作品名 作者名 カップリング
瞬間、股、開いて 鎌田氏 アイ×痴漢女


駅のホームから見上げる空は、全面ねずみ色の陰鬱な雰囲気で、朝からずっと強い雨が降り続いていた。
(うわぁ……空がねずみ色だ……。)
アイはぽかんと口を開けたまま空を見上げていた。今日はマサヒコ宅で授業のある日だ。
ホームの屋根に雨がぶつかって、バラバラバラ、と大きな音を立てるのがおもしろい。

(ほんとにネズミが降ってきたら……どうしよう……。きっとペストが大流行して……。)
間の抜けたことを考えていると、待っていた電車がホームに滑り込んできた。
雨に濡れた車体は妙にリアリティを持っていて、逆に少し不思議な感じがしたが、別段気にもかけずにアイは、
電車とホームの間が広く開いている場所もあるので、足元に気をつけて乗車した。

空いている席が無かったので、仕方なくアイは奥の扉の前まで進み、手すりにつかまる。
(まぁ、小久保君ちの駅そんなに遠くないし、いいか)
のほほんとそう思っていたのだが、次の駅から事情が変わった。

扉が開き数人が降りると、その何倍もの人数が、どかどか乗り込んでくる。
先ほどまでとはうってかわって、すっかり車内は満員電車の様相を示していた。



(うう……身動きが取れない……芋洗いのすし詰めね……)
人の波に押されて、アイは扉に押し付けられる格好になった。無い胸でもこう押し付けられると痛い。
胸だけでなくて尻や腰も、人の圧力のせいで苦しい。
もともとの天気と、人の吐く息で、車内の湿度が高くなる。皮膚がぺたぺたするような感覚がある。

(あー……、どうしようもできないよ……柔道だったら押さえ込みで負けよもう……)
またしても馬鹿なことを考えながら、アイはこの状況を耐えることを決意した。
サラリーマンの体温だとか、男の体臭だとか、他人の体の感触だとか、余計なことを考えると気もち悪くなってしまうので、
ただ黙ってやり過ごすのが一番楽なのだ。幸い目的の駅まではそう何駅も離れているわけではない。
そう考えながら、ぼーっと焦点をあわせずに町を眺めていると

「ひゃん」
おしりに手のひらのあたる感触があって、チワワの鳴き声のような、間抜けな声が漏れてしまった。

(な、なに?まさか……痴漢!?)
痴漢かと思って身構えたが、その後しばらく何事も無かったので
(なんだ……たまたま当たっただけか……そりゃ、この満員具合ならそんなこともあるわよね……傘とか、手荷物を持ち替えただけかも……)

ふぅ、と胸を撫で下ろそうとしたそのとき、ふたたびおしりに掌があてられた。
しかも、今度はしっかりと、おしりを包み込むような形で。
驚きと恐怖で、びくぅ、と体が震えてしまう。




(や……やっぱり……ち、痴漢!!……いやっ……撫で……!)
包むように当てられた掌が、スカートの上から優しくアイのおしりを撫でまわし始めた。
あくまでも優しく、ほんの少しの圧で、アイのおしりを舐める様に撫でまわしていく。

(ん……!やぁ……、やめ…て……。そうだ!こ、こんなときは確か……!!)
アイは以前中村に教わった痴漢撃退方法を試そうと、右手を後ろに回し痴漢の指を掴む。
相手の指を一本掴み、力の限り関節を逆へ曲げる。

(この指を……こうして……ええいっ!)
単純だが、これは痛い。

「いたぁーーーーーーーーー!!!!!!」
アイの真後ろから、叫びが聞こえた、が、それは予想外の声だった。
(あれ……今、私、ちゃんと痴漢の手を握ったよね……?)
つい、ぱっと手を離して考えてしまう。

突然の叫び声に、じろり、と、視線が集まる。
「ああ、いや、なんでもないんです。ちょっと、足を……。」
弁明するその声も、明らかに女性の声であった。



(あれ!?しっかり痴漢の手を握ったはずなのに!なんで女の人が……!?)
理由が分からずに狼狽するアイに、後ろの女性が小さく囁く。

「……もう……痛いじゃない。」
「ご、ごめんなさい!なんか間違えたみたいで……」
アイは自分の過失だと思い、なんとか顔だけ後ろを向けて謝る。
やはり後ろに立っている人物は、メガネをかけたスーツ姿の女性で、OLのようだった。
痴漢と間違えてしまって、その上あんなことまでしてしまったと、アイは動揺したが、女性は優しく微笑み、

