作品名 作者名 カップリング
「ホットポー」 郭泰源氏 アイ×マサヒコ

(えぇと、確か、あそこのコンビニを右に曲がるんだよな)
小久保マサヒコは、地図を片手に夕暮れの町を歩いていた。
(しっかし母さんも、受験生に見舞いに行けなんて言うかなー、フツー)
マサヒコが向かっているのは、彼の家庭教師である濱中アイが一人暮らしをするアパート。
今週に入り、2回連続で病気を理由に授業を休んでしまったアイ。
それを心配したマサヒコの母親が、学校帰りにアイを見舞うよう、彼に命じたのだ。
「女の子の一人暮らしってのは、アンタが思う以上にずっと心細いんだからね。
あの子は授業参観とか、時間外もアンタの面倒を見てくれてるんだから、
アンタにもそれをお返しする義務があるんだからねッ!」
(…でも、あの授業参観は確か、母さんが病気で…てことは母さんのせいじゃ…)
とは思ったものの、怖くて口には出せなかったマサヒコ。
結局、母親の言うがまま、アイの部屋へと向かったのだった。
(えぇと、あ、ココだ)
20分ほども迷っただろうか。既に初冬の町の風は結構冷たく、
ウロウロと歩き回っているうちにすっかり彼の体も冷え切っていた。
(んっとに…こっちが風邪引きそうだよ)
やっと目当てのアイのアパートに着いたマサヒコ。
"ポ〜ン…"
呼び鈴を鳴らすが、しばらくしても反応は無い。
(あれ?留守?)
再びボタンを押そうと、指を突き出したマサヒコの耳に、
「はぁぁぁぁ……い」
と、普段のアイの声の面影をとどめつつも、かなり重低音の効いた声が響いた。
「あのー、先生、小久保ですけど…」
「え?マサヒコ君!?ち、ちょっと待って」
扉の裏でひとしきりドタバタとアイの慌てる物音が聞こえた。

5分ほど間が空いただろうか。ガチャッ、とチェーンの外される音がして、
ゆっくりと扉が開けられる。そして、何故かそーっと顔を出してくるアイ。
「あ…本当に…マサヒコ君だ…」
「本当もなんも、俺以外の何者でもないッスよ。それより大丈夫ですか?」
「う、うん、大丈夫、かな?」
(いや…とても、大丈夫そうには…)
クシャクシャの髪、トロンと潤んだ目、赤く染まった頬。
どっからどう見ても、立派な病人の姿である。
「あのー、俺、一応、お見舞いに…」
「え…あ、ありがとう。じゃ、どうぞ」
「お邪魔しまーす」
女子大生の一人暮らしにしては、ガランと広いだけの部屋。
病気のせいか、確かにいくらか雑然としてはいるが、
散らかっているというほどはないことに何故か安心するマサヒコ。
「お見舞い買ってきました。…これがレトルトのオカユ、パックの梅干、
これがバナナ、あと粉ポカリ」
「あの、マサヒコ君、他のは分かるケド、粉ポカリって?」
「あ、先生、知らないんスか。風邪とかで食欲ないとき、ホットポーにして
飲むと、とりあえず栄養補給になるし、体もあったまるんですよ。
ちょうどいいや。お湯、あります?作って飲みましょうよ」
「あー…今、切らしてるかも」
「じゃ、ヤカン貸してください。俺、お湯沸かしますよ」
「あ…そんなの、あたしが…」
「いいから、今日はゆっくり休んでくださいよ、先生」
そう言って、アイを遮り、台所へ向かうマサヒコ。
(台所も、結構ガランとしてんな…生活感、あんま無い部屋だな)
一方、アイはベッドの前のソファに胡坐をかくようにして座り、ボーっとしていた。

