作品名 作者名 カップリング
『Warp 〜Restart〜』 白帯侍氏 マサヒコ×アヤナ

マサヒコがリョーコの部屋から出て行ってから数分後。
リョーコは冷蔵庫に残っていたビールを持ってきて一人でちびちびと口に含んでいた。
空になった缶を捨て置き、次の缶に手をかける。
プシュッと小気味のいい音がプルタブから発せられた。
琥珀色の液体をのどに流し込みながら、リョーコは先ほど出て行った男のことを思った。
『・・・・帰ります。今日はありがとうございました』
言葉とは裏腹にずいぶんと景気のよくない顔でマサヒコはドアを開けて出て行った。
それを思い出し、リョーコは一人で低い笑い声をもらした。
一時は憑き物が落ちたような顔をしていたくせに最後はあの顔だ。
ざまぁみろだ。人の言葉なんかで楽になろうなんざ問屋が卸さない。
最後まで自分で考えてもらわなきゃ意味がない。
彼女は、自分の力で決心したのだから。
「ったく・・・いつまで世話焼かせるんだか」
苦笑いを浮かべたリョーコは、口元に缶をつけて静かに傾けた。

まどろみから呼び覚ましたのは、キッチンから聞こえるリズミカルな包丁の音だった。
マサヒコはベッドからむくりと起き上がって窓を見た。空は夜の黒に染められようとしていた。
寝ぼけ眼を擦りながらリビングに行く。するとキッチンで料理作りにいそしむ見慣れた後姿が目に入った。
「・・・・来てたのか」
マサヒコが後ろから声をかけると、アヤナは驚いたように後ろを振り向いた。
驚きに彩られていたアヤナの顔は、次第にあきれたような色に変わっていく。
「ようやく起きたのね。勝手に上がらせてもらったわ。呼び鈴何回鳴らしても出なかったから」
「悪い。ちょっと寝不足でな」
「・・・まぁいいわ。私も来るの遅かったし。出来るまでそんなにかからないから座って待ってて」
それだけ言うとアヤナはまた正面に向き直り、また包丁で何かを刻み始めた。
マサヒコは壁にかけている時計に目をやった。
ほとんどいつも通りの時間だ。なぜ彼女は遅いといったのだろうか。
少し思考を働かせてみるとふと思い当たることがあった。今日は部屋を片付ける約束をしていたのだ。
自分が忘れていたことをアヤナが覚えていたことに思わず口元が緩む。
マサヒコはテーブルの近くに腰を下ろし、いつものように台所に立つアヤナの姿を眺めた。


「なあ、若田部」
夕食を食べ終えた後、食器を洗う手を止めずにマサヒコはアヤナに話しかけた。
「何?」リビングでファッション雑誌を読んでいたアヤナは流しに立つ後姿に目をやった。
「今日の片付けさ・・・またいつかにしてもいいか?」
「はぁ?どうしてよ」訝しげな視線をマサヒコに向けながらアヤナは不平をもらす。
が、その後思わせぶりな笑みを浮かべ、そうか〜などと言って視線を再び雑誌に戻した。
「おい、何がそうか〜なんだ?」
「掃除したくない理由。見られたくないものとか置いてるんでしょ」
えらく心外なことを言われ(多少心当たりはあったが・・・)思わず後ろを振り返るマサヒコ。
「バッ・・!バカ言うな!」
「じゃあどうして?」
「そ、それはだな・・・」
マサヒコは言葉に詰まる。本当の理由を言ってもいいものだろうか。
しかし適当な嘘が通じる彼女ではないだろうし、ここまできて怖気づいてもいられない。
少し高まった動悸を感じながら、マサヒコは小さく息を吐いた。
「汚いって言ってもそんなに酷いわけじゃないし。それに・・・」
言葉を一度切り、心の中で次の言葉を呟く。そして少し声を低くしてその言葉を言った。
「・・・ちょっと、お前に言いたいことがある」
流しに向かいその言葉を呟いたとき、後ろでアヤナが息を呑んだのをマサヒコは感じた。
「駄目か?」
不安な気持ちを悟られないように、出来るだけぶっきらぼうに尋ねる。
答えは、すぐには返ってこなかった。ガチャガチャとぶつかり合う食器の音が部屋に響く。
海の底の様な沈黙。それに比例するように高まるマサヒコの動悸。
ただ過ぎていく沈黙の重さに、いっその事茶化してしまおうかという考えがマサヒコの頭をよぎった。が、
「・・・・いいわ」
後ろからアヤナの声が返ってくる。心なしか、いつもよりその声には固さがあった。
「ありがとう」安堵の気持ちを隠しきれずマサヒコは思わずそう呟いた。