「ううん、いいのよ。」
と許してくれた。やさしい人でよかった、少しほっとしたが、女性はさらに言葉を続けた。

「……間違いじゃないんだから。」
「へっ?」



目を点にするアイだったが、すぐにその言葉の意味が飲み込めた。再び、おしりへの愛撫が始まったのだ。
「んぅ」
予想外の快感に、またしても変な声が出てしまった。
(ええええええ、なに、痴漢じゃなくて……!痴女!?そ、そんなあ!……あっ)
アイが驚いて身を硬直させているときも、愛撫は続く。
やさしく、やさしく撫でられる中に、稀に、にぎにぎ、と愛撫が変化してそのたびに、背中がぴくん、となる。

「緊張しないで……リラックスして……大丈夫……男みたいに乱暴にしないから……」
女は耳元で囁く。

(緊張しないで、って言われてもぉー!)
(……あああ、こんなことなら先輩から痴漢撃退法だけじゃなくて痴女撃退法も習っておくんだった……)

軽いパニックの中で、がちがちに身を固めるアイの様子をみて、
女はアイを実力でリラックスさせることにした。

「大丈夫……何も考えないで、ただ……」
女は耳元でそこまで言うと、前歯でアイの耳たぶを軽く挟んだ。
背中に電流が走ったように、びくぅ、と体が縮こまるが、甘噛みと舌での愛撫を繰り返されるうちに、
体の力が抜けてきて、縮こまった身体も弛緩し、目がとろん、としてきた。



(あぁっ……そんな……耳……なんて……んんっ……キモチイイっ……)
アイの変化を敏感に察知した女は耳への愛撫をやめ、ゆっくりとアイにたずねる。

「……きもち、よくなってきた?」
恥ずかしさと愛撫の効果で耳を真っ赤にしたアイは、息を吐き出しながら、こくり、と静かにうなずいた。
うなじが汗ばんできているのが自分でも分かった。

(って、素直に返事しちゃった!いや、そうじゃなくて、痴漢なのに、きもちよくて、男でなくて、
 女の人にこんなことされちゃってて、ここは電車の中で、この人とは会ったことも無くて……
 もう、なにがなんだか、わからないよ……ぅん)

女の手がおしりから太ももの裏へ下がっていった。タイトなスカートのすそに沿って指を横に動かす。
素肌に触れるか触れないかのところで指を往復させ、焦らす。

(ううう……ぞくそくするぅ……)



車内の気温のせいもあり、アイの顔はすっかり上気して、頬まで赤く染まっている。
その様子を見て女は、焦らすのをやめ、生足のふとももに侵攻する。
責める場所がふとももにかわっても、その触り方はいままでどおりあくまでも優しく、
手のひら全体を使ってふとももの裏をゆっくりと、広く撫ぜる。

「んふふ……肌、すべすべね……。うらやましいわぁ……。」
耳元で女が小さく囁く。その小さな声の波にも体がぞくぞくしてしまう。

「どう……優しく触られると、逆に意識を集中させちゃうでしょう……?たとえば、こんな小さな刺激にも……」
と言って、ふっ、と息をうなじに吹きかける。
(やぁっ……ん!)

汗ばんだうなじに息を吹きかけられ、女の言うとおりに、
それだけでアイの身体はびくんと大きく反応してしまう。

「うふ、敏感なのね……かわいいわぁ……」
女の言葉責めにアイの身体は縮こまってしまう。

「あなた、処女でしょ。……うふ、やっぱりねえ。そんな感じがするもの。……いいわあ……私好みよ……」



目の前のドアのガラスに反射して映る女の顔は恍惚としているように見えた。うなじを刺激されて、何故か目に涙が浮かんできた。
ん、はぁっ、と熱のこもった息を吐き出すと、ガラスが曇って女の顔は見えなくなった。
頭がぼぉっとしてうまく物事が考えられない。触られたおしりと、いま触られているふとももを中心に熱く、
からだ全体がじんじんしてきた。ふとももに汗をかくように、ひょっとしたらパンツの中もじっとりとしているかもしれない。
もしここまで触られてしまったら、こんなに人のたくさんいるところで感じているのがばれてしまう。
それだけは避けたいような気がしたが、

