作品名 作者名 カップリング
「ten years after」 郭泰源氏 -

「んんっ…あっ…セージ…セージぃ…」
女は、男のうえで腰をいやらしく前後に、左右に振りながら動かしていた。
「あっ…う…リョーコぉ…」
そして男は、溜息にも似た声を漏らす。
"ずちゅッ…ぐりゅ…"
ふたりのつながったそこからは、女が動くたびに湿った淫靡な音が跳ねるように響いていた。
"ちりゅ…"
「あんッ…んんゥ…あッ…」
目を閉じ、快感を貪る女の豊かな乳房に男が舌を這わせた。
そのくすぐるような感触に、びくんっ、と女がひとたび震え…蕩けたような表情を浮かべる。
"ぐっ…ちゅっ…"
そして男は、女の乳房を強引に鷲づかみにすると、その先の大振りな乳首を口に含んだ。
「ふあッ!…あ!」
女は、男の口戯に反応して甲高い声をあげた。男は乳首から口を離すと、
再び真っ白な乳房を激しく揉み始めた。男の目の前で柔らかな果実はいびつに形を変え、
男の手の中で大量の汗にぬかるみ、ぬるり、と滑って手のひらの外に弾き出された。
「ああ…」
女は心地よさにうっとりと目を閉じた。しかし、腰の動きは依然止まらぬままだ。
「…」
男は、無言のまま女の脇腹のくぼみに手を添えると…。
"ぐッ!…ぐりゅッ…!"
女の動きに合わせるように、激しく腰を上に突き立てた。
「ふあ…ふうッ…ああああ!!!」
女は、その感覚に我を忘れるように激しい声を上げた。
「ちょ…り、リョーコ…お前、声でか…」
「だってぇ…せーじぃ…」
もう既に興奮状態の女は頬を染め、とろり、とした表情で自分の下にいる男を見つめている。
「ホラ、あんまり声出すとまたヨシノブやシンノスケが目を覚ましちゃうし…」
「…ねえ、なら、セージ?」
女は、にやり、と淫らな笑みを浮かべた。
「…なんだ?」
「塞いで?」
そう言って、目を閉じると――てらてらと濡れた唇を男に突き出した。男は…。
"ちゅ…"
半身を軽く起こすと、女と唇を重ねた。
「ん…んんっ…」
ふたりは、舌を絡め、唾液を口移しながら…。激しいキスを交わしながら、動いていた。
"じゅちゅッ…ずるぅっ…"
騎乗位から座位へと移行し、ふたりはさきほどよりも動きを同調させるように…。
お互いのリズムを合わせるように…交わっていた。
「せーじい…私…いい…もう……いくぅ…」
女は、そう言いながら甘い声を漏らして男の背中に爪を突き立てる。
「俺も…もう…じゃあ…最後の、いくぞ?リョーコ」
男は、そのまま女の背中を倒すと、より勢いをつけて下半身を打ち付けてきた。
"ずっ!ぐっしゃァ!"
グイグイ、とペニスを押し込まれるたびに…。
「う…ううっ!…ああッ!」
女は、自分の肉体が内側から弾け飛ぶような感覚で満たされていた。
「うッ…ああッ…り、りょー…コ…」
女の奥で、ペニスが躍動し、熱いものが、弾け…溢れた。
「ふ…あ…かはぁ―――」
「…あ…はッ…はぁ―――」
ふたりは、無言のまま…からだを投げ出して、荒い息を吐いていた。
…そのまま、横たわっていたふたりだったが…
やがて、満足げな笑みを浮かべた女が男に向き合うと、
"ちゅ…"
男の乳首に軽く口づけをした。
§


