作品名 作者名 カップリング
「あとにも、先にも・・・」 拓弥氏 リョーコ×セイジ

――その女の子は…俺の知っているどの子よりも綺麗で、それでいてどこか寂しそうな顔をしていて…
でも…もしあの子が笑ったら、きっと…とても可愛いだろうな…そんな事を漠然と考えながら
気がついたときにはもう、その子に無我夢中で声をかけていた…

"ね…ねえ、君!―…え、えっと…な、名前…そう、名前!――名前…何ていうの…?"


「――…って、何年前の話だよ…」

 机の上でうたた寝していたセイジは、8年前の出来事が夢に出てきたことに思わずツッコミをいれる
当時、十四歳だったリョーコにひと目惚れして、思わず声をかけたのがきっかけだったのだが…

(あとにも先にも、あれっきりだよな…あんな形で女の子に声を掛けた事なんて)

 ごろん、とベッドの上に横になり、静かに物思いに耽っているとき…
突然―そんな静けさを突き破るように、激しい金属音とともに女の叫び声がセイジの耳に飛び込んでくる

"どん!どん!どんっ!!どどんっ!!!"
「こぉ〜るあぁあぁ〜〜っ!セイジぃ〜〜!!出てくおぉ〜いっ!!いるんだろぉ?
あ〜け〜ろ〜〜!」
"ガン!ガンッ!!ガンッ!!ガガンっ!!!"
「あ〜け〜ろ〜よ〜〜…あけらいと、アンタのはずかひぃ〜、せ〜へきをここでぶちまけるわよぉ〜」
(あああぁあぁぁ・・・)


 突然の暴挙に、思わず頭痛とめまいを覚えるセイジ。
自分の周りでこんな近所迷惑な事を平気でやれる女は1人しかいない…っていうか二人以上いることなど考えたくも無い…
いっそ居留守でも使おうかと思ったが、それで引き下がるタマではないこと位は充分承知している。
結局…扉を開け、その騒動の主――予想通りの女性・中村リョーコ――を招き入れる。

「あんらよ〜やっぱ、いたんじゃね〜かよぉ〜。早く出てこいよぉ〜出すのは早いクセに〜〜…」
「…お前なあ…俺の立場も考えろ…―って、酒臭ぇっ!?どんだけ飲んできたんだよ?」
「な〜んで、あらひがアンタの立場まで考えなきゃいけないのよぉ〜…」
「あ〜もう、しっかりしろって!ホラ、水!まったく…そんなに飲んで…何かあったのか?リョーコ…」
「べ〜つにぃ〜…いつものコトよぉ〜…あらひのこと軽くヤらせてくれる女とか思ってる奴が同僚に居てさぁ〜」
「リョーコ…」
「そりゃあ〜あたしはセックス好きだよ〜気持ちイイコトは大好きだしぃ…ガキの頃にバカやってたのは事実だけどぉ〜」
「落ち着けって…」
「…けど、あんなバカヤロー共に股開くほど、プライド捨てちゃいねぇ〜んだよぉおぉ〜〜っ!!
それにあたしゃ〜ここ一年ばかしは、1人だけとしかしてねぇ〜つ〜のっ!!」
「・・・」
「それでも、頭下げて『ヤらせて下さい!』ってお願いして来るくらいなら、まだ可愛げもあるし
こっちも情がわいて来るってモンだけどさぁ〜あいつら…あたしを酔い潰してホテルに連れ込むつもりだったのよぉ〜
だいたい、男三人で女一人ホテルに連れ込んで、ナニするつもりだって〜の!
…あ〜…思い出しただけでもムカついてくるわ…」
「…で、結局そいつらを逆に酔い潰して出てきたってワケかよ…」
「それだけじゃないわよぉ〜…ワザワザあたしのためにスウィートまで用意してくれてたんだから
お礼にキレーな『お姉さん』のサービスを紹介してあげたわよぉ〜…トラウマになるくらいの〜♪」
「…その『お姉さん』ってもしかして、アゴが割れてたりしてないか…?」
「あら、よくわかったわねぇ…青いヒゲ剃り跡がチャーミングな『お姉さん』よぉ〜♪
今度アンタにも紹介してあげよ〜か?」
「遠慮しておく…で、ワザワザそんな事話すために俺ん家まで来たのか?」


