作品名 作者名 カップリング
「甘過ぎる」 ピンキリ氏 -

 小久保マサヒコと天野ミサキはね、これはつきあってんです。
何をいきなり言ってやがんでェ、と思われるでしょうが、これはれっきとした事実ってヤツで。
中学を卒業するまでは、幼馴染の枠からどうしても抜け出せない、
ほれ、粋な言い方をすると『近くて遠い二人』ってヤツだったわけですが、
高校入学、それぞれが別々の環境へというのが、天野ミサキにとって契機となったってことですな。
高校に入って無事にゴールイン、いやスタートをきれたというわけで。
いや、実にめでてえことです。
陳腐な表現を使わせてもらいますと、『運命の赤い糸』は最初からつながっていた、ということでしょうな。
ただ当人たちがなかなか手繰り寄せられなかっただけだ、と。
……言ってて背中がこそばゆくなってきますが。
似合わねェ台詞を使うもんじゃありませんな。
ま、天野の嬢ちゃんがどのように告白して、小久保の坊ちゃんがどう受け止めたかは、
ここで特に詳しく語りはいたしません。
皆様の想像にお任せすることにします。
お前偉そうにくっちゃべってるが実は知らないんだろう、って突っ込みはナシですよ。
これを語ると本題になかなか入れませんからねェ。
本題より前置きの方が長くなっちゃァ、興醒めってもんですから、どうかご勘弁の程を。

 さアて、その小久保マサヒコと天野ミサキでございますが、
まあこれがつきあってみるとえらく型にピッタシはまった恋人同士ってヤツで。
それも、「お前ら引っ付き過ぎ」と周囲から妬み半分にからかわれるてェ程の超弩級のベタベタバカップル。
休日の度にデートし、甘い甘い、甘すぎる時間を過ごすってんだからお天道様も赤面するってもんですよ。
どんな会話を交わしてるかって言いますと、
「あーんして」「いいよ恥ずかしい」
「いいから、あーんしてよ」「……しょうがないな、はい、あーん」とか、
「マサちゃん、ずっと側にいてくれる?」「何だよ、突然……もちろん、当たり前だろ」とか、
「……」「……」「……」「……」えー、これは手抜きじゃござんせん、二人が見つめあってんです。
えーと、「……」「……」「……うふふ」「ははは……」とか、
はあはあ、某中村女史でなくとも「ええ加減にせいやお前ら!」と叫びたくなるくらいでございます。
年中アツアツ、常夏という次第でして、二人の近くにいたらカップラーメンが作れますな。
逆にアイスクリームを持ってる人は寄らないほうがよござんす。

 それでまア、恋人同士ってことになると、ほれ、当然アレもあるわけです。
大昔の人間じゃあるまいし、結婚するまで清い体のままなんてこたァないわけですわ。
天野ミサキの方は、よーくご存知の人もおられるかとは思いますが、
耳年間で思い込みが激しいタイプの娘っこであります。
利発ではあるが、万事に不器用なもんで、思いだけがどうしても先に行ってしまうんですな。
で、小久保マサヒコの方はと言えば、周囲にあれ程キレイどころカワイイどころがおりながら、
また度々機会がありながらも一切手を出さなかった、ある意味異常なんじゃねェかって程の淡白少年でござんした。
小久保マサヒコは、あんた、勃たないんじゃねェのって親からも疑われる人間でしたが、
まあ自家発電はやってた様ですので、男としてそれなりに性欲ってヤツはあった模様です。
部屋のどこをさらってもエロ本もエロマンガも一冊も出てこなかったのに、
コイツは何をオカズにしてたんでしょうな。謎であります。
一方天野ミサキですが、えー、暴れん坊将軍でもないのにあんまり自慰自慰言いたくないんですが、
同年齢の娘っこと比較すれば、自慰の回数は多かったようでございますな。
ネタは何か、って、そらァ聞くのも野暮ってもんでしょう。
幼い頃から想いをずっとマサヒコに寄せていたんです、
何を想像して自分を慰めていたかって、言うまでもありませんな。


