作品名 |
作者名 |
カップリング |
セーラー服を濡らさないで |
メリー氏 |
マサヒコ×ミサキ |
「きゃーっ!」
ミサキは叫びながら屋根の下に駆け込んだ。
下校途中、突然雨に降られたからだった。
しかし雨宿りに丁度いいと思われる所が無く、大分濡れてしまった。
「もう・・・・・・、急に降ってこないでよぉ」
スカートのポケットからハンカチを取り出して体を拭くが、
そのハンカチ自体も多少なりとも濡れていたので、
あまり意味がなかった。
「はぁ、すぐに止んでくれるといいんだけど・・・・・・」
家まではそんなに遠くはないが、さすがにこの土砂降りの中
帰ろうとは思わなかった。
と、その時だった。
「うわぁ、濡れる濡れるっ!」
叫びながら現れたのはマサヒコだった。
「マサ・・・・・・小久保君!」
「お、天野が先客だったのか。いやー、まいっちまうよな、この雨。
さっきまで晴れてたってのに」
マサヒコも雨の中走ってきたらしく、全身ずぶ濡れだった。
髪や制服に着いた雨水を払うが、あまり成果を上げていない。
「こ、小久保君、これ良かったら・・・・・・」
ミサキが差し出したのは先ほど自分で使ったハンカチだった。
マサヒコに見えないようにこっそりと絞っておいたのだ。
「え? 悪いよ。天野だって濡れてんだろ? 俺にじゃなくて
自分拭けよ。風邪引くぞ?」
鈍感、唐変木、どちらの意味も当てはまる。
「わ、私はさっき違うので拭いたから。小久保君も風邪引いたら
いけないし」
顔が赤くなるのを必死に我慢して、なんとか言った。
「そうか? サンキューな天野」
そう言ってマサヒコはハンカチを受け取り、体を拭いた。
(はわわわ・・・・・・、さっき私の体を拭いたハンカチが、今
マサヒコくんの体に触れてる〜)
ミサキが邪な妄想をしていると、マサヒコは体を拭き終わった。
礼を言おうとミサキの方を見た。
「洗って返すから。あしたぁっ!」
突如として奇声を上げてマサヒコは顔を逸らした。
「? どうしたの小久保君」
ミサキは首を傾げる。
「いや、そのな天野・・・・・・。とっても言いにくいんだけど、
言わないともっとまずいからやっぱり言うんだけど・・・・・・」
「え、何?」
マサヒコの顔がどんどん赤くなる。
「せ、制服が雨で濡れてるだろ? だから、その、す、透けてる」
尻つぼみに小さくなる声。
「え・・・・・・きゃー!」
透けたブラを両手で隠して、マサヒコに背を向けてしゃがんだ。
「いやっ、見たかったわけじゃないし、はっきりも見てないからな!」
「いやーっ! こっち見ないでぇー!」
マサヒコが振り返った気配を感じて叫ぶミサキ。
「わ、悪いっ」
慌てて顔を逸らすマサヒコ。
ふと気づいたように着ていた制服を脱ぎ、ミサキの肩にかけた。
「へ?」
「ぬ、濡れてて気持ち悪いかもしれないけどさ、こうすれば見えなくなる
から。め、迷惑だったか?」
恥ずかしさと照れから頬がうっすら赤く、なぜか掻いてしまった。
ミサキはポーッとマサヒコに見とれ、ゆっくりと立ち上がると首を
横に振った。
「ううん。ありがとう小久保君。嬉しいよ」
笑顔で言われると余計に照れてしまう。
「あははは、き、気にすんな」
やっぱり顔を逸らしてしまうマサヒコ。
ミサキはマサヒコの制服をぎゅっと握り締めて、目を閉じた。
(ふふっ、何だか温かいや・・・・・・)
それからしばらくして雨はようやく止み、二人は一緒に帰宅した。