作品名 作者名 カップリング
「月下美人〜鳴り響け、リンコのエロス!〜」 アカボシ氏 リンコ×マサヒコ

俺、小久保マサヒコ十八才、英稜高校三年生。高校最後の夏休みを満喫している。
だけど今は補習の帰りで、部活の練習で賑やかな校庭で人を待っている。

あれから既に三年が過ぎ、皆と会う機会が殆どなくなった。中学の卒業祝い以来、全員が揃った
ことは一度しかない。
 濱中先生も中村先生も社会人で忙しい身だし、若田部が帰って来るのは多くても年二回。
ミサキは幼馴染でご近所だから顔を会わせるが、聖光女学院は遠いので登下校は別。毎日大量の
課題を出され、遊ぶ時間もないらしい。ただ一人、あの頃と変わらず俺の交友範囲内にいるのは…

「小久保く〜ん、待った〜?」
 ばるんばるん、と胸を弾ませて走って来る…いや、ばいーんばいーん?ゆっさゆっさ、かもしれない。 
とにかく、3年間で急成長を遂げた的山リンコだけだった。

 腰まで届く長い黒髪、ピンクのミニスカートからスラリと伸びた長い足。風が吹くたびに視線がそっちに引き寄せられて困る。水色のキャミソールからは、80を越える胸の谷間が惜しげもなく披露されて
いて、やっぱり目のやり場に困る。私服登校してもいいからって、これはないと思う。
 そして、170cmを越えた俺とそう変わらぬ身長。顔全体のバランスも変わり、丸っこさがなくなって
大人びた印象を与える。何なんだ、この変わりようは。的山のお母さん、こんなにスタイル良くなかったぞ。突然変異か?
 まさかコイツが、師(中村)をも上回る逸材だとは予想できなかった。大器晩成、とでもいうのだろうか。
 天下一武道会にやってきた悟空は、ブルマの身長越えてました、みたいな。そんな感じ。
 毎日顔あわせてる俺でさえ、この急成長ぶりには驚かされるのだ。滅多に会えない若田部に
至っては、尚のことだろう。
 
 あれは去年の夏、一年ぶりに若田部が帰ってきた時の事だった。空港に俺たちが若田部を迎え
に行ったとき、中村が的山にメイクを施してチューブトップと短パンを着せ、
「アヤナ、こちらリンコのお姉さんのランコさん。」←中村
「初めまして、リンコは今日都合がつかないので代理で来ました。」←的山(声低め)
 なんて二人がふざけてたら、若田部が本気にしちゃったから大変だった。
 若田部が信じているのをいいことに、2人はそのまま嘘を通した。二時間程してからネタばらししたが、若田部はそれまで微塵も疑っていなかった。
 そしてその夜の飲み会で、俺は腹を抱えて笑った。
「リンコの姉だからランコなんて名前で信じるか?じゃあリンコに妹いたらルンコかよ?」
 酒も入ってたせいもあるが、我ながらこれは大人気なかった。大人じゃないけどさ。
 アルコールで痛みが鈍ってる俺は殴られながら笑い続けた。フリッカージャブで頬が腫れ、狭くなって
いく視界。殴っても殴っても笑いを止めることが出来ないことに、より一層怒りを増す半泣きの若田部。
 そして俺は、チョッピングライトで意識を刈り取られた。
 



