作品名 作者名 カップリング
「ご主人様と奴隷の幸せな関係」 ピンキリ氏 リョーコ×豊田

 桜も散り、「温かい」よりも「少し暑い」という表現をしばしば耳にする4月の下旬。
それでも夕方となれば、肌当たりの優しい風のおかげか、まだまだ涼しさを感じることが出来る。
屋根の向こうに落ちる夕陽、家々から流れてくる夕飯の匂い、
遊び場からの帰宅を急ぐ子ども達の声、それぞれがどこか心地よい。

 マサヒコ達の担任、3年1組担任の豊田セイジは、夕焼けを背に浴びながら帰宅の途にあった。
「今日も疲れたなあ」
 自分も、そしてクラスの生徒も、徐々に新しい環境に慣れつつある。
それは良いことなのだが、緊張から解放されて何かと緩みがちになる時期だけに、
より気を引き締めていかねばならない必要がある。
何よりセイジ本人にとっては、教師となってから始めての3年生、つまりは受験生を担当することになるのだ。
クラスの生徒が皆、望み通りの進路を歩めるように、学力面、精神面で様々な援助をしてゆかねばならない。
かかる責任は大きい。そう簡単に疲れている暇など無いのだ。
「よしっ」
 セイジは声を出すと、両手で頬をパンパンと数度叩いて気合を入れた。
いい歳をした大人が、道の真ん中でとる行動ではないのかもしれないが、
こういう行為は、思い立ったらその都度行うのが効果的だ。
それに、誰も見てやしないので恥ずかしくは―――

「あれ、セイジじゃない」
 セイジは固まった。いや、凍ったという表現の方が適切だろうか。
背後からの声に、両の掌を頬に押し付けたままの格好で、セイジは氷の像と化した。
今の声は間違いない。聞き間違えようはずもない。
「何してんの?アッチョンブリケのポーズ?」
 声の主、それはセイジのかつての恋人にして、現在の天敵(及びご主人様)、中村リョーコその人だった。
気分を改めた直後に、出来ることなら会いたくない人物に声をかけられる。
あまりと言えばあまりなタイミングに、セイジは入れたばかりの気合が、膝の辺りから抜け落ちて行くのを感じた。

「……ちょっとセイジ、何時までそんなアホな体勢してんの?」
 セイジは取り敢えず、手を下ろした。
深呼吸を三度程繰り返し、新鮮な空気を肺へと入れる。
幾分気持ちが落ち着いたところで、ようやっとリョーコの方へ体を向けた。
その動きは、ゼンマイの切れかかったオモチャのようにぎこちなかったが。
「……やあ」
「何が、やあ、よ。私が声をかけてから、たっぷり2分はかかってるわよ」
「ああ、ははは……」
 力無く笑うセイジ。
 お前に会ってしまった、という事実を受け入れるまでにはそれ位の時間はかかるんだよ―――とは、さすがに口には出せない。
とにかく、ここは無理なく慌てず速やかに、尚且つ全力で離脱しなければならない。
「アンタ、仕事帰りなの?」
「……ああ、そうだけど」
 セイジの脳内では、幾百という単語が高速で飛び交っていた。
言葉を慎重に選ばないと、目の前の蛇女さんにたちまち食いつかれてしまう。
それにしても、目の前から来てくれていれば、姿を確認した瞬間にダッシュで逃げていたものを。
が、それを思っても詮無い事だ。時間は逆に戻らない。
「そ、そーゆーわけで疲れてるんだ。じゃあな」
 ビッ、と手を挙げて、さり気無く逃亡を図るセイジ。
早く離れたい、という思惑を悟られないように、早足ギリギリのスピードでその場から立ち去―――
「ちょい待ち」
 ―――れなかった。
 リョーコは、何時の間にやら、セイジのスーツの裾をしっかりと握っていたのだ。
「ヒマなんでしょ?」
 セイジの首筋に、冷たい汗が流れ落ちる。
「いや、その、あの、どの」
「ヒマなんだよね?」

