だが、内心は
平静どころではなかった。
(一晩、天野と二人で過ごす……マジか?)
(今夜は、マサちゃんと二人っきり……)
 二人とも、心臓が高鳴っている。二人は煩悩に取り付かれつつ、つい無口になり
ながら食事を口に運んだ。
「あー、その……、二人だけだと何か緊張するね……」
「ああ……そうだな……なんか、ガキの頃のおままごとみたいだ……」
「……そうだね」


 ミサキはマサヒコのことが好きだった。子供のころから、ずっと一緒にいた異性だが、
はっきりとそれを意識したのは中学生になってからだ。思春期を迎えて、子供のころ
から身近にいた彼が、初恋の対象になったわけだ。

 ミサキは覚悟を決めた。マサヒコと親しくなるには、今夜こそ絶好のチャンスだし、
マサヒコが子供の頃のことを話題にしてくれたのも、まさに天の助けではないか。
「……ねえ、マサちゃん」
(マサちゃん?)
 マサヒコは目をぱちくりさせてミサキを見つめた。
「覚えてる? 子供の頃、私は小久保君のこと、そう呼んでたんだよ」
「そうだったかな」
「そして、マサちゃんは私のこと、ミサキ、って呼んでた」
「そうだったっけ?」
「ねえ、今夜は、マサちゃん、って呼んでいい?」
「お、おい、天野……」
「私のことはミサキって呼んで、マサちゃん」
「いや、だから、天野……」
「ミサキって呼んで!!」
「……わかったよ、あま、いやミサキ」
 マサヒコはため息と共に降伏した。
 マサヒコは突然親しげになったミサキに面食らってはいたが、もちろん悪い気は
しない。彼自身、さっきからミサキと二人きり、差し向かいで食事を摂って、意識
せずにはいられないのだ。



 食事が済んだところで、マサヒコは風呂を沸かした。
「あま、いやミサキ、先に入っていいぞ」
「ううん、私は居候だし。マサちゃん、先に入って」
「そうか? それじゃ、先に入らせてもらうかな。ミサキはその間、テレビでも見てい
てくれ」 
 マサヒコは脱衣所に消えた。
(マサちゃんがお風呂に入っている……私も服を脱いでいって、一緒に入っちゃおう
かな……でもそしたら、さすがにマサちゃんも驚くよね……エッチな女って思われ
ちゃうかも……。うん、まずは洗い物をして、家庭的なところを見せてあげなきゃ)
 そう思ったミサキは台所に向かった。食べ終わったままになっていた食器をボウルに
水を張ってつけ込み、スポンジと洗剤を手にすると、かいがいしく皿洗いをはじめた。
「きゃっ……」
ガシャン! 早速、茶碗が犠牲になった。
(私ってば、本当に家事が駄目ね……でも、頑張って、全部綺麗に洗って、マサちゃん
に褒めてもらいたい……)
 ミサキはけなげに洗い物を続けた。が、もうすぐ全部洗い終わる、というところで、
再び手を滑らせた。
ガシャン! さっきより大きな音が響き、今度は大皿が粉々になった。
「ミサキ? 大丈夫か?」
 バスタオルを腰に巻いただけのマサヒコが、大きな音に心配してすっ飛んできた。




「マサちゃん……ごめんなさい、お茶碗とお皿、割っちゃった……」
 ミサキは半泣きだ。涙をぬぐうその指先から、破片で切ったのか、血が一滴、垂れた。
「おい、ミサキ、怪我してるじゃないか……」
 血が出ている指先を、マサヒコは口に含んで唾液を塗りつけると、救急箱から絆創膏
を取り出して貼ってやった。
「あ……」
 突然指先にマサヒコの舌が這ったことに、ミサキは心臓が高鳴る。
「マサちゃん……私の指、なめてくれた……」
「……あ゛?! 悪い、血が垂れたんで、あわてて……」
「いいの、嬉しい……あの、私、割れ物を片付けてから、お風呂に入るね」
「う、俺もバスタオル一枚だった……」
 マサヒコは脱衣所に戻っていった。ミサキは破片を掃き集め、袋につめて
「割れ物 キケン」と赤マジックで大書して、残った皿を拭いて片付けを終えた。