「いや、全然。」
 的山と一緒に参考書を買いに行く約束をしたのがほんの数分前。買い物の後は、俺の家で
夏休みの宿題をやる予定だ。
 俺ら二人とも成績は中の上程度だから、もっと頑張らないと志望校に行けないかもしれない。
「そのセリフ、なんだかデートの待ち合わせみたいだね。」
「さっきまで同じ教室にいたじゃねーか。それに、只の買い物だろ。」
 気がつくと胸に目がいってしまうので、そっぽを向く。てかコイツ、なんでつけ乳首してんだよ…
コイツのせいで、周囲の男子がしばらく席をたてなかったからな。机に胸が乗ってたしさ。
 俺の顔を不思議そうに見た的山は、自分の胸を見てあぁ、と納得した。
「あ、コレ?」
きゅっ
「ちょ、つまんで見せなくていいから!外せよそんなの!」
「無理だよ、本物なんだから。またブラが合わなくなって、いいサイズで好みのが見つからないの。」
 やべ、顔がにやけてきた。伸びていく鼻の下を必死に戻す。
「うそだよな?」
「そう思うんなら、触って確かめて見る?私が声を出したら本物だよ?」
 ぐいっと胸を突き出してくる的山。あ、鼻血出そう。
「真昼間から公衆の面前でそんな事するか!つーか、ニップレスくらいしろ!!」
 後ずさる俺を見て、的山がにへら、と笑って近づいてきて…
「それって、夜に二人っきりならOKって事だよね?」
 なんて、ふざけた事を耳元でのたまった。鼻から出る予定だった血液が、いざ鎌倉!と言わんばかり
に下半身に集中した。
「いいから行くぞ!」
 とにかく俺は逃げ出した。ポケットに手を突っ込んで、自己主張するアレを押さえつけながら。

 普段からこの調子で、精神衛生上非常によろしくない。昔の的山は意図せずしてボケをかまして
くるだけだったが、今では中村並のエロボケも狙って織り交ぜて来るようになった。
 高校三年間ずっと同じクラスで、お互いに恋人はいなかった。というのも、周囲の人間は
俺と的山が付き合っていると思っているからだ。だが、それも仕方のないことだ。
「好きだよ、小久保君。」
「わーってる。俺もお前のこと好きだから抱きつかないでくれ。」
 なんてやり取りを日ごろから繰り返しているのだから。



 参考書を買い、すぐに俺の部屋で勉強に取り掛かった。
 一人より二人の方が勉強がはかどる。はかどりすぎて、二人とも時間の感覚を忘れていた。
とっぷりと日は暮れ、既に九時。軽めの夕飯を食べた後、的山を家まで送っていくことにした。
「リンちゃん、今日は泊まっていけば?マサヒコの部屋でよければ、だけど。」
 母さんが半笑いで的山を引きとめる。
「あ、いいんですか?お義母さん。」
「よくない。それと、義をつけるな。」
「せっかくですけど、今日は帰ります。私の家、両親がデートで誰も居ないんで…」
 頬を赤らめるな。てかお前の両親、ホント仲睦まじいよな。
「あらあら、大チャンスじゃないの。じゃあマサヒコ、また明日ね。お赤飯炊いて待ってるから。」
「朝帰りなんかしねーよ!母さん、頼むから黙っててくれ!!」
「あんた達が大人の階段上ってる頃には、こっちも夫婦水入らずで…」
「俺は弟も妹も要らんからな?」
 一応釘をさして、俺は的山の手を掴んで玄関から外へと逃げ出した。俺達の背に母さんが叫んだ。
「寝る時は、火の元と戸締りの安全確認忘れないこと。あとリンちゃんの安全日の確認もー」
 聞こえない、俺には何も聞こえない。
「今日は大丈夫な日ですからー。」
「答えんなよ!」

 雲ひとつ無くて、そこそこ綺麗な星空。夜道を照らす満月の下で、眠くて足取りが覚束なくなった
的山を背負って歩く。背中に、それはもう柔らかいものの感触が。
「ずぅっと前にもこんな事あったね。今は巨乳だからおぶってて楽しいでしょ?」
 いや、むしろ辛い。耳に息吹きかけるなってば。鎮まれ鎮まれ俺の如意棒。
「お前がコンタクト失くして、家まで連れてったんだっけな。あれ以来、コンタクトはしてないのか?」
 胸の事は鮮やかにスルー。
「んー、何度か試して見たけどね。私、よく居眠りするじゃない?目の裏に入って痛くてさ。」
「お前らしい理由だな。」
「小久保君は、コンタクトにした方がいいと思う?」
「俺は…このままでいてほしいかな。」
 これ以上、変わっていってほしくない。面影がなくなっていくようでイヤだ。
「そう…」
 俺の返事を聞いた的山は、何かを言おうとして止めた。眠ってしまったのかもしれない。
的山の家に着くまでの間、俺達は一言も喋らなかった。




