作品名 |
作者名 |
カップリング |
『今もあなたを感じれる』 |
REGNA氏 |
アヤナ×マサヒコ |
若田部アヤナは少し怒っていた。
時刻は午後5時を10分ほど過ぎたころである。
「まったく・・・自分から誘っておいて普通遅刻するかしら・・・」
本人がいないからと不満を口にしてみる。実際先ほどからちゃらちゃらした軽そうな男が何人も
声をかけてきていい加減頭にきていたところだった。
しかし、もし本人がここにいればこんな事は言えないだろう。今日が彼にとって・・・いや、私にとってもとても重要な日なのだ。少しくらい遅れても文句は言えない・・・
そんな感じで当てもなく立ち続けていると、彼――小久保マサヒコがこっちへと走ってくるのが目に付いた。
「おーい小久保くーん!こっちよー!」
改めて私を確認した小久保君は私が怒ってないと思って安心したのかゆっくりと歩いて近づいてきた。
「ゴメン、アヤナ。ちょっと例の用事が長引いちゃってさ・・・」
「ううん・・・いいのよ。だって・・・今日は大事な日だから・・・」
今日ばかりは私が遅刻を咎められるはずがない、例え小久保君がこのまま今日来なくても、私は笑って許せるだろう。咎めるなんて、そんなこと・・・できるわけがない。
「ああ・・・そうだな。」
「ええ・・・」
なんでだろう、これからデートだっていうのに空気が重い。それに小久保君は私を「アヤナ」って名前で呼んでいるし、二人っきりで会っているのだけれど、心ここにあらずって感じだ。
でも、それは私たちが付き合い始めてから毎年この日の決まりごとなのだ。おそらく小久保君は私が気づいていないと思っているだろう。でも、この日だけ小久保君の心が私ではない別の女性の所に行ってしまっているのことを私はひしひしと感じている・・・
「なあ、今日はどうしようか?何か食べに行くか?」
「そうねぇ・・・じゃあフランス料理でも食べに行きましょうか。もちろん小久保君のおごりでね。」
「なんだよ、この前も俺の奢りだったじゃんか。」
「こういうのは男性が奢るものよ。さっ、行きましょ。」
「・・・わかったよ、俺の負けだ。」
その後、私と小久保君はおいしいフランス料理(料理名は・・・思い出せない)を食べて、洋服なんかを二人で見歩いたりしながら、適当に時間をつぶした。
そんな事をしているうちにいい時間になってきた。
ふと、小久保君が立ち止まったところにあるのはいわゆるラブホテルの前、
「なぁ、アヤナ?その・・・ここで休んでいかないか・・・?」
「・・・ええ、いいわよ・・・」
「それじゃあ・・・」
そう言って私たちはホテルに入っていった、小久保君はいつも同じような台詞を言っているような気がしなくもないが、黙っておこう。
ホテルに入ると、まず私がシャワーを浴びに行く、浴室は部屋から見えるようになっているが、小久保君は決してこちらを見ない、初めてラブホテルに入ったときに私が禁止令を出したからそれを律儀に守っているのだ、もちろん小久保君が入っているときは私も見ないでいる。
だって・・・私だけ見たら不公平でしょ?
