作品名 |
作者名 |
カップリング |
「マサヒコママは思春期」 |
郭泰源氏 |
- |
「ねえ、あなた……ちょっといい?」
「ん?なんだ?」
「できた」
「は?」
「妊娠した」
「え?どえええええ???」
「大きな声出さないでよ……多分まだマサヒコ起きてるし」
「ででッ、でも!」
「ほら、8月にマサヒコが合宿行ったあの週。久々に夫婦水入らずでヤリまくった……」
「……事実でも、頼むからヤリまくったとか言わないでくれ。でもあのとき確かお前安全日だって…」
「そりゃ〜〜安全日でもあんだけヤリまくったら〜〜だってあの3日間で軽く10発は…うふ♪」
「うふ♪じゃなくてえ、ヤリまくり禁止!何発とか言うのも禁止!」
「だって2ヶ月もお客さんが来ないんだもん。やっぱりこういうのに万全は無いってことね、えへ♪」
「…えへ♪じゃなくて…」
舞台は週末深夜の小久保邸――仕事からやっと解放され、
ぐっすり眠ろうとしたマサヒコパパは突然の妻の告白に驚愕するのであった。
「で……どうします?あなた」
「ど、どうって……」
急に真剣な表情に戻ると、マサヒコママはマサヒコパパをじっと見つめた。
(こんな風におどけているけど…こいつ、多分心の中は不安なんだ……)
「……お願い……してもいいかい?」
「……なにをですか?」
「俺は…俺は、生んで欲しい。君が……許してくれるなら。
高年齢出産は辛いっていうけど、それでも…君と俺の間にできた子供なら……生んで欲しい」
「あなた………いいんですか?私……てっきり反対されるかと……」
「ありがとう」
「え?」
「親馬鹿なのかもしれないけどさ、マサヒコってものすごく良い子に育っただろ?
俺、少しも父親らしいことをできずにいたけど……。だからこそ全部君のおかげだって…そう思う。
多分今のマサヒコなら、良いお兄さんになってくれると思うんだ。
だから……俺のワガママかもしれないけど、生んでくれないか?」
「嬉しいです……あの……」
「……どうしたんだ?」
「愛してます、あなた」
「………」
"ちゅ"
ふたりは、そのまま無言で微笑み合うと………短く、幸せなキスを交わした。
―――そして次の日の朝―――
「そんなわけでマサヒコ、アンタお兄ちゃんになるから」
"ぶ――――――ッ"
飲みかけのミルクココアを、思いっきり吹き飛ばすマサヒコ。
「そ、そんなわけでって……」
「あら?子作りのプロセスまで知りたいの?そうね、あの日は月のキレイな夜で……」
「知りたくねえ!そんなんじゃなくて!俺、来年受験があるっての!」
「いいじゃない。別に受験と出産が一緒になっちゃダメって決まり事があるわけでもあるまいし」
「そんな理屈じゃなくて……」
"ぎゅっ"
「か、母さん?!?」
マサヒコママがマサヒコの後ろに回り、ぎゅっと彼を抱きしめた。
「…覚えてる、マサヒコ?昔アンタ、弟が欲しいってダダをこねて私を困らせたことあったでしょ?」
「……そんなこと……あったっけ……」
「ふふ。実を言うとさ、私もずっと欲しかったんだ、二人目。でもなかなかできなくて……。
もうあきらめて……忘れかけてたんだけど、多分神様が最後のチャンスをくれたんだよね。
だから…アンタは恥ずかしいかもしれないけど、認めて、祝福してほしいんだ……」
「……母さん……」
§
真剣にお願いするように、マサヒコママはマサヒコに言って聞かせていた。
子供として扱うのではなく―――ひとりの人格として認め、マサヒコを説く、そんな口調だった。
「……わかったよ、母さん。俺、手伝うよ。うちにもう一人、家族が増えるのを」
「ありがとう、マサヒコ……じゃあ、早速だけど今日からおつかいとお風呂掃除手伝ってね?」
「……うん……」
なんだか良いようにお手伝いを増やされたような気がしないでもないが、
そこは流され上手のマサヒコである。多少疑問に思いつつも、素直にうなずくのであった。
―――そして何日か後のとある喫茶店。
「珍しいね……マサヒコ君が外で会いたいなんて…」
「ええ……ちょっと家の中だと…照れくさいって言うか……恥ずかしいって言うか……」
「?」
「あのですね……妊娠したらしいんですよ……」
「え!にににに、に、妊娠!」
実はこのとき、"母さんが"とマサヒコは小さく付け加えていたのだが……
驚き、動転し、叫び声をあげたアイの耳には全く入っていなかったのであった。
「どどどど、どうするの!!!!マサヒコ君!!!!」
「え?いや、応援しますって……」
「お、応援って……それでいいの?まだマサヒコ君中学生なのに!」
「…最初は俺も驚いたし、戸惑いましたけど……ちょっと年は離れちゃいますけど、
でもせっかくできた子供なんですから。良く考えて、俺も生んで欲しいな、って思ったんです」
(そうか相手は…ミサキちゃんやアヤナちゃんでもなくて年上の人なんだ……)
完全に勘違いをしながら、アイは胸が痛くなるのを感じていた。
「じゃあ…聞きづらいけど、高校受験はどうするの?まさか就職とか……」
「え?いや、高校はきちんと受けますよ?そりゃそうでしょう。
確かに子育てとかは手伝うつもりではいるけど、母さんもそんなことは望んでませんよ」
(……お母様も承認済み……なら、私にはもう何も言うことは……)
ぐっ、と悲しみを飲み込んで耐えるアイ。
「このことを言うのは、実は先生が初めてなんです。他のひとには……まだしゃべってません」
「みなまで言わなくてもいいわ、マサヒコ君」
「?え?」
「アヤナちゃんや、ミサキちゃんには私から……伝えてあげる。
こういうのは…女の子同士の方がいいと思う。その方がショックも少ないだろうし……」
「……はい?なら、ありがたく…そうさせてもらいますけど?」
「じゃ、じゃあ……早速みんなに連絡して私、言ってあげるね?」
「あ、はい。なら俺も一緒にいたほうが……」
「ダメ!女の子は……女の子は、シャボン玉やねんで!」
「はあ……?」
(いくらマサヒコ君が鈍いと言っても…少しはミサキちゃん達の気持ちを考えてあげないとダメよ!