 ……残念なことだが、もうすでに食いつかれていたようだ。
牙から流れ込む毒が、あまりに強力な為か、半分呑み込まれていることに気がつかなかったらしい。
「あああ、いや、ほら、あれだ、帰って実力テストの問題を作らないと、ととと」
「実力テストなんか無いでしょ。あんた、リンが私の受け持ちの教え子だってこと忘れてない?」
 そうだった。リョーコは的山リンコの家庭教師だった。
実力テストが無いという情報は、とうの昔に耳に入っているはずだ。
「いいい、その、あの、抜き打ちで明日テストをするつもり、りりり」
「明日はお休みなんだけど」
 そうだった。明日はみどりの日、国民の休日だった。知らぬ人間がいるはずも無い。
「ううう、ちゅ、中間試験の作成を、ををを」
「中間試験はゴールデンウィークの後でしょーが」
 そうだった。
「えええ、文化祭のじゅ、準備が、ががが」
「文化祭は秋」
 そうだった。
「おおお、た、体育祭の用意で、ででで」
「それも秋」
 そうだった。
「んんん、ん、ん、んんん」
 泉が枯れた。
「さてと」
 リョーコは、セイジの前に回りこむと、ネクタイを掴んで思いきり締め上げた。
「つまらない嘘はそれ位にして……ヒマ、なんだよな?」
「……ハイ」
 セイジ、所詮は無駄な抵抗也。蛇に咬まれた時点で、獲物に逃げ道はありません。

「ふ〜、ほりゃ飲めセイジ、どんと飲め」
「うぐぐぐ」
 セイジがリョーコにとっ捕まってからすでに数時間経っている。
あの後、酒屋でビール、コンビニでツマミを大量に買い(もちろんお代は全てセイジの財布から)、
セイジのマンションで宴会と相成ったのだ。
「ああん?私の酒が飲めないっていうの」
「うわー、てか、俺が金を出しうぶぶぶぶ」
 リョーコがセイジの口に無理矢理ビール缶を押し付ける。
が、セイジはそれを跳ね除けた。
「やっ、やめれーっ!もう十分飲んだ!」
「ああ?抵抗するつもり?そんなら、こうだ!」
 リョーコはセイジの鼻を思い切り捻りあげた。
「ふ、ふがふぐっ」
 痛さと、鼻での呼吸が出来なくなったことで、セイジの口が開く。
すかさずリョーコは自分の口にビールを含むと、そこに唇を重ねて流し込んだ。
「む、むむむー」
「ぷはー、まいったか」
「んんん……お、お前、なあ……」
 セイジはあきれて文句も言えない。まさか、こんな手段に出るとは。
「何よ、その顔は。久しぶりにキスしたんだから、少しは喜んだら?」
 ケタケタと笑うリョーコ。完全にからかっている。
その生き生きとした表情を見た瞬間、ふと、セイジの脳裏に、つきあっていた当時の記憶が蘇った。

 リョーコをナンパしたのは、単純な理由だった。可愛い、と思ったからだ。
もちろん、下心が無かったわけではない。だが、声をかけた時は、少し話が出来たらいいかな、という程度の軽い気持ちだった。
その後、なんやかやとあって、交際を始めたのだが、当時のリョーコは、感情の起伏の乏しい、
きれいだけれど冷たい、機械的な印象を、見る者に与える少女だった。
一日一日を、仕方なしに生きている、そんな感じだったのだ。
 始めてリョーコを抱いた時のことを、セイジはまだ鮮明に覚えている。
リョーコはその時、すでに処女では無かった。こちらの要求したことを、何でもしてくれた。
拒絶や躊躇いは全く無かった。嫌、の一言も無かった。
セイジは、4歳年下のこの少女に、恐怖と、底知れぬ暗さを感じた。
その精神の沼の深さ、澱みは、中学生のものではなかった。
複雑な家庭の環境、それが原因なのだろうとは推測出来たが、セイジは聞けなかった。怖かったからだ。
その時は、セイジも男として、人間として成熟しておらず、リョーコの全てを受け止めるには力が足りなかった。
つきあっていくうちに、リョーコは段々と明るくなって(本性を現して)いった。
それに伴い、セックスにおいても、他においても、主従転倒していくわけなのだが……。
 リョーコの口から、過去や家庭の事情が語られたのは、セイジが大学に合格した直後、二人が別れる直前のこと。
ただ、何がきっかけで、リョーコが変わり始めたのかだけは、最後までわからず終いだった。