しかし、何度来てもこの雰囲気は肌に合わない、なんだか他人の部屋にいるような気がしてくつろげるものではない。やっぱりHするなら小久保君か私の部屋でするのが一番いいと思う。
小久保君のご両親とは中学校のころから何度も会っているし、特にお母様は私と小久保君の仲を取り持ってくれたといっても過言ではないので、もはや私たちは親公認の間柄となっている。
私がシャワーからあがると、小久保君は何か考え込んでいるようにうつむいていた、
「・・・小久保くん、シャワー空いたわよ?」
「!?・・・おっおぅ、わかった。」
私があがってきた事にまったく気づかなかったようだ、やっぱり小久保君の心は私を向いていない。
しょうがないのだ、今日は小久保君が大事な人を亡くした日で、その人を思っているのだ、私が太刀打ちできるはずはない。
・・・3年前の今日の出来事は、小久保君の心に深く刻まれているのだろう。それは私にとっても忘れられない出来事なのだから・・・
その日、私は何か妙に胸騒ぎを覚えていた。なにか大事なものが遠くなっていくような感覚、それを不思議に思っていると、お姉さまからの電話が鳴った。
「アヤナ?・・・今話せる?」
「ええ、どうかしたんですかお姉さま?」
「あのね・・・落ち着いて聞いて欲しいの。実は・・・」
そこから後の会話は覚えていない、気づいた時には学校を飛び出していた。
私は中学のときからのライバルだった、天野さんの家に向かった。
・・・そんな訳がない、彼女が死ぬ?ありえない。考えられない。あの天野さんが死んだ?あまりにも非現実的すぎる・・・。
嘘だと言って欲しかった・・・またいつものようなお姉さまの悪ふざけだと思っていた・・・でも・・・でも・・・彼女の家に天野さんの元気な姿はなかった。とても死んでいるとは思えない綺麗な顔をして、静かに眠っているように見えた、でも・・・彼女は息をしていなかった。
「ねぇ、天野さん・・・起きてよ・・・嘘なんでしょ?お姉さまの悪ふざけなんでしょう?おねがいだから・・・目をさましてよ!何とか言ってよ・・・」
それでも、彼女が目を覚ます事はなかった。私は、一瞬にして大切なライバル・・・いや親友を失ってしまったのだ・・・簡単に忘れられるわけがない。
私が家に着いたときには、お姉さまも濱中先生も的山さんもみんな揃っていた。的山さんは私と同じく泣いていた。濱中先生も泣いていた。いつもはふざけてばかりいるお姉さまも泣いていた。みんな天野さんを失った事を悲しんでいた。
そして小久保君は、私達よりも彼女との関係が深かった、幼馴染であった天野さんとは、中学を卒業するとともに付き合い始めていたのだ。小久保君のショックは私と比べられないほど大きいものだったろう、ただ天野さんの遺体の傍で泣いていた。このときの小久保君の気持ちは、
誰にも分からないだろう。幼少のころからの幼馴染で恋人を失ってしまったのだ、誰も簡単に声をかける事もできなかった。
そして天野さんのお葬式が終わり、お通夜が終わり、一周忌が過ぎたころ、私は小久保君のお母様と二人っきりで話をしていた。
「話って・・・なんでしょうか?」
「うん・・・実はね?うちのマサヒコの事なんだけど・・・」
「小久保君の?」
「ええ、あのね?単刀直入に言うと、マサヒコと付き合ってもらいたいの。」
「!?」
思わず飲んでいたコーヒーを噴出しそうになった。
「ケホッ、ケホッ・・・どうして私が小久保君と付き合うんですか!?」
「うん・・・ほら、あの子ミサキちゃんと付き合ってたでしょ?それであの事故で
ミサキちゃんを失った傷がまだ癒えてないみたいで何をやるにしてもてにつかないって
感じなのよ・・・でももうあの事故から1年たって、そろそろあの子には前に進んで欲しいのよ・・・お願いできないかしら?」
「でも・・・天野さんのご両親はいいんですか?」
「それもね、この話はミサキちゃんの親から言ってくれた事なのよ。『マサヒコ君には、ミサキの事だけに囚われないで前に進ん
で欲しい。きっとミサキもそれを望んでいるはずだから。』・・・ってね。それで、ミサキちゃんと仲のよかったあなたなら・・・と思ってね。」
正直、私は迷っていた。私は密かに小久保君のことが好きだった。でも天野さんと付き合うのなら、そのほうがお似合いだと思って思いを告げなかった。
だけど天野さんは死んでしまった。
・・・・・・天野さんに悪くないだろうか?
・・・・・・私なんかでいいのだろうか?