ヤカンを火にかけ、アイの座っている部屋へと戻るマサヒコ。
「あの…先生、つらいようでしたら、ベッドで寝てもらっていても全然構わないですよ」
「ううん、ずっと寝たままだったから…少し起きて、体勢変えた方が楽みたい。
寝疲れしちゃった」
「にしても中村先生、来てないんですか?俺、的山に伝言頼んでたんですけど。
中村先生に濱中先生のところへお見舞いに行って下さい、って」
「あー…先輩、サークルの卒業合宿だって…」
「…あんの人だきゃあ…」
顔を見合わせ、苦笑いをするふたり。
(…でも…他の人が来た気配、ないな。先生って、実は中村先生以外に、
あんま親しい人っていないのかな?)
"ピーッッッ"
マサヒコの思案は、台所から聞こえる鋭い音によって中断された。
「あ、沸いたみたいですね。ちょっと待っててください」
台所に行き、あらかじめ粉を入れておいたカップにお湯を注ぎ、持ってくるマサヒコ。
「はい、先生。熱いから気をつけてくださいね」
「ありがとう、マサヒコ君」
マサヒコからカップを手渡され、ホットポーをすするアイ。
「…美味しい」
「でしょ。ちょっと濃いめぐらいにつくるのがコツですよ。
ハチミツをちょっと入れても美味しいですよ」
少し得意げに言うマサヒコ。
「やだ、本当に美味しい…ありがとう、マサヒコ君」
(こうして見ると、先生って結構可愛いんだよな)
夢中になってホットポーをすするアイ。
その姿は、普段マサヒコが姉のように感じているよりも、随分と幼い印象を彼に与えていた。
(先生って、それなりに美人だし、優しいし、マジメだし、スタイルもいいし…
何でオトコの気配ゼロなんだろ?)
この夏から天野ミサキと付き合うようになってから、
鈍いなりに女性を冷静に眺めることができるようになってきたマサヒコ。
こうしてふたりでいてあらためてアイの魅力に気づきはじめていた。

そう言えば、リンコ&中村コンビの登場、
というか乱入以来、二人っきりになって話すのは実は久しぶりである。
なんとなくくすぐったいような気分にマサヒコは今なっていた。
「あの、先生。就職試験の準備とか、今結構大変なんじゃないですか?
俺のこととか、あんまり無理しなくてもいいんですよ」
「…マサヒコ君、もしかして、あたしの授業、つまんない?」
「い、いや、そういう意味じゃなくて…」
"クスッ…"
慌てるマサヒコを見て、小さく笑うアイ。
「大丈夫だって。きちんと風邪は治すから。ここまで一緒に頑張ってきたんだもん。
志望校合格まで、付き合わせてよ」
「ハイ…頑張ります」
素直に頷くマサヒコ。
「あんまりこういうこと話したことなかったですけど…、
先生ってやっぱり教師志望なんですか?」
「うん。そのつもり。じゃなかったら塾講師とか。人を教える仕事に、携わっていたいの」
「…先生は、スゴイなあ」
思わず感嘆の声をあげてしまうマサヒコ。
「そ、そんな。すごくなんてないよ」
「いや、やっぱりすごいですよ。自分の目標がしっかりしてるっていうか。
やりたいことがあるっていうか…。俺なんて、ただ何となく流されてるだけですもん」
「そんなことないよ。中学生の頃なんて、みんなそうだって。
マサヒコ君だって、そのうちやりたいことができるから…」
「そうだといいんですけどね。俺っていつも受け身だからな…」
「…ねえ、マサヒコ君、最近少し元気なかったよね?なんだか授業にもあんまり
集中できてないみたいだし…もしかして、何か、あった?」
「え…」
痛いところをつかれて思わず黙り込むマサヒコ。
(ミサキのこととか…若田部のこととか…そういや最近少し…アレだったかも。
なんかボーッとしてるようで、ときどき鋭いんだよな、先生)
考えようによっては、目の前にいるアイに対して結構失礼なことを思っているマサヒコ。