 的山家に到着。鍵を開け、的山の部屋まで一直線に向かう。電気もつけずに部屋に入り、起こさない
ようにそっとベッドにおろす。が。
「少し寝たら、眠気覚めちゃった…」
 的山は、起き上がってベッドに座った。とろんとした目でこっちを見る。
「それでも、もう寝たほうがいい。」
「そうだね、今日は頑張ったもんね。でも、家に一人だけってのは怖いな…」
 よせ、そんな目で俺をみるなよ。俺に泊まれというのか。
「あー。お前が眠くなるまでなら居てやるよ。」
 それくらいならいいか、と的山の隣に座る。
「ん、ゴメンね…」
 とん、と俺の肩に頭を預ける的山。暗いところで2人きりだと、なんか変な気分になってくる。
「気にすんなよ。友達だろ?」
「これからも、ずっと?」
 的山の手が、俺の手に触れた。まずい、息が上がってきた。
「あぁ、ずっと友達だ。」
「そう…じゃあやっぱり、」
 突然視界が反転した。気付くと俺は、的山に組みふされていた。
「もう我慢できないや。」
 カーテン越しに差し込む淡い月光の中。深い哀しみを携えた瞳で、射抜かれた。

「…え?」
 沈黙。月明かりの下、的山の肌は蝋人形のように白く照らされて、今にも壊れてしまいそうな
儚さが漂っていた。
 なんでこんな事をされたのか。そんな当たり前の考えにたどり着くこともなく、的山が月の精霊の
みたいだ、とか場違いでメルヘンチックな事を考えていた。
 動けない俺の目を見つめたまま、的山は眼鏡を外した。
「友達じゃ、イヤなの…」
 俺の頬に、震える手が添えられる。顔にかかる髪を指先で除けて、的山の顔が近づいてくる。
ぎりぎりで一旦止まり、体温、吐息、香りが生々しく俺を襲う。
「好き、マサヒコ君。」
 瞳を閉じて触れた唇の柔らかさが、俺の頭をショートさせた。
「まと、やま?」
 かろうじて言えたのはそれだけ。早鐘のように波打つ心臓は、いつ破裂してもおかしくない。
「…いい加減、名前で呼んでくれてもいいのに。初めて会った時から同じクラスで友達なんだからさ。」
 唇を離し、俺の腰の上に座った的山は、苛立ち混じりで独り言のように言った。
「あんなに一緒だったのに、マサヒコ君は私を見てくれない。」
 確かに俺は、目を逸らしていた。どんどん女らしくなっていく的山を、異性として見ないように。
「一昨年の夏も、去年の冬も、修学旅行の夜も。私はもっとマサヒコ君に近付きたかったのに。」
 これ以上親しくならないように、一定の距離を保つように。あの頃の関係のままでいられるように。
「私が何回『好き』って言っても、本気にしてくれなかった。『分かってる、俺も的山の事好きだ。』
なんて返事ばかりで、なんにも…なんにも分かってないくせに!!」
 友達として、だと思っていた。いや、思いたかったんだ。
「本当にただの一度も、私が本気で小久保君の事好きなんじゃないかって、思わなかったの?前は、『胸が小さいから』『スタイル良くないから』なんて自分を誤魔化してたけど…私じゃ、どうやっても
マサヒコ君を振り向かせられないの…?」
 俺の頬に涙が零れ落ちる。的山は嗚咽を漏らして、俺の胸に顔を埋めた。