「……ありゃ?」
 時間にして数分も無かったが、セイジが昔に思いを馳せていたその間に、リョーコは目の前から消えていた。
奥の部屋からガサゴソと音がする。どうやら、何か漁っているらしい。
「お、おいリョーコ、勝手に人の部屋を荒らすな」
 と、ひょこっとリョーコが戻ってきた。後ろ手に何か隠している。
「ん〜、セイジ、これは何?仕事用の鞄の中から出てきたんだけど?」
 そう言ってセイジの眼前に出された物、それはコンドームだった。
「そ、それは」
「怪しい、怪し過ぎる。アンタ、女子生徒に人気があるのを良いことに、公序良俗に反するようなことしてないでしょうね」
「ば、バカ、するわけないだろ!」
 正味の話、ヤッたことは無いが期待したことはある。
だが、仕事鞄の中に入れてあったのはそのためのものではない。
まあ、いざと言う時のための備えのようなものだ。
「いや、わかんない。昔からアンタ中学生好きだったし」
「違ーう!前にも言っただろ、今はもう立派な大人好きだーっ!」
 涙を流しながら、必死に反論(弁解)するセイジ。
そんな姿は、リョーコにとっては最高の酒の肴だ。
「んー?本当かなぁ?」
 ビール缶を右手、コンドームを左手に、ニヤニヤと笑いながらリョーコはセイジを苛める。
「本当だーっ、本当だーっ、信じてくれぇぇ」
「リンやアヤナに頼んで学校で調べてもらおうかな、セイジに声をかけられたことのある女子の数を」
 セイジはひっくり返った。そんなことされてはたまったもんではない。
後ろ暗いことは何ひとつしてないが、『豊田セイジは女子生徒を狙っている』という噂が確実に立ってしまう。

「や、やめてくれー!」
「……ホントーに、何もしてない?」
「当たり前だぁあ、だから今は大人好きだって言ってるだろー!」
「ふーん……」
 リョーコは数秒、宙に目をやった。右に左に、数度視線を動かす。
右手がビール缶を持ったまま髪の毛に伸び、指先をくるくると髪に絡ませる。
 セイジは、また首筋に冷たい汗を感じた。それは、つきあっていた当時から変わらない、リョーコの癖。
何か、とんでもないこと、いらんことを企んでいる時の癖。
「じゃあさ……」
 ゴクリ、とセイジは唾を飲み込んだ。いったい、どんな無理難題をふっかけてくるのか。
「コレで……」
 コンドームが、セイジの鼻先に突きつけられた。
「しようか?」

 セイジはベッドに腰掛けながら、呆然としていた。
いったい、どーしてこーなってしまったんだろうか。
目線の先には、跪いたリョーコが、自分のモノを咥えていて―――

「しようか?」
 その台詞の後は、急展開だった。
本日二度目の硬直状態のセイジの前で、リョーコはちゃっちゃと下着姿になると、
セイジを引き摺って寝室へと移動した。そして、セイジをベッドに座らせると、ズボンとトランクスを脱がし、
何の予告も無しにいきなりモノにかぶりついたのだ。
こうなると男の体というものは現金なもので、あっという間に元気に硬くなってしまった。