「あー、もしかして、ミサキちゃんとうまくいってないとか?」
少しからかい気味にそう言うアイ。しかし、マサヒコにとってはモロに図星である。
何も言い返せず、思わず真っ赤な顔になってしまう。
「…れ?あれれ?ゴメン、当たっちゃった?」
ふたりの間に、しばし気まずい空気が流れる。
「よし、わかった。お姉さんに何でも相談してみなさい。誰かに話すことで、
少しは気が楽になることだってあるよ」
(確かにそうかもしれないけど…でも今日は確か俺、お見舞いにきてるはずなんですけど)
そう思いつつも、マサヒコは少し迷っていた。
(中村先生に相談しようもんなら、どうせすぐ3Pとかスワップとか言い出すに
決まってるし。的山だと、ミサキや若田部にバレないとも限らないし、
だいたい相談にならんだろうし。このさい、先生に相談するのが一番いいのかも…)
「大丈夫、あたし結構、口固いよ?今日のお見舞いのお礼だよ」
迷った末、結局アイに相談することに決めたマサヒコ。
「あの…実は俺、今、ちょっと困ってて…」
マサヒコは、2ヶ月ほど前にアヤナに告白を受けたこと、そして最近ミサキが
どうもそれに感づき始めているらしいこと、などを手短に話した。

だが、生徒会室でアヤナに無理矢理唇を奪われたことまでは怖くて言えなかった。

「それで、文化祭の準備とかで、しばらく若田部と一緒にいる時間が
結構長い時期が続いてて。そういうとき、若田部、周りから見てても
露骨なぐらい、俺の側にいることが多かったりして。そうすると、
また変な噂になったり…。それに最近、ミサキに対しても変に挑発的な態度だし…」
「ふ〜ん、モテる男はつらいねえ」
「からかわんでくださいよ」
「ふふっ、ゴメンゴメン。冗談よ。でね、マサヒコ君は、どうしたいの?」
「俺は…2人が、前みたいに、普通に友達でいてくれればっつーか」
「うーん、残念だけど、それは、無理ね」
「え…」
「ミサキちゃんは、多分ずっと前からだし、アヤナちゃんにしても、去年くらいから
君のことを好きっぽかったよ。気づいてなかったの?」
「いや、俺は、若田部はまたミサキに張り合ってるだけかと」
「相変わらず、鈍いなあ、マサヒコ君は。でも、ま、それが君の良いところでもあるんだよね」
そう言って、微笑みながらじっとマサヒコを見つめてくるアイ。
その笑顔の可愛さに、もう一回マサヒコは赤くなってしまう。
「ねえ、マサヒコ君、ミサキちゃんのこと、本当に好き?大事にしてる?」
「も、もちろんですよ」
実は最近、ミサキに少し疲れ始めていたマサヒコ。
自分の心の中をアイに見透かされたようで、途中で言葉につまってしまった。

「じゃ、意地悪な聞き方かもしれないけど、アヤナちゃんが、もし、
ミサキちゃんより先に君に告ってたら、どうしてたかな?」
「う…それは…」
「でしょ?なんだか、マサヒコ君ってミサキちゃんにも少し距離があるんだよね」
「…鋭いですね、先生」
「それに、ミサキちゃんって、結構嫉妬深い感じだしさ。初めの頃なんて、
あたしのこともすごく警戒してたよね」
「…そのとおり、なんですよ。最近特に束縛がキツくて」
最初の頃こそ、幼馴染同士ということもあり、ほのぼのと幸せな付き合いだったが、
アヤナの件があってからというもの、ミサキはちょっとしたマサヒコの行動にも
疑いの目をむけるようになり、マサヒコは少しウンザリし始めていた。
「それに…その…こんなコトまで言っていいのか、わからないんですけど…」
さらに顔を赤くして少し言いよどむマサヒコ。
「なに?ここまで言ったんだから、全部言っちゃったほうがいいよ」
「あの…ミサキの奴、そういうときに限って、キスとか…、その、
セ、セックスとかをものすごくせがんでくるんです」
聞きながら、アイも思わず顔を赤くした。
「俺は、2人で一緒にいて、手をつないでるくらいでも十分なんです。けど、アイツ、
どこで情報仕入れてきてんのか、こんぐらいの年の男はいっぺんそういうこと覚えたら
サル状態で、女の子を求めてこないほうが変なんだとか、俺がこんなふうなのは、
ミサキとのアレがあんまり良くなかったからだとか…とにかく、そう思いこんでて。
だから、いくら言っても聞いてくれなくて…」