「ゴメンな…リンコ。」
 初めて、的山を名前で呼んだ。
「ふぇ?」
 涙でくしゃくしゃになった顔を向けるリンコ。
「俺さ…この関係が壊れるのが怖かった。皆疎遠になって、あの頃の記憶が思い出になって遠ざかっていくのが怖かった。時間と共に、環境も関係も移り変わっていくのが怖くてしょうがなかったんだ。」
 泣きじゃくるリンコの背中に腕を回した。一瞬強張ったが、構わずに抱きとめる。
「楽しかった思い出にしがみつこうとしていた。体がいくら成長しても、中身もお互いの関係も変わらないと、自分に言い聞かせていた。でもさ…」
 体を起こして腕を放し、向き合う。
「俺、リンコの事好きだ。ずっと前から、異性として好きなんだ。」
 異性として意識しないようにしていたってことは、強く意識していたってことだ。
「じゃあ…じゃあ、Hしようよ…」
 涙を手の甲でふき取るリンコ。
「なんだそんな事なら…ってえええぇぇ!?」
 いきなりそれか?
「お互いに好きなら問題ないでしょ?お義母さんから許可(?)は出てるし、私達、結婚だってできる年齢なんだから。私をずっと待たせた責任、とってくれるよね?」
「…お前、初めてなんだよな?」
「怖気づいた?」
「いや、俺も初めてだからさ、お前の事気遣う余裕なんてないと思うぞ。」
「私に欲情して、ケダモノみたいになっちゃうの?」
「多分、そうなる。」
「それはそれで嬉しいかな。マサヒコ君をそうさせる魅力が私にあるってことでしょ?」
「いや、でもさほら、なんだ。」
 理性を総動員して、この流れを阻止しようとする。総員第一種戦闘態勢!
「…抱きたいの、抱きたくないの?」
「抱きたい、です…」
 俺の理性は、光子力研究所のバリアのようにたやすく砕けた。せめて3ターンは持てよ!
「うん、正直でよろしい。」
 リンコの手が、俺の股間に伸びる。
「もうこんなに硬くして…今楽にしたげるからね。」
 またしてもリンコに押し倒される。
「おい、ちょっと…」
「お願い。少しだけ私の好きにさせて。」
 俺の返事も聞かずに、唇を重ねてくる。ぬるり、と柔らかい舌が俺の口の中に入ってきた。
唾液を送り込まれ、俺もまけじと送り返す。舌と舌をこすりつけ、唇で唇を噛む。
 ディープキスだけで手一杯の俺に対し、リンコは片手だけで器用に俺のベルトを外し、ファスナーを
おろしていく。一方的に脱がされ攻められ、まるで俺が襲われてるようだ。
 俺の逸物をとりだすと、リンコは嬉しそうにそれを手にした。
「凄…本当にこんなに固いんだ。でも先っちょはぷにぷにしてる…あ、もう何か出てきてるよ?」
「あんまじっくりと見られても恥ずかしいんですが…」
 ひんやりとした手であちこち触られ、否応なしに硬度が増していく。
「ね、ね、舐めてもいい?」
 好奇心に目を輝かせ、既に舐めようとしているリンコ。
「されるがままってのは嫌だから、俺もお前の舐めたい。」
「え、96したいの?恥ずかしいよ…」
 69だろ。96じゃ背中合わせじゃねーか。
「恥ずかしいのはお互い様。ほら、早く。」
「う〜」
 口を尖らせて、おずおずとスカートとパンツを下ろす。あ、俺が脱がせたかったな…
 キャミを引っ張って股間を隠すリンコ。やべ、すっげぇ可愛い。



