作品名 作者名 カップリング
「エピソード5 マサヒコとアヤナ」 そら氏 -

マサキがもうじき3歳になろうかとしているある日、若田部アヤナは小久保家へ向かっていた。
ビシッと決めたスーツでその瞳には頑なな決意が宿っている。事の始まりは一ヶ月ほど前だ。

その日、アヤナは敬愛するお姉様、リョーコの家へ行っていた。それはマサヒコの事の相談。
「んで・・・ミサキとの約束のためにマサと・・・結婚するって?」
「はい・・・今度話をしようと思ってます・・・でも・・なかなか決意ができなくて・・・」
ミサキとの約束。それはアヤナとミサキが最後に交わした言葉。ミサキがアヤナにマサヒコを
頼むと言った事。その時は断った。まさか・・・ミサキがあんなことになるとは思ってなかったから。
「つまり、私に背中を押してもらいに来た・・・ってわけね?」
コーヒーを飲みながらリョーコが言う。アヤナはこくりと頷く。
「んで・・・あんたはマサの事好きか?ああ、私に嘘はつくなよ?無駄だから。」
好き・・・その言葉に少々顔を朱に染めるアヤナ。
「もし・・・あんたが約束のためだけに結婚するなら・・・私は手を貸せないわ。無駄な事だから。
でももし・・・好きだって言うなら・・・」
「・・・き・・です・・・」
リョーコの言葉をさえぎり、かすかな声で答えるアヤナ。
「好きです・・・私は小久保君の事が・・・好きです。」
知ってのとおりアヤナは超一級の美人だ。今まで何人もの男に交際を申し込まれている。
しかしその実、自分から気持ちを告白したことはなかった。そのアヤナが好きと言う事。それはとても大きい事だ。
顔を真っ赤にして、それでもしっかり自分の気持ちを言ったアヤナにリョーコはにやりと笑う。
「ふふ・・・アヤナも可愛いトコあるわね~。いいわ、多少なら手伝ってあげる・・・ただ最終的には
アヤナ自身と・・・マサの気持ち次第よ。それに・・・マサはミサキよりあんたを好きになるとは
限らない・・・いや無いかも知れないわよ。それでもいいの?」
マサヒコがミサキよりも人を好きになる・・・それは実際絶望的な事かもしれない。それでもアヤナは言う。
「それは分かってます・・・それでも私は彼が好きです。それに・・・天野さんに勝つことはできなくても・・・
並ぶことはできると思ってます。そして、私は並べれば満足です。」
未だに顔を赤らめながら答えるアヤナ。
「そっか・・・なら私は何も言わないわ・・・頑張っておいで・・・あんたの背中はいま押したから・・・
後はマサの背中押したら連絡するからさ。気合入れて待っときな。くれぐれも意地にならないように・・・
素直なあんたは・・・可愛いし素敵な女よ。」
と、これが前話の少し前の話。要するに・・・アヤナは人生初の、とんでもなく大きい告白をしに
小久保家へ向かっているのだ。気合が入らないわけがない。




アヤナが小久保家につくと庭先で子供と犬の鳴き声がした。そちらを向くとマサキとアマツが遊んでいた。
「あらあら・・・こんにちは、マサキ君。アマツも元気そうね。」
「アヤナおねえちゃんだ~!こんにちは~~~。」
アヤナをみつけるなら駆けて行き抱きつくマサキ。それにアマツも尻尾をふって懐いてくる。
「あら、アヤナちゃんじゃないの・・・どうしたのよ?そんなビシッと決めちゃって~。」
窓から顔をだしてマサママがアヤナに尋ねる。
「ええ・・・小久保君にお話があって・・・あの、彼は・・?」
「あ~、マサはまだ帰ってないわよ。まぁ上がりなさいよ。もうじき帰ってくるだろうからさ~。」
アヤナは一礼するとマサキを抱いたまま玄関へ向かい、そのままリビングへ招待される。
「はい、お茶。それで・・・今日はうちのマサにプロポーズでもしにきてくれた?」
出されたお茶をブフ~ッと音と共に吹き出すアヤナ。それを見てマサママはにやつく。
「あらあら、冗談だったけどマジみたいね~。ふむふむ・・・・」
「な・な・・・ごほん!ええっと・・・その・・・・」
思い切り図星をつかれて狼狽するアヤナ。
「おばあちゃん、ぷろぽーずってなぁに?」
「ん?そうね・・・つまりアヤナおねえちゃんはパパの事が好きだから一緒にいたいってことよ。」
「そうなんだ~。アヤナおねえちゃんが僕のママになるんだ~。」
ニコニコしながらアヤナを見るマサキ。
「えと・・まだ決まってないんだけどどね・・マサキ君のパパが嫌だっ言ったらダメだし・・ね?」
「えー・・・僕アヤナおねえちゃんがママだったらいいのに・・・アヤナおねえちゃんあったかくて・・・
ママみたいで好きだもん・・・」
尚もニコニコするマサキを見てアヤナは気を取り直して気合を入れなおす。私がこのコの・・・母親に・・・