(あ…それって、多分、ミサキちゃんあのとき先輩の言ったことを…)
そう言えば以前、かなり遠回しながら、アイは中村とミサキと3人でいたときに、
ミサキにマサヒコとの仲を相談されたことをおぼろげながら思い出していた。
経験の全く無いアイは興味深く話を聞いているだけだったが、中村はいつものごとく、
「そんなのヤッてヤッてヤリまくることよ。
男なんてみんなアフォだから、女の体の味を覚えたら、もうサルだって」
と、豪快に笑い飛ばしていたのだった。
(にしても…マサヒコ君って思ってた以上に…)
言うべきことを言い終わり、顔を真っ赤にして下をむいているマサヒコ。
普段弟のように接している、目の前の少年の赤裸々な告白。
アイは、少年の純情さに愛おしさを抱きつつも、
なんとなく、ずっと大事にしてきたものを他人に奪われたような―
そんな、複雑な気分になっていた…。
「ねぇ…マサヒコ君、ズバリ、君はミサキちゃんとアヤナちゃんのどっちが好きなのかな?」
「え…それは…でも…」
「でも、じゃないの。一番大事なのは、君が本当に好きなコは誰かってことだと思う」
(俺が…ホントに好きな人?)
マサヒコは、アイの言葉を反芻していた。
(ミサキも…若田部も…確かにカワイイと思うし…いいんだけど…でも、俺が…
本当に好きな人って…もしかして…イヤ、そんなはずは…)

黙り込み、下をむいたまま考え込んでいるマサヒコ。それを、マサヒコが怒ったのと
勘違いしたアイは、少し慌てて言った。
「ああ、ゴメンゴメン。ちょっと言い方がキツかったかな?」
「え…あ、いや、そんなことは…」
「ホントにゴメン、あたしったら大して経験も無いクセに偉そうに…」
短い沈黙。しかしこのとき、少年は自分の心の中の混乱に戸惑っていた。
「あの…先生、今日はありがとうございました。とりあえず、その、
大丈夫みたいだし…俺、帰ります。お大事に」
混乱した自分に収拾をつけようと、そう言って席を立とうとするマサヒコ。
「え?ああ、今日はありがとう、マサヒコ君」
突然立ち上がったマサヒコにつられ、彼を見送ろうと少し遅れて
その場から立ち上がろうとしたアイ。しかし、元々病みあがりのうえ、
ずっと座りっぱなしだったためか、一瞬、バランスを崩してしまう。
「キャッ」
「あ、先生、大丈夫!?」
すばやくアイの肩を抱き、アイの体を支えるマサヒコ。アイの体は、
マサヒコの両腕に完全に預けられている状態になった。
「ゴメン…マサヒコ君」
「…」

何故かお互いに体を離そうとしないふたり。
言葉も交わそうとしないまま、しばらくその場に立ち尽くしていた。
"クスッ"
沈黙を破ったのは、アイの小さな笑い声だった。
「な、何です?」
「ねえ、マサヒコ君、今、身長、どのくらいになった?」
「え?…ああ、多分、168cmくらいじゃないかな…」
「ふふっ。2年前、初めて会ったときは、あたしより10cmくらいも低かったのにね」
「…悪かったっスね、チビで」
「ううん、そういう意味じゃなくて。勝手に弟みたいに思ってたけど、いつの間にか
あたしより背も高くなって、男っぽくなって、女の子にも…何か、悔しいな。
あたしの知らない、マサヒコ君になっていくのが」
「そ、そんなことないっスよ」
「今、あたしをこんな風に支えていてくれてるし。どんどん、
イイ男になっていくのかな、マサヒコ君は」
そう言って、にっこりと笑うアイ。
その笑顔を見たとき、マサヒコはさっきアイに言われてからずっと心の中に
わだかまっていた自分の迷いを、今、振り払えると思った。

