作品名 |
作者名 |
カップリング |
種 |
ピンキリ氏 |
リョーコ×アヤナ |
「ああっ・・・あっ・・・!」
リョーコの左右の掌が、艶かしく、かつ繊細にアヤナの両の乳房を揉む。
生命線の辺りでピンク色の突起を優しく擦ったかと思うと、親指と人差し指で擽るようにいじくる。
「あひゃ・・・ッ!」
ガクンガクン、とアヤナが顎を突き出すようにして仰け反る。
リョーコは首を伸ばし、アヤナの唇と自分の唇を重ね、吸い、絡め、舐る。
「ぷはっ、はっ、はぁ、お、お姉さまぁ・・・」
アヤナの瞳はすでに焦点を失い、薄い靄がかかっているようだ。
だらしなく開いた唇の端から、二人のミックスされた唾液がつーっと首筋まで線を引いて垂れていく。
リョーコはその線を流れ落ちた方から舌ですくい上げ、また唇に辿り着くと、
今度は親鳥が雛に餌を与えるような感じでツンツンとキスの雨を降らせる。
一方で、右手を乳房から脇腹、脇腹から腰、腰から太腿へと移動させてゆく。
アヤナは目を見開き、制止の声をあげようとするが、リョーコのキス攻撃によってそれも未遂に終わる。
右手が怪しげに太腿の上を動き回る。アヤナの体がビクビクと痙攣するように震える。
リョーコは乳房を掴んでいる左手に力を込め、舌を唇の中に捻じ込ませ、思い切り吸う。
アヤナの意識がそちらに向いた瞬間、右手をスーッと秘部に滑るように潜り込ませる。
股に力が入らないため、簡単にその行為を許してしまうアヤナ。左右に首を振ろうとするが、唇をしっかり押さえられているためそれも叶わない。
リョーコは茂みの周りを円を描くように撫でたかと思うと、中指を女性の最も敏感な部分へ持って行き―――ここで唇を開放してやる。
「あ!あ!あひゃぁァァッ!!」
アヤナの悲鳴に近い叫び声が、部屋中に響き渡った。
フーッ・・・。
リョーコは煙草の煙を宙に吐き出す。裸のままで、ベッドに腰掛けながら。
その横では、アヤナが汗だくで横たわっている。まだ息が荒い。
ハードボイルド系洋画のワンシーンのようだが、あちらのように男と女ではなくて、こちらは女と女。
リョーコは煙草を吹かしつつ、アヤナの顔を横目で見る。息はまだ荒く、目はトロンとして光が無く、表情は締まりが無い。
フーッ・・・。
煙草を灰皿で揉み消し、ボリボリと頭を掻く。そしてもう一度、アヤナに目をやる。
(あー、こりゃ・・・ちょっとヤリすぎたかもしんない)
リョーコは少し、いや結構、後悔していた。
そもそも何故二人がこうなったのか。その発端は今から一時間程前に遡る。
休日の午後だというのに、リョーコは暇を持て余していた。
今日は家庭教師のバイトは無い。アイは友達の引越しを手伝うと言って朝から居ないし、
その他の友人達もそれぞれ予定があるとかで誰も捕まらない。奴隷のセージは電話にさえ出やがらない。
ボケーとテレビを見ているのもいい加減飽きたところで、手持ちの煙草が全て切れた。
暇な上に煙草が無いという状況は、彼女にとっては苦痛以外の何物でも無い。
表へ出て煙草を1カートンまとめて買い、少しでも時間を潰そうと駅前の書店に入りパラパラとファッション雑誌を捲っていると、
リョーコの耳に、聞き覚えのある声が入ってきた。
「この参考書を探してるんですけど・・・」
んー?とリョーコが声の方に顔を向けると、そこにはレジの店員にメモらしき紙を見せている、茶色がかった長い髪の少女が一人。
「アヤナじゃない」
応対していた店員のすまなさそうな表情からするに、どうやら目当ての本は置いてなかったようだ。アヤナは残念そうに首を振ると、書店から出て行く。
と、ここでリョーコの脳内に、先日教え子のリンコと交わした会話がパパパパッと蘇った。
『最近アヤナちゃん変なんです』
『変?どこらへんが?』
『最近よく溜め息をついてるんです。それに時々ボーッとしてるみたいで・・・。
この前授業中も先生の話をよく聞いていなかったらしくて、名前呼ばれてとっても慌ててましたもん。今までそんなこと一度も無かったのに』
『んー?(それはそれは、乙女の麗しき悩みってヤツでないかしら)』
『私、ちょっと心配なんです。悪い病気なんじゃないかって』
『あー、病気と言えば病気かもしれないわね』
『えっ?中村先生、心当たりあるんですか?』
『ちょっとね(最近のアヤナの態度から察するに・・・マサ絡みかもしんないわね)』
『あっ、そう言えばもう一つ』
『んっ?何?』
『溜め息なんですけど、小久保君の方見ながらつくんです・・・ってもしかして!』
『ほほー?(あー、こりゃ確定かなぁ)』
『小久保君にお金貸したけど、まだ返してもらってないとか!』
『・・・ほほー(アンタ天然にも程があるわよ。うーん、しかしこれはもう間違いないようね)』
キュピーン!