 パジャマ姿で脱衣所から出てきたマサヒコと入れ替わりに、ミサキが脱衣所に姿を
消す。マサヒコは居間に座り、テレビを見てはいたが、今まさにミサキが素っ裸で
入浴しているかと思うと、脱衣所の戸のすりガラスの向こうが気になって、テレビの
内容など頭にまったく入らなかった。
「(風呂場に乱入しちまおうか……)」とも思わなくもないが、まあ妄想でとどめて
おくマサヒコは健全な中学生というところだろう。

 一方、ミサキはお湯に浸かりながら、最後の心構えを固めていた。
(私の胸って、体操しても……牛乳を飲んでも……牛柄のパジャマを着ても、大きく
ならない……マサちゃん、こんな私の体を、気に入ってくれるかな……?
でも、私は私の体を差し出すことしか出来ない……
うんと綺麗にして、マサちゃんに気に入ってもらうんだ……)
 ミサキは洗い場に移ると、隅から隅まで、丹念に体を清めた。
(今日が、私達の記念日……そうだ、子供の頃の、お嫁さんにしてくれるって約束、
覚えてるかどうか、聞いてみよう……)



 長い入浴の末、脱衣所から出てきたミサキを見て、マサヒコは頭の血管がプチプチと
切れそうになった。
 薄いピンクのネグリジェはごく薄い布地で、ミサキの体を緩やかに覆ってはいる
ものの、女らしくなりつつある体のラインはすっかり透け、ブラジャーを着けていない
胸は、ほのかなふくらみとその先端の色の薄い乳首までがはっきり分かる。清楚な白い
パンティの輪郭も、ワンポイントの刺繍までがマサヒコの目に焼きつく。裾はベビー
ドールのように短く、太腿の半ばより下は体を覆うものとてなく、白い肌があらわに
なっていた。
「あ、アマ、いやミサキ……その格好……」
「マサちゃん……もう、寝よ?」
「いや、だからその格好……」
「……気に入って、くれた? ……マサちゃんの家に泊まるって決まったとき、こんな
こともあるかもと思って、ありったけの勇気を絞り出して、買ってきたの……」
 恥じらいを含んだミサキの告白に、マサヒコはそれ以上何もいえなくなった。
「そ、それじゃ、俺は自分の部屋で寝るから、お前は母さんのベッドで……」
 といいつつ、パジャマのズボンの前が膨らんでいるのはご愛嬌だ。
「いや……私、マサちゃんと一緒に寝る」
「お、おい……」
「私はもう、心を決めたの。マサちゃん、私とじゃ、嫌?」
「そ、そそ、そんなことはないけど……本当に、俺のベッドで一緒に寝る気か?」
 ミサキはマサヒコの眼をまっすぐに見つめ、うなずいた。


 事ここに至って、マサヒコも覚悟を決めた。
「ね、もう寝よ?」
 ミサキに引かれるままに、テレビを消し、明かりを消し、二階のマサヒコの部屋へ
向かおうとしたまさにそのとき。
「プルルルル、プルルルル……」
電話の音が響いた。
「誰だよ、こんな時間に……」
 マサヒコはしぶしぶ受話器をとる。
「はい小久保で……ああ、母さん……」
 受話器の向こうからマサママの声が響く
「マサヒコ? 今、新幹線を降りたところ。さっきも言ったけど、戸締りと火の元には
くれぐれも気をつけてね?
それと、ミサキちゃんの様子はどう?」
 マサヒコの心臓が飛び上がる。が、なんとかそれを押し隠して平静な声を出した。
「ああ、元気だよ」
「ミサキちゃんを泣かせたら、許さないわよ? それじゃ、しっかり留守番お願いね」

「ふーっ……このタイミングで電話がくるかよ……」
 冷や汗をかいたマサヒコだったが、改めて戸締りと火の元を指差し確認して家を
一回りすると、ミサキを伴い自室に入った。