スポンジで皿を擦りながらマサヒコはアヤナのことを思った。
自分の後ろにいる女性は、多分3年前最後に会った時と同じ顔をしているだろう。
そしてそれに向かい合う自分も、似たような顔をするのだろう。
これから自分たちのすることは、3年前のあの日の再現なのだろうか。
皿についた泡を洗い流す。濡れた皿を拭いて、洗い終わった皿の上にそれを重ねた。
違うだろ、とマサヒコは心の中でかみ締めるように呟いた。
今ここにいるのは、確かに昔の2人だ。しかし同時に、何も出来なかった昔の2人でもないのだ、と。


食器を洗い終えたマサヒコは、アヤナとテーブルを挟んで座った。
アヤナはどこか緊張したような面持ちで視線をテーブルへと向けている。
マサヒコはごくりとつばを飲む。カラカラの喉をゆっくりそれは伝っていった。
マサヒコは今まで頭の中で幾度と無く反芻してきた思いを、もう一度心の中で自分自身に問いかけた。
この言葉を言ってしまえばもう後には引けないだろう。
うまくいくか、今までの関係が続くか、はたまたもう会えなくなってしまうか。
物怖じする気持ちがないわけではなかった。
が、それ以上に、アヤナに伝えたい気持ちがあった。
そして、それと同等の気持ちがあった。彼女の気持ちを信じたいという気持ちが。
「お前がこっち戻ってきてからさ」
マサヒコの言葉にアヤナがゆっくりと顔を上げる。不安に揺れる瞳が彼の目に、そして彼女の目に映った。
「2ヶ月くらい経ったけどさ・・・ずいぶんいろんなことあった、って思うんだ。
俺はお前に振り回されてばっかりで、心身ともに疲労困憊って感じでさ」
「・・・何よその言い方。私が来てから悪いことばっかりだって言いたいの?」
「そんなこと言ってないだろ。飯作ってくれることとかすごく感謝してるよ。
・・・まぁお前が来るとき家空けてると怒るからバイトのシフト変えたりしたけど」
やっぱり迷惑なんじゃない、とアヤナが不平を漏らす。
アヤナの瞳から不安の色が薄れ、マサヒコの口にも微笑が浮かんだ。
「でも、疲れるってこと以上に楽しかった。それに・・・お前といるときはいつもドキドキしてた」
「小久保君・・・」
「俺は・・・お前ともっと一緒にいたい。お前と同じ時間を過ごしていたい。
お前と俺じゃあ釣り合わないことは分かってる。お前に迷惑かけるんじゃないかって思う。
実際に俺とお前の事知ってる人にはそう言われたし・・・
でも、それでも・・・俺の気持ちを言いたかった。だって・・・」
言葉を切ってもう心の中で次の言葉を呟く。3年前に言えなかった、あの時の言葉を。
「俺は・・・お前のことが好きだから。だから・・・お前の気持ちも聞かせて欲しい」
真っ直ぐにアヤナの瞳へと視線を注ぐ。
マサヒコの視線には懇願の色はなかった。ただ単純に、彼女の気持ちが知りたかった。

アヤナは緊張の面持ちでただマサヒコの言葉、視線を受け止めていた。
彼が自分に好意を持ってるというのは分かっていた。自惚れではなく、直感的に。
だから、恋人という関係には簡単に踏み込めると思っていた。何の苦もなく。
しかし、実際は違った。
彼はこんなにも真剣な思いをぶつけ、自分はそれにただ聞き入っている。
家柄や能力など恋愛に関係ないと思っていた。それらとは関係のない男を好きになったのだから。
しかし、実際は違った。
彼は私が持ってるものに重荷を感じているし、自分たちの組み合わせを相応しく思わない人もいる。
思いを伝えたマサヒコは、黙ってアヤナの答えを待っていた。
自分をこんな目で見つめる男に、いい加減な気持ちで返事をすることなど出来ない。
彼は様々な思いを抱きながらも自分に告白することを決心したのだ。
それには、私も本音でぶつからなければいけない。
アヤナはテーブルをみつめていた視線を正面に向けた。
彼女の目には、もう怯えも不安も残っていなかった。