いや、天野ミサキは実にいい娘でありますよ。
学校ではクラス委員長も務める優等生でありながら、その実好色ってェのは、
いやはは、これはまた世の男どもにはたまらん話ですな。
まったく、早々にマサヒコも獣に目覚めてりゃあ良かったものを、貴重な中学時代をムザムザ……。
 えー、何が言いたいかってェと、まあまあ、つきあい始めてからさほど時も経たずに、
二人は心だけでなく身も無事につながったってことでございますよ。へえ。
ま、処女と童貞で最初は苦労したようですが、ほれ、先にも言いましたが、
ここでも二人はお似合いのカップルであるということをキチンと証明いたしましたんです。
相性がいい、ってヤツですな。
打てば響くと言うか、何をやっても二人はいい塩梅に燃え上がれるってなもんで。
え?好きあってるんだから問題なんかあるめェ、ですって?
いやお客さん、馬鹿言っちゃ困りますよ。
お互い片時も離れ難く想いあっているのに、いざ体を重ねてみるとひたすらすれ違いってこともあるんです。
これは本当のことでござんすよ。
またねえ、それが物凄く寂しいやら悲しいやら情けないやらで。
幸い、私は二人と同じく、心と体両方で相性十割な人と結ばれたんですが、えへへ。
……話が脇に逸れそうですな。
二人の甘い性生活に戻すとしましょう。

 さて、その極甘な二人のセックスってヤツを、ひとつここで語るといたしましょう。
ああ、残念かもしれませんが、この口調でやらしてもらいますよ。
それと、ここに座ってるのは私一人であるわけでして、
そうなると当然、天野ミサキと小久保マサヒコの一人二役をやることになるわけでして。
ああ、ああ、お客さん、そんなに嫌そうな顔をなさらないでください。
それ程嫌なら、どうぞ目を瞑って耳だけでお楽しみくださいな。
ご心配なさらずに、私も言葉だけでやりますんで、実際に私が脱いだりするわけじゃありませんので。
え?やってくれって?
いやはは、実は私もちっとばかりやってみたい気はあるんですが、ま、流石にそれはやめておきます。
……ではいきましょうかね。

 さて時は初夏、早くも蝉がミンミンと泣き声をあげる頃でございます。
小久保邸に天野ミサキと小久保マサヒコの二人がおりました。
今、家の中には二人しかいないということになっております。
さァそうなると若い二人のこと、ムラムラと体の奥から炎が立ち上ってきてもおかしくはないというヤツでして。
「……」
「……」
 見つめあう二人、その頬には朱がさしております。
天野ミサキは目を瞑ると、そっと顎をあげました。
準備はオーケー、ってなもんですな。
「……むぅ」
「ん……」
 逸る気持ちを抑えつつ、二人は愛を唇の上で確かめ合います。純ですねェ。
私にもこんな時があったんですが、ま、それはそれとして。
「マサちゃん……」
「ミサキ……」
 女は男をちゃんづけで呼ぶ、男は女を呼び捨てにする。
いいですねェ、幼馴染の真骨頂って感じでござんすねェ。
 さて、二人は唇を重ね、離してはまた重ねという行為をしばし続けます。
ある意味、焦らしプレイですな。
こうやってゆっくりゆっくり、ソロリソロリと本番に向けて高まっていく。
手順てェわけじゃありません。指南書じゃあるまいし、セックスに手順も着順も動機不純もありゃしません。
二人ともお互いに、そうした方が気持ちよくなれる、燃え上がれるとわかってるんでございます。
誰に教えられたでもなく、愛の交わりの回数を重ねるうちに、自得してったんですな。
いや、なかなかにセンスがいいと申せましょう。


