作品名 作者名 カップリング
「私の後ろに・・・ エピソード4 幼馴染 〜 A childhood friend〜」 そら氏 -

いつかこんな日が来るんじゃないかって思っていた。いや、そもそも今までこの日が来なかったのが
不思議だったのかもしれない。近くて遠い二人。
二人は果てしなく近い場所にいて、その実果てしなく遠い場所に居た・・・

「お〜い、ミサキちゃ〜ん!」
自分を呼ぶ大きな声にミサキは振り返った。声の主は中学時代の友人のリンコだった。見慣れない
女の子が4人・・・高校の友達だろうか。
「リンちゃん?わぁ、久しぶりだね。」
ミサキはリンコの所に駆け寄る。メールなどで連絡はとってはいたが会うのは本当に久しぶりだった。
「リン、中学の友達?」
短めの髪の少女、アキがミサキを見ながら言った。
「うん、ミサキちゃんて言うんだ。ミサキちゃん、こちら高校のお友達。」
ミサキがペコリと頭を下げる。それにつられていつもの4人もペコリと頭を下げた。
「ええっと、ミサキちゃん・・・だっけ?時間あるかなぁ?よかったら親睦会とかどう?」
カナミがミサキに言う。ミサキはニッコリと笑って
「いいですね。それじゃあお願いします。」
と答え、5人と一緒にリンコ達がよくたむろっているファーストフード店に入っていった。

「へぇ、ミサキちゃんて聖光なんだ。頭いいんだね〜。」
アキがジュースを飲みながら感心して言う。
「そんな事ないよ。やっぱり私も英稜がよかったなぁって思うときもあるし。」
自己紹介も終えてすっかり打ち解けたミサキが言う。ミサキにしてみればこの時間は結構新鮮だった。
聖光は進学校なせいか、結構ピリピリしている感じだ。成績面はミサキは問題ないのだが
こういう付き合いとかの面ではミサキは若干不満を持っていたのかもしれない。
「うん、私も聖光にしようかと思ってたけど、やっぱり英稜にしたんだよ。お兄ちゃんいるしね。」
ハンバーガーを頬張りながらカナミが言う。実際カナミの成績なら聖光も受かったのも事実。
しかし、英稜にいるって事は本当にシンジがいるから英稜にしたんだろう。かなりのツワモノだ。
「そういえば・・・ミサキさんは小久保君の幼馴染なんですってね?」
「えっ?あ、うん。マサちゃんとは本当小さい時から遊んだりしてたかな。」
マナカの問いにミサキが答える。
「へぇ〜、マサちゃんね〜。それでそれで?どうなの?」
ショーコがニヤニヤしながら言う。ミサキは顔を赤くしながらブンブンと手を振る。
「あはは、全然かな。マサちゃんて疎いのか鈍いのか・・・」
「そうなんだ?でもさぁ・・・小久保君って先輩と付き合ってなかったっけ?」




「えっ・・・・」
アキのその言葉にミサキの目の前が真っ黒に染まっていく。今・・・何て聞こえた?
「アキさんたら昼間っから卑猥ですよ。突き合うだなんて。」
マナカがボケるがミサキの耳には全く入ってきていない。
「川上先輩だよね?演劇部の。お兄ちゃんの話によるとまだみたいだけど・・・時間の問題かも♪」
カナミが自分の事のように嬉しそうに話す。前回多少なりとも自分がお膳立てしたからだろうか。
「そっかぁ〜。小久保君順調そうじゃ〜ん。いや〜、あん時はビックリしたよね〜。」
ショーコが言う。あの時・・・というのは出会いの時だろう。
「あ、あの時って・・・?」
ミサキが恐る恐る聞く。すると、ショーコが全てを話してくれた。マサヒコとケイとの馴れ初め。
そして、知っている限りの二人の経過を。
(そんな・・・こんな事って・・・私は・・・私はずっと前から、ずっとずっと前から好きだったのに。)
ミサキの顔が徐々に青ざめていく。それを見てリンコが心配そうにしている。
「ミサキちゃん?大丈夫?何か顔色が悪いよ?」
「え・・・?う、うん。大丈夫だよ。何かちょっとふらっとしちゃっただけだから・・・大丈夫だよ。」
ミサキは精一杯笑顔を作って見せた。
「お?噂をすれば・・・おーい、小久保く〜〜ん!」
アキが席を立って手をふる。ミサキはビクッとしながら恐る恐る後ろを振り向いた。
そして見た。久しぶりって程でもないけれど、久しぶりに想い人を。
安心した・・・彼は全く変わってなかった。ミサキが知っている、ミサキが思っているマサヒコだった。
「ああ、よぉ・・・って!ミサキ?驚いたなぁ〜。何でこいつらといるんだ?」
「親睦会だよ〜。ほらほら、小久保君も混ざりなよ〜。よかったらどうですか?」
リンコがマサヒコに同席を求める。マサヒコは一度後ろを見てははっと笑うと席についた。
よかった・・・きっと今日は久しぶりに話ができる・・・でも・・・
「川上先輩も♪ご一緒しましょうよ。」
その女の人は・・・誰なの?