「先生…さっきの答え、ココで言います。俺が、一番好きなのは、濱中アイさんです」
「え…」
「俺が好きなのは、先生なんです」
マサヒコは、アイの体を強く抱き寄せ、唇を重ねた。
アイは…抵抗を示そうと、マサヒコの胸に手を押し付け、はねのけようとする。
が、病みあがりのためか、その力は弱い。しばらくするうち、あきらめたように
ぐったりと両腕をたらした。しかし、再び抵抗しようと、唇を離すアイ。
「ダメだよ…マサヒコ君、ミサキちゃんが…」
「俺は、先生のことが、好きなんです」
再び強引に唇を奪うマサヒコ。その予想外の力の強さに、アイはなすすべもなかった。
「先生、俺…」
アイの体を、ベッドへ押し倒すマサヒコ。
「ダメ…それだけは…マサヒコ君、あたし…」
「好きだ、先生」
そう言うと、マサヒコはアイのワイシャツのボタンに手をかけた。
「マサヒコ君…あたし、昨日からオフロ入ってないし…お願いだから…」
なおも言葉を続けようとするアイの唇を自らの唇でふさいだあと、
マサヒコはゆっくりとアイの首筋へと舌を這わせた。

「くぅんッ」
敏感な声を上げ、体を反らせ、マサヒコの愛撫に反応してしまうアイ。
「可愛い声…それに、すっごくイイ匂いがしますよ、先生」
「やだ…嘘…汗臭いよ、あたし」
「先生の、匂いだ」
そう言い、再びボタンに手をかけ、ひとつひとつ、ゆっくりとボタンを外す。
マサヒコの目には白いブラと、それに負けないくらい白く盛りあがった谷間が飛び込んできた。
"ちゅっ"
汗のためか、軽く湿った谷間に口をつけ、軽く吸うマサヒコ。
「ん…んん」
今まで聞いたこともない、子供のように甘えた声を放つアイ。そのアイの様子に
更に興奮したマサヒコは、素早くアイの背に手を回し、ブラのホックを外した。
"ぷるんっ"
(わゎ…すご…)
露になった、アイのふたつの乳房。それの予想以上の豊かさに驚きつつも、
(…てか、多分…ブラのサイズ、絶対合ってないよ、先生)
と、いつもながら変なところでだけ冷静なマサヒコだった。
しかし、行動はとても冷静でいられるはずもない。
舌を伸ばし、ゆっくりと小粒な乳首を舐め上げる。
「あァ…んっく…」
くすぐったさと、甘やかな快楽に我を忘れかけたアイ。
しかし、ハッと我に帰ると、マサヒコの頭に手をかけ、それを突き放そうとした。

「イヤ…ねぇ、マサヒコ君、今なら…ね、やめようよ…
ダメだよ、こんなの…あたし、誰にも言わないから…」
「…」
しばらく、黙ったままアイを見つめるマサヒコ。と、突然自分の着ていた学生服を、
ワイシャツを、そしてTシャツを脱ぐと、呆然とそれを見守っていた
アイの手をとり、自分の裸の左胸に触れさせた。
「すっごくドキドキしてるでしょ」
コクン、と小さく頷くアイ。
「先生のことが、好きなんです。だから、こんなに…。
俺は、先生に、触りたい。俺の肌で、先生の肌を、感じたい」
そう言うと、再び頭を潜らせ、乳首を口に含むマサヒコ。
そして、左手は、もう片方の乳房をゆっくりと愛撫していた。
「あぁ…」
諦めたように、溜息にも似た声を上げるアイ。
右手をスカートの中へと滑り込ませ、ゆっくりと下着越しにアイの恥丘を
なぞるマサヒコ。と、勢いをつけてパンティの中へとその手を入れた。
「う…うん…は…ん」
風邪による発汗と、興奮のためか、既にその中はしっとりと湿っていた。
「先生…すっごく、熱い」
「汗だよ…馬鹿…」
が、マサヒコの指は、明らかに汗以外の少しヌメリを帯びた液体の存在を
アイの裂け目から感じ取っていた。
(先生…感じてくれているのかな…)