会話の再現が終了したのと同時に、見えない豆電球がリョーコの頭上で点灯する。
ファッション雑誌をパタンと閉じ、元のスペースに置くと、リョーコは「暇潰しの種」の後を追った。
あっという間にリョーコはアヤナに追いついた。
「アヤナじゃない?」
あくまでもさり気無く声をかける。
「お姉さま?」
驚いた様子でアヤナが振り向く。こんなところで出会うとは思っていなかっただろうから、当然だ。
「何してんの?」
書店での顛末を見ているので何してるのも何もないものだが、ここでのポイントは先程と同じく、
あくまでもさり気無く、である。ワザとらしく行動して警戒されてはいけない。
「地理の勉強で参考書が必要になったので、探しにきたんです。そういうお姉さまは?」
煙草を買いに出て、立ち読みしてるとアンタが目に入って、ちょうどいいやからかって暇を潰そうと思って追いかけてきた―――などと素直に言うリョーコではない。
「ん、ちょっと煙草を買いにね」
とだけ答えて、煙草の入ったビニール袋をアヤナの目の前に持ち上げる。さあ、ここからが彼女にとっては演技のしどころだ。
アヤナの顔をまじまじと見つめ、はて?という感じで首を傾げて考え、わかったとばかりにポンと手を打つと、うんうんと訳知り顔で頷く。
「な、何ですか?」
「いや・・・あんた、なんか悩んでるでしょ?」
「へっ?」
「いや、そういう表情してるから」
「そ、そうですか?」
「うん。・・・ズバリ男関係で」
「えっ何でわかっ・・・むぐむぐ」
慌てて舌を止めてももう遅い。有利な情報を元に会話を誘導するのは彼女の十八番だが、アヤナは見事それに引っかかってしまった。
「ホー、やっぱりそうか」
「いっいえ違いますそんなことないですありえないですこの私が男で悩んでるなんて」
常に冷静に、合理的に行動しようと考えている人間程、不意を突かれて弱い者は無い。今のアヤナの反応は「はい、男で悩んでます」と大声で言っているようなもんである。
「よしわかった。皆まで言うな」
ここでのポイントは強引さ。
「私が相談相手になってあげよう。この性の、もとい愛の伝道師中村リョーコが」
「はっ、はひ?」
リョーコはポンポンとアヤナの肩を叩き、真っ直ぐ目を見つめて出来る限り優しい口調で囁く。
「私はアンタのお姉さまなんだから」
さり気無く、そして強引に、最後は親しげに―――。会話の魔術にアヤナ、あえなく陥落。
「私のマンション、こっから近くなのよ。とりあえずついといで」
と言って歩き出す。アヤナがついてくる気配を背中越しに感じて、リョーコはニヤリと笑った。
「ま、お茶でも出すからくつろぎなさいよ」
「は、はい」
リョーコが紅茶のティーパックを取り出し、カップにお湯を注いでいる間、アヤナは所在無さげに部屋をキョロキョロと見回している。
「どーぞー」
「・・・有難うございます」
紅茶の入ったティーカップを机の上に二つ並べると、リョーコはアヤナの向かい正面に座る。
アヤナがカップを取り、口につけたその瞬間。
「マサヒコでしょ?」
「むぐっぶっ、あっ、熱・・・!」
むせ返るアヤナ。
単刀直入、一刀両断、落ち着く前に本題に入りいきなり結論から語りだすことでペースを握る。これもリョーコの十八番。
「マサヒコが好きなんでしょ?」
さらに追撃。困惑したところに避けようの無い事実を突きつけて抵抗力を削る。そうこれもリョーコの十八番。
「でもアンタ知ってる?」
「ミサキちゃんもマサのこと好きだってこと」
「家近所で幼馴染だし可愛いし」
「マサもまんざらでもないみたいだし」
「周りから見てもお似合いってゆーか」
怒涛の突っ張り。反論の余地さえ与えずに言葉を繰り出し、そこに不安要素を盛り込むことで完全に思考力を奪う。ああ、これもリョーコの十八番。
「で、どうなわけ?やっぱりマサのことが好きなの?」
ここでスタートラインに一度戻り間を置く。アヤナは完全にリョーコに呑み込まれてしまい、
目線がふらふら口がパクパクの自我喪失状態に陥ってしまっている。
「そうなんでょ?」
アヤナ、後ろは断崖絶壁。墜落寸前。
「そうなのよね?」
ニコーッ。リョーコ、トドメの一撃。抗いようのない微笑み爆弾発射。そして見事命中。
・・・コクン。弱々しく頷くアヤナ。
