作品名 作者名 カップリング
「悪い心」 マリリスト氏 リンコ×ミサキ


「ねえ、ミサキちゃん」
「なあに?」
その日リンコは、テスト直前の追いこみのため、ミサキ宅へと勉強に来ていた。
リョーコは担当の日ではなく、マサヒコもひとりで集中してやりたいからと、この日は二人だけだった。
二人で教えあいっこをしながら勉強をはじめ、すでに一時間が経過しようとしている。
「ミサキちゃんってさあ……」
「ん?」
「オナニーする?」
紅茶の入ったカップを持ち上げて、口へと運ぼうとしていたミサキの手がピタリと止まる。
「ああ、ひとりエッチ? それは……ん? へ?」
一瞬、何を言われたのかわからなかったミサキ。
冷めかけた紅茶が、ボトボトと床にこぼれる。
「あー、カーペット汚れちゃうよ、ミサキちゃん」
「なっ、あ……!? リ、リンちゃ、今なんて……?」
「ミサキちゃんって、オナニーするの?」
「オ、オナ……!?」
そこまで言って、ミサキは自分の口を抑える。
「しないの?」
「……ちょっと待って、リンちゃん。そ、そういうことって、いくら女の子同士でも」
「……」
「わ、わかるでしょ? リンちゃんだってそういうこと訊かれちゃったら……」
「……特に」
「特に!?」
ミサキはこめかみを抑え、現状を整理するために思考回路を働かせる。
リンコはけして、不順な動機、悪意などがあってこのような事を訊いてきたのではないだろう。
いつもの天然のノリで軽く訊いてきたにちがいない、そこまではわかる。
しかし、いくらなんでも話題がハードではなかろうか。
リンコに視線を合わせると、いつものように子犬のごときつぶらな眼差しで、こっちを見ている。
本当にただ純粋に、尋ねただけなのだろう。ただ、質問の選定がおかしかっただけだ。
「ミサキちゃん?」
「あのね……あ〜、その……」
ミサキはテーブルの横のベッドに視線を移し、前夜を思い出す。
つい昨晩、このベッドの上で自分自身を慰めたばかりだった。
それだけではなく、ミサキはこの時期の忙しい中、ほぼ毎日自慰に耽っている。
オカズはもちろん、マサヒコである。
彼の笑顔を思い出して胸をときめかせ、彼の声を思い出して紅潮し、彼に抱かれる妄想に耽って秘部を虐める。
だがそれをここで、馬鹿正直に答えるつもりはなかった。自分の恥部をわざわざ曝け出すような趣味はない。
たとえそれが、自分の親友であり、妹分のような存在のリンコであってもだ。
「私は……答えられない。どうしてそういうこと訊くの?」
「え? うーん……リョーコ先生がね、好きな人のことを考えると濡れるって教えてくれたんだけど、
好きな人のことを考えるとオナニーするってのも教えてくれたんだよね。で、ミサキちゃんは小久保君好きなんでしょ?」
「うっ……! そ、それはそうだけど……」
「じゃあ、やっぱり小久保君のこと考えてしてるの?」
リンコが追い詰めるように、ずいっと鼻を近づける。
ミサキの顔が、耳まで真っ赤になる。