「あんまりじっくり見ないでね…」
 リンコが、俺の顔をまたぐ。熱気と湿気と、女の匂いが漂う。薄暗くてよく見えないが、もう濡れている
ということだけは分かった。
「明かりつけ」
「絶対ダメ。」
 ていいかな、って言おうとしたんだけどな。そんな泣きそうな顔しなくてもいいと思うんだ。
亀頭に、ちろちろとリンコの舌が這う。俺も、リンコの秘部に舌を這わせた。
 暗くてよく分からないから、指と舌でまさぐりながら愛撫をする。
「あんッ…」
 小さく声をたてるリンコ。今まで聞いたことのない、艶っぽく湿った声。それだけのことで、ギンギンに
いきりたってしまう。
 割れ目にそっていくと、突起にぶつかった。唇と舌でそれを撫ぜると、リンコが息を荒げていくのが
分かった。
「あむ、んむ…」
 かぽっと亀頭を咥えこまれ、柔らかで温かい粘膜に包み込まれる。根元を指でしごきたて、喉の奥
まで飲み込むリンコ。
「お前、どこでそんな事覚えたんだよ…」
 気をぬくと射精してしまいそうな快感をこらえながら、一心不乱にフェラをするリンコに聞く。
「…中村先生。実技指導もしてくれたよ?」
 中村ァァァァァァっ!あんたリンコに何教えて…でもグッジョブ!!
今にも射精してしまいそうだが、やられるだけってのも気に食わない。俺はリンコの割れ目に人差し指
を沈めた。
 心地よく締め付けてくる、ざらざらの肉の壁。こじあけた隙間からとろとろと溢れてくる愛液を、
零さないように啜る。
 早くこの中に突き立てたい。熱くうねるリンコの肉壁の奥で果てたい。じゅぷじゅぷと音をたて、
内側から愛液をすくいとる。
「はっ、あ…音たてないでよ、えっち…」
 リンコが再度口に含んだ。亀頭だけを咥え込み、雁首の裏を執拗に攻めてくる。あっという間に、
熱いものが腰の奥からこみ上げてきた。
「だめだ、出るっ!」
 堪えきれずに、俺はリンコの口の中に精液を放った。
「きゃあっ!?」
 口の中に出され、顔を離したリンコに精液が降りかかる。
「んふぅっ…」
 目をつぶってもう一度逸物を咥え、吹き出る精液を口で受け止める。
…びゅぶ、びゅぶぶ、びゅるるる…
 ようやく射精が止まった。ぢゅうう、と尿道に残った精液を吸い取り、先端から白い糸を引かせて
リンコは逸物から口を離した。
「ごめん、大丈夫か?」
「むー…」
 振り向いたリンコは、涙をいっぱいにしてはぁはぁと口を半開きにして、苦しそうに息をしている。
青臭い匂いにむせ返りながら、精液を飲むかどうか迷って、結局飲み込んだ。
「んっ、むぅっ…」
 子供が嫌いなピーマンでも食べるかのような表情。
「無理して飲まなくてもいいのに…」
「飲んだほうが男の人は喜ぶって、聞いたから…」
「そりゃ、そうなんだけど。」
「ゼリーみたいになってて喉に絡むよ、これ。目に入って痛いし…顔洗ってくるね。」
 とてとてと、足音をたてて洗面所に走っていった。