「むぐ……ぷ、あはは、セイジの息子に会うのも、久しぶりね」
 リョーコは親父臭いことを言いながら、舌で、口内で、指で、刺激を送る。
 セイジは腹を決めた。いや、諦めた。
いつだって彼女のペースなのだ。セイジ自身が主導権を握っていたことなんて、
つきあっていた最初の一、二ヶ月だけしかない。もうこうなったら、流されるしかない。
それに、ぶっちゃけた話、我慢出来ないのも事実だ。
 だが、やはり確認しないことには進めない。
セイジはリョーコの頭に手を置き、攻撃を一時中断させた。
「……リョーコ、お前、その……いいのか?」
「何が?」
「いや、何が、じゃなくって、その」
「セイジはしたくないの?」
「……う、そりゃ……」
「私は、したいんだけど?」
 もう、セイジには何も言うことは無い。何も言えない。
 リョーコはニマッと笑うと、眼鏡を外してサイドテーブルに置き、コンドームを取り出した。
そして、慣れた手つきで手早くセイジのモノに装着してゆく。
空気が入らないように、毛を巻き込まないように、皮膚に密着するように。
その手際の良さは、熟練のワザを感じさせた。
「……」
 もう、セイジには何も言うことは無い。言えるわけがない。

「ん、んん……っ、セイジ、気持ち、イイ?」
 リョーコの裸身が、セイジの上でリズミカルに跳ねる。
「ああ……」
 セイジは、下半身だけではなく、視覚的にも強烈な快楽を感じていた。
リョーコは間違いなく、美人の部類に入る。スタイルも良い。
若干細身ながらも、出ているところはしっかりと出ている。
そんな女が、目の前で自分に跨がって腰を動かしている。これで興奮しない方がおかしい。
「う、リ、リョーコ……」
 凄い。当たり前だが、昔に比べると色気と言うか艶っぽさが段違いだ。
あの頃はまだ幼さが残っていた、激しく扱うと壊れてしまうような……。
そうセイジが思った時、目の前の今のリョーコに、昔の中学生時代のリョーコの姿が、重なった。
「……!」
 セイジはガバッと跳ね起きると、リョーコの両腕を掴んだ。
「あ、セ、セイジ?」
 そしてそのままリョーコの胸に顔を埋めると、リョーコの両腕から手を離し、今度は背中に持っていき、抱きしめた。
「セイジ……」
「なあ、リョーコ……少しだけ、昔に戻っていいか?」

「……昔に?」
「……ああ」
 リョーコは、何がなんだかわからない、といった表情だ。
「それってどういう……キャッ!」
 セイジはリョーコを自分の上から引き剥がすと、乱暴にうつ伏せの状態にひっくり返した。
「ちょ、ちょっとセイ……う、うあっ!」
 そして、リョーコに喋る暇さえ与えず、背後から勢いをつけて挿入する。
「あ、ああっ、あっ!」
「リョーコ、リョーコ……ッ!」
 ただ、ひたすら腰を前後に動かす。
「あ、ん、ああ、んんっ」
 後ろから来る衝撃と快感に押され、リョーコは顔をベッドに埋め込んだ。もはや、手では支えきれない。
「ぐうっ、んっ、ふ、ふごひ、ひひよほ、ヘイビィ……!」
 唇も圧迫され、まともに声を出すことも出来ない。
リョーコの口の辺りのシーツが、唾液でビチョビチョに濡れていく。
「う、はあっ、リョ、リョーコ」
 リョーコの汗ばんだ背中が、セイジの視界の中で揺れ動く。
セイジは、金属が焦げるような臭いを嗅いだような気がした。もちろん錯覚なのだが。
鼻の奥がツンとしてくる。喉がヒリヒリしてくる。足の先、背骨、脇腹、そして腰。
痺れが広がっていく。限界が近い。
「ふは、ぶは、るはぁ、ひふ、ふる、ふるよぉ、ひっひゃう、う、うううーっ!」
 リョーコの手がシーツを思い切り掴み、顔の方へ引き寄せた。
同時に、細かい震えが波のようにリョーコの全身を走る。
首筋から背中にかけて、桜が咲いたようにパアッと赤みが差す。
 それを見た瞬間、セイジも爆発した。
「ううっ!」
 大量の精液が、コンドームの中に流れていく。
「ふう、はあ、ああ、はあ……」
「あああ、セイジ、セイジィ……」
全てを出し切ると、糸が切れた操り人形のように、ぐにゃりとセイジはリョーコの背中の上にもたれかかった。