「ご苦労様、セージ。今日は、特別濃かったんじゃない?」
「いや…久々の生だったし…」
「ふふふ…正直ねえ、セージは。でも、そこがアンタの良いところだしね…」
"ちゅ"
そう言って照れ笑いにも似た微笑みを浮かべると、女は男と唇を交わした。
「な…なんだ?リョーコ、お前がそんなこと言うの…」
「えへへ…実はさ、お願いがあるんだ…」
「?なんだ?」
「来週のさ、土曜にね…久々にあの子たちと会うんだ。
だから、シンノスケとヨシノブを預かっててくれないかな?」
「なんだ、そんなことか…行ってこいよ、リョーコ。全然大丈夫だぜ?」
「ゴメンね、本当はセージも招待したいんだけど…」
「まあ、でもあの子らと一番良い時間を過ごしたのは、悔しいけどお前と濱中さんだと思うし…」
「あ…さてはセージ、妬いてるな?」
「そりゃあ、妬けるさ。一応俺だって、あいつらの担任だったんだぜ?」
「そうだよね…本当に、ゴメンね、セージ…」
「ま、だから…俺の代わりに、思いっきり楽しんできてくれよ?」
「ウン…本当にありがとうね、セージ…」
£
待ち合わせのイタリアン・レストラン、「ウ・ジーエ」の扉を開けた。
"カチャ"
私の姿を認めて…振り返る三人の顔。
「よっす、お久しぶり〜♪お疲れちゃ〜〜〜〜ん♪」
「あ、中村先生!」
「お姉様!」
「せんせ〜、お久しぶりです〜」
そしてあの頃より少しだけ…大人になった三人が、私を出迎える。
「お久しぶりです…豊田先生はお元気ですか?」
「ウン…まあ、相変わらずだね…」
ミサキちゃんは臨床心理士になった。頑張り屋の彼女はいろいろ資格は取得したらしいけど…。
ひとの心の痛みを和らげる助けになる仕事がしたい―――そう思って今の仕事を選んだそうだ。
それは、多分…あのことで…彼女が一番苦しんだから、
だからそう思ったんじゃないかと私は勝手に思っている。
「お姉様…変わりませんね…」
「ふふ、アンタもね、アヤナ?」
アヤナは小さい頃からの夢であった保育士を諦め――それでも、タダでは起きないのが
この子らしいところで、今は大学病院で小児科医として働いている。
「子供たちの笑顔が見たい…そのために、親を納得させて自分も納得できる職業を選んだ」
そうだ。研修期間はつらいことばかりで涙をこらえる毎日だったらしいけど…。
今はミサキちゃんとふたりでいつかは独立・開業したい、なんて夢を持っているらしい。
「せんせ〜、今日はヨシノブ君とシンノスケ君は一緒じゃ無いんですね〜?」
「あはは…今日くらい、子守は奴に任せて遊んじゃえと思ってね」
リンは…これが一番驚いたんだけど、建築士になった。
地元の大手工務店、しかも建築士として就職したって聞いたとき、
現場のオヤジに囲まれて立ち往生するリンを想像して心配した私だったけど…
「ファッションデザイナーは無理だったですけど〜、デザイナーはデザイナーですよね〜?」
…相変わらず分ったような分らないようなことをほざいていた。
ただ私の心配に相違して、リンの評判は結構良いらしい。
職人さんには可愛がられてるし、施工主にもきちんと話を聞く建築士として…
まあ、どんなワガママな施工主と言えどもこいつの天然ペースにのせられれば、
結局どこかで妥協せざるを得ないってことに気付いて折れてしまうってのが
本当のところらしいけど。とにかく結構職場では重宝されているらしい。
「と・こ・ろ・で・例のふたりはまだ?なわけ?」
3人は、顔を見合わせるとクスクスと笑い始めた。
「そう言えば」
「中村先生は」
「まだ知らないんだよね?」
§