「す、好きだからってしてるとは限らないよ!」
「えー……でもミサキちゃん、かなり爪短いよ? オナニーする人は爪を伸ばさないらしいし。
 ミサキちゃんが付け爪してるとこ、見たことないし。この部屋には付け爪見当たらないよ?」
「えっ、あっ……」
まるで名探偵だった。まさかの論詰め攻勢……リンコはときどき、こういう場面で頭が働く。
しかし、それで認めるわけにもいかない。認める理由などなく、
「だからって、やってるとは限らないでしょ! そ、そういうリンちゃんはどうなの?」
「え、私?」
リンコは突然の切り返しに慌てるでもなく、二コリと薄く笑って答えた。
「してるよ」
「え?」
「私も、好きな人のこと……考えながらしてるよ」
「……へっ? うそ……」
それはミサキにとって、あまりにも意外な回答だった。
吹き込まれた知識ばかりか先行してくる天然少女のリンコが、まさか自慰をすでに経験しているとは……。
言葉だけは知っていても、その実意味は理解していないというのがリンコのスタンダードだったはずだが……。
「リ、リンちゃん、それ、ほんと?」
「うん」
「え、でも……あ、そうなんだ、へ、へぇ……」
「?」
「あ、あのね、リンちゃん。そういうこと、他の人の前じゃ絶対言っちゃダメだよ?」
「やだな〜、こんなことミサキちゃんにしか言わないって!」
「私に言われても困っちゃうけど……あ、さっき『私も』って、私はしてなーい!」
嘘だけれど……。
それよりもミサキが気になるのは、先程のリンコの笑みに、少しばかり翳りがあったことだった。
気のせいかもしれないが、まるで答えることを苦痛にしているかのようだった。
「でも、それだとリンちゃん、好きな人がいるってことなんだよね?」
「うん!」
(マサ君のことじゃないよね……)
それもありえない話ではないと思った。最近とみに仲のいい二人だった。
「ミサキちゃんは、したくならないの? 好きな人のこと考えたら、胸がドキドキするでしょ?」
「う、うん……」
「私もすぐドキドキしちゃって、それでつい……エヘへ」
恥ずかしそうに、はにかむように微笑むリンコ。話している内容を除けば、十分可愛らしい恋する乙女。
「そっか〜、ミサキちゃん、してないんだ……」
「そうそう……さ、お勉強再開しよ?」




「でもミサキちゃん、さっきベトベトで汚れたティッシュがごみ箱の近くで落ちてたよ」
「え、うそっ!?」
ミサキは急いで近くの小さなごみ箱へと向う。しかし、ごみ箱の中にも周囲にも何もない。
そういえば朝、登校する前にごみ箱の中を入れ替えたばかりであることに気付いた。
「あっ! やっぱりミサキちゃん、してるんだ!」
してやられた。まさに無邪気という満面の笑顔をするリンコ。
しかし、ミサキは何も言わない。空っぽのごみ箱に向ったまま、肩を震わせる。
「……ミサキちゃん?」
「……ひぐっ、ひどいよ、リンちゃん、ひっ……親友なのに、どうして、ぐすっ、こんなことするのぉ……?」
「ミサキちゃん、ミサキちゃん……」
「やだもぅ……ひっ、こんなの恥ずかしいよぉ……」
「ごめんね、ごめん……」
リンコは大粒の涙をぽろぽろと流すミサキへと、ゆっくりと近づく。
「ちょっと、意地悪しすぎちゃった……ミサキちゃんのこと大事なのに、ごめんね……」
リンコの両手が、ミサキの小さな肩にかけられる。スカートのポケットからハンカチを取り出した。
「ごめんね、ミサキちゃん、ごめんね」
「リ、リンちゃんだって……ぐすっ、こんなことされたらイヤでしょ……?
 ひぐっ、私、マサ君のこと好きなの……こんなことしたって、別にいいでしょ?
 リンちゃんだったら、私の気持ちわかるでしょ? リンちゃんだって、好きな人……」
「……ミサキちゃん」
その時、ミサキの鼻をリンスの香りがくすぐると、リンコの顔がミサキに接近し、そのまま頬に口付けた。
「ひゃっ! リ、リン……!」
「ごめんね、ミサキちゃん。私、鈍感だから、ミサキちゃんのことわかってあげられないんだ」
「へっ、あ、いやっ……」
リンコの舌がミサキの頬を流れる涙をペロペロと舐めとる。ミサキは身をよじり、抗っていた。
やがてすぐにミサキの身体はいともたやすく押し倒された。リンコは素早く、ミサキの両手をハンカチで縛る。
「リ、リンちゃん、何するの? やめて!」
「ミサキちゃんが悪いんだよ? 小久保君のこと好きだとかいうから。私……」
「リ、リンちゃん? まさかリンちゃんもマサ君のこと……」
「私、頑張ってるつもりだけど、ダメな女の子だから、ちゃんとしたやり方とか、わかんないんだ。先生にもすぐ怒られちゃう。
 こんなことしちゃうのが、自分でもイヤになっちゃうよ……でも、これ以外見当たらないんだ、ミサキちゃん」
そう言うと、リンコの唇がミサキの唇を塞いだ。桜の花びらのような柔らかな二つの唇が、重なり合う。
「ん……! むぅ、んむ……!」
ミサキには何がなんだか理解できなかった。なぜ親友の女の子に押し倒されているのか、なぜキスをされているのか。
それがファーストキスであることに気を配れないまま、ただ身体を動かして抗うしかなかった。