(でも……)
おしりや太ももに触られただけでこんなに感じてしまうのだ。これであそこに触られてしまったら、
そう思うと、少し触られてみたいような気もするのだった。いままで数回被害にあった男の痴漢がやるような、
自分本位の行為と違って、あくまで優しく扱われる今の状況に、アイはなんとなく
このまま女に身体を任せてもいいような気がしてきた。

「さて……そろそろ中を触ってあげたいんだけど……このスカートけっこうタイトだから、このスカートじゃあ……
 前までめくれて、駅で丸見えになっちゃうわね……それでもいい?」
アイは首をふるふると横に振った。さすがにそれは恥ずかしい。




「そりゃそうよねえ……でも、安心して。今の時代は凄いものがあるんだから。」
そう言うと女は左手に持っていた傘を右手に持ち替えた。それも、柄ではなくかなり下のほう、傘のちょうど真ん中あたりを握り、
そして、柄の部分をアイのスカートの中に入れた。

「ひゃあっ」
急に冷たいモノが股にあたり、驚いてしまう。

「スイッチ、オン」

かち、という音のあと、アイのもっとも敏感な部分にあてがわれた傘の柄が細かく振動を始めた。

「んああぁっ」
思いがけない大きさの快感に、身体は大きく反応し、目立ちたくない、という意識と反する大きな声を出してしまう。
女はその反応に満足したようすで、

「ほら……気持ちは分かるけど、少し声を抑えて……みんな見てるわよ」
と囁く。「みんなが見ている」と言われたアイは、体がかぁっと熱くなるのを感じた。
本当はアイのあえぎ声はほとんどレールの音にかき消されていたのだが、羞恥心をかきたてようとする、女の作戦であった。

「ふふ……いまは便利なものが売ってるわよね……。どう、けっこういい動き、するでしょう?」
「…………ッ!」
スカートの中で暴れる傘に、口を真一文字に結んで声を出さないように我慢するのが精一杯だった。
(んんんっ……なにこれ……きもちイイっ……だめ、声が出ちゃうっ……)
「これ、強弱もつけられるのよね。」



声が出そうになってしまっていたアイを気遣うかのように、傘の振動が弱くなる。
(……はぁっ……た、たすかったぁ……)
ふぅ、とアイがため息をつくのを見た女は、にや、と声を出さずに笑い

「じゃ、最強にしてみよっか。」
と軽い口調で言うと、傘の振動は激しさを急激に増し、アイの秘部を乱暴なまでに刺激する。

「はああんっ……っやぁ……」
油断していたところに強い振動を当てられ、我慢できなくなりアイは声を漏らしてしまう。

「あはは、もう、かわいいんだから。」
囁く女をアイが涙目で見つめると、振動が少し弱くなった。
電車のスピードが遅くなり、ホームに入っていく。

(はぁ、はぁ、ここは……?)



車掌のアナウンスが入る。
「……、お出口は、左側です……。」

まだ目的の駅ではなかった。そのうえ、アイが今よりかかっている側のドアは開かない。この状況が改善されることはなさそうだ。
「んふ、まだ楽しめるみたいね……。ほら、見てごらん。」
アイはふっと顔を上げ、ガラスに映った自分の顔を見る。顔は赤く目は潤い、とろんとしている。
男が見れば、色っぽいと感じるだろう。しかしアイにとってその自分の顔は、電車の中で完全に、感じている自分の顔であり、
恥ずかしくなった。

「向かい側の車両の男の子……こっちのしてることに……気付いてるわよ。」

えぇ!と、向かい側の車両のドア付近の男、高校生だろうか、を見る。完全に視線がこちら側、アイの下半身に向けられている。
こっちの車両は満員電車であるし、後ろ側はアイより背の高い痴女がカバーになって、アイがスカートの中に傘を突っ込まれているとわかる人間はいないだろう。
しかし、ガラス越しの向こう側には、特に視線をさえぎるものがなく、アイのスカートに傘がつっこまれていることと、アイが感じている表情が丸見えなのだ。