ここは保護者代わりである家庭教師の私が頑張らないと……本当は私も辛いけど…)
「いいから……後は、私に任せて。お願いだから」
「???はあ……?なら…お願いします」
これが後の大騒動につながるとは予想もせず、暴走気味のアイに一任してしまうマサヒコであった。
£
「なんですか?アイ先生、私たちだけでって…」
「さては……また勝負ですね!」
「わかりました!メイド萌えに目覚めて、メイド喫茶に就職するとかですかぁ?」
そして30分後―――アイの前にはいつもの3人娘がいた。
「ううん……違うの。みんな……心を強く持って聞いて欲しいの」
「「「???」」」
「マサヒコ君に…彼女がいたの」
「え!」
「それで……子供ができたらしいの」
「「ええ!!」」
「もうお母様も認められていて………生む気でいるらしいの」
「「「えええ!!!」」」
§
驚愕する三人。……そりゃそうだ。
「かかかかかかか、彼女って!彼女って!」
「おまけに、こここここっここ、子供まで!」
「確かに大変で辛いことかもしれないけど、マサヒコ君は……生んで欲しいって思ってるわ。
そして全力で彼女を支える気でいるの。私達もマサヒコ君の意志を尊重してあげないと……」
「あ、相手は!相手は誰なんですかッ!」
「……年上のひとだとは言っていたけど……マサヒコ君も辛そうだったから……聞けなかった」
単にマサヒコはアイの様子に戸惑っていただけだし、アイも気が動転して聞かなかっただけである。
「ひどい……ひどいよ、マサ君……卑猥よおおおおおおおお!」
「風紀が乱れまくってるなんてもんじゃないわ!」
「それって………もしかして!」
「?どうしたの?リンちゃん」
「小久保君の相手なんですけど……それってもしかしたら中村先生じゃ……」
「「「えええええ!!!!」」」
「中村先生、2ヶ月前くらいに言っていたんです。
『マサも最近男っぽくなってきたわよねえ…そろそろ食べ頃かも』って。
……それに最近、体調悪くてダルそうだったし、酸っぱいものが食べたいとか良く言ってたし…」
賢明なる読者諸氏ならお気づきだろうが、ただの二日酔いである。
「………そう言えば、禁煙も珍しく長続きしてるし……今日も連絡が取れなかった……」
「そんなあ…ひどい…ひどいよ、マサ君……うわあああああ!!!」
「お姉様が……小久保君と……そんな…そんなッ!!!!」
「先輩が私を裏切るなんて…いいえ、そんなはずないわ!リンちゃん、ミサキちゃん、アヤナちゃん!」
「「「はい!!!」」」
「今から、マサヒコ君と話をするの。本当に、あなたと先輩の子供なのか!」
「「「はいッ!!!!」」」
統率された軍隊のように、整然と席を立つ4人。
―――そしてしばらくして、マサヒコの部屋では―――
「しかし何やってんのかね?アイにリンは」
「ああ……多分……今、話してくれてるんだと思うんですけど……」
「?何の話?」
「ああ……中村先生にはまだだったみたいですね……実は……」
"バタンッ"
「マサヒコ君!あ、先輩も……やっぱり…本当だったのね!ふたりの子供だって!」
「????はああああ????」
必死の形相の4人を、目を白黒させながら見ていたマサヒコだが……
「うう……そうなの……マサヒコったら私はイヤって言ったのに……無理矢理」
(うふふふ〜〜〜♪♪これは面白そうじゃない♪)
中村は持ち前の勘の良さを発揮し、アドリブで胸元を押さえてしおらしく呟いた。
「ひどいッ!マサヒコ君……先輩をレイプしたうえに孕ませるなんて……獣よおおおお!」
"バキッ!"
「がはぁ!ち、ちょっとま……」
「ひどい……ひどいよ、マサ君……よりによって中村先生とそんな関係になるなんて…」
"ぐしゃッ!!"
「がひいッ!……だから、俺の……」
「お姉様の純潔ををををを!この最低男!」
"どすッ!!!"
「がふッ!だ、だから俺のはなしを……」
「本当に中村先生を孕ませたんだ〜〜、わ〜〜〜!小久保君はヤリチンだ〜〜」
"ずどッ!!!!"
「がへえッ!!!……き、け……」
強烈なパンチを4発喰らい、崩れ落ちるマサヒコ。
「行きましょう……先輩……子供のことは……私たちで……」
―――そして5人が立ち去ったあと―――
「あはは、来ちゃいました、お客さん!私ただ単に不順だったみたい、マサヒコ……ってあれ?」
マサヒコママの足下には、血まみれで横たわる一人息子がいたという………。
END