マサヒコは、できる限り優しく、ゆっくりとアイの裂け目をなぞり、円を描くようにして周りを撫でた。
「ふ…ふゥ―ッ」
愛撫を何度か繰返すうち、アイの反応にわずかずつだが変化が見え始めた。
元々風邪のためうっすらと染まっていた頬は更に赤みを増し、吐く息も荒いものへと変わっていった。
ミサキの、少女的な、硬いそれとは異なる、「女」としての反応をじっくりと眺めるマサヒコ。
愛撫を続けながら、乳首から口を離すと、乳房全体をゆっくりと確認するように舌を這わす。
たっぷりとした乳房の裏にもぬかりなく舌を這わすと、
汗によって湿ったそこを一回、マサヒコは口に軽く含んだ。
「う…うぅン、くすぐったい…」
そう言いながら軽く身をよじるアイ。
マサヒコはそのまま、アイの腹から臍へと舌を移動させながら、スカート脇のジッパーを降ろした。
「あ…ダメ…汚い…」
アイがそう言い、マサヒコの頭を押さえようとするが、
マサヒコは力を込めてアイの手首を握ると、そのまま下降し、素早くパンティを降ろした。
指で愛撫を加えていたときから気付いていたが、アイの陰部は結構な密林地帯だった。
ミサキの薄めのそれとは違う風景に、
(オトナの…女の人だ…)
と、マサヒコは気持ちを昂ぶらせる。そして、顔を近づけると、マサヒコはそこから、
匂い以外の何か―牝の持つ、それ、とでも言えるもの―が、ムワッと香りたつのを感じていた。
"はむ…"
軽く、アイの茂みを口に含むマサヒコ。
「う…んん…ぅ」
アイの快楽に溺れたかのような声に、勢いづけられたマサヒコは、そのままアイの裂け目へと舌を滑らせた。

"びくんッ"
釣り上げられた直後の魚のように、体全体で激しい反応を返すアイ。
「ん…ぐぅ…ぐぐうん…」
ミサキや、AVで見てきた、可愛らしいだけのそれとは違う、生々しい反応に、
我を忘れて裂け目の上から下へと何度もゆっくりと舌をスライドさせる。
微かに―しかし、汗のもつ辛さのない、塩っぽさを舌先で感じるマサヒコ。
「ぅん…マサヒコ君…恥ずかしいよぉ…」
そう言いながら、腰をうねらせるアイ。
だが、その動きはマサヒコの更なる興奮を誘うだけだった。スライド運動をいくどか繰返した後、
マサヒコはアイの小振りな左右の唇を今度は味わうように吸い上げた。
「きゃ!?!う…ううぅん」
こみあげてくる快感と、罪悪感とが心の中でいまだ戦い続けているアイ。
何とか抵抗を示そうと、マサヒコの頭に手をかけ、足を閉じようとするが、
全てマサヒコの両手のブロックの前に防がれてしまっている。
(マサヒコ君…君のことは…好きだけど…でも…)
弟のように思っていた少年の荒々しい告白に驚き、
その後の予想外に優しく、巧みな愛撫に抵抗しつつも身を任せてしまっているアイ。
頭の中は混乱しつつも、どこかで裏腹な嬉しさを感じていたのも事実だ。
(こんなに…夢中になって…)
アイの陰部に顔を埋め、愛撫を繰返しているマサヒコ。
その姿に、罪の意識と同じくらい愛おしさを感じ初めている自分の心に、アイは戸惑っていた。