一方、噂のマサヒコは同僚の城島カナミと歩いていた。デート・・・などではなく来年からマサキが入園する
幼稚園の下見だ。
「来年からマサキ君も幼稚園かぁ~。早いもんだね~。」
「ああ・・・なんだかんだであっという間だったよ。色々あったしな・・・・」
二人で町を歩きながら話す。ぱっと見はカップルに見えなくもない。
「まぁ、あそこの幼稚園なら安心だよ。なんたって私の幼馴染が保母さんしてるからね。」
むしろそれが不安なんだが・・・とはさすがに突っ込めなかった。次第にその幼稚園が見えてくる。
「マナミちゃーーん!お待たせ~~、迎えにきたよ~~~~!」
幼稚園につくなり少し遠くに見える二つの人影に声をかけるカナミ。その二つの影はカナミを確認すると
ゆっくり近づいてきた。近づいてきたのはアイの娘、マナミ。もう一人は黒い、少し癖ッ毛ロングの髪。
そして少し釣り目の清楚な女性だった。
「こんばんわ、カナミちゃん。今日はカナミちゃんがお迎えなんですね。」
「うん、お兄ちゃんは仕事だし、お義姉さんも今日は残業だからね。マナミちゃん、いい子にしてた~~?」
保母さんと思われる女性と少し言葉を交わすと溺愛するマナミを抱きしめるカナミ。
「あ・・・そうだマナカちゃん。こちら、会社の同僚で来年から子供さんが入園予定の小久保君。」
マナカと呼ばれた保母さんはマサヒコを見ると一礼する。
「初めまして、カナミちゃんの幼馴染でこちらで保母をさせて頂いております黒田マナカと申します。」
「あ・・・ご丁寧に・・小久保マサヒコです・・来年からうちのマサキがお世話になると思います。」
上品な挨拶についつい丁寧に返すマサヒコ。
「うふ、マナカちゃんいいこと教えてあげる。小久保君の息子さんのマサキ君はとっても可愛いんだよ。
ああ、だからってつまみ食いはダメだからね~?」
「そうですか・・・残念です。もしかしたら好みかもしれないのに・・・」
なんだか有り得ない会話に顔を青くするマサヒコ。・・・別の幼稚園にしようかなぁ・・・・



「ただいま~・・・・ん?誰か来てるの?」
マサヒコが家に帰ると見慣れない靴が目に付く。そのままリビングへ向かう。
「こんにちは小久保君・・・お邪魔してるわ。」
「若田部か・・いらっしゃい。どうしたんだ?」
「パパおかえり~、あのね。アヤナおねえちゃんはね、パパに・・・もがががが」
いきなり本題を言おうとするマサキの口を慌てて塞ぐマサママ。
「あははは~、まぁ私とマサキは席外すからごゆっくり・・それからマサ!アヤナちゃんの安全日のかくに・・・」
「分かったから出てくならは出てけ。」
マサママに最後まで言わせずドアを閉めるマサヒコ。そのままアヤナの前に腰をおろす。
「そんで・・・何か話あるのか?」
さぁ言えアヤナ!私の性格からして伸ばしたら言えそうにない・・言え、言うんだ!
「え・・ええ・・・その・・・・小久保君・・・私と再婚しないかしら・・??その・・・
そのほうがマサキ君のためにもいいでしょうし・・・・」
上出来だ、私。結構頑張った!顔を俯けながらマサヒコの答えを待つ。
「若田部・・・気持ちは嬉しいよ・・・でも・・・それじゃあ若田部がただのお手伝いさん
みたいだろ?そんなことさせれないよ・・・・」
ぐ・・・まぁ、これでいけるとは思って無かったわ。まだまだ畳み掛けるわよ。
「そんなことないわ・・・それに・・・天野さんとの約束でもあるの・・・私ね、天野さんにあなたの事頼むって
言われたから・・・だから・・・ね?」
自分でも顔が赤いのが分かる。顔が熱い。熱でもあるんじゃないかしら・・・
マサヒコの答えを待つ、ほんの少しの時間がとても長く感じる。ああもう、早く答え出しなさいよ。
それとも焦らし好き!?ああ、ダメだダメだ。頭がモヤモヤする・・・
そもそも・・・約束もマサキ君のことも言い訳に過ぎないじゃない・・・
どうしてこう私は素直じゃないんだろう・・・好きって言うだけなのに・・・本当に情けない。
「そうか・・・それでも・・・若田部が一生を棒に振る事ないよ・・・若田部は美人だからな。
もっといい男がいるのにミサキとの約束のためにそこまでさせれないよ。」
こ、この男はーーー!!!言わなきゃ気づかないのかしら・・・す・・好きって・・・
いや・・・私もダメだ・・・好きだって言えてない。言わなきゃ・・好きって言わなきゃ・・・きっと後悔する。
言え、言うんだアヤナ!勇気をだして・・・飾らないで・・・自分らしく気持ちを・・・!!
アヤナはギュッと目をつぶるとマサヒコの肩を掴む。
「だからっ!!!!!」