「ミサキ……」
 マサヒコは体を起こすと、ミサキの体を愛撫しにかかります。
ここでマサヒコ、胸からではなく、いきなり股に手を持っていきます。
ポイントは、ミサキはスカートだったってところですかな。
服を着たままヤルのなら、胸を責めずに下から責める。
EDだとか仙人だとか言われてた割にマサヒコ、こういうところは血が争えないってヤツでしょうかな。
「マサちゃん……ちょっと、待って……」
 おや何と、何時もであればマサヒコの愛撫は拒否しない、むしろ進んで望むミサキでありますが、
今回は待ったをかけました。
下に伸びたマサヒコの手を押さえ、潤んだ瞳でマサヒコに何やら訴えかけます。
「え……どうかしたか?ミサキ」
 ああ残念、いかに隠し持ったセンスが良かろうが、体の相性が良かろうが、
こういうところで経験不足が表に出てきてしまいます。
ツーと言えばカー、海と言えば山、外と言えばううん中に出してという感じに、
以心伝心な仲になるにゃア、いま少しのレベルアップが必要なようであります。
「ちょっと、待って……」
 そう言うと、ミサキはマサヒコの下からもぞもぞと這い出ます。
スカートの乱れと直すと、クローゼットへとてくてく足を進めます。
で、ガチャとそこを開けると、はァ、まァ、あなたこれが高校一年生のクローゼットの中身でしょうかと。
いや、アメリカに引っ越した某若田部嬢のように、馬鹿高いブランド品の衣服があるわけじゃござんせん。
ええと、一気に言いますから聞き漏らしのないようにしてくださいよ。
途中で同じのを二度いったら注意してくださいな、私も少し自信がありませんので。
えーと、セーラー服にブレザー、ナース服にスチュワーデス、体操着、ウエスタンルック、
フリフリメイド服にスクール水着、チャイナ服にレオタード、テニスウェア、ボディコン、
エプロンにそして浴衣、次に巫女さん、ウェイトレスさん、チアガール、女王様、くのいち、
果ては某国風軍服から某アニメヒロインのコスチュームに至るまで、ずりゃずりゃとそこに並んでいたのでございます。
「ミサキ……」
 マサヒコも驚くのかと思いきや、目を瞠った程度で仰天した様子は見られません。
「今日は……また、着て……したいな……」
 はァ、何ですと?
「……ああ、いいよ」
 この会話、こっちの方がびっくりしてしまいますわな。
「マサちゃん、選んでいいよ……」
「いや、お前が着たい服にすればいいよ」
 さァて、ここまで来たらおわかりでございましょう。
そう、二人はコスチュームプレイ、略してコスプレをしようとしているんですな。
あああ、いやいや、そう眉間にシワを寄せられちゃあ困ります。
そりゃア、セックスってのは基本は裸と裸のぶつかりあいですよ。
ですがそれでも、服を着てヤリたいって思いはどっかにあるわけでして。
ええ、誰にでもありまさァね、私にもあなたにも。
とにかく女子高生のセーラー服にピクついてしまう男、
筋肉の上にピチッと貼り付いたTシャツに濡れてしまう女、
夫の帰りをメイド服で待つ妻等々、フェチッシュなものが心のどっかにある人ってなァ多いんです。
「じゃ、じゃあ……エプロンで……」
「お、おう」
 この場では結局、ミサキが選びまして、彼女が手に取ったのはエプロンです。
エプロンと言えばピーンと来られたかもしれませんが、こりゃアそのまま着るわけじゃあございません。
そうそう、アレです、素肌の上にエプロン、裸エプロンってヤツでございますよ。
「じゃ、その……着替えるから、あっち向いてて」
「ああ、わ、わかった」
 まだ恥じらいが強いのか、どっちもしどろもどろになって可愛らしいですな。
え、見られようが見られまいが着替えくらいパッパとやったらどうだ、ですと?
ってお客さん、そりゃあ興が無いってもんでしょう。
乙女心、それに応える男の思い。察しておくんなさい。どうかどうか。


