作品名 |
作者名 |
カップリング |
『恋人たちのクリスマス……まであと一週間』 |
ピンキリ氏 |
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この時期になると、どこの商店街も赤と白とで彩られ、クリスマスソングが鳴り響く。
そう、あと一週間ちょっとで、サンタが皆の家にやってくる。
「ローソクは買い忘れてない? マサちゃん」
「ああ、大丈夫」
北風がぴゅうとアーケードを吹きぬけていく中、一組の男女が肩を寄せ合い、歩いていく。
栗色の髪の少女が天野ミサキ、そして収まりの悪いやや長めの髪の少年が小久保マサヒコだ。
二人が手に抱えている紙袋には、一週間後に行われるクリスマスパーティのためのツリー用電飾、
クリスマスキャンドル、クラッカー等がたっぷり入っている。
「まったく、皆で集まってパーティするのはいいけどさ、何で俺たちが買出ししなきゃならないんだろ」
「いいじゃないマサちゃん、中村先生も濱中先生も忙しいんだし」
銀行員の中村リョーコも、中学教師の濱中アイも、年末ということで仕事に追われる日々だ。
買出しに行けない代わりに、リョーコはパーティ費用を、アイは会場として部屋を提供することになっている。
「いや、別に今日じゃなくても良かったんじゃないか、って話さ」
「え?」
「だって、的山も若田部も別の用事で来れないってんだから」
「あ……」
ミサキは立ち止まった。
風が強く吹いてミサキのおさげをさらりと揺らす。
「どうした、ミサキ?」
「あ、あのね、マサちゃん……」
「?」
「今日、リンちゃんと若田部さんが来れないっていうの……嘘なの」
「え? 嘘って……何で?」
マサヒコはびっくりしてミサキの顔を見た。
マサヒコの視界の中で、ミサキの頬がどんどん赤くなっていく。
「マサちゃんと……二人で行きたかったから」
「えっ?」
「マサちゃんとね、二人だけで買出しに行きたかったの」
「ミ、ミサキ」
頬どころか顔じゅう真っ赤にして俯いてしまうミサキ。
釣られて、マサヒコも顔を朱に染める。二人とも、今にも湯気が出そうな勢いだ。
「最近デートしてないし、それで、リンちゃんと若田部さんには特別にことわって……」
「じゃあ、前日になって二人が揃って「行けない」と連絡してきたのは、ミサキが……」
マサヒコはミサキの告白に驚いた。
確かに、ここ最近はこうして二人で外出する機会が無かったのは事実だ。
だが、それにしてもこうまで大胆なことをミサキがするとは、マサヒコは欠片も思っていなかった。
「ゴメンね……」
「ミサキ……」
先程とは一転して、ミサキは申し訳無さそうな表情になる。
「……いいよ」
「えっ?」
「俺も、ミサキと二人だけで出かけられて、本当は嬉しかったんだ」
マサヒコは一瞬にして、ミサキの表情からその心中を理解した。
マサヒコと二人だけになりたかったという思い。
嘘をついたことに対する後ろめたさ。
そして、やっぱり嘘をついたままではいられない、という気持ち。
「じゃあ、寒いけどもう少し歩こうか。……そう言えば、ミサキは駅前広場に巨大クリスマスツリーが出来たの知ってる?」
「え、あ、う、ううん。し、知らない」
マサヒコはニコリと微笑んだ。
そして、紙袋を右手で抱えなおすと、空いた左手をミサキへと差し出した。
「オッケー、じゃ、それを見に行こう」
北風がぴゅうぴゅうとまるで囃したてるようにアーケードを吹き抜けていく中、一組の男女が手を繋ぎ、駅前広場へと歩いていく。
栗色の髪の少女が天野ミサキ、そして収まりの悪いやや眺めの髪の少年が小久保マサヒコだ。
赤と白とで彩られた商店街、耳に届くクリスマスソング、恋人たちを見下ろす巨大なツリー。
あと一週間ちょっとで、サンタが皆の家にやってくる―――
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