唇が離れると、二人の間に唾液の糸が引いていた。
「んむぅ……ふ……ぷはっ! リンちゃん、なんで……」
「ミサキちゃんの唇、柔らかいね」
「な……!」
いつものように無邪気な表情。しかしリンコの瞳には、いつものようなつぶらな輝きは宿っていなかった。
悪意のようなものを孕んだ、濁った瞳だった。
「ミサキちゃんの胸、小さい……体操効いてないんだね。私も効いてないんケド……」
「リンちゃん、もうやめよ?」
「んーん、やめない」
リンコの手が、ミサキのスカートをゆっくりと引き上げていく。やがて、薄いピンクのショーツが露わになった。
恐怖からか、太ももはぴったりと閉じている。
「ミサキちゃん、ここ、触るね。ミサキちゃんの大事なトコロ……私、触っちゃうよ?」
「やだっ! お願いリンちゃん! やめて……今なら許してあげるからっ……」
「ごめんね、ミサキちゃん。ヘタクソかもしれないけど、私、絶対気持ちよくしてあげるから……」
そう言うと、リンコは右手をへその方からショーツの中へと忍ばせた。
「いやっ!」
「ミサキちゃん、いつもどうやってしてるの? ミサキちゃんはどこを触ったら気持ちよくなるの?」
「わかんない……! そんなのわかんないよ……」
リンコの指が、ミサキの秘部に触れる。生まれて初めて、他人に秘部を触られたミサキには、感触など感じる余裕もなかった。
「ミサキちゃん、濡らさないと痛いよ……? ミサキちゃんが痛い思いするのイヤだよ。気持ちよくなってほしいもん」
「そんなこと言われたって……やだよ、怖いよリンちゃん……」
リンコは決心したように、ミサキのショーツを素早く抜き取った。若草のようにうっすらと陰毛の生えたミサキの下腹部が外気に曝される。
羞恥のあまり声も出ず、ただ固く目を閉じて、ミサキは身体を強張らせる。
「リンちゃん、お願い……痛くしないで……」
「そのつもりだよ。私だって、ミサキちゃんを痛がらせたくない」
ぴったりと閉じていたミサキの太ももがゆっくりと開かれ、ミサキの小さな秘部がリンコの眼前に現れる。
「ミサキちゃんの、すごくキレイ」
リンコの舌が、ミサキの秘部をぺロぺロと舐める。リンコなりに、ミサキに快感を与えようと必死になっていた。
しかしミサキには、快感よりも違和感や異物感のほうが先行していた。
できることなら早く終わってほしい――。
今はただ我慢するしかない。その気持ちが快感からミサキを遠ざけていた。
リンコはしばらくの間、懸命に舌を動かした。しかし、ミサキが快感を得る事はなかった。
「やだ……ミサキちゃん、全然濡れない……どうしよう、私、へたっぴだ……ミサキちゃん、ごめんね……」
慌てる様子をみせるリンコ。口の周りを、唾液で汚している。
「あ、そうだ……ミサキちゃん。私じゃなくて、小久保君にされているって、考えて」
「へ……? マサ……君?」
「好きな人の事を考えると、濡れちゃうんだよ?」
再びミサキの秘部へと顔を沈めるリンコ。再び舌の愛撫を開始する。
(マサ君にって、そんな……でも……)




