作品名 作者名 カップリング
No Title 郭×伊東氏 アヤナ×マサヒコ

「ニュース!ニュース!特報だぞ!」
「また特報?……杉内、お前いったい一週間に何回それを……」
「ま、正直聞き飽きたけど」
「どうせ尾花先生と金森先生が別れたとか、みんなが知ってるその程度のネタなんだろ?」
「ふふん、今回は正真正銘のとびきりのネタなのだよ……しかも、男子諸君には特に!」
「あ、2限の数学の宿題忘れてきちった。見せてくれない?川崎」
「しょーがねーな、マサヒコ。ならさ、購買の焼きそばパンとトレードでどう?」
「杉内や新垣じゃ不安だしな……わかった、川崎。それで手を打つわ」
「ってコラー!わざとらしく無視すんな、小久保に川崎!」
「……だって」
「……なあ」
英稜高校2−Aの教室の朝……マサヒコは始業前の短い時間、
級友達とダベりながらそんな話を続けていた。
「ふん、この情報を聞いて驚け!今日ウチのクラスに転入生が来るのだよ!」
「ほぉ……でも季節外れだな、こんな時期に」
「それがなんでも帰国子女っていうの?アメリカと日本だと学期の始まりが違うらしいぜ」
(…ん?)
「帰国子女か……!ちょっと待て、杉内!お前がそれだけ騒ぐってコトは……」
「ふふふ、良い勘をしてるね、新垣君!そう、その転入生は、女なのだよ!」
(……んん??)
「そそそそ、それで、どうなんだ?どんな感じなんだ?」
「慌てなさんな、和田。これがな、ロングヘアーの似合う、キツ目の超美人!」
(………んんん???)
「写メは……写メはぁぁぁぁあ!!!!!」
「おお〜〜っと、先生と一緒だったから、写すのはさすがにマズいべ?でもな、
職員室の前で聞き耳を立ててたんだけど、なんでも元々は東が丘中学出身とかで……」
(…………んんんん????)
「?どうしたんだマサヒコ?」
「いや、なんでもないんだが……杉内、その子さ、なんだか珍しい名字じゃなかった?」
「お!良い勘してるねえ、マサヒコ。そう、三文字でいかにも名門、って感じの名字だったぜ。
えーーーーっと、確か……わか……なんとかって……」
(……………決定)
級友の話を聞きながらなぜかひどく嫌な予感に襲われていたマサヒコは、
その予感を確信に変えてがっくりと肩を落した。
“ガラッ”
「おはよ〜〜う。じゃ、みんな席につけ〜〜〜」
「「「「は〜〜〜い」」」」
「出席を取る前に今日からウチのクラスの一員になる生徒を紹介する。
アメリカからの転校生だから分らないこともあると思うが、みんな助けてやってくれ。
じゃあ、入ってくれ、若田部」
「はい……秋山先生」
「「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」」
男子のみならず、クラス全員がどよめきを漏らす。そう、教室に入ってきたのは……
「若田部アヤナです。今日から皆さん、よろしくお願いします!」
紅茶色に輝く、長い髪。すっきりと整った、上品な顔立ち。
制服の上からでも分る、細身でありながらも豊満な肢体。
紛れもない、「あの」若田部アヤナだった。
「わ〜〜〜〜ん、アヤナちゃ〜〜〜ん!!!!」
彼女の姿を認めるが早いか駆け寄ったのは……もちろん、我らが天然少女・的山リンコだ。
「うわ〜〜ん、なんで……なんで、教えてくれなかったの?うっく、ぐすッ……私……私」
「ごめんなさいね、的山さん……ちょっとみんなをびっくりさせようと思って……」
「アヤナ……私も、ビックリだよ〜〜〜」
いつの間にか柴原さんもアヤナの元に駆け寄り、手を握りしめて嬉しそうにニコニコしている。
「コラコラ、自己紹介もできんだろう、お前達は……。
しかしそうか、若田部はアメリカに行く前は東が丘中学に通っていたんだったな?」
§