 向こうから、うがいの音と水音が聞こえる。既に回復した逸物をもてあまして、一日千秋の思いで
リンコの帰りを待ちわびる。
キィ…
 ドアの開く音に振り返ると、キャミソール一枚のリンコが立ち尽くしていた。
「…どうした?」
「ん、なんかさ…顔洗ったら急に頭が冷静になっちゃって。」
 胸の前で手をもじもじさせて、恥ずかしそうに上目遣いでこっちを見る。
「怖気づいた?」
「ううん、怖くなんかないよ。ただ、これからマサヒコ君に抱かれるんだなぁって思ってさ。」
 何やら感慨深げに目を閉じるリンコ。
「下駄箱の前で初めて話した時は、こんな関係になるなんて思ってなかった。」
「それは俺も同じだ。」
「こんなに待たされるとも思ってなかったけどね。」
 苦笑いをしてこちらに歩いてくる。
「悪かったよ。」
「気にしてないよ。こうして、私の望みは叶うんだから。」
 俺の隣に座り、ついばむようにキスを交わす。
「今度はマサヒコ君の番。好きなだけ中に出していいよ。」
 するりとキャミを脱ぎ捨て、リンコは腕で胸を隠した。俺も服を全部脱ぎ、リンコをベッドに押し倒す。
お預けをくらっていた犬のように息を荒げ、リンコに覆い被さる。
 いきりたつ生殖器を入れようとするが、ずるりと割れ目に沿って滑った。
「あれ?」
 二度、三度と入れようとするが、失敗する。
「もっと下。ほら…」
 花びらを両手で外側に引っ張り、リンコが俺を導く。月明かりの下で露になる、鮮やかに充血する
サーモンピンクの粘膜。その綻んだ花びらの中に、剛直を突き立てた。
「くうぅっ…!」
 あごを仰け反らせ、体を強張らせるリンコ。きつく締め付けてくる膣内を力任せに押し貫いて、純潔の
証を躊躇わずに突き破った。
「っっ!!」
 ずん、と奥まで突き当たり、生殖器全体が肉の筒に包み込まれる。湿った粘膜がひくひく蠢いて、
俺に快楽を与えてくる。
「ひぅ…は、あぁ…」
 シーツを強く握り締め、一生懸命に呼吸を整えようとするリンコ。それすら待てずに、ただひたすら
杭打ち機のように腰を打ちつける。
「うぁっ、好き、好きだよ、マサヒコ君…!」
 痛いとも、やめてとも言わない。俺の行為を受け止め、必死に耐えている。
こみ上げる射精感を堪える。まだ出すのはもったいない。俺を狂わせるこの体を、もっと味わいたい。
 まずは、腰の動きを止めて唇を奪う。ひりつく喉を、リンコの甘い唾液で潤した。
次に、自重で潰れた胸。絞り上げるように揉み、乳首と乳輪ごと口の中に突っ込んで甘噛みする。
「あぁん、おっぱい食べちゃダメ…」
 ようやく息が落ち着いてきたのか、幾分か安らいだ声で囁く。
 乳輪を舐めまわし、汗に濡れた膨らみの頂点で充血している乳首を咥えて引っ張る。
我ながら、ケダモノ以外の何者でもないと思う。
「そんなにしたら、乳首伸びちゃうよぉ…」
 口を離すと、舐め回した跡がてらてらと月明かりを反射した。俺も大分落ち着いてきたので、
腰の動きを再開する。



「お腹の中で動いてる…」
 腰を持ち上げて浮かせ、リンコの中をうねるように掻き回す。
みっちりと隙間なく絡み付いてくる肉ヒダ。熱い液体が染み出し、シーツを濡らす。すぐにこみ上げて
くる射精感。それを、腹の奥に力を入れてやりすごす。
 快楽に流されまいとするのは耐え難い苦痛で、頭の中の血管が切れそうになる。
 愛液が白い泡となって、陰毛に張り付く。甘酸っぱい匂いは、毒のように俺の神経を侵していく。
腰が勝手に踊りだす。神経がチリチリと灼けるようだ。
「あん、あん、あんっ!」
 リンコの声が1オクターブ上がった。苦痛に喘いでいるのか、快楽に悶えているのか、俺には区別
がつかない。
 花弁を押し広げて、ざらざらした所に亀頭を擦り付ける。茂みをこすりつけ、クリトリスを押しつぶす。
「リンコ、リンコ、リンコ…っ!」
 うわごとのように繰り返し、リンコを強く抱きしめる。気持ちよすぎて眩暈がする。冷たい素肌、熱い
胎内。熱泥の中を掻き分けて、愛液に塗れた剛直を深く繋げる。もう限界だ。
「イきそう?」
 俺の様子を察したのか、リンコが耳元で囁く。俺はコクコクと頷く。
「いいよ。たくさん中に出して。」
 深く口付けをして、ラストスパートをかける。激しく腰を打ちつけると、拍手のような音が響きわたった。
リンコの手が俺の背を抱きしめる。俺はリンコの頬に手を添えて、舌を絡める。
 そのまま、熱くたぎる精液を膣内にぶちまけた。
…どびゅ、びゅーっ、びゅぶぶぶ…
「マサヒコ君のが、どくどく入ってくる…」
 がり、と背中にツメが立てられる。リンコの中を精液が白く汚していく。自らの精液でぬめる膣内に、
さらに何度も突きこんだ。イったばかりで敏感な亀頭を酷使して擦りつけ、再度絶頂に達する。
…びゅくん、ぶじゅる、ごぽぽぽ…
「あ、凄い、びくびくしてる、お腹いっぱいになっちゃう…」
 リンコの上にのしかかったまま、俺は力尽きた。セックスってこんな疲れるんだ…