アヤナはすっと立ち上がりマサヒコの隣にきて、彼を上から見つめた。
「隣り、いい?」
「え?あっ・・・」
マサヒコの返事も聞かず、アヤナは彼の隣りにストンと腰を落とした。
怪訝顔でマサヒコは隣りに目をやる。横にいる女は黙って正面の方を向いていた。
仕方ないのでマサヒコも正面に目をやる。テレビのブラウン管に映る自分達の姿が見えた。
「自分で言うのもなんだけど私、あっちで結構もてたのよ。それであっちの子と何人か付き合ったの」
脈絡もない話をアヤナは唐突に始めた。あまりにも予想外な話だったので
マサヒコは一瞬、彼女が独り言を言っているのかと思った。
「俳優みたいにカッコいい子とか、どこぞの御曹司とか。
コメディドラマに出てきそうな子とも・・・フフフ、妬ける?」
「・・・んなわけあるか」
からかう調子を含んだアヤナの問いにそっけなくマサヒコは言葉を返す。
もしかして?もしかしなくてもむすっとしたりしている。
あまりにも分かりやすいマサヒコの反応にアヤナはクスッと笑う。
「でも誰とも長く続かなかった。いつも私の方から駄目にしていた」
「・・・どうしてだ?その、いい男だったんだろ」
「うん。別れる理由は全部私のわがままよ。あっちの雰囲気がどうしても慣れなかったし・・・それに」
そこまで言って彼女の言葉が途切れる。
アヤナは少しの間逡巡する様子を見せたあと、自嘲的な微笑を浮かべながら口を開いた。
「それに・・・相手の子のことを見ていると不意に思い浮かんだの。
あなたならこうしてくれた、あなたならあんな風に言ってくれた、って」
「・・・買いかぶり過ぎだよ」
「うん。私もそう思った。これは思い出を美化しているんだって。
でも、そう思っても・・・誰かと付き合うたびに、あなたの影がちらつくの。
正直な話、恨んだわ。私はあなたの思いに縛られたままなんだから。
日本に戻ってきたのもその理由が大きかった。私を縛り続けてきたこの思いに、決着をつける、って」
「・・・じゃあ分かっただろ。勘違いだった、って」
「ええ。分かったわ・・・ねぇ、小久保君」
アヤナに名前を呼ばれ、マサヒコは隣りに顔を向ける。
マサヒコは視界に、隣にいるはずのアヤナの顔を取らえることが出来なかった。
いや、正確には近すぎて何がどうなっているか分からなかった。
感じるのは唇に押し付けられる温かな感触。
いつも彼女との別れ際の挨拶のようで、明らかにはそれと違ったもの。
数秒後その感触は離れていった。マサヒコの目には顔を仄かに赤らめた女の笑顔が映し出された。
「分かったわ。私はこれからもあなたに、縛られたままだってことが」
アヤナの顔を呆然と見つめるマサヒコ。
が、彼女の言葉が自分が望んでいた答えだということを理解すると、彼の顔は自然と緩んでいった。
「さっきのは・・・アメリカでいうどんな行為になるんだ?」
「フフ、そうね・・・アメリカ風の愛してる、ってとこかしら」
「そっか。それは万国共通なんだな」
そう言うと二人は微笑み合い、再び深く口付けを交わした。