 マサヒコはベッドの縁に腰掛ける。
 ミサキは何を思ったか、マサヒコのベッドに正座して、三つ指をついた。
「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
「……それって新婚初夜の挨拶じゃ……」
「あら、違うの?」
「……え゛」
 ミサキも足を崩すと、ベッドの縁、マサヒコの隣に座り、マサヒコの目を覗き込んだ。
「……ねえ、マサちゃん。子供の頃の約束、覚えてる?」
「……? なんだっけ?」
「もう。私をお嫁さんにしてくれる、って約束してくれたでしょ?」
「……そうだったか?」
(そりゃ、ガキの頃は毎日毎日こいつと遊んでたんだから、それくらいしてても
おかしくないか……)
「……私はその約束、忘れてないからね。マサちゃん……ずっと、好きだった……」
 ミサキは潤んだ瞳をマサヒコに向け、そっとマサヒコの胸に体を投げた。
 たくましいというほどではない、まだ薄い胸。
 だがミサキにとっては夢にまで見た、安息の地である。
 マサヒコの心臓は破裂しそうな勢いで鼓動を打っていた。



 しかし、マサヒコの脳裏には、電話での母の
「ミサキちゃんを泣かせたら、許さないわよ?」
という台詞が、運命の鐘の音のように響いていた。
「なあ、ミサキ……今日、安全な日か?」
「……わかんない……生理は終わってから一週間くらいだけど……基礎体温なんか、
つけてないもん……」
「それじゃあ、今日はやめとこうよ……俺、世界の誰よりも、お前を抱きたいけど……
万一にもお前を傷つけるのは、もっと嫌だ」
「マサちゃん……嬉しい……これを使って……」
 あのネグリジェのどこに隠していたのか、ミサキがマサヒコに渡したのは、小さな
パックに入った避妊具、ご存知コンドーム。
「……お前、どうしてこんなもの……」
「マサちゃんちに泊まるって決まったら、お母さんが持たせてくれたの……なにが
起こるか分からないから、持っておきなさいって……」
 なんというか、天野家も小久保家もひらけた家庭だ。
 だが、これさえあれば……マサヒコの最後の躊躇も、雲散霧消してしまった。
「ミサキ……その、俺も初めてだから、そんなに気持ちよくなってもらえるか
分かんないけど……頑張るよ」
「マサちゃん……私、マサちゃんが私を愛してくれるなら、それでいいの……痛くても
我慢できるから……」
「ミサキ……」


 マサヒコの目もまた、ミサキの潤んだ瞳に注がれる。数秒間見つめあったあと、
ミサキは目を閉じ、唇を突き出す。その圧倒的な誘惑に吸い込まれ、マサヒコはそっと
唇を合わせた。
「ん……」
 ゆっくりと唇を離すと、ミサキは目を開き、再びマサヒコを見つめた。
「久しぶりのキスだね……覚えてる?」
「……10年ぶりくらいじゃないか?」
 マサヒコも男、幼い日のこととはいえ、甘いキスの思い出を忘れてはいなかった。
 ミサキは再び目を閉じた。今度は唇を軽く開いている。
 マサヒコはまたも吸い込まれるように、再び唇を合わせた。舌をそっとミサキの口の
中に侵入させると、ミサキのほうから舌を絡めてくる。
「ん……んんっ……」
 しばしの甘い一時のあと、口を離すと、二人の唇の間に唾液が糸を引いた。
「ミサキ……可愛いよ、ミサキ……」
 マサヒコは左腕をミサキの背に回し抱きしめ、ミサキの首筋に唇を這わせる。同時に
右手をそっと伸ばし、ネグリジェ越しにミサキの乳房に掌を当てた。そのまま、
やわやわと胸を撫で回す。
「あ……あん……嬉しい、マサちゃん……」
 両手で思い切りミサキの体を楽しみたくなったマサヒコは、ミサキの体を優しく
ベッドに押し倒した。ついで、両の乳房に手を伸ばし、はじめはおっかなびっくりと
優しく、そしてだんだんと強く揉みしだく。
「ああ……マサちゃん……ごめんね、私の胸、体操しても、牛乳飲んでも、大きく
ならないの……」
「大きければいいってわけじゃないさ……可愛いよ、ミサキ……」
 そういいながらもマサヒコの掌はミサキの胸を揉み、やがて指を使い、乳首をいじり、
つつき、転がした。
「ああ……」
 ミサキはその体で、マサヒコの愛撫を受け止め続けた。