「重いよ、マサヒコ君。」
「あ、悪い。」
 引き抜いて、リンコの横に寝る。間近に顔をつき合わせているのに、お互いに気恥ずかしくて目を
合わせられない。リンコと一線を越えた。俺達は、友達じゃなくなったんだ。
「ねぇ…腕枕してよ。」
 上目遣いで頼んでくるリンコ。腕枕をしてやると、嬉しそうに微笑んだ。
「あのさ、マサヒコ君。一つ聞き忘れてたんだけど。」
「何を?」
「私の恋人になってくれるんだよね?」
「当たり前だろ。」
「良かったー。じゃ、早速中村先生にメールで報告しなきゃ。」
「それは止せ!」
 そんな他愛もないことを話しているうちに、夜は更けていった。



朝、目が覚めると既に9時。リンコはまだ寝ていた。尿意を催して、俺は服を着てトイレに向かった。
そろそろ親御さんも帰ってくる頃ではないだろうか。そんな事を考えながら部屋に戻った。
「うっ、ひっく、えぐ…」
 ベッドの上で、何故かリンコが目を真っ赤に腫らして泣いていた。昨日から泣いてばかりだ。
「どうかしたのか?どっか痛むのか?」
「起きたらマサヒコ君いなかったから…」
「トイレ行ってただけだってば。勝手に帰るわけないだろ?」
 昨夜もそうだったが、寝起きは感情が不安定なのかもしれない。
子供みたいだな、と思いながらもリンコの頭をくしゃくしゃ撫でる。その時、何か不穏な空気を感じ取り、
後ろを振り替えった。
 そこには唸り声を上げて目を光らせ、むき出しになった牙の隙間から湯気みたいなものを出し、
直立二足歩行でこちらににじりよるナナコの姿。
「■■■■■■ーーーーー!!」
 文字に表現できない声で俺を威嚇するナナコ。完全に狂化してます。俺、恐怖で声も出ない。
「ナナコ?マサヒコ君噛んじゃダメだよ?」
「なんでナナコがこんな所に!?」
「私が泣いてたから、慰めに来てくれたんだよ。」
 昨日は外に繋がれていたと思うんだが。どうやってここに来たんだ。
「いや、これはどうみても、主人を泣かした野郎のケツに噛み付きに来たって顔だぞ?」
「えー、違うよね?ナナコ。」
 よしよし、とナナコの頭を撫でるリンコ。
「わぅん。あぉん。」
「ほら、違うって言ってる。」
「お前、ナナコがなんて言ってるのかわかるのかよ…」
「お尻じゃなくて、キ○タマ狙いだったって。」
「余計悪いわ!」
「あははは。ナナコ、私は大丈夫だから戻って。」
 楽しそうに笑うリンコ。どうやら俺はからかわれたらしい。でもリンコならもしかして、犬と話せるかも
しれない。微妙に疑わしい…
「わぉん。きゅーん。」
 ナナコが俺に向かって何か鳴いた。
「今度はなんだって?」
「『アンタの事はリンコからよく聞かされてるし、私も何度も顔会わせてる長い付き合いだから安心だと
思うけど、もし今度リンコを泣かすような真似したらアタイが許さないよ。』だって。」
「待て!そんな長いセリフだったか!?」
 つーか、ナナコの一人称はアタイなのか。アネゴ?確か俺の記憶だと、ナナコは夜寝るときに
リンコの布団に潜り込んで来る寂しがりやだったはずなんだが。
 いや、リンコが急成長したように、ナナコも急成長したということなのだろうか?
「マサヒコ君、どうかした?」
「いや、なんでもない。それより、俺そろそろ帰ろうと思うんだ。」
「朝ごはん食べてかない?」
 その時、満面の笑みを浮かべた母さんの顔が頭に浮かんだ。
「…母さんが赤飯炊いて待ってる。」



