作品名 作者名 カップリング
No Title ピンキリ氏 -

「あーん、濡れちゃったー」
「もう、腹がたつったらありゃしない」
「ふわーん、冷たいよー」
 雷一閃、続いて数滴の雨粒、そしてどしゃ降り。傘を用意していなかった三人娘を責めるわけにはいかないだろう。
これが梅雨特有の、いきなりの夕立というやつである。
何とかかんとか近くのタバコ屋の軒下に逃げ込んだはいいものの、当然のごとく服はびしょ濡れの状態だ。
「あーあ、セーラー服も、下もべしょべしょだぁ」
 リンコは太股に張り付いたスカートを剥がしながらぼやいた。
「きゃ、いやだ、ブラが透けてる」
 アヤナは腕を交差して胸の辺りを隠した。
「……」
 その横で、ミサキがハンカチで髪の毛を拭きながら、アヤナの胸を若干羨望が入った眼差しで見ている。
「ねーこれからどうするのー?」
「ケータイで家族に迎えに来てもらうとか……」
「でも、お母さんたち家に居るかな……」
 雨は一向に止む気配を見せない。ともかくも、早く帰る手段を見つけないことにはどうにもならない。
このままでは風邪を引いて、三人仲良く明日はお休み、ということになりかねない。

「あれ?天野に若田部に、的山?」
 乾天の慈雨という言葉があるが、この場合、雨天の慈傘か。
三人の前に、小久保マサヒコがタイミング良く(?)現れた。
「あ、小久保君!」
「助かった、これで帰れるわ!」
「わーい、小久保君ありがとー」
 三人は我先にとマサヒコの傘の下へと突進した。
「わ、ちょ、待て、お、押すなって。よ、四人も入るわけないだろ!」
 文句は文句、事情は事情。
結局、マサヒコはそれぞれの家まで、彼女らを送ることになったのだった。

 翌日、三人は無事に登校出来た。
ただ、マサヒコだけは風邪をひいて休むことになった。
その理由は―――あえて語る必要もあるまい。

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