作品名 | 作者名 | カップリング |
「解散総選挙」 | 郭泰源氏 | - |
「あ、悪い天野、あのさ、次の数学の…」 「…なに?小久保君?」 「う!?いや、何でもない…」 マサヒコは次の授業で当てられることを思い出し、ミサキにわからないところを聞こうとしたのだが…。 (な、なぜだ…天野、闘気が…俺、なんかやったか?) 思いっきりキツイ目で睨まれて、その場から立ち去るのであった。 (しよーがねーな、なら…) 「あ、わかた…」 「なあに?…小久保くん」 「な、なんでもありましぇん」 ミサキと同じく、アヤナの険しい目にあって即時撤退するマサヒコ。 (?なに?俺?なんかした?) 記憶をどんなにたどってもそれらしいことを思い出せず、悩むのであった。 (こ、こういうときは、やっぱり…) 「あ、的山、あのさ、ここのAの2問目なんだけど…」 「あ!こくぼく~ん、すごいね!1位だよ、1位!」 「はあ?」 £ ─ここで場面は1時間ほど前の教室に遡る。 男子は体育、女子は保健の授業なのだが、たまたま保健の先生が休暇のために、 女子は自習となっていた。ミサキも鉛筆を片手に自習をしている…と思いきや、 グランドで短距離走をしている男子の授業をじっと見つめていた。 もちろん、その視線の先がマサヒコであるのは言うまでもないだろう。 「ミ・サ・キ。ほら、ダーリンのことばっか見てないの!」 「え?や、やだ、あたし、なにも見てないよ!」 友人であるカチューシャ娘に耳元で囁かれ、顔を赤くするミサキ。 § 「でも、結構足早いよね、あんたのダー…」 「だ、だから、見てないってばあ!」 「ふふー、そう言ってさっきから小久保君ばっか見てた癖に」 「う…」 言葉に詰まり、さらに顔を赤くするミサキ。そんなやりとりがしばらく続いていたのだが…。 「う~ん、ヒマだね!よし、じゃあさ、人気投票でもやらない?」 カチューシャ娘が、そう声をあげると─。 「え?人気投票?なになに?」 周囲の女子もいいかげん自習に退屈していたらしい。彼女の提案に乗り気である。 「このクラスの男子のさ、人気投票!もうすぐクラス替えだしさ~。 ぶっちゃけ、恨みっこナシの本音投票ってことで」 普段ならばそんな騒ぎを戒める役目である委員長のアヤナも、 ノリが悪い、と言われることを怖れたのか、あるいは彼女自身、退屈していたのか─。 つまらなさそうな表情を浮かべながらも、特に反対する様子はない。 「じゃ、用紙の裏に名前書いて~、そんで、後ろから集めて…」 クラスの女子の大半はノリノリで、思い思いの男子の名前を紙に書いていた。 「よ~し、じゃあ、名前、読み上げるよー。はい、佐々木君…」 「はい、佐々木君いち、と」 「で、小久保君…」 「はい、小久保君、いち…」 £ 「…嘘」 ミサキは、思わず呟いていた。投票が進むにつれて幼馴染みであり、思い人である マサヒコの人気がダントツとはいかないものの、トップ人気であることが判明したからである。 (え?あたしが一票だけど…もう一票は…) ふと気付いたミサキがアヤナの方を見ると…同じく、彼女もミサキを見ていたのだろう。 § ちょうどふたりの視線がぶつかったが、アヤナは顔を赤くして視線を逸らした。 (…もう一票は、若田部さんか…最近、仲いいもんね…) そう思いながら、少し胸の痛むミサキだった。 (…で、あと一票は…) これもまた、心当たりのある方向へと目を向けると…。 「すごいねー!ミサキちゃん、小久保君!」 リンコは、嬉しそうにぶんぶんと腕を振り回している。 (…一票、と) 少し前の夕暮れ、手をつないで帰るふたりの姿を思い出し、再び胸が痛くなった。 (…でも…それにしても…) 20人に軽く欠ける程度のクラスの女子のうち、7人がマサヒコに投票している。 ミサキたちを除いても、なお4人の女子がマサヒコに投票したことになる。 「ほっほー、意外そうな顔だね、ミサキ」 「え…別に、そんなんじゃ…」 言葉では否定するものの、複雑な表情は隠しようもない。 「今まで気付いてなかったみたいだけど…人気あるんだよ、小久保君」 「え…嘘…だって…バレンタインだって、小久保君、 あたしと若田部さん以外からはもらってないって言ってたよ?」 「はっはー、そこで気付かないの、あんた?」 「な、なに?」 「あんたやリンちゃんや若田部さんが周りにいるから、そんな隙がないってこと。