 セイジが用意した水を軽く飲み干し、幾分落ち着いた様子をみせてはいたが、セイジの問いには答えず
―不意に立ち上がると、ストッキングとショーツを脱ぎ捨て、自身の黒い繊毛に包まれた淫靡な花弁を
セイジの鼻先に突きつけて…

「…舐めて」
「おい…」
「あんな連中に身体中べたべた触られて気持ち悪いったらありゃしないのよ。だから…アンタ、舐めて消毒して」
「…あ―――…はぁ…わかったよ…」

 今のリョーコに、口先だけの慰めの言葉は意味が無いという事を理解したセイジは
リョーコの花弁に舌を這わせ、傷口を癒すように…少しでもリョーコが感じるように…優しく愛撫していく。

("…舐めて"か…そういえば、確かあのときも…)


――8年前――
"何?あなた…"
"あ、ゴメン。怪しい者じゃないんだけど…君が、あんまり綺麗だったから…つい…"
"ふ〜ん…あなたって、いつもそうやって女の子をナンパしてるの?"
"ち、違うって!こんなふうに女の子に話しかけたのって、これが初めてなんだよ"
"そう…"
"えっと…"
"『リョーコ』"
"えっ!?"
"私の名前。知りたかったんでしょ?『中村リョーコ』っていうの"
"あ…そ、そうなんだ…リョーコちゃん…かぁ…"
"用はそれだけ?"
"あ、うん…"
"…そう…じゃあ、今度は私の用事につきあって"
"えっ!?あ、うん…"
"じゃあ、ちょっとこっちにきて…"

 リョーコと名乗った少女に手を引かれるまま、セイジは人通りの少ない路地に連れ込まれてしまう。
一瞬、怖いおニィさんでも出てくるのかと内心ビクビクしていたのだが…
その少女は、おもむろに自分が履いていたショーツをずり下ろし、セイジの目の前で自らの花弁を指で広げてみせる
初めて間近で女性の"それ"を目の当たりにしたセイジ少年は、その淫靡な光景に
思わず言葉を忘れて見入ってしまっていた。

"言っとくけど、私…処女じゃないわよ…"
"えっ!?"
"それどころか…名前も知らないような男の人と、何人もセックスしてきたし…身体を売ったことも…あるわ…"
"リョーコ…ちゃん…?"
"どう、幻滅した?私、こんなに汚い女の子なのよ…"
"そんな…でも…"
"こんな私でも、まだ綺麗だって言えるの?"
"う、うん…"
"…なら、ココを…舐めてみせて"
"え…?"
"私のココ…いろんな男の人のアレを咥え込んできた、私の一番汚い所…ココを舐めることが出来たら
あなたの言う事を信じてあげてもいいわ"
"リョーコちゃん――…うん、わかったよ…"

 リョーコの言葉に応える様にセイジ少年は、そんな初めての行為に緊張しながらもゆっくりと舌を伸ばし
なれない舌遣いで不器用に…それでいて愛しそうに、リョーコの花弁を隅々まで丁寧に舐め上げていく…
   ・
   ・
   ・


「ん…あん…いい、ソコ…ん、んく…んあ、あ、あ…」
「ちゅ…ちゅ…ちゅる…んちゅ…」

 普段はセイジより先にイクことに抵抗を感じているリョーコだったが、いまはセイジの愛撫に身を任せ
子宮の奥からこみ上がってくる、こそばゆいような心地よさに包まれていくのを感じていた。
―と同時に、身体の奥から『別のもの』もこみ上げてきて…

「セイジ…」
「…ん、どうした?」
「…うぉえ…っぷ…」
「お、おい!ちょっと待てリョーコ!」
「…ゴメン…限界…――」
「ちょ…リョー…ぎゃああぁぁああぁぁ〜〜〜〜っ!@#$%&+*¥・・・」