ミサキと英稜の親睦会はマサヒコとケイも加えられて続いていた。もっとも、ミサキにとっては針のムシロだった
のかもしれない。聞こえてくるのはマサヒコとケイを冷やかしたり羨ましがる声ばかりだった。
気持ち悪い・・・胃液が逆流しそうになる・・・吐き気がする・・・
嫉妬でしかないのは分かっている・・・でも、分かってても納得できない自分もここにいる。
「え〜〜?二人って付き合ってないんですか〜?」
「わ、私とマサヒコ君が!?そ、そんな付き合うなんて、そんな・・・」
「でも、よく二人は一緒にいますね?」
「あ、あうぅ・・・それは・・・ほら、マサヒコ君が部活見学とか・・・」
無機質な声が飛び交っている。そのうちの一つの言葉、一つの単語、一つの文字すらミサキには
届いていない。
「それでそれで?付き合うつもりはあるんですか〜?」
「ほぇ・・・そ、それは私一人の気持ちじゃどうとも・・・」
「あ・・・俺はその・・・まぁ・・・うん・・・」
バタン!!と大きな音がした。テーブルを叩いた音だろう。話が途切れて音の主を見る。
「あ・・・・」
そこには顔を伏せていたミサキがいた。若干だが、震えているような気がする。
「ど・・・どうしたの?ミサキちゃん?」
リンコがオドオドしながらミサキに話しかける。
「あ、え、えっと・・・わ、私今日家の手伝いしないといけなかったんだよ〜。ご、ごめんね〜。そろそろ私
帰らないと。あ、あはは。楽しくて忘れちゃってたよ〜。」
そう言って無理矢理笑顔を作るとミサキは荷物をまとめて席を立とうとする。
「そうなんだ。じゃあ、またの機会に・・・またお喋りしようね〜。」
カナミ達が手を振ってミサキを見送る。ミサキはそれに笑いながら手を振って答えると店を出た。
店を出るとそのまま家へ走った。何でかは分からない。ただ、走ったせいか目から沢山の汗が出ていた。




ミサキは帰るなり部屋の閉じこもりベッドに体を埋めていた。情けない・・・自分が情けない。
単なる嫉妬。自分はあそこに居れないほど弱かった。あのままあそこに居ると、マサヒコの気持ちが
完全に分かってしまいそうで居られなかった。分かってる・・・認めたくないだけ・・・
あの人と居るときのマサヒコの顔は、十数年一緒に居るミサキが見たことのない顔だった。
寝よう。眠ってしまえば何も考えないでよくなる。そして、眠ってしまえば今日の事を忘れてしまえるかも
しれない・・・ミサキは無理矢理に意識を闇の中に落とそうとした。そんな時だった。
携帯の着信音響く。画面を見ると見たことのない番号だった。誰だろうと思いながらもミサキは一応取ってみる。
「もしもし・・・どちら様でしょうか?」
「あ、天野さん?お久しぶりね。私だけど分かるかしら?」
電話の主は意外な人物だった。
「わ、若田部さん?え?この番号は?」
「国際電話って奴よ。それで・・・何か元気なさそうだけど?」
電話ですら分かるほどなんだろうか、自分は。ミサキはそう思いながらも答える。
「え?そ、そんなことー」
「あるわよ。話してみなさい?折角なんだし。」
すぐにバレてしまった。ミサキは内心話すべきか迷った。結構情けない話だ。ただ・・・今のミサキは
本当は誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。ミサキはアヤナに全てを打ち明ける事にした。

「そう・・・小久保君がね。」
「うん・・・はは、私ったら馬鹿だよね。もしかしたら内心マサちゃんはどこにも行かないって思ってたのかも
しれないよ・・・私もマサちゃんも、もう子供じゃないのにね・・・」
奇しくも、アヤナが自身の送別会でミサキに言った事は遠からずだったのかもしれない。
マサヒコをほかの人にとられる。今日の事態をみれば目の前でと言うのも外れてはいない。
「それで?天野さんはどうするの?」
「え・・?どうするって?」
アヤナの質問の意図がつかめずにミサキは素っ頓狂に返してしまう。
「このままでいいの・・・?って事よ。」
「それは・・・でもどうしようもないよ。本当に仲よさそうだったし・・・」
受話器の向こうでアヤナがはぁ〜と盛大にため息をつくのが聞こえる。
「あ〜の〜ね〜、まだ二人は付き合ってないんでしょ?だったら、貴方が告白すればいいじゃない。」
「エ・・・えええええええーーー!?」
ミサキは今一アヤナの言った事が飲み込めずにパニックに陥る。
「で、でもでも・・・私きっと・・・フラレちゃうよ・・・・」
「でも、何も伝えないのは辛くないの?私は幼馴染とか、好きな人とかいた事ないからわからないけど・・・
気持ちを伝える事って大事だと思うわ。」
特にそれが初恋ならね、とアヤナは付け加える。ミサキがふと机に立ててある写真をみる。
マサヒコの合格発表の際にみんなで撮った写真だ。しかし、それはもう過去でしかない。
何かを成し得るならば、人は前に進むしかない。そこには光が当たってなくても。
「うん・・・うん・・・そうだよね。ありがとう、アヤナちゃん。」
「べ、別にそこまで感謝される事はないわよ。まぁ・・・頑張って、天野さん。」
ミサキはアヤナとの電話を終えると再び携帯のメモリをいじり、コールした。
「あ、もしもし。マサちゃん?今度時間あるかなーー」