「はい。ですから帰国子女なんて立派なものじゃないです。あっちでも英語で苦労しましたし。
二年間も日本の教育から離れちゃったので、不安でいっぱいです。
分らないことだらけですが、色々教えて下さい!」
可憐に微笑むと、ペコリ、と頭を下げるアヤナ。その姿を見て、
((((おおおお、教えてえ〜〜〜〜!!!!手とり、足とり、それ以外!!!!))))
クラス中の男子が色めき立つのも無理ないことで……そう、ただひとりをのぞいては。
「うっく……ぐす、アヤナちゃ〜〜〜ん!!!!」
「的山、嬉しいのは分るが、再会を喜ぶのはそれぐらいにしておけ。
まあ久しぶりに日本に戻ってきて、同じ中学の出身者がいるってのは心強いだろう。
そう言えばウチのクラスで的山と柴原以外に東が丘出身っていうと……」
(先生!!!!!!!!!!!!!アンタ、余計なことを!!!!!)
見つからないように小さくなっていたマサヒコは、エビのように体を折り曲げてさらに小さくなる。
「なあ、マサヒコぉ〜〜〜そういやお前も東が丘じゃね?ってイテッ!なにすんだよ、マサヒコ!」
(杉内!!更に余計なことをッ!!!!!!!!!!!!!おまけにでけえ声で俺の名前を呼ぶな!!!)
杉内少年の足を蹴飛ばすと、マサヒコは教科書で顔を覆って隠した。
「あら……うふ、小久保君も、お久しぶり……」
女子チームで再会を喜び合っていたアヤナが、にっこりとマサヒコに目を向ける。
「あ……ああ、ひ、久しぶりだね……若田部……」
諦めて顔を起こしてぎこちなく挨拶するマサヒコだが……
(若田部……口元だけ笑ってるけど、目、笑ってない……)
アヤナの目の奥底に宿る、残酷な光に心臓がキュ――ッと絞られるような気分を味わうマサヒコ。
「ほう、そう言えば小久保も東が丘だったな」
「そうだね、リンちゃんとアヤナと小久保、仲良かったもんね」
「うん!ミサキちゃんとアヤナちゃんと小久保君と私はいっつも一緒だったもん!仲良しだよ!」
((((………なにい?))))
一転、クラス中の男子……だけではない。
心秘かにマサヒコに思いを寄せている女子生徒までが、ぎろり、と彼をにらんだ。
「マサヒコっ!お前、あんな可愛い聖女の彼女がいるくせに!」
「どういうことよ、小久保君!」
「まままま、まさか、お前、あのミサキって子は現地妻って奴か?」
敵意むき出し……というか、敵意そのものの視線に囲まれたマサヒコは慌てて弁解する。
「お、落ち着け!だから、ただの友達だって!若田部、せ、説明してくれ……」
「ええ、そうです。私たちはいつも一緒でした。一緒に旅行に行ったり、
お祭りに行って金魚すくいで小久保君が私に金魚をプレゼントしてくれたり、
雪の日に押し倒されたり、水泳の授業で足をくじいた私を保健室までだっこしてくれたり……」
「!!!わわわわわ、若田部えええええええ!!!!!」
「「「「「「なにいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!」」」」」
凄まじい勢いでクラス中の生徒がマサヒコの元に押し寄せる。
本来はそれを止めるべき役割の担任教諭秋山も、
あまりに大胆なアヤナの発言にあんぐりと口を開けてそれをただ眺めるだけだった。
「ちょっとアヤナ……やりすぎじゃない?」
さすがに素早く状況を把握したのは、柴原さんだ。
「うふ……ちょっとイタズラが過ぎたかしら?」
「?アヤナちゃん、なんでみんなで小久保君をボコボコにしてるの?
わ〜〜ぶしゅって血が出てる〜〜!!わ〜〜赤い噴水みたいでキレ〜〜!」
「!お、おい、みんな!止めろ!それ以上は………傷害致死になりかねん!!!!」
はっと状況に気付いた秋山先生が生徒達を止める頃には…………
哀れマサヒコは、ほとんどボロ雑巾のようになっていた。

「ああ……お花畑だ……それに、川も……あ!根本のおじいちゃんに、杉浦のおじさん!
久しぶりだね……待ってて、俺も今、そっちに…………」
「こ・く・ぼ!!!大丈夫?生きてる?」
「わああああ!!!ごめんなさい、ごめんなさい!もうセクハラしません!」
「ああ……やっと気付いたのね、小久保君?」
「わ〜〜〜ん、大丈夫?小久保君?」
§