「確かに告白したけどさ、すぐこうなるのは安易すぎないか?」
トランクス一枚でベッドに腰をかけているマサヒコは、床に視線を向けながら口を開いた。
「もう・・・ムードの無いこと言わないでよ」
バスタオルを身体に巻きつけたアヤナは腕組をしながら目の前でうな垂れる男を見下ろす。
「シャワー浴びたいって私が言ったとき、浴びてこいって言ったでしょう。
心の準備くらいしててよね。緊張してた私が馬鹿みたいじゃない」
「なんかさ・・・3年前のこと思い出してさ。この流されてるような状況が」
「・・・だからよ」
マサヒコは顔を上げてアヤナの顔を見る。その顔は、昔のことを懐かしんで微笑んでいるように見えた。
「あの日、私たちはああやって身体を重ねることで時間を止めてしまった。
だから今の私たちはもう一度時間を動かす必要があると思うの」
「若田部・・・・」
「・・・でも、正直に言えばそれは建前でね」
途端にアヤナの微笑が、普段見せることがないような無邪気なものに変わる。
彼女はマサヒコの隣りに両手をついて前かがみになり、マサヒコの耳元に顔を近づけた。
「好きな人に抱かれたいって思うのは・・・そんなに不思議なこと?」
耳元での蕩けるような囁き。マサヒコは頭から指先まで電気が駆け抜ける。
「私、ずっと誘ってくれるのを待ってたんだけど・・・小久保君は、したくないの?」
甘えるような響きで囁かれ、マサヒコはゆっくりと囁かれた方に顔を向ける。
そこにはこれまで見たことがなかったアヤナの顔が。おそらくこれを妖艶と呼ぶのだろう。
悲しきかな男の性とでも言おうか、こんなにも間単に理性の鎖が千切られるとは。
マサヒコは彼女への降伏の言葉を喉まで持ってきて、引っ込めた。
口を使った返事なら、もっと適切な方法があるではないか。
マサヒコはアヤナの肩を掴み、ベッドの上に仰向けに倒す。
そして驚いた顔のままのアヤナの唇に深い口付けを落とした。
マサヒコが顔を離すとそこにはまだ驚いたままのアヤナの顔。
が、自分が何をされたのか悟ったのだろう。次第に彼女の顔は朱に染まっていく。
「これが返事じゃ駄目か?」
マサヒコの言葉にアヤナはようやく驚きから立ち直る。嬉しそうに首を横に小さく振った。
自分の回答が正しかったことをマサヒコは確認すると、彼自身もベッドに上がった。
彼女の顔の横で手を張り、上からアヤナの顔の至るところに唇を落とした。
唇、頬、瞼、額。彼女の顔のパーツひとつひとつに慈しむように唇を押し当てる。
目を閉じたアヤナは熱い吐息を漏らしながら、マサヒコの行為をじっと受け入れた。
十数回唇を落としたマサヒコは、少し湿ったアヤナの長い髪をかき寄せた。
ふわっとした甘い香りが鼻腔をくすぐる。彼女の形の良い耳が露わになる。
「こ、小久保君・・・そこは止め・・・はぁぁあん!」
アヤナの返事の途中でそっと形のいい耳へとふっと息を吹きかけた。
「やっぱりここ弱いんだな」
「どうして・・・そんなこと覚えて・・・るのよ」
「完璧で通ってる若田部の数少ない弱点を忘れるわけないだろ」
近くで話されるだけでも辛いのか、アヤナは顔を懸命に背けようとする。
しかし肩を抑えられているので逃げられるところなど高が知れたもの。
マサヒコはアヤナの耳を追っていき、耳たぶをペロリと舐めた。