「も、もういいよマサちゃん……」
「……っ」
 振り返ってマサヒコ、言葉を失います。
自分の恋人が裸エプロンでそこに立っている、いやいや、何と果報者なことでありましょうな。
神でも仏でもいいから、自身の幸福に感謝しなければバチがあたるってもんです。
……いや、ここでマサヒコがお礼を言うべきなのは、彼のよく知る二人の女性に対して、ですかな。
ほれ、裁縫の腕がからっきしなミサキにこんな衣服が作れるわけがございません。
で、マサヒコにしてもミサキにこんな服をプレゼントする程砕けちゃおりません。
思惑があって、これをミサキに渡した奴がいるんです。
さて、ここで言い渋っても仕方ありませんので、ちゃっちゃと言っちゃうことにいたしましょう。
このズラズラと並んだコスチュームをミサキにプレゼントした人物、
それは中村リョーコと、小久保マサヒコの実母でございます。
皆様知っての通り、この二人、性に関しては並ぶ者が無き程のツワモノでして。
で、マサヒコとミサキがつきあいだしたと聞いた時、
中村リョーコは嫌味で、マサヒコの母は祝福でこれらの衣服を贈ったってわけで。
ちなみに、メイド服とかチャイナ服とか可愛らしい系がマサヒコ母、
軍服とか女王様とかお前何考えてんだ系が中村リョーコのプレゼントと分かれております。
「ミサキ!」
 たまらなくなったのかマサヒコ、ミサキを抱き締めるとそのままベッドに直行、
ミサキをうつ伏せに寝かせると後ろから白い背中にむしゃぶりつきます。
「ああっ、あ……!」
 ミサキの首から肩口にかけて、
まるで花びらを散らされたかのようにさあっと赤く染まって、その艶やかなこと。
「ミサキ、ミサ……キ」
 肩甲骨の下辺りから、背中の真ん中、腰の上、そして臀部へと、動いていくマサヒコの舌。
舌が通った跡は、まるでカタツムリが歩いたかのようにテラテラと妖しく輝いております。
「は……ふ……マサ、ちゃあん……」
 ビクリビクリと体を奮わせるミサキ。
はい、感じております。かなり感じております。敏感ですな。
「れ……ちゅ……」
 じりじり、じりじりと、マサヒコの舌はミサキのお尻の谷間へと近づいていきます。
何分にも真後ろでの出来事、ミサキはマサヒコの動きを見ることは出来ませんが、
またそれが一層の快感を引き出してくれるということで。
「……っ、ひゃあぁぁぁぁ、くぅっ!」
 おおお、いやマサヒコ、成長したもですなァ。
さあ、今から尻を舐めまわすぞというところまで来て、
そこから逆に一気に背骨の上を通って首筋に吸い付くとは。
「あ、あ!」
 そして見事なコンビネーション。
ミサキが肘を突っ張って体を浮かせたその一瞬の間に、
マサヒコは両手をミサキの脇の下から通して、エプロンの下の乳房を直に掴み、揉みしだきます。
いや、やはり持って生まれたセンスは抜群なものがありますな。
「ひゃ……ぷ……」
 ベッドに顔を埋めるミサキ。
首の裏と両の乳首、三方向から快楽が脳天をチクチクと虐めます。
うつ伏せの場合、あんまり大きくない乳房の方が揉み易いですな。
掌を差し込み易いし動かし易い。
「くふぅ、はぁ」
 マサヒコ、固くなった股間を、ミサキのお尻の上に回転するような感じで擦りつけます。
いやらしいことをしている、されていると双方が実感出来る行為であります。
あんまり動かすと、そのまま出ちゃうことがあるんで注意は必要ですが。
「ミサキ……好きだ……」
「マサ、ちゃ、ん……っ」


マサヒコの右の手がミサキの乳房から『抜かれ』ます。
左は変わらずに、こねるように乳房の先のピンク色の突起をイジメ続けています。
で、右の手はつーっと下がっていき、ミサキの股の間を強引にこじ開けるようにして侵入していって。
こりゃアレですな、皆様言わずともお分かりでしょうて。
そうです、女の一番感じるところを弄ってやろうてんですな。
いやア、しかしこういう時は躊躇っちゃあ駄目なんです。
女を気持ちよくさせるのが男の大切な仕事のひとつなんですからねェ。
それに、女の方だって愛する男に気持ちよくさせてもらいたいもんなんですわ。
ここ人生のテストに何時か出ますからね、手帳でもチケットの裏でもいいからメモっといておくんなさい。
「やぁ、や、やあ……んんっ……」
 別に嫌がってるわけじゃないんです。
そう思わず口に出たってだけのことで。
「ミサ、キ……」
 マサヒコの指は、ミサキの一番敏感な真珠の部分から花びらまで縦横無尽に動き回ります。
まだミサキの背中や首の裏を舐めてますので、
マサヒコはミサキの女性の部分を見ずに手指を動かしてるわけですが、何度も言いますが才能でしょうかねェ、
本人は無我夢中で弄くってるんだと思うんですが、爪で柔らかい肉を傷つけることもなければ、
ミサキを気持ち悪がらせることもない。いやはや、私が言うのも何ですが、これァ天才ってヤツですな。
「……」
 不意にピタリとマサヒコの手が止まります。
ミサキは顔をシーツから剥がすと、ゆっくりと大きく息をひとつ、つきます。
「ミサキ……俺」
「ああ、マサちゃん……」
 『俺』に続く言葉と、『マサちゃん』に続く言葉が何か、言わんでもよろしいですな。
無粋な真似はよしておこうということで。
 マサヒコはミサキから離れると、ズボンのベルトを外し、ファスナーを開放しjます。
ここでズボンを全部脱いじゃアいけません。え、何でかって?
いやいや、とにかく駄目ったら駄目なんです。
コスプレの極意、それはですな、最終的に破けることになろうとも、ヤル時は着たままってところにあるんでございますから。
「あ……」
 体を斜めにし、枷から解き放たれたマサヒコのアレを見るミサキ。
その瞳は蕩けてうっとりといった感じでございます。
これからアレが、自分に素晴らしい快楽をくれるということを熟知してるわけですな。
いや、淫乱と言うなかれお客さん。
若くてラブラブなセックスってヤツは、時として周囲の一切が視界に入らなくなっちまうもんなんですって。
歳を経て経験を積む内に、冷静にセックスを楽しめるようになってくんです。
で、少し寂しくなるんですな。
ああ、あの時の新鮮な気持ちは何処へ……って。
……また話がズレましたかな。
いや、失敬。
「いくよ……」
 マサヒコがミサキの腰の両側に手を添えると、ミサキはそっと腰を浮かせる、つまりお尻とつきだします。
いやあいいですな、男だったら一度は好いた女にこんなことさせてみたいもんでさぁね。
汗とそれ以外の液で濡れたエプロンの裾が、ミサキのお腹からペリペリとゆっくり剥がれていきます。
マサヒコは自身の先っちょで、まるでノックするようにミサキの『入り口』を突付きます。
はい、とうとう本番、一番槍突入ってわけで。
「あ……あ……あ……」
 この、胃の下の方から漏れてくるような切ない、そしてはしたない声。
ゆるゆる、ゆるゆるとマサヒコはミサキに『侵入』していきます。
ガンガン飛ばしたいだろうに、なかなか自制がきいたもんです。
こっ恥ずかしいですが、これが相手を思いやる愛ってヤツでございますかねえ。
思い切りいくのは、根元まで埋まってからってのが基本ですな。