 マサヒコはミサキの下半身に目をやった。横になったミサキの短いネグリジェの裾は
わずかにめくれ、白磁の太腿がほとんど根元まであらわになっている。
 その裾をマサヒコはそっと、さらにめくりあげた。可愛らしい、清楚な白いパンティ
があらわになる。ミサキは恥ずかしそうに、両手で顔を隠してしまった。脚はぴっちり
と閉じられ、膝をきれいに揃えている。
「ミサキ……綺麗だ……」
 本当に綺麗な肌だった。マサヒコはパンティを毟り取りたい欲望を必死でこらえ、
まず手のひらでミサキの膝小僧を撫で回し、ついで吸い付くような感触を楽しみつつ、
太腿をゆっくりとなで上げていく。やがて女の微妙なところに指が到達すると、
ミサキは身をよじった。
「あ……そこは……駄目ぇ……」
 脚はぴっちり閉じられたままだが、太腿の間に遠慮なくマサヒコは指を忍び込ませ、
パンティ越しに女体の芯に刺激を与えた。
「あっ……ああっ……んんーっ……」
 ミサキの息が荒くなっていく。マサヒコの指がミサキの体の芯を探索していくと、
ミサキの体は時折ピクンと反応し、そこが弱点だと知ったマサヒコの指が集中攻撃を
加えていく。
「あああっ……もう、もう、駄目ぇ……」
 マサヒコは指先に感じていた湿り気が、だんだんと濃くなっていき、ぬめりに変わり、
それがまた次第に密度と面積を増していくのを知覚していた。
 指をどけると、可愛いパンティにはくっきりと染みが残っていた。
(見たい……何もかも……)
 マサヒコは欲望のままに、指をパンティの微妙な部分の縁にかけ、そっと横にずらす
と、伸びた布地の隙間からミサキの秘奥がのぞいた。
「ああ、恥ずかしい、見ないで……」
 ミサキは恥ずかしそうにそこを手で隠した。


「ミサキ……脱がすよ……」
 マサヒコは、ネグリジェの裾をつまみ、そっと上に持ち上げていく。ミサキも腰を
浮かし、両手を上に挙げて協力する。ネグリジェを首から上に抜き取ると、ミサキは
羞恥に体を染め、胸を両手で押さえた。
「恥ずかしいよう……」
 マサヒコもパジャマとトランクスを脱ぎ、裸になった。ついでミサキのパンティの
縁に指をかけると、ミサキはその布きれを必死で押さえて抵抗する。
「あ……それは……嫌ぁ……」
 その恥らう仕種が余計にマサヒコの獣欲を刺激した。
 押さえるミサキの手をやさしくどかし、マサヒコの手が最後の一枚をゆっくりと
剥き下ろした。

 とうとう全裸になったミサキの姿に、マサヒコはもう暴発寸前だった。
 再びミサキを組み敷くと、秘奥を必死で隠している、邪魔な両腕をミサキの頭の
左右に押しやる。覆うものとて無くなった体の両脚を、マサヒコは優しく自身の両脚で
割り、その間に腰を落ち着けた。




「ああっ……恥ずかしい……そんなに見ないで……」
 ミサキの全てが、マサヒコの眼前に広がった。
 もう、マサヒコの興奮はピークに近づいている。
 マサヒコはゆっくりとミサキに覆いかぶさる。上にのしかかった男の体が次第に
ミサキと同じ形になり、屹立した男根の先端がミサキの太腿に触れた瞬間、マサヒコの
分身は蠢動し、爆発してしまった。
「うっ……」
「……? ……どうしたの、マサちゃん」
「ごめん、あんまりお前が綺麗だから、押さえが効かなかったんだ……。でもこれで、
次はじっくり楽しめるよ」
「えっ……それって……どういう……」
 ミサキの太腿に暴発した精液を、ティッシュで一旦掃除すると、マサヒコは再び
ミサキの両脚の間に位置を占めた。改めて、ミサキの体をじっくり鑑賞する。ミサキは
さっきの体勢のまま、両腕を首の左右において、割られた両脚を閉じることもできず、
マサヒコの視線に全身をくまなく晒していた。
 どこをとっても真っ白な、しかし今はほのかに上気した肌。まだ硬いつぼみを
思わせる乳房と、そのてっぺんに息づくピンクの乳首。股間をほのかに覆う、やはり
金髪の薄い茂み。それはとても秘奥を覆い隠すには足りず、パンティ越しに散々
弄ばれた下の唇は、すっかり濡れて恥ずかしく開きかけ、色のごく薄い中身までが
のぞいていた。