「ひゃぁん!・・・ん・・・んん・・・」
マサヒコの口撃を免れられないとぼんやりした意識で悟ったアヤナは、声を漏らさぬよう手で口を押さえる。
が、そんなことをされたら無理にでも声を上げさせたくなるもの。
マサヒコは耳の中や耳の裏側を、優しく、そしてときには激しく舌で責め立てる。
執拗な敏感な場所への愛撫。
アヤナの息は荒くなり、口元を覆う指の隙間からは押さえきれない甘い声が漏れる。
「小久保・・・くん・・・はぁ・・・もう・・・んんっ!」
いつもの彼女とは似ても似つかない細い声。彼女の瞳は揺れ、目元には雫が滲んでいる。
性感帯を責められ続け、そろそろ限界なのだろう。
「分かったよ。これで、最後」
そう言ってマサヒコは最後にアヤナの耳たぶを甘噛みした。
「〜〜〜っ!はああぁああっ!!」
限界まで耐えたダムを決壊させるのはそれで十分だった。
マサヒコの最後の口撃にアヤナは身体を弓のように反らす。
ぐったりと身をベッドに沈めたアヤナは荒い息を吐きながら虚空をぼんやりと見つめた。
「大丈夫か?」
「はぁ・・・はぁ・・・・・顔・・・」
アヤナの言葉にマサヒコは自分の顔に手を這わせた。何か付いているのだろうか。
しばらくすると少し息遣いが落ち着いたアヤナが、マサヒコの顔にそっと手を伸ばす。
そしてマサヒコの頬を力なくつかみ、そしてまた力なく横へと引いた。
「大丈夫って言ったときの顔・・・緩んでた。趣味悪いわよ」
少し赤い顔で目元に涙を浮かべたまま、ジト目でアヤナはマサヒコを睨みつける。
「そんな顔してたか。でもお前が悪いんだぞ。今のお前が凶悪すぎるから」
「凶悪?」
「あんな声出して、あんな顔して。その、なんだ・・・可愛すぎる」
「か、可愛すぎるって・・んんっ!?」
赤い顔で何かを言おうとしたアヤナの口を、マサヒコ自身のそれで塞ぐ。
唇を離し、今度はキスを唇から下の方へと落としていく。
紅潮している顔から首筋へ。首筋から鎖骨へ。そして鎖骨から胸元へ。
「あっ!・・・っはぁ・・・んんっ!」
「ここ、また大きくなったな」
手に収まりきらない乳房にマサヒコは手を這わせた。豊満な果実の上を彼の手が蠢く。
「小久保君は・・・んっ・・・大きい方が・・・好き?」
「嫌いって言っちゃ嘘になる。お前は・・・コンプレックスって言ってたけど」
「うん・・・でも小久保君が好きなら、自分でも好きになれそう・・・ねぇ・・・もっと、して?」
「そう。わかった」
マサヒコは口でアヤナの胸を味わい、その片割れを手で弄んだ。ねぶり、揉みしだき、つまむ。
アヤナはマサヒコに責められる度、甘い嬌声を上げ、身をよじらせる。
「ふぁっ!・・・んんっ・・あっ・・はぁぁっ!」
アヤナの胸を這っていた手は、ゆっくりと彼女の滑らかでしまっている腹部を滑っていく。
そしてその手は少し薄めの茂みにさしかかり、更に花弁へと伸びていった。
「はあぁ・・・んっ!こくぼ・・・く・・ん・・・そこ・・・っ!」
新たに触れられる場所への快感に、アヤナは熱い息を漏らす。
マサヒコは彼女の入り口を愛撫し、そして人差し指をその中へと侵入させる。
十分に潤いを湛えた肉壁は、一本しか入れていないというのに随分ときつい。