・・・・・・天野さんの代わりになんてなれっこない。
・・・・・・それでも、小久保君の光になりたい。
・・・・・・生きる意欲を持たせてあげたい。
・・・・・・ほかの誰でもない、この私が・・・
「・・・わかりました」
こうして、私と小久保君は付き合い始めた。もちろん最初は小久保君は彼女として見て
くれなかった。それでも、1年2年と付き合いが続いていくうちに、すこしづつ、ほんのすこしづつ、昔の小久保君に戻っていった。
「・・・ナ。・・・ヤナ!アヤナ!」
驚いた。いつの間にか小久保君はシャワーからあがっていたのだ。
「どうしたんだ?ボーっとして・・」
「うん、ちょっとね」
「?変なやつだな・・・」
「ゴメンゴメン」
謝って、小久保君に軽くキスをする。ベッドに横になり、小久保君が私の上に覆いかぶさる。
「アヤナ・・・キレイだよ。」
もう一度キス。今度は長く、お互いを味わうようなキス。私が舌を絡めれば小久保君もそれに答える。唇が離れると糸を引いているのが分かる。・・・なんだか恥ずかしい。
そのまま小久保君は首にキスをして、次は体に、キスされるところはどんどん下の方へ進んでいく・・・ついに小久保君の口が私の秘所に到達した。
「・・・小久保君、優しくね?」
「もちろん、わかってるよ。」
そう言って彼は笑顔になる、この笑顔に弱い。何でも許してしまえる・・・
小久保君が私の秘所に舌を入れてくる、
「んっ・・・・・・はぁっ・・・ぁん」
相変わらず彼の愛撫は上手い、自分でもどんどん濡れていくのが分かる。
「・・・濡れてきたな・・・アヤナ、入れても・・・いい?」
そういう小久保君のペニスはもう大きく勃起していた。
「うん・・・いいよ。きて・・・小久保君・・・・・・」
私の答えを聞くと、小久保君はまた私にキスをしてくれる。
「入れるぞ・・・」
私の秘所に小久保君のペニスが入ってくる。・・・きもちいい、私はこの瞬間の感覚が好きだ。小久保君と一つになっている。繋がっているのだと強く感じられるからだ。
「動くぞ・・・」
小久保君がゆっくりと腰を動かし始めるとそれと同じく私の中もペニスも前後する。
「ひ・・・ひあっ、んっ・・・はぁっ・・・はぁん」
小久保君が私の中で動くたびに私を淫らな感覚が支配していく・・・
決して嫌な感覚ではない、それどころか心地良いとも思えてくる・・・
「いっ・・・いいよ・・・んっ・・・小久保君、き・・・気持ちいいよぉ・・・」
「ああ・・・俺も・・・だ・・・」
小久保君の動きがだんだんと速く、激しいものになっていく。
部屋に二人の粘膜が擦れあう淫らな音が響き渡る。
「・・・っ出る!」
「っんぁ・・・わ・・・わたしも・・・イッ・・・イクゥゥゥゥッ!」
わたしが絶頂を迎えるのとほぼ同時に、小久保君はわたしの中で果てた。お腹が温かい・・・気持ちいい温かさだ。
そのまま私達は眠りについてしまった・・・
どれくらい時間が過ぎただろう、わたしは目を覚ましていた。小久保君はまだ眠ったままだ。
(やっぱり、寝顔もかわいいな・・・)
そんな事を考えていると小久保君が何か喋っている事に気がついた。
「・・・・キ・・・んな?・・・ミサキ・・・・ごめん・・・・・・」
(やっぱり・・・まだ小久保君の心にはまだ、天野さんがいるのね・・・)
きっと小久保君は自分でも気づかないところでずっと天野さんを求めているのだろう。もちろんわたしの中にも・・・・・・
みれば、小久保君はうっすらと泣いている、天野さんが忘れられないのだろう。きっと、夢で天野さんとの楽しい思い出を見ているのだろう。
(・・・うらやましいなぁ、こんなに思ってくれる人がいるんだよ?天野さん・・・)
声には出さずに天野さんに問いかける、きっと今も私たちを見守ってくれてるじゃないかなぁ?
あのね?理由は分からないけど・・・わたしはいつも天野さんの存在を感じるの・・・
・・・・・・天野さんは祝福してくれてるかな?
それは分からない、でも天野さんの存在が感じれる限り、天野さんは私達を認めていないんじゃないかと思うんだ・・・
きっと、天野さんを感じられなくなったとき・・・その時こそが、天野さんからの私達への祝福なんじゃないかとおもうんだ・・・
だから、わたしは頑張れるの・・・天野さんに納得してもらえるような女性になって、小久保君を幸せにするの・・・
・・・きっと・・・それがあなたへの最高の恩返しになると思うから・・・・・・・
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