 その魅惑的な眺めに、マサヒコの分身はあっという間に復活した。それを見て取った
ミサキは息を呑む。
「ミサキ……」
 感に堪えないといった感じでマサヒコはミサキの名を呼ぶと、改めて、無防備に
横たわるミサキの体に、隅から隅まで愛撫を加えた。
 再び唇を合わせ、首筋を嘗め回し、乳首を舌で転がし、ねぶり、吸う。
 手と指は、肩口から愛撫を始め、脇腹、下腹部とそっと撫で続ける。
 情熱的な唇は、やがてかわいい臍を経由して、下半身へ進んでいった。
 その間中、ミサキは小さなあえぎ声を上げ続け、体を震わせていた。
「あああ……マサちゃん……んんっ……」
 やがてマサヒコの唇がミサキの秘奥に達した。秘めたる下の唇にそっとキスをし、
舌で割れ目を押し広げ、クリトリスをつつく。
「あう、ああ……ひゃうっ!」
 ミサキの体が跳ねた。調子に乗ってマサヒコがそこをツンツンと舌でつつくと、
ミサキの体は激しい反応を示し、既に濡れそぼったそこから、さらにとめどなく愛液が
流れた。
 たまらなくなったマサヒコは、さっきのコンドームのパックを破いた。こんなもの、
つけるのも初めてだ。苦心しつつ、なんとか装着に成功する。
「マサちゃん……」
 それを見て取ったミサキが、潤んだ目をマサヒコに向けた。
「……とうとう、ひとつになれるんだね……」
「ミサキ……いくよ……」
 ミサキの上半身を抱き上げ、対面座位の体位を取ると、マサヒコはいきり立った
分身を、そっとミサキのなかへ侵入させていった。
「……ああーっ!」
 ミサキの小さな悲鳴が響く。思わず、マサヒコが腰を止めた。
「ミサキ? 大丈夫かい?」
「少し痛いけど……いいの、続けて……」


 それを聞き届けたマサヒコは、ミサキの体内の抵抗を感じながら、それを断固として
突き破り、とうとう根元まで侵入させた。
「あうっ!んーっ……」
「奥まで入ったよ……ミサキ……熱くて……素敵だよ……」
「……マサちゃん……やっとひとつに、なれた……」
 痛みか、嬉し涙か、ミサキの瞳には涙が浮かんでいた。
 ミサキの体は、マサヒコの体を熱く、きつく、締め付けている。
「まだ、痛い……?」
「ん、少し……でも、大丈夫……」
 マサヒコはミサキの体をがっちりと抱きしめると、少し腰を使ってみた。
(こうかな……うおっ?)
 奥まで入ったそれを、そっと引くと、吸い付いてくるような肉壁によって、カリの
内側が強烈に刺激を受ける。今度はもう一度奥まで突いてみると、先端にコツンと
なにかが当たる感覚。と同時に、ミサキが体を震わせ、
「ああっ……」
と声が漏れる。
(なんて気持ちいいんだ!)
 マサヒコの興奮は速やかに高まった。
 それが快楽につながると知ったマサヒコは、腰を使い続ける。
「あう、ああ、ひぃ……」
「ミサキ…ミサキぃぃっ!」
「あ、ああああああっ!」
 ほどなくマサヒコの興奮が絶頂に達すると同時に、ミサキの体内がきゅっと締まり、
一瞬ののち、マサヒコの精がふたたび弾けた。