「若田部のココ、すっごい狭いな」
「だって・・・んっ!・・・3年・・・ぶり・・・はぁ・・・だもの・・・」
「3年って・・・あれ以来してないのか」
「そう・・・よ・・・っはぁん!・・・そっちは・・・ん・・・昔より・・・ふぁあ・・・慣れて・・・んっ!」
「慣れてるって感じるんなら・・・あれだ、独学の成果。俺も3年ぶり」
「そっ・・・か・・・」
「でも、俺もそろそろ限界。そろそろ、いいか」
指で蜜があふれるアヤナの膣内をほぐしながらアヤナに尋ねる。
アヤナは漏れそうになる声を抑えながらこくりと頷いた。
「それじゃあ・・・ゴムとってくる」
「・・・今日・・・・大丈夫よ?」
「でも万が一ってこともあるし・・・」
「もう・・・何から何まで言わせないでよ」
困り顔のマサヒコにアヤナは呆れたような、それでいて穏やかな微笑を向ける。
「私、ずっと待ってたんだから・・・今夜は・・・今夜だけは、小久保君をそのまま感じたい」
そう言ってアヤナは腰を上げようとしたマサヒコの腕を引っ張った。
マサヒコはその手を解いてベッドを降りることも出来たが、あえてそれには逆らわなかった。
アヤナの願いは彼女自身の願いであると同時に、マサヒコの本当の願いでもあったから。
「じゃあ、いくぞ。痛かったら我慢するなよ」
トランクスを脱いでアヤナの入り口へ自分のものをあてがい、マサヒコは最後の確認をとる。
アヤナは多少の不安が顔に表れていたが、こくりと顔を縦に振った。
それを合図にマサヒコは腰をゆっくり前へと押し出す。
彼の分身は熱をもった窮屈な肉壁を少しずつ、少しずつ前進させ、それを根元まで挿しこんだ。
「・・・くぅっ・・・・!」
「・・・若田部、全部入った・・・辛くないか?」
愚問と思いながらもそう尋ねる。固く瞑られた目元には涙が滲んでいる。
「はぁ・・・久しぶり、だから・・・でも、大丈夫・・・動いていいよ」
うっすらと目を開け、アヤナはぎこちない笑みを作る。
「・・・分かった。じゃあ、動くぞ・・・」
マサヒコは奥まで挿入した男根をゆっくりと引いた。膣内の襞が男根に纏わり、心地よい圧力を与える。
「はぁ・・はぁ・・・お前の中・・・すっごい熱くて・・・きつい・・・」
「んんっ・・・こくぼくんの・・・熱いのが・・あぁっ・・・私の、中に・・・」
マサヒコの分身がアヤナの中を何度も往復する。
その度に結合部から淫らな濡れた音が、二人の口からもれる熱い息が部屋に響く。
「はぁあ・・・ああっ・・・こくぼ・・・く・・・いいっ・・・!」
「はぁ・・・わ・・・わかたべっ・・・・!」
腰を動かすたびに2人の身体に快感が電気のように駆け巡る。
始めは苦痛に耐える声が混じっていたアヤナの声は、だんだんと快楽からくる嬌声に変わっていった。
マサヒコはアヤナの腰を抱えそのまま身体を起こさせ、座位へと移行した。
アヤナの豊かな胸がマサヒコの胸板に押し付けられる。汗ばんだ胸は吸い付くように2人の距離を縮ませる。
「ああっ!深いっ・・・こくぼ、くんのが・・・奥まで・・・」
アヤナはマサヒコの首に手を回し、自分の腰を上下させる。
彼女が腰を落とすたび、男根は膣の一番奥を突き立てた。
「わかたべっ・・・俺、そろそろ・・・」
「わ・・・わたしも・・・・っ!」
お互い限界を感じ、2人は一気にスパートにかかった。
唇を貪るように交わしながら、腰の動きを速めていく。
くちゅくちゅとつながってるところからの響きがより一層大きくなる。
アヤナの膣内はきゅうきゅうと男のものを締め上げ、射精へのカウントダウンを行う。
「わ、わかたべ!俺っ・・・!!」
「い、いいよっ・・・!きて・・・!」
「ああっ・・・んっ!!」
「あああっ・・・!!」
同時におとずれる絶頂。
身体をぴんと張ったアヤナの中に、勢いよく精液が吐き出される。
弓なりに身体を反らしたアヤナは、荒い息を吐きながらぐったりとマサヒコにもたれかかる。
マサヒコは自分に身体を預ける愛おしい存在を、両手でしっかりと抱きしめた。


「小久保君・・・ありがとう・・・」
生まれたままの姿のままの姿でマサヒコの腕の中にいるアヤナはぽつりとそう呟いた。
「・・・何のありがとうだ、それ」
「いろいろよ、気にしないで・・・」
そう言ったきり黙りこんでしまうアヤナ。それからしばらく経たないうちに彼女から定期的なと寝息が聞こえてきた。
マサヒコはその息遣いを聞きながら、ぼんやりと先ほどの言葉の意味を考えた。
ありがとう。3年前もベッドの上で囁かれた言葉だ。
アヤナがどんな思いで今のありがとうを言ったのかは知らない。彼女の心の中は彼女だけのものだ。
しかし、それは3年前と同じ気持ちではないことは分かる。
そして、その思いは自分にとって何にも変えられないものだといくことも。
「こっちの台詞だよ、全く」
苦笑を浮かべたマサヒコはそっと彼女の額にキスを落とし、穏やかな寝顔に囁いた。
「若田部・・・ありがとう」