「ねぇ、マサヒコ君。」
 玄関まで見送りにきたリンコが、靴を履こうと屈んだ俺に話しかけてきた。
「どうした?」
 振り向こうとした俺の背に、リンコが抱きついた。
「私達の関係も、いつかまた変わる日がきちゃうんだよね。」
「リンコ…」
「マサヒコ君とこうなれて幸せだけど、手に入っちゃうと無くすのが怖い…」
 腕に力が込められる。昨日までの俺と、同じような事を考えている。
「リンコ。時が経って環境も関係も変わっても、変わらないものだってある。色々なモノが思い出になって遠く感じられても、無くなる訳じゃない。それにさ…俺達、近づく方向に変わる事だってできるんだから。」
 リンコの頬に手を添えて、肩越しにキスをした。

「それって、プロポーズ?」
 唇をはなすとリンコは、だらしない笑みを浮かべて俺の頬を指でつんつんつついた。俺も言ってて
恥ずかしいんだからからかわないでほしい。しかし、ホント変わり身早いな、コイツ…
「さぁ、なんかいったっけ?」
「えーっ。ちゃんと聞いたよ。ねー、お母さん。」
「ちゃんと聞いたわ、リンコ。」

「え゛?」
 ゆっくりと前を向くと、そこにはリンコのお母さんが、玄関の扉の隙間からこっちをみていました。
「お…母さん?」
「おはよう、小久保君。ところで、『義』をつけてもいいわよ?」
 にっこりと笑い、靴を脱いで上がるオカアサン。
「あれ、お父さんは?」
「今朝仕事の急用が入って、そのまま出勤。」
「あの…デートの服装のままですか?」
「そうだわ、背広持ってって上げないと。」
 そんな肝心な事に気付かないのは、血の成せる業なのか。
「それで、こんな時間にどうしたの?小久保君。」
「いや、それはその…二人で朝ジョギングしようってことになって…」
 お泊りしましたなんて言えないので、必死に嘘を取り繕う。
「あ、リンコの首筋にキスマーク。」
「そんな筈はっ!?」
 がばぁっ、とリンコを見る。勿論、キスマークなんぞついてはいない。見事に引っ掛けられた。
硬直する俺の横を、くすくす笑いながら通り過ぎるオカアサン。
「リンコ。今度、お父さんもいる時に夕飯にお招きしなさい。」
「はーい。」
 元気よく返事をするリンコ。
「…怒られると思ったんだがな。既に家族公認?」
「だって私、お父さんにもお母さんにも、マサヒコ君の話しばっかしてるから。」
「根回ししてあったのか。」
「なんかもう、近づく方向に一歩進んだね。そうだ、私もマサヒコ君のお母さんに挨拶しに行って良い?」
「もう好きにしてくれ。」
「うん、好きにするね。お母さん、私ちょっと出かけてくるねー。」
「鍵持ってきなさいよー。」
「大丈夫ー。行ってきまーす!」
 サンダルをつっかけて、元気よく外に飛び出すリンコ。俺も後を追って眩しい太陽の下に出る。
長い間足踏みしていた分、これから俺達はきっと忙しい毎日を送ることになるのだろう。受験落ちない
ように勉強しながら、目一杯恋人としての思い出をつくっていかなきゃならないんだから。
「マサヒコ君、私お腹すいたよー。」
「ああ、腹いっぱい赤飯食わせてやるよ。」
 まだ涼しい朝の空気の中。今日もきっと暑くなる、なんて思いながら、俺達はその一歩を踏み出した。

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