作品名 作者名 カップリング
モヤモヤなもや メリー氏 -

 近頃私の胸にもやがかかることが多くなった。
 理由は分からない。でも最近意識し始めた人がいるのは事実。
 私と彼、小久保マサヒコが知り合うきっかけになったのは、
 二年生に進学し、そのためクラス替えがあったからだ。
 もともと彼を微塵にも意識したことはなかった。

 なぜならその時私が最初に意識していたのはライバルである天野ミサキ、
 その人だった。
 彼女は彼と幼馴染という関係らしく、普段からとても親しそうに
 している。
 傍から見ても分かるほど、彼女は彼を意識していた。
 どう考えても彼女は彼が好きなのだろう。
 だからこそ私は余計に彼を見るようになったのかもしれない。

 彼には他にも仲の良い女の子がいます。
 的山リンコといい、はっきり言って私にはアホにしか見えません。
 でも、彼と彼女を繋ぐ共通点は多く、時間を共にしていることが
 多いはず。
 それを考えるとまた私は彼を見るようになる。
 分からない。不思議だ。

 彼には濱中アイという家庭教師がついている。
 私はどうも彼女が苦手だ。
 的山さんと同様に行動が読めない。
 彼女は家庭教師という立場であるため、彼と一緒の時間がある。
 それは私との時間に比べれば、短いものだけど、内容の濃さが
 違うと思う。

 私が思うに彼の周囲には女性が多いです。
 どうしてでしょう。気づけば私は彼の動向を追っています。
 彼が天野さんと楽しそうに話をしている。
 彼が的山さんに呆れた表情でツッコミする。
 彼が濱中先生に質問し、要領を得ると笑いかける。
 それらを見る度に私の心にもやがかかり、ますます濃くなっていく。

 彼のことを見ないように見ないように意識すればするほど、
 私の目は彼を追う。
 だから目を閉じてそっぽを向いても、彼の見せる様々な
 表情が私の脳裏によみがえる。
 嬉しそうだったり、可笑しそうだったり、げんなりだったり。
 何度頭を振ってもそれらは消えることなく、私の頭についてくる。 

 私の心のもやはいったい何なんだろう?
 彼と話ている間はもやが少しずつ薄れてきて、私の心が
 晴れ渡っていく。
 誰かに相談してみよう。
 天野さん、的山さん、濱中先生はダメだ。
 理由ははっきりとないけど、この三人には相談してはいけない気がする。
 そうだ、お姉様に相談しよう。
 でも、でももう少しだけ待ってみようと考えてしまう。
 理由は分からない。でも何かが変わるのは分かる気がする。
 私は今が好きなんだろう。だから、相談するのを遅らせるんだ。

 彼の見せる優しさが今でも心に残っている。
 海に皆で旅行した時、思い出すと恥ずかしいけど、彼に水着を
 取られた上に、私が悪いのだけれど初めて異性と一緒に夜を
 共にした。
 私の”責任取って”という発言に、彼は困ったような表情をさせて、
 でもその後に行った縁日で、金魚を取ってくれた。
 とても嬉しくて、その金魚は今でも私の部屋で飼っている。
 両親に大き目の水槽も買ってもらった。

 どうしてそんなことをしたのだろう?
 そう、金魚といえども生き物をむやみに殺すのが嫌だったからに
 違いない。でなきゃ・・・・・・、でなきゃそんなことしなかった
 と思う。
 
 分からない。分からない。このモヤモヤが何なのか分からない。
 苦しいはずなのに、切ないはずなのに、どこかでこのモヤモヤが
 あることに嬉しいと思っている自分がいる。
 彼のことを考えるとどっちも強くなり、何とも言えない気持ちになる。

 この気持ちをすっきりさせたい。
 どうしたらいいんだろう・・・・・・?
 そうだ、彼を買い物に誘おう。
 買い物は嫌いじゃないし、少しは気が紛れるはずだ。
 そして両手に抱えられないほど買って、それを彼に全部持たせよう。
 そうだ、それがいい。
 だって、まだ責任を全て取ってもらってないんだし。
 彼と一緒に買い物。
 そう思うと心がスッキリする。
 どうやら今日はぐっすり眠れるようだ。
 おやすみ、小久保君・・・・・・。

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