「んふふふふ〜」
「お前……それで遊ぶのやめろよ」
 さっきから、リョーコがぷらぷらと揺さ振って遊んでいるのは、根元を縛った状態のコンドーム。
中に入っているのは、先程放出したばかりのセイジの精液だ。
「今日はゴメンねぇ。きっと君たちの弟が、いつか日の目を見る時が来るわ」
「……そんなもんに語りかけるなよ」
「あらあら、そんな言い方は無いんじゃない?これでもアンタの子どもたちなのよ?」
「……アホ。てか、早く服を着ろ。いつまで裸でいるんだ?」
 セイジはすでにトランクスとシャツを着ているが、リョーコはまだ裸のままだった。
「はぁ、何言ってるの?」
 リョーコはティッシュでコンドームを包むと、ゴミ箱へ放り投げた。
「アンタこそ何で服着てるのよ」
「……は?」
「まだまだコンドームはたくさんあるでしょ?」
「え、え、え、え?」
 セイジは上手く理解出来ない。
「私が、アレくらいで満足すると思った?」
「……!」
 眩暈がセイジを襲う。目の前でヘラヘラ笑っている女性は何を言っているのだろう?
何を考えているんだろう?
「それに、奴隷のアンタにペース握られたまま終わったんじゃあ、腹の虫がおさまらないのよ」
 リョーコがセイジににじり寄る。その姿は、猫又か、はたまた淫魔か吸血鬼か。

「なあ、お前……」
「何よ」
 ゆっくりとベッドに押し倒されるセイジ。
顔にはありありと、諦めと脱力の色が見てとれる。
「……ちゃんと卒論とか就職活動とかしてんのか?まさか、夜な夜な男とこんなことしてるんじゃあ……」
「アンタ、私を淫乱色情狂とでも思ってんの?」
「いや、そんなわけじゃあ……」
「大丈夫よ。就職先は決まってるわ」
「へ?ホントなのか?」
「うん」
 リョーコはセイジに唇を重ねる。
「ムフゥ……ど、どこに?」
 唇が離れる。唾液の糸がつーっと張って、そして切れる。
リョーコはそれに答えず、切なげな顔でセイジと瞳を合わせた。
「ま、まさか……」
 セイジの心臓に死神の針が何本も突き立つ。
「そ、豊田会社に永久就職」
「……!」
 セイジは聞いた。地獄の釜が開く音を。

「……なーんて、冗談よ冗談。どっちもぼちぼちとやってるわよ」
「……」
「……セイジ?」
 動かない。夕方、リョーコに出会った時に氷の像になったのなら、今は石像だ。
絶望の表情を浮かべ、涙を流しながら、セイジは固まっていた。本日、三度目の硬直。
「ほーほーほー、そう、そんなに嫌なの」
 リョーコの額に怒筋が何個も現れる。
「決めた。今夜は徹底的に搾り取ってやる。そんで、どっちが偉いかもう一度その身に刻み込んでやるわ」
「……」
 リョーコの宣戦布告は、心まで石になってしまったセイジには、残念ながら届かなかった。
「寝かしてやんないから覚悟することね」
 
 地獄の釜の蓋が開き、巨大な蛇が顔を出して舌でセイジを絡めとると、釜の中へと引きずり込んだ。
その蛇は、何故か生き生きとした雰囲気を纏っていて―――

 セイジは今も気づかない。
 何故リョーコが変わったのかを。
セイジと出会い、つきあわなければ、今もリョーコは中学当時のままの性格だったろう。
リョーコを解放したのは、セイジ。……つまりは、そういう事なのだ。

 後日。
 セイジは、ゴールデンウィークも含めて、まるまる一週間学校を休んだ。
理由は極度の腰痛、そして精神的疲労。見舞いに行った同僚達の話では、
「あれほどゲッソリとした人間を見たことが無い」とのことだった。

 リョーコは、ゴールデンウィークも含めて、まるまる一週間周囲の人間を振り回した。
エロボケ、脱線、暴走ギャグ。被害に遭った後輩と教え子達によると、
「顔が何か異様に艶々としていた」とのことだった。


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