「どうか妹さんと付き合わせてください」
マサヒコはテーブルの向かいに座る男、若田部シノブに深く頭を下げた。
ここは先週マサヒコとシノブが言葉を交わした喫茶店。
アヤナと結ばれた次の日、マサヒコはシノブを呼び出した。用件はもちろんアヤナのことだ。
シノブはマサヒコの言葉に驚いたのか、しばらく口を開かなかった。
マサヒコは目の前にあるテーブルを見つめながら自分に降りかかる言葉を待った。
どんなことを言われても、どんなことをされても決してアヤナは譲らない。
それがマサヒコの覚悟であり、それを示すのがこの対面の狙いだった。
「・・・・いいよ」
「えっ!?」
予想外の言葉に思わず顔を上げる。シノブは穏やかな顔のままコーヒーを啜っていた。
「そんなに驚くこと言ったかな?絶対君を認めないとでも言えば良かった?」
「いえ・・・その、そう言ってもらえると助かるんですが・・・」
「・・・ですが、何?」
「その・・・俺たちを別れさせようとしたんじゃないですか?」
「そんなこと言ったかな。アヤナのことを考えてもらいたい、とは言ったかもしれないけど」
そう言って涼しい顔でコーヒーを口に運ぶシノブ。そしてそれとは対照的に混乱しているマサヒコ。
確かにシノブの言ってる通りなのだが不に落ちない。シノブの真意がまるで分からない。
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあない。
マサヒコの思考が徐々に奇妙になりかかったとき、前方からクスクスと笑う声が。
無意識に俯いていた顔を上げると、そこにはおかしそうに目を細めるシノブの顔。
「ちょっと趣味が悪かったな。そんなに思い詰めた顔するなよ」
怪訝な視線を向けるマサヒコを見てシノブは小さく息をついた。
「君の言うとおり別れさせるためにあんな風に言ったんだけどさ。正直な話、俺としてはどっちでも良かったんだ。
おっ・・・と、言い方悪かったね。おいおい、そんな怖い顔するなよ」
ハッとしてマサヒコは気まずそうに視線をそらす。
自分たち(というよりアヤナ)がないがしろにされたと思い、無意識にそんな顔になっていたらしい。
「君ならさ、しっかり考えてくれると思ったんだ」
「えっ・・・?」
「別れるにしても付き合うにしても。君は妹との関係を真剣に考えてくれてると思うんだ。
それならさ、俺から言うことは何もないよ。
アイツのことを大事に思ってる君と、君のことを大事に思ってるアイツが決めたんだから」


そう言って目を瞑るシノブ。数秒後、目を開いた彼は、妹に似た真剣な面持ちでマサヒコを見た。
「最後にもう一度だけ。君の答えは、本当にそれでいいんだね?」
真っ直ぐと注がれる視線。マサヒコはそれを真っ直ぐに見返しはっきりとした口調で答える。
「はい。どんなことがあっても、若田部、いや、アヤナは手放しません」
「・・・マサヒコ君。妹を、よろしくお願いします」
深々と頭を下げるシノブ。彼の言葉は今までの言動で一番重みがあるように感じた。
マサヒコははい、とかみ締めるように呟いた。

「どういう風の吹き回しなのかしら?」
人通りもない夜道を歩くアヤナは、後ろから付いてくるマサヒコに後ろも見ずに話しかけた。
「初めて、よね。あなたからご飯食べに行ってもいいか、なんて言うなんて」
「そうか?別にいいだろ、そんなこと」
「来るなって釘を刺しておいたバイト先にまで来たのに?」
からかうような響きでそう言うと、マサヒコはそれは、などと言って口ごもってしまう。
照れたように困った顔のマサヒコを想像するアヤナ。
彼の気持ちは言わなくとも分かっている。彼女自身の顔も緩んでしまっているのだ。
コホンと小さく咳払いをし、アヤナは歩みを止めて後ろを振り返った。
マサヒコの足も自ずと止まる。両手に持っている買い物袋が小さく振り子のように揺れた。
「片方、持ってあげるわ」
「いいよ。そんな重いものじゃないし」
「いいから寄こす!」
そう言って無理矢理マサヒコの右手からアヤナは買い物袋を奪い取る。
袋を左手に持ったアヤナはマサヒコの右隣に並び、そっと彼の左腕に自分の腕を絡めた。
「っ!若田部!?」
「さ、帰りましょ。お腹減ってるんじゃないの?」
心なしか無邪気な微笑を浮かべるアヤナ。
マサヒコは見慣れない彼女に一瞬驚いたが、すぐに優しげな笑みをアヤナに返した。
「・・・そうだな。少し急がなくちゃな」
足を踏み出すマサヒコとアヤナ。言葉とは裏腹に、歩みは先ほどよりも遅い。
が、2人は何も言わなかった。お互いの温もりを感じながら、ゆっくりと電灯が照らす夜道を往く。
ほとんど同じなようで、しかし確実に変わった2人の距離。
彼らの影は電灯の明かりがなくなるまで、アスファルトに重なった姿を映し続けていた。

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