「う…はぅん…」
両手はマサヒコの頭においたままだが、力は込めず、諦めたようにマサヒコの口技に身を任せるアイ。
と、マサヒコは今度は裂け目の上部にある小さな肉の芽に舌を這わした。
「ひ!…ぁ…、はぅあ…」
過敏な反応を示したアイの声を確認すると、そのまま裂け目のなかへと舌を入れ、
吸い上げながら激しく舌先を動かした。
「あああ…」
アイのそこからは、明らかにマサヒコの唾液とは異なる、
ヌメリ気をもった液体がじっとりと溢れ出してきていた。ヒクついてるそこからいったん口を離し、
愛撫を中断すると、マサヒコはゆっくりと自分の顔をアイの顔の近くへ移動させる。
先ほどからの愛撫のおかげか、既に上気しきった頬。
それにこみあげてくる感情に、軽く泣き出してしまっていたアイの恥ずかしげな、
そして何かに耐えているかのような表情を見て取ると、マサヒコはアイの体をひとたび、
強く抱きしめた後、アイの両手に自分の両手を置き、絡めるようにして握った。
「…ごめんね、先生」
「え…」
「まず、最初に、手、握ってあげないと…」
そう言って、手に少し力を加えるマサヒコ。アイの目の下に伝う涙の跡に軽くキスした後、
再び、優しくアイと唇を重ねた。
「ん…」
もはや抵抗は示さず、マサヒコの行動に身を委ねるアイ。マサヒコは、アイから手を離すと、
ベルトを緩め、学生服を下ろし、トランクスの中から既に勃起しきっていたペニスを取り出した。

「先生…俺に、つかまって」
「…うん」
恐る恐る、といった感じでマサヒコの背中に手を回すアイ。
一方、マサヒコはアイとの距離を縮め、更に体を密着させると、
取り出したペニスをアイの裂け目に接触させ、撫でるように上下させた。
そして狙いを定めると、アイの肩を両手で押さえ、ゆっくりと、少しずつアイの中へと
侵入を開始する。頭の部分が入った時点で、アイは泣きそうな
―いや、実際に泣きながら、声を上げていた。
「う…ぐぅうん…痛…痛いよぉ…マサヒコ君」
はやる気持ちを抑えながら、少しずつ侵入していくマサヒコ。
硬く閉じられた肉の壁をおしのけてゆくと、
マサヒコのペニスは完全にアイの中で包まれている状態になった。
「いタ…痛い…」
目に涙を浮かべ、頭を左右に振り、マサヒコに訴えるアイ。
マサヒコは、ギュッとアイの体を抱きしめると、しばらくそのまま動かずにいた。
―3分ほど時間がすぎただろうか、マサヒコは、ペニスをアイの奥へと埋め込んだまま、
アイの頬を伝う涙を舐めあげると、アイの口をキスでふさいだ。そして、
耳、顎、額、首へと次々にキスを繰返すと、アイの両肩を、交互に甘く、噛んだ。
何度も反復されるマサヒコの愛撫。
苦痛で歪んでいたアイの表情が、徐々に和らぎ、うっとりとしたものに変わる。
再びアイの表情が赤く染まってきたのを確認したマサヒコは、ゆっくりとピストン運動を開始した。

「う…痛…う。あ…あぁア…」
当然ながら、まだ痛みはとれたわけではないアイ。しかし、さきほどの強い異物感は薄くなっていた。
アイの体を気遣いながら、ゆっくりと、ゆっくりと腰を動かすマサヒコ。
「う…くうぅぅ」
それを繰返すうち、もう痛みにも慣れたのか、アイの口からは痛みを訴える言葉は出てこなくなった。
代わって、声にもならない、密やかな呻き声を上げ始めるアイ。
(先生の中…すっげえ…やらけぇ…包まれてるみたい…)
ミサキとのセックスは、彼女の体がいまだ発育途上にあるためか、
常になにか壊れ物を扱うようだったことを思い出していたマサヒコ。
中に入っていったときも、つながっている、というよりも、肉圧に挟まれてる、という感覚に近かった。
アイとのそれは、むしろ何か暖かいものに優しく守られているような…
大海原をプカプカと浮いているような…そんな感覚だった。
「すぅん…うん…っあ…いうッ」
アイの反応も、次第に明らかに快感を含んだそれへと変化しつつあった。
その反応を確認し、徐々に腰の動きを早め、アイの中を泳ぎ続けマサヒコ。
何度も何度もピストン運動を繰返し、そのたびにアイの口からは呻き声がこぼれる。
すると今度はアイの方からマサヒコの腰へと足を絡め、体をより密着させようとしてきていた。
ふたりの動きは、徐々に同調していく。やがてマサヒコは腰の裏あたりに、
鋭く蠢く、最後のときを迎える予兆を感じた。
「先生…俺…先生…好き…」
そう、単語のみを連ねながら言い、アイの中からペニスを抜きだすと、
真っ白な精液を思いっきりアイの腹へとぶちまけた。