 セイジがふと顔を見上げ、真っ青なリョーコの顔が目に入った瞬間――
セイジの顔面にリョーコの胃から逆流してきた○○が降り注いでくる。
リョーコの下半身に潜り込むような格好でクンニしていたセイジは…
当然、避ける間も無く直撃してしまっていた…

   ・
   ・
   ・
「…あ〜、ヒドイ目に遭ったわ…」
「…それは、こっちのセリフだ」
「ゴメン。悪いことしたわね」
「いや、別にいいけど…」
「せっかくの嘔吐シーンなのに…トイレに駆け込んで、『先月から、無いの…』って言うネタを忘れてたわ…」
「…そういう心臓に悪いネタは勘弁してくれ…」
「まったく…それもこれも、み〜んなあのバカ共のせいだわ。あ〜思い出しただけでまた腹が立ってきた
男だったら真正面から女を口説いてみろってーの!」


"…君が、あんまり綺麗だったから…"
 
 リョーコの話を聞いている時、不意にセイジは自分が初めてリョーコに話しかけたときの事を思いだす
今、思い出しても顔から火が出るような恥ずかしいセリフを…


「リョーコ、お前…覚えてるのか?」
「ん〜、何のこと?」
「あ、いや…何でもない…」

 さっきまでの騒がしさがウソのように、照明を落としたベッドの中で2人、身体を寄せ合っていた。
シャワーで身体を洗い流したあと、珍しく行為に及ぶことなくベッドに横になり、他愛の無い会話を交わしていく…
やがて、セイジの方から規則正しい寝息が聞こえてくると、リョーコは8年前の自分に思いを馳せていた。


――8年前――

"なんてイヤらしい娘!やっぱりあの男の娘ね…"

 ヒステリックに娘を叱り付ける母親と対照的に、リョーコの方は醒めた表情で母親を見返している。
そして、蔑んだような笑いを浮かべると…

"母さんの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったわ…母さんだって、父さん以外の男の人と…――"

バシィッ!

 軽い張り手の音がしてリョーコの頬に熱が広がる。反比例するように心の中はどんどん冷たくなっていき
気がつけば夜の街に飛び出していた。

 リョーコの父親はいわゆる地方の名士で、多くの人の尊敬と敬意を集めていたが、
同時に女性に対してはだらしない面もあり、母親以外の女性を外で囲っていて、
一方の母親も外面は貞淑な妻を演じながら、夫の留守に若い男を招き入れ昼間から情事に及んでいた。
 もしリョーコが愚鈍な少女であったなら、例えかりそめであってもその関係が崩れる事は無かったのかもしれない…
だけど、幸か不幸かリョーコの聡明さと敏感さは両親の不貞に気付かせ、
その現実はリョーコの心に深い傷をつけてしまっていた…


"ねえ君…いくら?3万でどう?"

 両親の不貞をあてつけるかのようにリョーコの暴走は性的なものに向けられ、
適当な相手と投げ捨てるように初体験を済ませると、夜の街をフラフラと歩いては一夜限りの相手を探す。
自分の値段を聞いてきた男たちに試しに吹っかけてみれば、言い値を払ってきたので金に困る事も無かった。
金で身体を売るという行為もリョーコにとってはそれほど心を痛める事ではなく、
イヤらしい笑みを浮かべながら、自分の『名前』より先に『値段』を聞いてくる男たちを軽蔑しながら
そうして買われていく自分自身を、それ以上に汚らしくイヤらしい存在だと思うようになっていた…

(…まあ、思えばあたしも随分と青い上にバカだったわね…そんな頃か…コイツが声を掛けてきたのって…)

"ね…ねえ、君!―…え、えっと…な、名前…そう、名前!――名前…何ていうの…?"


「…馬鹿…」
隣でのんきな寝顔を見せる男に小さくつぶやく

「忘れるワケないわよ…」
セイジの温もりを全身で感じながら、リョーコもまた心地良い眠りに誘われながら…

(…あとにも先にも、アンタだけだわ。あんなふうに声を掛けてきたのは…)


(END)

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