(み、見られてるぅ……やだぁ……)
見られていることに気付いたアイは、傘の振動を止めてくれ、と女に懇願するような目をむける、が

「あんんんんっ……」
女は再び傘の振動を最強にした。その大きな快感に抵抗できず、見られていることもわかりながらアイは
執拗に与えられる快感に逆らえず、あえぎ声を出してしまう。

「ほら、見てる見てる……ああ……」


快感に身をよじるアイに声をかけるて楽しんでいると、電車は発車してしまった。

「ああ……動いちゃった……もう少し羞恥プレイを楽しみたかったのにな……」
と、傘の動きを元の強さに戻す。何はともあれアイはほっとした。

「……、次は……。お出口は、右側です」
発車直後、車掌がアナウンスを入れる。次の駅が目的の駅である。あと何分かで着くだろう。
もう少しでこの電車から降りられる。

「そう、次はこっちが開くのね……じゃあ、そろそろイカせてあげないとね。」



「えっ……やぁんっ……」

いきなり傘のパワーを最大にし、割れ目に沿って上下前後に動かす。
(んんんっ……!もう少しだから……我慢しないと……!!ふぁ……!)
アイが身を固くして女の愛撫に耐えていると、女の左手がアイの胸に伸びてきた。
「
どう……きもちイイでしょ……?女の感じるところは、女が一番よく知ってるんだから……。」
そう言って服の上から乳首を捜す。

「……ここだっ!」
「いやあっ……ああん……うう、んっ……」
一発で乳首を触られてしまう。服の上からだが、その正確な愛撫に、アイは直接胸を触られているような感覚に陥った。

(ううあぁ……どうしよう……この人、じょうず……イイっ……)

ずぼっ。耳の中に舌を突っ込まれた。
(ああああああああっひいいっ……だめっ!もう……イっちゃうぅ!!……ダメよ……こんな……電車の中でなんて……恥ずかしい……!でも……!)
押し寄せる快感の波に、アイはもう絶頂寸前だった。

(ああ……ああん……も、もう……!)
アイが快感の絶頂に登りつめようかとした、その瞬間、

ぷしゅう。
電車はすでに止まり、扉が開いた。

(はっ!)
アイは我に返り、そそくさと電車を降りる。早く痴女から逃げなければ。
階段を下り、改札を出る。後ろを振り返るが、女の姿は見当たらなかった。



「はぁっ……。」
大きく息を吐き出し、呼吸を整える。体中が火照ってじんじんする。手の甲をあて頬を冷やしながら
(……ううん……なんだったのかしら……ち、痴女だなんて……)
いままで受けてきた愛撫とその感触を思い出して、体の芯が疼いた。

(このままじゃ、まともに授業できそうにないわね……パンツが濡れて……気持ち悪いし……)
体の火照りと興奮をどうにかしようと、トイレを探す。

「あ、あったあった。……せ、清掃中……」
「……あー、ごめんねお姉ちゃん。あと十分ぐらいかかるわー。」
清掃のおばちゃんにそう言われ、時間を確認する。

(ううん……、間に合わないかも知れないわね……)
アイは仕方なく体の火照ったまま小久保宅へ向かうことにした。
雨はまだ降り続いていて、空もねずみ色だった。

(ねずみ色……ネズミ……トッポちーじょ……)
いつもなら、それを言うならトッポジージョだろう、というツッコミがあったかもしれない。
とにかく、アイは体の火照りと絶頂寸前で止められた疼きと快感の残滓で、頭が正常に回っていなかったのだった。





「あー、アイちゃん、雨の中お疲れ様ー。ごめんね、マサヒコまだ帰ってきてないのよ。……なんだか顔が赤いわね。風邪?」
「あ、いえ、大丈夫です!」
「……そう?ならいいけど……。あがって部屋で待ってて。すぐに帰ってくるとは思うけど。」
「はい……」
母と挨拶を交わし、アイは階段を上っていく。
(うう……やっぱりまだ顔が赤いみたいね……)

マサヒコの部屋に入りベッドに腰掛ける。
(ふぅっ……なんだか……つかれたわね……)
一息ついて部屋を見渡す。とても静かで、いつも数人が賑やかに授業をしている部屋と同じ部屋とは思えない。