 二人の体はベッドに倒れこんだ。荒い息をつき、しばらく余韻に浸ったのち、
マサヒコはのろのろと体を起こした。ティッシュでミサキの下半身をぬぐって後始末を
すると、コンドームの口を縛る。
 シーツに残った鮮血は、一生ものの記念だ。が、どうやって母さんをごまかそう?
「ミサキ……素敵だったよ……大丈夫かい?」
「うん……マサちゃん、やっとひとつに、なれた……私を、お嫁さんにしてくれる?」
「……ああ、もちろんだとも」
「でも、大人になるまでは、このことは秘密にしなくちゃね」
「そうだな……せめて高校を卒業するまでは、誰にも内緒だからな」
「うん……でも、また、しようね?」
「でも……痛かったんじゃ……」
「うん……少し。でもそんなことより、私……マサちゃんに愛されていることを
確かめたいの。何度でも……」
 まだ上気した顔でミサキはマサヒコを見つめる。
 マサヒコはそんなミサキが愛しくてたまらなかった。
「ああ、俺もミサキを何度でも抱きたい……でも、今日はもうくたくただ……」
「私、も……」
 二人は裸のまま抱き合って、眠りについた。



 翌朝の6時。二人はまだ眠っている。そっと玄関の鍵を開けて入ってきたのは、
マサヒコの家庭教師を務める濱中アイだ。
「お母さんに、朝食の準備と、それと二人が何かで困っていたら手を貸してやってと
電話で頼まれて来て見たけど……まだ寝てるわよね」
 アイは冷蔵庫と野菜入れを確認し、自分も含めて3人分の朝食を手際よく作った。
「でも、一晩二人っきりなんて、ミサキちゃん、うまくやったかしら?」
 ヤカンがピーと音を立て、お湯が沸いたと主張する。
「そろそろ起こそうかな〜」
 食事の準備が出来たのをしおに、アイはマサヒコの部屋に向かった。
 まずは部屋のドアをノックする。
「マサヒコ君〜! 起きて〜!」
 そっとドアを開けて中をのぞくと、裸のマサヒコがベッドから上半身を起こした
ところだった。その傍らに横たわるのは、やはり裸のミサキ。
 とりあえずドアを閉める。
「(……ミサキちゃん、うまくやったみたいね。でも……)」
 アイがミサキを祝福する気持ちは嘘ではない。ミサキがマサヒコを好きだと知った
ときから、アイはずっと、ミサキの恋が実るように祈ってきた。
 そして今、ミサキとマサヒコは結ばれたのだ。アイは喜んでしかるべきだった。
(でも……なにかしら、この感情は……心に穴があいたような……)
 アイがマサヒコに抱いている感情は、弟に対するそれに近い。少なくともアイ自身は
そう思っていた。
(弟に彼女が出来た時って、こんな感じなのかなあ?)
 アイはそう思って、自分の感情にケリをつけた。


 ドアの外でアイはパンパンと手を叩く。
「お二人さん、起きて!」
 まだ寝ぼけた表情で、二人がベッドから起き上がった。
「今の声は……濱中先生?」
 あわてて二人は下着と寝巻を着なおし、一階に降りていった。
「お早う、お二人さん……ひゅ〜!」
 アイは口笛を吹けない。言葉で口笛のような音を出して、ミサキのネグリジェを
賞賛した。ミサキに向け、親指を立てて見せる。
「ミサキちゃん、やったわね。それにしてもすごい格好ね」
「きゃ! 見ないでください!」
 ミサキはあわてて脱衣所に逃げ込む。
「……先生、どうしてここに?」
「お母さんに、朝食の面倒を見るように頼まれたのよ。ミサキちゃんの料理はちょっと
心配だからって。この前、お弁当を作ったときに鍵は預かっていたしね。でも、こう
なった以上、ミサキちゃんの手料理のほうが、マサヒコ君には良かったかしら?」
「あの……先生、このことは内緒にしてくださいね。」
「もちろんよ♪ 大人になるまでは、伏せといてあげる」
 そこへ、いつもの牛柄パジャマに着替えたミサキも戻ってきた。
「さあ、食事にしましょ。たくさん召し上がれ」
 マサヒコとミサキはたらふくうまい朝食を摂った。アイが作った炒め物は、
こんにゃくの切れ目にシメジが刺さっていたのはお約束だ。

 二人をあわせた分のさらに3倍を食べた濱中アイは、二人を学校へ送り出すと、
「このことは秘密にしなきゃね……」と心に誓った。

 が、アイの芝居なんぞが中村リョーコやマサママに通用するはずもなく、速攻で
二人の関係がバレたのは言うまでもない。その騒動は、また別の機会に。

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