あたしもさ、 一年の娘に『小久保先輩って誰かと付き合ってるんですか~』って聞かれたことあるくらいなんだから」 「え…」 「でも安心しときな。小久保君にはミサキっていう本妻と、愛人1号・2号までいるって言っといたから」 「な、なによ、それええ!」 再び顔を真っ赤にして抗議するミサキだったが…。 § 「あら?一応、本妻ってことで立てておいたつもりなんだけど?」 と返されてしまうのであった。 「それにさ~客観的に見ても小久保君って、顔はカワイイし、運動神経も悪くないし、 最近身長も成績もぐんぐん伸びてるし。性格だってさ、下心なしで優しいし…。 一年のウブな女の子なんてさ、コロッと参っちゃうと思うよ?」 「う…」 他でもないミサキがマサヒコに惹かれている理由…。それらを挙げられて言葉につまった。 「ま、あたしは豊田先生オンリーだから関係ないけど…。 ミサキもさ、幼馴染みだとかいってウカウカしてると、取られちゃうかもだぞ~?」 「…」 (ダメ…そんなの…ダメ…マサちゃんは…あたしのもの…) ミサキの中で、嫉妬の炎が燃えさかっていた。一方、アヤナも…。 (たまたま…そう、たまたまよ。ほ、ほかにテキトーな男の子がいなかったからよ…。 でも…小久保君ってモテるんだ…。ふ、ふん!でも、あたしには関係ないのッ!) ひねくれた形ではあるものの、彼女なりの嫉妬の炎を燃やしていた。 こうしてふたりが修羅の表情のまま自習時間が終了して―。 着替えを終えた男子たちが教室にもどってきたところで、冒頭に戻るのである。 £ 「??そ、そんなの…俺に関係ねーじゃん。他の奴が勝手に言ってるだけで…ん?」 リンコに女子の自習時間に何があったのかを聞いて、思わず抗議の声をあげるマサヒコだったが、 アヤナやミサキだけでなく男子陣からも思いっきりキツイ視線を自分が集めていることに気付いた。 が、それはそうだろう。ただでさえアヤナ・ミサキ・リンコと学年でもトップクラスの美少女たちが いつも周りにいるうえ、アイのようなキレイなお姉さんがお出迎えしているという、 煩悩バースト気味の男子中学生ならばたまらない環境にも平然としているマサヒコの態度は、 以前からクラスの男子たちの反発を浴びるのに十分だったのだ。 ただ彼の生来の性格の良さがそれを補ってきたのだが…今回という今回は、限界だった。 § マサヒコにとって針のムシロ状態が続いた。親しい男子の友人も声をかけてくれず―。 ミサキとアヤナも牽制しあうかのように、鋭い視線をマサヒコに貼り付けたまま、ひとことも発しない。 頼みのリンコもなぜか他の女子にラチされるように遠のかされて、孤立無援のマサヒコであった。 (俺?俺が…悪いの?なんで?なんで?) 泣きそうになるマサヒコだったが、やっと放課後が訪れ…脱兎のごとく帰ろうとしたそのとき。 「じゃあ」 「いきましょうか、小久保君」 「は>・?はひ?」 「さ、リンちゃんもおいで…これから若田部さんち行くからね」 「`@$ほええ?」 「小久保君?なにか…言いたいこと、あるの?」 「…あ、ありま…しぇん…」 今度はマサヒコがラチられる番であった。右手にアヤナ。左手にミサキ。 そして後ろにはリンコが…。彼を固めるようにしていた。 燃え尽きた老人のように、がっくりと諦めの表情を浮かべたマサヒコは―。 そして三方向から同じセリフを聞くのだった。 「今日こそは」 「はっきりさせて」 「もらうんだもんね?」 「…」 火を点けてしまったのは誰だったのだろう…マサヒコは、ずっとそんなことを考えていた。 (てゆーか…なにされんの、俺?) もはや涙も出ない、という思いのまま引きずられるようにマサヒコは歩いていた。 そして―豪奢なアヤナ邸が見えてきたころ…。三人は、妙に華やいだ声で話し合うのだった。 「じゃ、一番は天野さんね?」 「その次はアヤちゃんで…最後があたしかあ…でも残り物には福があるんだもんね!」 § (俺は…残り物か?) マサヒコは、自分の頬を涙が伝うのを感じていた。 多分、自分が全て悪かったのだろう。そう思うしか…なかった。 「「「お邪魔しま~~~す♪」」」 華やいだ二人の声が重なり、 「いらっしゃい♪じゃ、はじめましょうか♪」 アヤナの、楽しそうな声が重なる。 「あ…あああああ…」 マサヒコは、断末魔の声をあげながら…目を閉じた。 END
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