「……?柴原に若田部に的山?」
「大丈夫?まったく、転入初日にあなたの看病をすることになるとは思わなかったわ」
「アヤナが原因なんだから、しょーがないじゃん」
柴原さん・リンコ・アヤナの三人が、ベッドの周りにいた。
マサヒコは体の節々がまだ激しく痛かったものの、なんとか半身を起こして三人に聞いた。
「……なあ、俺、どうなったんだ?なにがなにやら……」
「あははは、アヤナが言った冗談のせいで、クラスのみんなにボロボロにされたの。
それで今日一日、保健室のベッドでぐっすりお休みだったってわけ。
放課後は保健の立花先生、用事があるとかで仕方ないからウチら三人で看病してたのよ」
「ちょっとしたアメリカン・ジョークだったんだけど」
「…………そのちょっとしたジョークで、フクロにされた俺の身になってくれ」
「大げさねえ〜〜〜。骨折もしてないし、全身打撲程度だって先生も……」
(………全身打撲『程度』って……)
思わず天を仰ぐマサヒコだが、そんな彼の心中など知るはずもないリンコは笑顔で語りかけてきた。
「ねえねえ、小久保君、体動かせる〜〜〜?」
「ん……今はちょっと、痛いけど……イテテテ!あちゃ……キツイかも」
「じゃあ、おしっこ行きたくなったら言ってね?ほら!」
「…………?」
「えへへへ〜このシビンね、特大のXLサイズなの!だから小久保君がどんな巨コンでも……」
「あ、歩ける!いやあ、自力で歩けるって素敵だなあ!」
無理に笑顔を作ってベッドから起きあがると、マサヒコは保健室内を軽快にスキップして見せた。
……関節や背中の裏でバキバキ、と音がしたような気がするのは、とりあえず忘れよう。
「な〜〜んだ、小久保君全然元気じゃない」
「……でも、なんだか脂汗かいてるよ?小久保、ホントに大丈夫?」
(柴原……今は、お前だけが頼りだ……)
“♪♯”
「あ!ダーリンからメール。……えへへ、これから会いたいって♪じゃあね、みんな〜〜」
(………とりあえず鈴木、殺す)
何の罪もないかつての級友・鈴木君に八つ当たり気味の殺意を抱きながら――
この場で唯一頼れる存在の柴原さんに、マサヒコは藁にすがる思いで頼みこんだ。
「し、柴原……待ってくれ。行く前に、頼む。俺の鞄を教室からこっそり持ってきてくれないか?」
「?別にいいけど……なんで?」
「いや……その、今俺が帰ったら、連中が待ちかまえている危険が……」
アヤナだと、男子連中に囲まれて質問責めにあうとも限らない。
リンコでは、ポロリとマサヒコが回復したことを皆に漏らしてしまいかねない。
柴原さんならば、教室に残る連中のことも適当にいなしてくれるだろう。
ベッドの上から切々とそう説明するマサヒコ。さすがに、冷静な判断だ。
「なるほど……わかったわ。バレないように持ってくるから」
納得した柴原さんは保健室から姿を消した。
「それはともかく……なあ若田部、なんでこんな中途半端な時期に戻ってきたんだ?」
「大学受験のために決まってるじゃない。高三の途中で戻ってきても、
日本の受験ペースに追いつかないし。二年生のこの時期からなら、リカバー可能だしね」
「せっかくアメリカに行ってたんだし〜〜。アヤナちゃんなら帰国子女の推薦枠だって……」
珍しく的確なことを言うリンコだがアヤナは手のひらをひらひらとさせて、首を振った。
「や・め・て・よ!私、そういうの嫌なのよ。帰国子女なんて言ったって、たった二年よ?
そんなお情けで推薦貰ったって、全然嬉しくないし。私は実力で勝負したいの」
「はああ……変わんねーな、若田部。俺なら推薦貰えるなら有難く……」
「なによ……皮肉?成長してないってこと?」
ぎろり、とアヤナがにらむが……どこか、ふざけたような表情だった。
「あはは、いや皮肉とかじゃなくて……ま、俺の願望だよ」
そう言った後、改めてマサヒコはアヤナを見つめた。―――眩しかった。
キレイに、なっていた。あの日空港で別れたときよりも、少し、背が伸びていた。
すっきりと通った鼻筋、形良く整った薄い唇。色白で彫りの深い顔立ちはそのままだったが、
勝ち気さと性格の強さをのぞかせていた切れ長の大きな瞳は、
あの頃より幾分柔らかいものに変わっていた。
§