「なによ…感じ悪いわねソレ…」
「ふふ〜、あとは来てのお楽しみですよ、せんせい!」
「…いい加減その呼び方変えてよ。リョーコさんとかさ」
「だ〜〜〜ってえ〜、せんせいはせんせいですよぉ〜〜〜」
「リン…あんた、今年で26だろ?いつまで天然ブリブリ路線で…」
「でもコレ、結構オヤジ殺しで現場では使えるんですよ?」
「計算かよ!」
「ぷっ…あははははははは…」
みんなが気持ちよさそうに笑う。
"カチャ"
「どうも…遅れちゃって…」
ドアが開いて、マサが姿が現した。
「お久しちゃ〜〜〜〜ん♪マサ、あんた…背、伸びたねえ〜?」
「あはは…そうですか?」
「お久しぶり…小久保君」
「わあ…小久保君、本当に大きく…」
「ネクタイなんて締めて…社会人みたいだよ、小久保君」
「いや、社会人なんだが…」
苦笑いするマサ。内心ちょっとばかり驚いて…私はその姿を眺めていた。
最後に会ったのはコイツが高校3年の頃?だったか?
あの頃も既に大人びた表情を浮かべていたけど…今のマサは、
はっきりと大人の男の顔をしていた。あの頃の中性的だった感じはすっかり落ち着いて、
なかなか渋みさえ感じさせる…悔しいけど、かなりイケてる男前になった。
今はセージと同じく中学の教師をしているとのことだが、
生徒にも親にも(特に女性に)受けはいいらしい。
「マサ…ちょっと来い…」
「な、なんすか?」
ちょいちょい、と私が手招きして…
"ぼすっ"
奴の腹に、一発パンチをお見舞いした。
「!?な、いきなりアンタなにを…」
「マサ…アンタ、モテるだろ?…もしかしてPTAの奥様連中や
女子中学生の青い果実のひとつやふたつ、もう食っちゃってたりして?」
「は?+>Pはああ?」
「やっぱりあのとき一回ぐらい味見を…いや、今でも遅くは…ないわよねえ……マ・サ?」
そう言って奴の耳元に息を吹きかけ、私がべろり、と舌を出すと…
ずざざざざざざざ、とすさまじい勢いでマサが後ろに下がっていった。
3人はくすくすと笑いながら私たちのやりとりを見ていた。
「いいじゃない…年上好きだもんね、小久保君は」
「わ〜〜〜い、先輩後輩で親子丼だ〜〜〜」
「それちょっと違くない?リンちゃん」
「おおおお、お前ら!他人事だと思って…」
「だって」
「他人事だもん」
「ねえ〜〜〜〜?」
そう言って3人は、けらけらと盛大に大爆笑し始めた。
「?ところでマサ…アイは?」
「本当は一緒に来るつもりだったんですけど、ちょっと遅れてくるって…検診もあるんで…」
「?検診…なに、病気してんの?」
「あ…そうか、中村先生にはまだ言ってなかったですね、実は…」
"カチャ"
「すいませーん、遅れました!」
アイが、元気よく姿を現した。
「!アイ…あんた…」
「あ、お久しぶり〜です!先輩!」
アイのおなかは…見事に、ぱんぱんに膨らんでいた。
「えへへへ…今は結構安定期なんですけど、マサヒコ君が心配して…」
§


「嫁さんが妊娠してりゃ心配して当たり前ですよ…」
そう言いながら、マサがアイの手を取って席まで導いた。
妬けそうなくらい…アイは、幸せそうな笑顔を浮かべていた。
「ふたり目だと結構慣れちゃうもんですよね、先輩?」
「まあ…ね。あら、じゃあ今日ヒデキ君は…」
「ああ…今日は実家に預けてきたんです…」
「そっか…残念ね…あの子もなかなか可愛い顔してるから…そのうち、じゅるっ」
「ひとの家の息子でなに考えてんだ!アンタは!」
「ひとのムスコで?ナニを?まあマサ…あんたってイヤラシイ…」
「卑猥〜!」
「風紀が乱れているわ!」
どっ、と周りに笑いがわいたところで…ビールとアイの分のウーロン茶をオーダーした。
「じゃ…乾杯といくわよ?アイの安産、イキ遅れ3人娘の良縁、マサの出世、
それに私の家内安全を祈って…乾杯!」
"かちーーーーーーーーん"
グラスとグラスが軽く触れ合い、みんなが笑いながら…宴は始まった。
結構酔いも回ったところで、ふと見るとアイのおなかをアヤナやミサキちゃんがなで回している。
「わ〜、妊娠するとこうなるんだ〜」
「動いたりは…するんですか?」
「ふふふ…元気の良い子でねえ、いっつも早く出せー、って動いてるんだけど。
今日は人が多いから照れて静かにしてるみたいだね」
「ねえ…アイ?」
「なんですか?先輩」
「嫁さんが妊娠してるときって一番浮気のリスクが高いんだって。大丈夫?」
「だからアンタはなんでロクでもないことばっか…」
マサヒコが渋い顔をしている。アイはにこにこと笑顔のままだ。
「ふふふ…大丈夫ですよ、先輩?」
そう言って微笑みながらアイがおなかをなで回す。
「だって先輩?ここには…しあわせがいっぱいつまってますから…大丈夫だよね、マサヒコ君?」
恥ずかしそうに…はにかむように、酔いだけでなく顔を赤くしたマサが
小さく…だけど力強くうなずいた。そしてアイがまたマサに微笑み返す。
その表情はほんとうに…羨ましいくらいに、幸せそうだった。

END

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