「やーっぱりぃー♪」
ここまで、アヤナ完全になすがまま。リョーコの暇潰し大作戦第一次計画、ここに完了・・・。
アヤナはリョーコの前で自分の気持ちを認めてしまったことに(注:本人に否は無い)動揺し、蒼白になって凍り付いている。
茶をすすりつつ、ニヤニヤとそんな状態のアヤナを見て楽しむリョーコ。まったくもって鬼である。
たっぷり10分は経ち、アヤナが動揺から回復の兆しを見せ始めた時、リョーコは容赦無い攻撃を追加する。
「やっぱり優しいから?」
アヤナはまた固まる。完全に図星。あまりにわかり易い反応に、リョーコとしては腹を抱えて大笑いしたいところだが、
〜アヤナ自身からマサヒコへの想いを語らせてその恥じらいっぷりを楽しむという名の暇潰し大作戦第二次計画〜のためにはここはグッと我慢の一手。
もう少し、『相談にのってあげる優しいお姉さん』を演じなければならない。
さあ、お姉さんに全て話してごらん・・・という風にじっと目を見つめ、悠然と微笑む。
数分程経過後、アヤナはゆっくりと口を開いた。
「意識しだしたのは夏の合宿から」「話していると落ち着いて」「笑顔がとても自然で」
「私のことをクラス委員とか胸が大きいとかじゃなくて普通の女の子として見てくれて」
「天野さんが彼のことを好きだっていうのは知っているけど」「気がついたら目で追っていて」
「無愛想なところもあるけど本当は優しくて」「彼の気持ちを確かめたいけど」・・・・・・。
アヤナの口から語られる内容は、ほぼリョーコの想像するところと同じだったが、
顔を赤らめたり青褪めたり、話が前後したり舌を噛んだり、ハイになったりローになったり、
あまりの思春期ど真ん中っぷりに少し苛立ちを感じたけれど、充分に楽しめたリョーコなのだった。
「で、お姉さま・・・。私、どうしたらいいんでしょう?」
「そおねえ・・・」
暇潰しが目的でも何でも、「お姉さんが相談相手になってあげる」と言った以上、何らかのアドバイスはするべきではある。
が、ぶっちゃけた話、リョーコは真っ当な助言は考えていなかったしするつもりも無かった。
今後、よりおもしろい『中学生日誌 愛憎編』を生で拝むためには、彼女の採るべき行動は「アヤナを焚きつける」意外に無い。
「抱かれなさい」
「はへ?」
「抱かれるのよ」
「・・・・・・」
アヤナ、今日一体何度目になるかのフリーズ。
「いいこと、アヤナ。ミサキちゃんという巨大なライバルを出し抜く方法はただ一つ、既成事実を作り上げることよ!」
「それすなわち日本語で性交、英語でセックス、某釣りバカ漫画風に言うと合体!」
「あなたの『初めて』を捧げることで、主体性がな・・・もとい優しいマサはあなたを一番の存在として大事にするはず!」
リョーコは立ち上がり、バシーン!と人差し指をアヤナの鼻先に突きつけ、ずいずいと押していく。
押されて後退し、ベッドにもたれ掛かるように倒れるアヤナ。お互いそのままの姿勢で数秒、ようやくアヤナが復帰する。
「でっ、でも、そんなこと言われても、私には・・・ムゥ」
リョーコは人差し指を鼻先から唇に移し、言葉を塞ぐ。そして妖艶に微笑むと、そのままアヤナの上にのしかかっていく。
言葉で言ったくらいでアヤナが行動を起こすわけがないのはわかっている。ならば、背中を思い切り蹴っ飛ばせば良いだけのこと。
「だから・・・私がレクチャーしてあげようって言うのよ。初めてでもペースを握って彼をリード出来るくらいに・・・」
そう言いながら人差し指を離すと、今度は唇を押し付ける。アヤナはあまりの急展開に身動きがとれない。
思う存分吸い尽くして、一端唇の呪縛を解く。アヤナの口が空気を求めて開かれた瞬間、また唇を落とす。
さらに舌を入れ、口内を蹂躙していく。リョーコは伊達に経験豊富なわけではない。舌技に関しても自信がある。
行為を続けていくうちに、アヤナの体から強張りが無くなっていく。たっぷり数分間舐りまわし、顔を離す。つーっをお互いの唇にかかる銀の橋。
「ごめんねぇ、多分ファーストキス・・・だよね?」
アヤナは答えない。否、答えられない。目の焦点が完全に遠くを向いている。舌技だけで精神を蕩かされてしまったようだ。