そして少女の体にどこかアンバランスに、窮屈そうに実っていた豊かな胸は、
すらりと成長した四肢に相応しく収まっていた。元々大人びた表情を浮かべていた美少女は、
二年の歳月を経てさらなる輝きを放ち……大人の女性として、完成しつつあった。
「でもさ、なんで英稜のわけ?お前の成績なら、聖女だって楽勝で転入できたはずだろ?」
「………変わらないのは、そっちよ、小久保君」
「へ?」
「ま……見てなさい。リベンジよ、リベンジ……天野さんとの勝負、まだついてないわけだし」
「?まだそんなこと言ってんの?それこそ、聖女に行けばミサキと直接成績を競えるのに……」
「ふふ……成績の話じゃ……ないの」
アヤナがにやり、と笑みを……それもひどく獰猛な笑みを、浮かべた。
その表情を見て、背筋にぞくりと冷たいものが走るのをマサヒコは感じていた。
「ほ〜〜〜い!鞄取ってきたよ!じゃ、リンちゃんにアヤナ、悪いけど後は頼んだよ?
私はこれからデートなんで♪うふ♪」
「は〜〜〜い!」
「しょうがないわねえ………」
アヤナとリンコに後事を託し、柴原さんは軽やかに保健室から姿を消した。
「上手く行ってるんだ、あのふたり……確か鈴木君って小笠原高校よね?」
「柴原と鈴木のこと?うん、すごく仲良いよ。前にミサキや的山と一緒に水族館に行ったけど、
こっちが恥ずかしくなるくらいにベタベタしてて当てられちゃったしな」
「ふ〜〜〜ん……ダブルデートなんか……してるんだ……」
「ん?と、というかホラ、的山もいたから……」
「あの日、楽しかったね〜〜また行こうね〜〜小久保く〜〜ん!」
雲行きが怪しくなったところを、リンコの脳天気発言が救ってくれた。
「あ、ああ。良かったら、再会のお祝いに若田部とみんなで遊びに……」
しかし、ここで余計なフィルダースチョイスをかましてしまうのがマサヒコらしいところで。
「ふふ……そうね……小久保君……」
(…………!!!!)
さきほどよりも五割増しの残酷な笑みを浮かべるアヤナ。
マサヒコは凍てついたような愛想笑いを浮かべるしか、なかった。

「ねえねえ〜〜小久保く〜〜ん!そんな歩きにくそうだったら肩かしてあげよっか〜〜?」
「そうね、左は私で右は的山さんで挟んで……あは、正に両手に花ね」
「………遠慮しときます」
(そんなことされてる姿をクラスの連中に見つかったら……命が、危ない)
「でもペンギンさんみたいにヒョコヒョコ歩いてる小久保君、ちょっと可愛いケド〜〜」
(せやさけえ、股関節がワシの言うこと聞かんのじゃあああああああ!!!!!)
なぜかニワカ広島弁でマサヒコは心中、毒づいた。
身を隠すように……なんとか学校を脱出したまではいいが、歩くたびに関節の節々が痛い。
英稜が自宅のすぐ近くにあるという位置関係に、つくづく感謝するマサヒコであった。
「ああ……やっと着いた。送ってくれてありがとう……じゃ、じゃあ……(もし行けたら)また明日」
ようやく小久保邸の前に着き、マサヒコは安堵の声を漏らして言った。
「うん!じゃあね〜〜〜アヤナちゃん!小久保く〜〜ん!」
何事も無かったかのようにリンコは笑顔でぶんぶん、と手を振りながら去っていった。
「うふふ……相変わらずね、的山さんは。あの笑顔を見てると帰ってきたんだなって思うわ……」
「………いきなり感傷的だな、若田部」
「……私だって、そういう気分になることくらい……」
一瞬だがひどく寂しげな表情を浮かべたアヤナを、マサヒコはちょっと不思議な気持ちで見ていた。
「ま……転入初日から、ドタバタしてて俺も迷惑かけたかもな。明日から、またよろしく頼むよ」
「ウン……ねえ、小久保君?」
「?なんだ、若田部……」
「私……私ね、本当は………」
“ガチャ”
「ん?お帰り、マサヒコ。なにやってるの?」
「あ……ただいま、母さん」
「あれ?若田部さんちのお嬢さん?」
§

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