あと少し・・・もう出掛かってる・・・誰か・・・最後の一押しを・・・・
ふと、アヤナの頭に声が響く。聞き覚えのある声。
大丈夫だよ・・・マサちゃんは分かってくれるよ・・・ありがとう若田部さん・・・最後の一言頑張って・・・
言うまでもない。この声の主は・・・全くお節介なのよ。
でも、ありがとう・・・あなたも私にこの声を届けるのに勇気が必要だったよね?
だから・・・私も勇気を振り絞るから・・・見ててね?
マサヒコの肩を掴んだまま・・・それでもしっかりと目を開いて、マサヒコの目を見つめて・・・
「私は・・・・っ!!あなたが好きなのよ!!!」
言った・・・言えた・・・最後はライバルに背中押してもらったけど・・・それでも・・・勇気を出した。
初めて・・・勇気を出して・・・本当の気持ちを伝えた・・・
「若田部・・・・」
アヤナの迫力に押され・・・それでもマサヒコの心に響いた声。
「馬鹿・・・・女の子に・・・言わせないでよ・・・」
結局またいつもの自分に戻ってしまう。素直になるのは難しい・・・・それでも、大事な事は伝えれた。
「俺・・・ミサキの事忘れてないぞ?きっと若田部の事一番とは思えないかもしれないぞ?」
「構わないわ・・・一番でなくて・・・私は・・・あの人に追いつければそれでいい・・・だから・・・」
そこまでアヤナの言葉を聞くとマサヒコはアヤナを抱きしめた。アヤナは少しびっくりしたように体を
震わせたが、すぐにマサヒコに体を預けた。マサヒコはアヤナを抱きしめながら言った。
「よろしく頼む・・・・アヤナ・・・」




その後、身内だけでひっそりと式が行われた。大きな式ではなくても、それでもアヤナには一生の思い出。
小久保家、若田部家の喜びはその後身もとより、天野家もどこか嬉しそうであった。一度失った一人娘。
しかし、血は繋がっていなくても再び愛娘を手に入れたからであろうか。
マサヒコと若田部家。アヤナと小久保家、天野家、そしてマサキ。ここに血よりも濃い絆が生まれた。
ちなみに、式の最中アヤナの一世一代告白をデジカメで出歯亀していたマサママが流し、
再びアヤナの顔がこれ以上ないくらい紅潮したのはどうでもいい話。

ピリリという目覚ましの音で目を覚ましたマサヒコ。一度伸びをしてから写真立てに目をやる。
一枚はマサヒコとマサキとアヤナの写真。そしてもう一枚は・・・マサヒコとミサキの写真。
この写真、結婚直後アヤナに悪いと思ってか伏せていたのだが、逆に思いっきりグーで殴られた。
これは気を使うところじゃない。むしろ、これを伏せるのは天野さんが許しても私が許さないとの事。
「あなたーーー、朝ごはんできたわよ~!!」
階下からアヤナの声が聞こえる。
「ああ、すぐ行くーーー!!」
大きめの声で返事をして再び写真に目をやる。
初めは笑ってくれなかったミサキの写真。それでも今は・・・笑ってくれている・・・・
マサキももうすぐ三歳。そして同時に・・・ミサキが旅立って三年・・・そろそろ俺も・・・
心に決意を秘めリビングへ向かうマサヒコ。
それは三年前とは比べられないほど成長したなによりの証拠。

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