「は……ふぅ……」
「ああ……ミサキ……」
 はい、一名様ご到着。
お休みになられますか、って、ここで休んでちゃ男が廃るってもんですな。
いえ、まずは温泉に入ります。
包み込んでくれる、熱い温泉へ。
はいどうぞ、たっぷりお湯が出ています。
……我ながらオヤジ臭いですな。いやはは。
「ミサキ、くぅっ!」
「あう、マサちゃん、マサちゃん!」
 いいですなあ、若いって。
ほら、汗が弾けてますもん。
肉が輝いてますもん。
……。
……。
……。
……。
はっ、いかんいかん。
思い出に浸りそうになりました。
真に失礼を働いたようで、いやどうも申し訳ない。
「くっ、で、出るっ!」
 そう叫ぶと、慌ててマサヒコが身を引きます。
抜かれたアレがぷるんと揺れると、その刹那、勢いよく白濁の液が先端からほとばしり、
汗に濡れたミサキの背中に降り注いでいきます。
やあ、ここで『はやかったな』なんて言われちゃいけませんよお客様。
セックスの時一緒にイクなんてことは、いくら体の相性が良くても難しいってもんでございます。
何度も経験を積み、互いのタイミングを頭でなく体で覚えてから、
さらにもうひとつ高位のセックスに行くことが出来るんでさあね。
まだまだマサヒコとミサキじゃあ、経験の絶対値が低いってことですわ。
あ、そこ、端で俯いてる兄さん、『はやい』って言葉にそんなにガックリこない方がよござんす。
セックスでイクのは男の方が普通は先なんですから。
女を挿入後に先にイカせるのは、前戯でどれだけ女の体を昂ぶらせておくかが重要なんで。
ま、例外は多くありますが、そう覚えておいておくんなさい。
え、今までの彼女のアレは演技だったのかもしれない、って、
さア、流石にそこまでは私ゃ何とも言えませんな。
「ふぅ……」
「……」
 放出後しばらくして、マサヒコはミサキの背中に飛ばした己の種をティッシュで拭き取ります。
こういう優しさも大切ですよ。
ミサキも微笑みます。マサヒコの心づかいが嬉しいんでしょうなァ。
何となく微笑ましいもんがあります。
「マサちゃんも……キレイにしてあげる」
 人としてお返しは当然。倍返しだと古人は言ったとか言わないとか。
やや柔らかくなってしまったマサヒコのアレを、ミサキは片手でひょいと摘むと、
もう片方の手でティッシュを持ち、優しく円を描くように拭き取っていきます。
さあさあ、ま、そうなるとまた血がそこに集まってしまうのは悲しい雄の性というもんでございまして。
ミサキももちろんわかってやってるんでしょうがね。
自分はまだイッてないわけですから、そりゃやっぱり、満たして欲しいわけでありまさァな。
「マサちゃん、また大きくなってきたよ……かわいい……」
 そう言われて、先っぽにチュッとキスされて、二回目の突撃をやめちゃう男が果たしておりましょうかね?
いませんわなあ。いるわけありませんわなあ。