ミサキは目を閉じ、マサヒコの笑顔を思い浮かべる。
(今日は……お話したな。ちょこっとだけど、勉強に頑張ってるって、大変そうだった)
ミサキの胸の鼓動が、いつものように高く高鳴った。
(マサ君って、やっぱり、細身だけど、身体とか大きくて……)
ミサキの胸中が、愛しい想いで膨れあがる。
リンコはミサキの異変を感じた。ミサキの秘部から、少量だが愛液が漏れてきたのだ。
それと同時に、ミサキの声が少しだけ荒くなっていた。それは、ミサキの中のマサヒコへの愛を示しているようだった。。
(ミサキちゃん、濡れてる。やっぱり小久保君のこと、すごく大好きなんだ……)
「んっ……あっ、ひあっ、ふああ……!」
ミサキの身体が小さくはねる。
自分の一番恥ずかしい部分を、マサヒコに舐められている様を思い浮かべながら、快感を受け止めていた。
ピチャピチャという卑猥な音が響く。ミサキの愛液は、時間と共に量を増していった。
「ひああっ! 気持ち……いいよぉ……!」
「んむ……ミサキちゃんのここ……すごくおいしい……」
太ももでリンコの頭を強くはさむ。身体をくねくねとよじらせ、自慰では得られない初めての快感に身をゆだねる。
リンコは顔を上げると、ミサキの上に覆い被さるように身体を持ち上げる。
「そろそろ挿れるね……?」
リンコの指が、ミサキの膣内に進入する。さすがに指が丸々一本入るなどということはできなかったが、
十分に濡らしていたおかげで第二間接まではすんなりと受けいられるようになっていた。
「ミサキちゃん、痛くない?」
「はあっ……だ、大丈夫……」
(ごめんね、ミサキちゃん)
リンコは指の律動を開始した。ミサキの中は熱く濡れぼそっている。
「あっ、あっ、ああん……」
指が動くたびにミサキの身体は反応を示し、リンコの指をきゅっと締め付ける。
処女と使いこなされた名器の間をさまようような絶妙な締まり具合だった。
「あっ、ひあっ、気持ちいいっ……私、おかしくなっちゃうよぉっ……!」
「そんなに気持ちいいんだ……いつでもイっていいからね、ミサキちゃん。
 よかったよ、私みたいなドジでマヌケな女の子でも、ミサキちゃんを悦ばせられて」




「ひあっ……マサ、ちゃんっ……好き、マサちゃあん……!」
「……!」
「マサ……んむっ!」
リンコは再び、ミサキの唇を塞いだ。舌を挿入し、ミサキの口内を乱暴に掻き回す。
「むぅ……ぷはっ、はあっ、ああっ!」
「ミサキちゃんお願い……その名前は呼ばないで……!」
「ふえっ? な、なに? あっ、ひあっ、ああっ!」
「ミサキちゃん、今だけは……」
「あっ、ひあっ、も、もう、イッちゃ……」
「ミサキちゃん、イッていいよ、イッて!」
「だめぇっ、もう、ひあっ、ひゃああああっ……!!」
ミサキの身体が大きくはね、リンコの指がちぎれそうなほどに締め付けられる。
マサヒコに抱かれた妄想を抱いたまま、ミサキは大きな快感の波に飲まれ、果てていった。

「……ミサキちゃん、ごめんね」
ベッドに座って衣服の乱れを整えるミサキ。リンコは肩を落としたまま帰宅の準備をしている。
二人は全く目を合わせていない。
「……リンちゃん」
「……私みたいな女の子が、ごめんね。今日はとっても私の中の悪い心が、暴れちゃったみたい。
 ドジでマヌケなのに、こんなに悪い女の子で、本当にごめんね」
「いいよ……もう」
リンコはこぼれそうになった涙を、一生懸命堪えていた。
「ミサキちゃん、本当に小久保君のこと好きなんだね」
「……うん」
「私、ミサキちゃんのこと応援するから。マサヒコ君がミサキちゃんに振り向かないわけないよ」
「ありがとう……ねえ、リンちゃん。今日はちょっとおかしなことがあったけど、私達、親友だよね」
「……いいの?」
ミサキはにこりと微笑んだ。その顔をリンコがみることはなかったが、リンコにはなぜか、ミサキが微笑んでいる事がわかった。
「ありがとう、ミサキちゃん、ありがとう……私、そろそろ帰るね」
「あっ、リンちゃん……リンちゃんの好きな人って、もしかして……」
立ち上がろうとしたミサキ。リンコはくるっと振り返り、人差し指を立ててミサキの唇に当てる。
「それは言わないで……ね?」
リンコはそれだけ言い残すと、天野宅を後にした。
人差し指を自分の唇にそっと当てる。愛しい人の唇の感触を確かめながら、家路を歩いていく。

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