(今なら……大丈夫かな……下にお母さんがいるけど……)
アイはスカートをまくりあげ、自分で体の火照りに決着をつけようとする。と、



「アイちゃーん!」
マサヒコの母が一階から声をかけてきた。慌てて返事をする。

「ハ、ハ、ハ、ハ、ハイッ!」
「ちょっと買い物行って来るわー。マサヒコ帰ってきたらよろしくねー」
「ハイっ!わ、わかりました!万事滞りなく!!」
「……?じゃあ、よろしくねー。」
ドアの閉まる音がして、静かになる。
「……わあっ、焦ったー!でも、これでこの家には誰も……」
ごくり、と生唾を飲み込む。





「……んはぁっ……はぁっ……んん……」
スカートを脱ぎ捨て、汚れていたパンツを放り投げ、下半身裸でベッドの上に座り、自慰を行う。
マサヒコはまだ帰ってこないし、母親も今出て行ったばっかりだ。電車で十分にいじられたせいか、指を動かすと愛液がとめどなく溢れでる。

(まだ……こんなに……でて……いやらしい……)
自分の痴態を恥ずかしく思うが、本能と直結した右手は一向に動きを緩めない。それどころか、より激しさを増していく。マサヒコのベッドの、
普段は嗅ぐことのないオスの匂いが自慰のスパイスになった。

「あああっ……イクっ!……イクぅ……!」
人は誰もいない、そう思ってアイはわざと大声で、普段は出さないような恥ずかしいセリフを言う。
それが自らの興奮を高め、快感を増した。

(んんんっ……!もう……もう……!!)
「ふぁ、ああああああああああああぁぁぁぁぁ…………!!」
身体を電流が貫いたかのように痙攣し、アイは待望の絶頂を迎えた。

「……はぁっ……はぁっ……き、きもちよかったぁ……っはぁっ……」
ベッドに倒れこみ、激しい呼吸をくりかえす。すると、


がちゃり。
扉が開いた。





「先生?いるんです……か……ぁ……。」
マサヒコの眼が点になる。ベッドの上には家庭教師のあられもない姿。
机の上には先ほどまで着用していたであろうスカートと、下着。

「ま、マサヒコ君……!!」

ぽかん、と口をあけたままのマサヒコ。
驚いて、布団で体を隠すアイ。
どちらもこの状況がイマイチ飲みこめてない。

(せ、先生……?いったい何して……オナニー……?まさか、俺の部屋で……しかもベッドで
 ……まさかだよなあ……え、どっきり?……そうだ、雨が降ってるからそれで濡れたかなんかして乾かそうと……
 いやそれにしては……下半身だけ裸ってのは……というか……しっかり見てしまった……先生の……)
(ま、マサヒコ君……いつの間に……ひょっとして、さっきからずっと!?……わたしがオナニーに夢中で
 気がつかなかっただけとか!?い、いやああああ。……こんな、こんな恥ずかしい姿を見られてただなんて……
 それに、こ、声だって……きゃああああ。お、お嫁に、い、いけない……しっかり、見られて……!!)




部屋の中央に置かれているテーブルの上空1メートルで二人の視線がぶつかる。

(な、何か言わなくちゃ……マサヒコ君が、固まってる!何か、何か、この場が和むような……。
 マサヒコ君がつっこんでくれるような……!)

アイが唐突に口を開く。
「い、いやぁー、恥ずかしいところをみられちゃった……!穴があったら入りたい……!!」
一瞬躊躇して、布団を放り投げ、足を開く。

「……まあ!ちょうどいいところに……穴が!!」








空気が固まった。







アイは必死で笑顔を作り、マサヒコの反応を見る。
無言だ。あ、笑顔になった。苦笑しているのかもしれない。無言だ。

ぎいぃ。
アイの捨て身のギャグもむなしく、そのままマサヒコはドアを閉めようとする。

「ああ!待って!!せめてちゃんとつっこんでよう!いや、突っ込んで、って、いやその。これは下ネタじゃなくて!
 マサヒコ君の突っ込みが欲しいの!!ああ!!どうしていやらしい感じになるのかしら!?……待ってぇー……」

アイの声が空しく響いた。気持ちはわかるが、泣くのは後回しにしてパンツをはかないと、もうすぐ中村たちが来てしまうぞ。
頑張れ濱中!頑張れアイ!!きみの明日はどっちだ!!






余談になるが、この事件のあと、しばらくマサヒコがオカズに困ることはなかった。
男なんて、そんなもんである。

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