「もふっほ、ひへいにひて……あふぇ、ちゅ、むみゅ」
 ミサキが何してるか、何をし始めたか言わんでもわかりますわな。
「ちゅぷ……うふふ」
「ああ……ミサキ……」
 甘い甘い飴を舐めるように、ミサキはマサヒコのアレを口内に含んで転がします。 
同時に、自分の最も敏感な部分をそっと、マサヒコに気づかれないように弄ります。
一度落ちてしまった肉体のテンションを高め直そうってことでございますな。
「くっ……ミサキ……っ、駄目だ、また出る……」
 そう言いながらも、マサヒコの手はミサキの頭にしっかりと添えられているわけで。
言行不一致ってもんですが、まァ、これは仕方ないでございましょうて。
「ぷふっ、はむ」
「あうっ」
 ミサキはマサヒコのアレを口の外に出すと、今度は裏の部分を舌先でつつつと舐めあげます。
どこでこんな技を覚えたんでしょうな、この娘は。
「う、うわっ!」
 情けない声を出して、マサヒコ二回目の射精。
ミサキの髪の毛、そして顔面というキャンバスに、白い絵の具で色着けでございます。
シャセイ大会ですな。
……いや、ベタで申し訳ございません。
「ご……ごめん、ミサキ」
「いいよ……」
「え?」
「だって……マサちゃんが、私の舌で気持ちよくなってくれたってことだもん」
 かーっ、このやりとりだけで御飯三杯は軽くいけますな。
「でも……やっぱり、ごめん」
「ふふ、別にいいのに……」
「でも、俺ばっかり、その、気持ちよくなって、悪いって言うか」
 ま、これも優しさから生まれた言葉なんでしょうが、もうちっとデンと構えても良さそうなもんです。
「ミサキ……」
「マサちゃん……」
 抱擁。歓喜天の像のように抱き合う二人。
こうなると言葉はいりませんな。
ただ互いの体温を感じていれば、それだけでもう心は幸せいっぱい夢いっぱいてなもんで。
「ミサキ……」
「ん……?」
「シャワー、浴びようか」
「え、あ……うん」
「洗い流して、それから……」
「それから?」
「気持ちよくして……やるよ」
「……マサちゃん」
 御飯十杯、お腹いっぱいご馳走様でございます。
糖分高すぎて、見てるだけ喋ってるだけで糖尿病になりそうですな。
お客さんも、どうか今夜は甘いものをお控えになった方がよろしいかと、老婆心ながら。
いや、冗談じゃなく、この調子では近いうちに私、ばあさんはばあさんでも祖母さんになってしまうやもしれませんわ。


 えー、ここから第二回戦本番が風呂場で始まるんですが、残念なことにお時間になってしまいました。
どうでしたかねェ、甘い性活、性春だったでござんしょう?
これでまだ二人とも16歳になったばかりってんだから、末恐ろしいってもんであります。
 さあて、コスプレを満喫してる二人でありますが、
このセックスを見たら、そのコスチュームを贈った二人はどう思うことでございましょう。
中村リョーコは半分嫌がらせで贈った、つまり家庭教師時代のからかいの延長でございますな。
ほれほれ、生意気に恋人同士になったんだったらこれくらいはやってみろ、出来ないだろへへーん、てなもんです。
で、わた……っと、小久保母はどうかといいますと、流石にここまで二人が激しく萌えに燃えあがるとは思ってなかったと。
セックスだって楽しくやらなきゃ、そのためのスパイスとして使ってみたらって気持ちだったわけですが、これがまた、ハテ。
いやア、二人の見通しは甘かった、それ以上にマサヒコとミサキのベタベタっぷりは甘かった。
過ぎたるは何とかという諺もございますが、どちらも甘過ぎる程に甘かったということで、
これをオチにこの席を終わることにしたいと思います。

 出歯亀亭小久保屋真漫でした。
またどこかでお会いいたしましょう。
 ありがとうございました。


 つくてん。

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