んふ、とリョーコはそんなアヤナを見て満足そうに笑い、自分から服を脱ぎ始めた。
リョーコは一糸纏わぬ姿になると、下になっているアヤナの服も脱がし始める。
アヤナはまだ先程のディープキス攻撃のダメージから回復していない。若干の抵抗はあるものの、リョーコはさほどの苦労も無く衣服を取っていく。
アヤナの上着がふわりとベッド下に落ちる。ブラジャーに包まれた、中学生離れした大きさの胸がリョーコの視界に入る。
リョーコと同じくらいか、それよりも少し大きいかもしれない。
(んー、ガキのくせに生意気な)
ちょぴっとだけムカッとするリョーコ。
ブラジャーの上からさわさわと撫で擦ると、ピクピクッとアヤナの体が反応する。だんだんと力を込めていくにつれ、アヤナの瞳が正気を取り戻していく。
「・・・・・・!?お、お姉さまッ?」
もう遅い。こんな体勢になってしまった以上、ベッドでの経験ゼロメートルのアヤナではチョモランマ級のリョーコを振りほどくことなど出来ない。
またしてもキス爆弾投下がされる。アヤナの力が奪われていく。
リョーコはキスを効果的に使いつつ、ブラジャーを、スカートを、ショーツをアヤナから取り去っていき―――。
(いつの間にやら本気になってがっちょりヤッちゃった、と)
もともとそちらのケが無いリョーコなので、ある程度のところで解放してやるつもりだったのだが、
敏感に反応するアヤナの体に興が乗るあまりネチネチネチネチと行き過ぎてしまったというワケだ。
(んー、これはどうごまかしたモンやら・・・)
悩みつつリョーコが煙草を口にした時、不意に彼女の腰に腕が回された。
ぞわわわわわわっ・・・・・・!
全身の毛という毛が逆立つような感覚。ギギギギギギ、とリョーコが後ろを振り向くと、そこには熱の篭った眼差しを向けるアヤナが―――。
「あん・・・お姉さまぁあ」
ぞわわわわわわっ・・・・・・!
付いていた。「お姉さまぁあ」の最後の「あ」の後ろに、ハートマークが確実に付いていた。冷たい汗が首筋に流れ落ちるのを感じる。
「ああ・・・お姉さまぁ〜ん」
すりすりと背中に頬を擦り付けてくるアヤナ。
リョーコの手からポロリと煙草が床に落ちる。
火が着いてなくて良かった・・・・・・などと思えるほど彼女の心は冷静ではなかった。
夕焼けが街を照らす中、リョーコとアヤナは若田部邸へと連れ立って歩いていた。
リョーコは最初一人で帰そうとしたのだが、
アヤナが「お姉さまと一緒に帰りたいぃいん、駄目なら今日はここに泊まりますぅ」などと容赦の無い発言をしたため、このようなことに相成ったのだ。
アヤナはリョーコの右腕にぶら下がるかのように抱きついている。その表情は本当に幸せそうだ。
一方のリョーコは・・・・・・説明の必要はあるまい。
さて、偶然とは本当に恐ろしいもので、見られたくない場面ほど知人に見られてしまうものだ。
コンビニの角を曲がったところで鉢合わせしたのは、誰あろう小久保マサヒコその人であった。
「中村先生と・・・わ、わか・・・たべ?」
アヤナが薄っすらと頬を染める。マサヒコと会ったからでは―――無い。
その証拠に、見せつけるかのように抱きついている腕により力を込めてリョーコと寄り添う。
呆然とする顔一つ、陶然とする顔一つ、そして暗然とする顔一つ。
(もとはと言えばマサヒコ、あんたが蒔いた種・・・いや)
リョーコは空いている手で煙草を取り出して咥えると、同じ手でライターから火を着ける。
(あたしが見つけて、蒔いて、芽をだすまで育てちゃった種、か)
アヤナの心が半日前と全く変わってしまったのは、誰あろうリョーコ本人の手によるもの。
アヤナのマサヒコへの想いがたいして大きくなかった、というわけではなかろう。
リョーコのベッドテクニックが、宗旨替えを起こすほどに強烈だったのだ。
最後の最後で読み違いをして、結局えらいことになってしまう。それもリョーコのある意味十八番。
溜め息とともに、フーッと紫煙を宙に吐き出す。
(さて、どうしたもんでしょ・・・)
リョーコは煙の向こうの夕焼け空を見上げる。当然、そこに答なんて無い。錆色の雲が浮いているだけ―――。
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