梅雨のせいだろうか、折角の日曜にも関わらずその日は天候は今ひとつだった。
「よっ、ミサキ。この前ぶり。」
待ち合わせ場所の駅前にマサヒコがやってくる。
「あ、マサちゃん。うん、この前ぶりだね。」
マサヒコに合わせてミサキが手を上げる。以前マサヒコがプレゼントしてくれたネックレスも首からかけてある。
二人は歩き出す。特に目的地はないが歩き出す。それだけでよかった。ただ、話せるだけで。
「ミサキはどうだ?高校。あそこ進学校なんだろ?」
「うん、やっぱりちょっと厳しいかな。少しピリピリしてる感じ。マサちゃんはどう?」
「俺はまぁ・・・楽しいかな。ほら、この前の親睦会だっけ?あの時の面子みたいに結構話せる奴も
多いしな。矢野・・・あの髪の短い子な。あいつとかはツッコミの力を共有してるよ。」
ミサキがマサヒコは顔を見てそうなんだと相槌を打ちながら笑う。マサヒコの顔は本当に楽しそうだった。
「あ・・・見てマサちゃん。この公園・・・・懐かしいよね。」
ミサキが指差した先。そこは幼い頃ミサキとマサヒコがよく遊んだ公園だった。
「お、本当だ。懐かしいな・・・寄ってくか。」
ミサキとマサヒコが公園内に入っていく。器具は色々変わっているが、それでも此処は昔ミサキと
マサヒコが遊んだ公園のままだった。
「ふふ、本当懐かしいね・・・あ・・・マサちゃん、こっちこっち〜。」
ミサキがマサヒコを呼ぶ。そこにはブランコあった。ミサキはそのブランコの椅子を指差している。
「ブランコか・・・あ、これって・・・」
マサヒコが見た先。ブランコの椅子には幼い子供の字が彫ってあった。すっかり色褪せてはいるけれど
その字ははっきり読める。昔、マサヒコ自身が書いたからだ。
『おおきくなったら、ミサキをおよめさんにします。 マサヒコ』

一方、同時刻ケイはナツミと街を歩いていた。
「何か雨降りそうねぇ・・・まぁ、それよりも。彼とはどうなのかな〜?言ってみなさ〜い。」
「え、ど、どうもないよぉ。うん、学校とかで一緒にいて、お話とかするだけで。」
ナツミが肘で小突くのを受けながらケイは顔を赤くしている。
「くぅ〜、全く初々しいわねぇ。でも、ケイにも遂に彼氏かぁ〜。うんうん。」
「か、彼氏とかそんな・・・ほら、マサヒコ君は他に好きな人いるかもだし。」
「お?つまりケイは彼が好きって事じゃないの〜。」
「へ!?あ、あうぅ〜。」
ナツミがニヤニヤしながら言う。ケイは最早いっぱいいっぱいな感じだ。
ふと、ナツミは頬に違和感を感じる。何かが当たったような感じだ。
「・・・あれ・・・?もしかして。」
ナツミは空を見上げる。元から天気は悪かったが、ご機嫌斜めな空は今にも怒り出しそうだった。
「まず・・・ケイ、ちょっと走ろう!?雨きそうだから!って、もう降りだしてる!?」
ナツミがケイの手を引いて走る。足の早いナツミに引っ張られてケイは四苦八苦しながらもついていく。
「ま、待ってよナツミ〜〜・・・・あれは・・・?」
走るケイが足を止め、目を向けた先そこは公園だった。
「!?ちょっとケイ?何やってるのよ〜。」
「あれは・・・マサヒコ君と・・・確か幼馴染の子・・・?」
ぽつっ・・・ぽつっ・・・と雨が降ってくる。向き合っているマサヒコとミサキ。それを立ち止まって見ているケイ。
降りだした雨は運命の歯車を回し始めた・・・

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