しばらく何も言わないまま、体を重ね、お互いの顔を見続けるふたり。
先に我に帰ったのは、マサヒコだった。ハッと気付き、アイの体からガバッと身を離すと、
「ゴメン…先生…重かったよね?」
そう言い、テーブルの上に置いてあるティッシュを取ると、アイの腹の上に放出された、
自分の精液を、次に自らのペニスを拭った。
そして、ティッシュを取ってアイの陰部にも手を伸ばそうとするが、アイは慌ててそれを制止すると、
「あ、ああ…いいよ。自分で、やるから…」
そう言ってティッシュをマサヒコから奪い、
(な…なんだか…妙に…明るいんですけど。君)
そんなことを考えながら自分のそこを拭った。
ふと目を落とすと、シーツはわずかだが鮮血に染まっていた。
(うわぁー、出血しちゃってる…)
改めて、処女を失ったという事実を確認したアイ。
と、突然マサヒコが顔を近づけてきて、アイの唇を奪った。
「ん…」
が、アイは唇を離すと、
「マサヒコ君…なんで…ミサキちゃんもいるのに…本気じゃないのに…こんなことを…」
少し恨みがましくマサヒコに言った。
マサヒコは、怒ったような表情になると、突然立ち上がり、下着を、ワイシャツを、
そして学生服を着込み、つかつかと玄関の方へと向かった。
「ねぇ…誰にも、言わないでいてあげるから…忘れようよ。ね?
明日からは、また、普通に、いれるよね、あたしたち」
シーツで体をくるんだまま、懇願するようにマサヒコの後姿に言葉を投げかけるアイ。
しかし、マサヒコは玄関のドアに手をかけながら―顔を、アイには向けずに、言った。

「忘れませんよ」
「…」
「俺が本当に好きなのは…先生なんです。ミサキには悪いと思うけど、それは今日、
はっきりわかりました…。それと、先生。俺、一つ、目標みたいなもんが、できました」
「な…何?」
「先生に見合うような…つりあうような…男になります。だから、待っててください」
そう早口で一気に言うと、玄関のドアを開け、走るようにして出て行った。

部屋にひとり残されたアイ。しばし呆然としていたが、のろのろと立ち上がり、
玄関の鍵をかけ、部屋の灯りを消すと、再びベッドの上にへたりこんだ。
(バカ…マサヒコ君も、あたしも…バカ)
しばらくそのままでいたが、突然、熱が下がっているような感覚を覚えると、
へなへなとした動きのまま体温計を取り出し、熱を計る。
(36度8分…やっぱり、下がってる…もしかして、マサヒコ君に…
うつしちゃったかも…あたしって…やっぱり…ダメな先生だ…)
ふと目線を下へ落とす。まだ股間の間には何かが挟まっているような、そんな感触が残っていた。
(明日から、どんな顔して…先輩や、ミサキちゃんと…話せばいいのよぉ…)
そう思いながら、顔を上げると、窓の外から微かな明かりがカーテン越しに入ってきているのに気づいた。
思い切ってカーテンを開けると、夜の空には少し欠けた月が出ていた。
(マサヒコ君…迷わないで、帰れてるかな…)
月を見ながら、何故かアイは、そんなことを思っていた。

                                        END

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