作品名 作者名 カップリング
「GIRL&BOY」 郭泰源氏 ミサキ×マサヒコ

「すいませんね、小久保さん、ウチのミサキがいっつも入りびたりで…」
「いいんですよ、マサヒコも喜んでるし…」
「本当にね、この前からミサキ、『将来、マサちゃんのお嫁さんになるー』なんて、言ってるんですよ」
「あははは。それ、こちらこそ願ったりかなったりですよ。
ミサキちゃんみたいに可愛い子がうちの息子のお嫁さんになってくれたら」
「ははは。そう言って下さると嬉しいんですけどね」

そして子供部屋では、まだあどけない少年と少女がふたり。
「マサちゃん、ホントだよね?ミサキをおよめさんにしてくれるのって」
「うん」
「わーい、だいすき、マサちゃん」
「こ…こらこら、そんなにくっつくなって、ミサキ」
「えへへ〜すきすき〜、マサちゃん」
子猫のようにじゃれあうふたり。微笑ましい風景である。
「ねえ?マサちゃん?」
「ん?なんだよ?」
「このさきね、天然ロリ系のメガネっ子に、出会っても」
「?うん」
「半天然で、とっても可愛い年上のお姉さんに、出会っても」
「??うん」
「赤毛のサラサラロングヘアーで、美人系で勝ち気な巨乳の女の子に、出会っても」
「???うん」
「ぜったい、ぜったい、ミサキがマサちゃんのおよめさんになるんだからね?やくそくだよ」
「????うん」
(?????…なんだかむずかしいことをいってるな、ミサキ…)
理解できない単語を連発で使われたため、とりあえずは頷いておくマサヒコであった。
§

「ふふふ〜、マサちゃん…マサちゃん…」
嬉しそうに、マサヒコにべたべたとくっつくミサキ。
「あ、あのな…ミサキ、でも…その…あんまり、ほかのともだちのまえではさ、そういうのは…」
「…マサちゃん、ダメなの?ミサキが、そばにいると…」
「い…いや、そうじゃないんだけど…おれのへやとかでは、いいんだけど…」
「…いっしょにいるとはずかしいくらい、ミサキはぶすなの?」
「い、いや、ミサキはかわいいよ?でも…おとこどうしだとな、いろいろ、あるんだよ」
「わかった…しょうらい、およめさんに、なるんだもんね…マサちゃんのために、ミサキ、がまんする…」
が、悲しげな─今にも泣き出しそうな─ミサキの様子を見て、少し慌ててマサヒコは言った。
「で、でも…ここでなら、いいんだよ?ミサキ」
「うん…。じゃあ、おままごとも…いっしょにして、くれるんだよね?」
「う…うん」
「よかった。うん、ミサキ、がまんする…。ふふ…、ねえ、マサちゃん?じゃあ…いつもの…」
「うん…」
目を閉じて、頬をすっとマサヒコに差し出すミサキ。マサヒコはその肩を軽く抱き寄せると…。
“ちゅっ”
柔らかな、ミサキの頬に口づけをした。
「ねえ…マサちゃん?」
「ん?なに?ミサキ」
「きょうは…ミサキ、おとなのキス…してみたいな…」
「で、でも…それはさ、ふたりがおとなになってから…」
「いいでしょ?だって、あたしたち、けっこんするんだもん」
「う、うん…でも…」
「じゃないと…マサちゃんのすきな、おいしゃさんごっこもしてあげないし…」
「…」
「おふろも、こんどからいっしょにはいってあげないんだもん」
§

「わ、わかったよ、ミサキ」
「うふふ〜、じゃ、はい、マサちゃん…」
“ちゅ…”
幼く、小さい、桜の花びらのような唇を重ね合うふたり。
「ん…ふふふ〜、ねえ、マサちゃん?」
「…なに?ミサキ…」
「マサちゃんのくちびる…、やわらかいね」
「ミサキのくちびるも…すごく、やわらかくて、きもちいいよ」
「ふふふ〜、だいすき、マサちゃん…」
「ミ〜〜〜サ〜〜キ〜、ほら、そろそろ、おいとまするよ〜〜?」
「は〜〜い、おかあさん…じゃあ、またね?マサちゃん」
「うん…またな、ミサキ…」
§
§
§
「夢?………昔の、あたしと…マサちゃんの…」
胸が、高鳴っていた。ひどく、リアルな夢だった。会話のひとつひとつを、
そして幼い頃のマサヒコの表情を、ミサキははっきりと覚えていた。
「…昔のあたしは、あんなに素直にマサちゃんに好きだって言えてたんだ…」
§
§
§
「夢………?俺と…天野の…昔の」
汗を、かいていた。ひどく、リアルな夢だった。ミサキの肌の感触を、
そして、彼女の唇のやわらかさを、マサヒコははっきりと覚えていた。
「あの頃の…俺は、あんなふうに天野に…触れていたんだ…」
§

「おはよう…こ、小久保君」
「う、うん…おはよう、天野」
ぎこちなく、朝の挨拶を交わすふたり。
(…マサちゃんの出てきた、あんな夢を見たコトなんて…)
(天野と…小さい頃あんなコトしてた夢を、見てたなんて…)
(絶対、言えないよ、あたし…)
(俺、言えないよな…、絶対)
無意識のうちに、ふたりはほとんど同時に右手で自分の唇を隠していた。
昨晩の夢で味わった、そこの感触を、思い出して。
「?小久保君?」
「あ、天野?」
そして偶然重なってしまったお互いの動作を見て、慌ててしまうミサキとマサヒコ。
(まさか、ね。マサちゃんが、そんな…)
(あ、ありえねーよ、な?バレるわけ、ねーよな??)
そう思いながら…ふたりは、ひどく、ぎこちない笑顔を交わした。
(でも…いつかは、あの頃みたいに素直に、マサちゃんに言うんだ…)
(だけどもし天野が、あんなガキっぽい約束を覚えていたら、そのときは言えるかな…)

((好きだって…、本当に、ずっと…ちいさい頃から好きだったって…))

ふたりは、薄紅色に頬を染めながら、学校へと急いだ。
夏のにおいが、微かにする道を歩きながら。

                           END

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